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弁護士の平井哲史です。
今月(202010月)15日に、当事務所からは水口洋介弁護士と私が弁護団に参加していた日本郵便格差是正20条裁判の最高裁判決がありました。同種事件が3件あり、以下引用する最高裁判例集URLでは、判決を東日本・西日本・九州の順に並べています。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/089772_hanrei.pdf

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/089773_hanrei.pdf

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/089771_hanrei.pdf

ず


多くの格差処遇が労働契約法20条に違反した不合理な格差であるかが問われたこの訴訟で、最高裁は、すでに確定していた【住居手当】のほか、審理対象となった【扶養手当】、【年末年始勤務手当】、【年始期間における祝日給】、【有給の夏期冬期休暇】および【有給の病気休暇】のすべてについて、労働者側の主張を認める全面勝訴判決を出しました(夏期冬期手当については損害額の認定のために高裁に差し戻し)。


 \(^o^)/ 

当日の記者会見で、原告の一人が、『時代の扉が動く音がした』と語っておられて、主要な全国紙すべてがこの報道をおこなう中、毎日新聞・朝日新聞・産経新聞などが、この原告の言葉を見出しに使っていました。

私も、今回の判決は、「非正規差別」とも表現される大きな格差を是正し、働く人の所得全体を引き上げる展望を開くものとして、「時代の扉が動く」という言葉をあてたいと思います。

直前に出ていた2つの不当判決

実のところ、この最高裁判決は、不安な気持ちで迎えていました。一つには、原審の判断に対し、労使双方が上告や上告受理申立をおこなっていましたが、会社側の申立をより多く最高裁が受理していたことがあります。しかし、なによりも、この2日前の1013日に、秘書室業務の有期アルバイト職員に賞与や私傷病中の賃金補償がないこと等が問題となった【大阪医科大学事件】と、有期契約社員に退職金が支給されないこと等が問題になった【メトロコマース事件】で、最高裁は、いずれも原告の請求を一部認容していた原判決を覆して、賞与の格差も、退職金の格差も不合理とまではいえないと判断していたからです。

メトロコマース事件最高裁判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf

大阪医科大学事件最高裁判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf

この両判決において、最高裁は、賞与にしろ、退職金にしろ、正社員としての職務を担う人材の確保・定着をはかる目的のものである旨述べて、契約社員(メトロコマース事件)や、アルバイト職員(大阪医科大学事件)と正社員との職務内容や配置変更の違いをとりあげ、だいぶ近接しているのも使用者における組織編制上の事情によるものとして「その他の事情」として考慮し、賞与も退職金もまったく支給しないことを不合理とまでは認められないとしていました。

<正社員としての職務を担う人材の確保・定着をはかる目的>というフレーズは、前記の日本郵便事件においても会社側が似たようなフレーズを繰り返し用いていました。このため、日本郵便事件においても、問題となっている各手当・休暇について、こんな抽象的な趣旨・目的を認定されたら、原審の判断から後退があるのではないか?と不安にさらされました。

なお、この2つの最高裁判決に対しては、多くのコメントや批判がなされていますが、メトロコマース事件を担当した当事務所の青龍美和子弁護士による記事はコチラです。↓

http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/

ハマキョウレックス事件から前に進んだ日本郵便事件判決

フタを開けてみると、日本郵便事件では、各手当や休暇について、<正社員としての・・・・>などという抽象的なフレーズは用いず、個別具体的に各手当や休暇の趣旨・目的が認定され、その趣旨は時給制契約社員にも妥当するとされ、完全勝訴となりました。これは、2年前に「鏑矢」となったハマキョウレックス事件最判(平成3061日・民集第72288頁)をさらに前に進めたものと評価できます。

もともと労働契約法20条は、2009年の政権交代を招くきっかけとなった「派遣切り」により、期間の定めのある労働契約では「ものが言えない」ことにより低劣な労働条件でも受け入れざるを得なくなるという状況が広く、かつ長くあったことが可視化されて、その反省から、旧民主党政権時代の2012年(平成24年)に労働契約法を改正して盛り込まれたものでした。

この労働契約法20条は、正社員と有期契約労働者との労働条件の相違について、「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」と定めていました。

そして、この規定について、ハマキョウレックス事件最判は、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。とし、『不合理と認められるもの』とは,「有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいう」としていました。そのうえで、同事件最判は、①皆勤手当、②無事故手当、③作業手当、④給食手当、⑤通勤手当、について不合理な格差であると認定しました。

日本郵便事件では、ハマキョウレックス事件では不合理な格差とはされなかった【住居手当】についても、比較対象の正社員も転居を伴う転勤がないことに着目して、不合理な格差と認定し、会社側の上告も受理しませんでした。そして、判断対象となった各手当・休暇については、業務の対価としての性質を有する【年末年始勤務手当】や、【年始期間の祝日給】のほか、【扶養手当】、【夏期冬期休暇】、【病気休暇】についても不合理な格差と認めたことは、ハマキョウレックス事件から大きく前進をさせたものと評価できます。

各手当・休暇についての日本郵便事件最判の判断

各手当・休暇についての日本郵便事件最判の判断を以下に抜粋・引用します。

扶養手当

第1審被告において,郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給されているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。

上記目的に照らせば,本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである。

年末年始勤務手当

郵便業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。

上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば,これを支給することとした趣旨は,本件契約社員にも妥当するものである。

年始期間における祝日給

年始期間の勤務に対する祝日給は,特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために年始期間に勤務したことについて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたものと解される。

時給制契約社員も、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。そうすると,最繁忙期における労働力の確保の観点から,本件契約社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはできるものの,年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は,本件契約社員にも妥当するというべきである。

有給の夏期冬期休暇

(国民一般に受け入れられている慣習的な休暇をとる時期に勤務に就くことに対する対価としての性質を有する【夏期冬期休暇】については、時給制契約社員に付与しないことが不合理な格差にあたること自体は問題にならず、それにより損害を被ったと言えるかどうかが争点になっていました。)

第1審原告らは,夏期冬期休暇を与えられなかったことにより,当該所定の 日数につき,本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから,上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる。当該 時給制契約社員が無給の休暇を取得したか否かなどは,上記損害の有無の判断を左右するものではない。

有給の病気休暇

第1審被告において,私傷病により勤務することができなくなった郵便の業 務を担当する正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障を図り,私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。

もっとも,上記目的に照らせば,郵便の業務を担当する時給制契約社員についても,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべきである。

先行2判決との違いを考える

 この日本郵便事件最判の【有給の病気休暇】部分の判断と、メトロコマース事件および大阪医科大学事件の最判とを比較すると、その違いが浮かび上がると思います。

① 趣旨・目的を具体的にとらえているか否か 

 日本郵便事件最判では、上記で紹介したように、有給の病気休暇は「正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待される」ことに着目しつつも,その目的は「生活保障を図り,私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保する」ものであると具体的に目的を認定しました。

 これに対し、メトロコマース事件最判は、退職金の目的について、労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものとしつつ、「第1審被告は、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し退職金を支給したものといえる」としました。

 また、大阪医科大学事件最判は、賞与について、「正職員の賃金体系や求められる職務遂行能力及び責任の程度等に照らせば、第1審被告は、正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、正職員に対して賞与を支給することとした」としました。「私傷病による欠勤中の賃金」についても、それは「正職員の雇用を維持し確保することを前提とした制度である」としました。

 日本郵便事件最判が、正社員が長期の継続勤務が期待されるとしながらも、病気休暇の目的は、療養に専念させることを通じて継続的な雇用を確保するものと具体的な目的を認定したのに対し、後2判決は、退職金と賞与のいずれも、「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」、「正職員の雇用を維持し確保することを前提」としています。これでは、「正社員の確保のための制度だから契約社員には適用がない」という結論を容易に導くことになりかねません。

② 違いに応じた均衡な処遇の観点を持っているか

 次に、日本郵便事件最判では、扶養手当と有給の病気休暇について、「時給制契約社員についても,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば」、その趣旨は妥当するとしました。日本郵便事件でも、時給制契約社員と正社員とで、まるで同じ職務内容だと認定されたわけではありませんでした。しかし、最高裁は、「相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば」制度を設けた趣旨は妥当するとして、扶養手当も病気休暇もまったく付与していないことは不合理な格差だとしました。

 これに対し、メトロコマース事件、大阪医科大学事件の両方とも、原審において、正社員と同等ではないけれども、正社員と同様の計算方法で算出した退職金の4分の1、正社員の60%程度の賞与をも支給しないことは不合理な格差であるとしていたのを覆し、まったく支給しないことも不合理とは言えないとしました。

 両判決はいずれも事例判決であり、職務内容や配置変更の範囲等の違いの程度が異なる事案ではまた異なる判断もありえます。ですが、正社員と並んで働いている労働者について、賃金の後払いや功労報償の性質も持つとされる退職金や賞与について、まったく支給しないことも不合理ではないとしてしまった両判決は、多くのコメントが指摘するように、<違いに応じた均衡処遇>の観点を欠落させた文字通りの不当判決と言えるでしょう。

 とりわけ、大阪医科大学事件最判については、他の区分の有期契約社員には正社員の80%の賞与が支給されていることとの整合性がつかないし、私傷病による休職中の賃金補償については、有給の病気休暇について不合理な格差と判断した日本郵便事件最判と矛盾するものと言え、不当性が際立ちます。

待遇格差の解消に向けた努力を

 本訴訟をかまえた郵政産業労働者ユニオンhttp://piwu.org/index.html)の皆さんは、早速、最高裁判決に従うこと、そして、判決に沿って原告となった人以外の時給制契約社員の皆さんに、不合理な格差とされた手当・休暇の不付与に対する損害の賠償をすること、不合理な格差処遇の改善をはかること、等を会社に求めています。

報道によると、会社は、最高裁判決を受けて、今後どうするかを大労組(郵政産業労働者ユニオンではない)と協議することにしたとされていますが、その帰結が、本訴訟の地裁判決後になされたように、ごく一部の改善と引き換えに正社員に対する手当の廃止や削減等により格差を縮めようとするいわゆる「悪平等」では、時給制契約社員のみなさんの待遇改善には結びつきません。むしろ格差のある処遇を固定化させようとするものとも言えます。ですので、しっかりと時給制契約社員の待遇改善を肝として協議に臨んでいただきたいなと思います。

本訴訟の原告は計12名(うち組合員11名)、後続する同種訴訟(第2陣)の原告は約160名(原告団・弁護団は全国7地域で組織され、東京弁護団には、当事務所から私と水口弁護士、そして平井康太弁護士も参加しています。)であり、日本郵便で働く非正規社員約18万人のごく一部です。しかし、この判決に沿って待遇格差の改善がはかられれば、その社会的影響力は著大と言えます。

毎年、時給制契約社員の賃金UP等の交渉は苦労していますが、住居手当は最大月額27000円、扶養手当は配偶者と子一人で15000円ほどですから、両手当の支給対象となる時給制契約社員の方は月額4万円以上の賃上げと同様になります(もっとも、この裁判中に、転居を伴う転勤のない正社員にも住居手当が支給されなくなったため、住居手当は過去分のみの是正となりますが。)。また、私が担当した東日本訴訟原告の宇田川朝史さんがいつも強調していたことですが、有給の病気休暇が認められれば、その分有休をあてることをしなくてすみますし、療養が長期化する場合に、泣く泣く退職したり、それを避けようとして無理して出勤をして体を壊して退職を余儀なくされたりといったことが少なくなるでしょう。

こうした格差是正は、時給制契約社員の手取りを増やし、その生活を安定化させるだけでなく、給料が増えた分、それが消費に回ることで地域の経済に役立つうえ、会社にとっても良質の労働力を確保することにつながります。そうした大きな観点で、今後も取り組みを進めていきたいと思います。また、全国の他の「20条裁判」がさらに広がり、待遇格差の是正がいっそう進むことを願ってやみません。そして、野党において賞与や退職金の不支給を是正する立法措置を検討することが報道されていましたが、政治部門が、不当判決を乗り越えて、格差是正を後押しするような政策措置をとっていただくことを強く期待したいと思います。

以上


 弁護士の平井哲史です。緊急事態宣言が解除されたのも束の間、東京では1週間の新規感染者増が100名を超え、「もう第2波が来るのか?」と気が気でならない方も少なくないかもしれません。

 外出自粛要請が続くなか、なんとか皆さん頑張ってこられましたが、対策も支援策も後手に回った結果、ここへきて倒産件数の増大がニュースになるようになっています。

 

 私たちの事務所にも、「解雇された」、「雇止めをされた」、「シフトを減らされた」といった雇用にかかわる相談や、「正社員は給与保障で自宅待機なのに、バイトやパートは出てくるよう指示される」といった格差処遇に関する相談など、いろいろな相談が寄せられています。

 相談を受けていて、これは広く知ってほしいなと思うことを書いてみたいと思います。

 

1、「助成金の積極活用を」

――助成金等を活用しない解雇には解雇回避努力は認められない

 

●助成金等を活用しない焦った解雇が起きている

 

 まず、休業要請が出されていた業種などではやはり雇用にかかる問題が起きていますが、「これは問題だな」と思うのは、「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」(※)などの使用者の経費負担を軽減して事業の存続をはかろうとする助成金や、「持続化給付金」(※※)の申請をすることなく、焦って解雇等に踏み切っているケースです。都内のあるタクシー会社が話題になりましたが、それ以外にも外資系のファッションブランドのショップやある大手ホテルなどでも起きています。

 ※厚労省のサイトをご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

 ※※経産省のサイトをご参照↓

 https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html

 

●合理的理由のない解雇は違法

 

 こうしたケースでは、売上の減少を理由としていますが、こうした経営上の理由による解雇や雇止めの場合、人員削減の必要性や解雇回避努力、人選や解雇等に至る手続が相当であるか、といったことを考慮し、客観的に合理的であると認められなければ、法的には有効となりません(※)。つまり、裁判になると使用者側が敗訴になります。

※ 整理解雇の法理。厚労省のサイトご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html

 

 コロナウイルスの影響で売上が極端に落ちたのだから合理性はあるでしょうという見方もありますが、即断は禁物です。実際には個々の裁判ごとに判断は変わりえますが、政府がわざわざ助成金をいくつも設け、あるいは枠を拡大して支援策を用意しているのに、これを利用せずに解雇等に踏み切れば、解雇回避努力が不十分との評価を受けるでしょう。

 

●雇用調整助成金の活用で解雇は回避できる

 

 少し具体的に見てみますと、仮に100人の労働者をかかえるホテルで、仕事が減ってしまったので、1か月自宅待機(休業)してもらうことにし、給与月額の60%の休業手当を支払うことにしたとします。中小企業ですと。この支払った休業手当の90%までは雇用調整助成金が出ます(今の国会で補正予算が成立すれば1日の上限額が1万5000円まで上がる見込み。)。労働者の給与が一人平均で30万円だとすると、休業手当は概算で18万円/人になります。その90%を雇用調整助成金でまかなえると、1万8000円/人が使用者自身の負担分となります。100人だと180万円になります。そして、中小企業ですと、持続化給付金は200万円出ますので、おおざっぱにいえば、雇用調整助成金と持続化給付金で100人の労働者の休業手当1か月分がまかなえる計算となります。これならば、売上が大きく落ちたとしても解雇までする必要はまずないでしょう。

 

 ですので、使用者の皆様にはぜひ積極的に助成金を活用し、雇用を維持できるよう頑張っていただきたいなと思いますし、労働者の皆様は、「コロナで売上落ちたからしょうがない。」とあきらめないで相談にきていただければと思います。

 

●小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇について

 

 なお余談ですが、保育園から小学校まで(まとめて「小学校等」と言います。)の小さいお子さんのいるご家庭では、小学校等が臨時休校になると、お子さんだけを家においておくわけにいかず、共働き家庭ですと、夫婦のどちらかが仕事を休まざるを得ないのが一般かと思います。

 そうしたときに、「仕事に出てこらないなら辞めてくれ」と無体なことを言う使用者は少ないだろうとは思いますが、小さい子を抱える共働き家庭の労働者に安心して休んでもらえるようにする助成金があります。厚生労働省の事業で、「新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援(新たな助成金制度)」(※)がそれですが、臨時休校(休園)に際して仕事を休まざるを得ない労働者に有給の特別休暇を付与する使用者にはその給与分100%を助成するというものです。こういう制度もありますので、使用者は簡単に辞めさせることを考えず、労働者は、あきらめて仕事を辞めてしまうことのないよう頑張っていただければと思います。

※厚労省のサイトをご参照

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html

 

2、「よくわからずにサインするのは『ちょっと待った~』」

 ――サインする前に相談を

 

●退職届を出させるケースが頻発

 

 次に、今の情勢下でなくても起きていることですが、解雇や雇止めをするときに、リップサービスで「状況がよくなったらまた雇うからね。」と言われることがあります。ニュースにもなった某タクシー会社もこのケースでした。この場合に、解雇や雇止めであれば、離職票では「事業主都合」での離職となり、失業給付は待期期間なしにもらえるようになるのですが、中には、リップサービスとともに、「退職届」や「退職合意書」を渡して、「これにサインして」と言うケースがあります。

 

●退職届を出してしまうと争うのは困難

 

 しかし、これ簡単に応じてしまうと後で大変なことになりかねません。

 というのも、解雇や雇止めであれば、後で冷静になって考えたときに、「やはり納得できない」と思えば、「解雇(あるいは雇止め)は無効だ!」と言って裁判で争うことはできますが、退職届や退職合意書を出してしまうと、「自分の意思で辞めたんでしょ。解雇じゃないから争えないよ。」とされてしまいます(厳密には、真意に基づくものではなかったと言って争う道もあるのですが、裁判所はその主張は簡単には採用しません。私も辞表を書かされた方の依頼で退職届の効力を争った裁判をやって煮え湯を飲まされたことがあります。)。

しかも「退職届」だと、自己都合退職扱いにされてしまいますから、失業給付をもらうのにも3か月の待期期間を設けられてしまいます。

 

●絶対にその場でサインはしない!

 

 ですから、「辞めてくれ」と言われたときには、たとえ「しょうがないかな。」と内心思ったとしても、その場でサインすることはせずに、サインしちゃっても大丈夫か相談してからにするようにしていただければと思います。まじめに提案をしている使用者であれば、持ち帰って検討したいと言うのを制してその場で書いてなどとは決して言わないはずです。何が何でもその場で書かせようとするのは何か後ろめたいことがあると思ったほうがよいでしょう。

 

3、「シフト削減は使用者の都合になります」

 ――休業手当は払い(もらい)ましょう

 

 よく飲食店勤務の方で、「シフトが減らされた」と言うのを聞きます。マクドナルドのようにデリバリーでやれるところはよいのですが、そうでないところは本当に来客が減ったため大変です。

 こうしたところでは、バイトやパートの方のシフトを減らすことが普通におこなわれていますが、中にはその削減したシフトの時間分給与をまるまる支払わないというところがあったりします。

 ですが、「休業手当」はきちんと払い(もらい)ましょう。

 

 たとえば、通常、週4日、6時間勤務でシフトに入っているところを、週2日にシフトが減らされた場合、その使用者の都合で減らしたシフト時間については、コロナウイルスの影響による顧客の減少が原因ですから、使用者に全責任があるわけではないとしても、休業手当の支払いを定めた労働基準法26条の言う「使用者の責に帰すべき事由」にあたります。このため、その減った時間分の休業手当は支払われなければなりません。(使用者は、売上が減ったために解雇や雇止めの代わりにシフトを減らしたのであれば、雇用調整助成金の申請をできるでしょう。)

 

 「バイトはシフトで決めた時間だけ働くのだから、シフトに入っていない時間については給料を払う必要はない」と考える使用者が少なからずおられますが、そうやって開き直って休業手当の支払いを拒むと労働基準法違反となります。働いている皆様のほうでは、「シフトに入ってないから給料はもらえない。」と誤解して給料をもらい損ねないようご注意を。

 

4、「店に出ていてコロナに感染したら労災になります」

 

 店舗勤務で不特定多数の人と接する機会の多い方は、特に医療や介護従事者の方は、「いつ誰から感染するかわからない」という恐怖とたたかいながら日々勤務されておられると想像します。もし感染してしまった場合、自身が入院や、そこまで至らずとも隔離されて治療を受けることになります。当然、出勤は停止となります。この場合、有給の病気休暇制度が用意されている職場であればともかく、そうでなければ欠勤扱いとなってしまい、治療費は自己負担で、給料もカットされてしまうのか?ということが心配になります。

 

 ですが、医療や介護従事者は業務外で感染したことが明らかでないかぎりは業務上感染したものと扱われ、労災となります。それ以外の労働者でも、勤務中に感染者と濃厚接触したことが判明した場合のほか、感染経路が不明でも不特定多数と接する職場においてコロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染者との濃厚接触があったことがなければ労災として認定を受けやすいでしょう(※)。今のところ、申請例は少ないようですが、申請があったものはすべて労災認定を受けているようです。

 ですので、コロナウイルスに感染してしまい、しばらく休業をせざるを得なくなった方は労災申請の相談をなさってみるとよいかと思います。

 

※厚労省のQ&Aご参照↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q5-3

 

☆ここにあげなかったものも含めて日本労働弁護団が想定される様々な疑問に答えるQ&Aを公表していますので、そちらもご参照ください。

http://roudou-bengodan.org/covid_19/

 

1、労働集団訴訟を全国7地裁に提訴

 

  弁護士の平井哲史です。久々の投稿となりました。

  2月14日(金)、郵便局で働く非正規労働者(「時給制契約社員」と言います。)57人が、東京地裁に正社員との待遇格差は違法として損害賠償請求訴訟を提起しました。

  すでに先行報道がされていたのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、同種訴訟を北から順に、北海道、東京、大阪、広島、高知、福岡、長崎の7地裁に提起しています。

 (関西テレビがいちはやく報じてくれました。↓)

https://www.fnn.jp/posts/2020021412114106KTV 

  原告は、北海道・岩手・千葉・埼玉・東京・神奈川・静岡・愛知・大阪・京都・兵庫・広島・岡山・高知・福岡・長崎と、全国から154人。弁護団は約50名。労働訴訟としては、これだけの規模のものは、(記憶の限りですが)国鉄の分割民営化の際に国鉄労働組合員らが受けたJRへの採用差別、社会保険庁の解体・民間委託の際に年金機構に採用されなかった方々の分限免職裁判に次いで3例目かと思われます。待遇格差の是正を求めるものとしては全国規模のものは初かと思います。この点、212年に労働契約法が改正され、不合理な待遇格差が禁じられるようになるという法改正が果たされたことが追い風になったと言えるでしょう。

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2、郵政職場における時給制契約社員と正社員との待遇格差

 

  郵政職場に働く時給制契約社員は、社員全体の約半数で、およそ19万人。集配業務においても局内での郵便物の仕分けをする内務の業務でも、正社員と同じくシフト勤務で、労働時間数も正社員同様にフルタイムの人も多く、業務内容も責任も正社員の管理者を除けばほぼ同じと言ってよいでしょう。実際、郵便局員の方にお会いしても、正社員なのか時給制契約社員なのか見分けはつきません。

  それにもかかわらず、待遇面では、月額基本給で差があるだけでなく(時給制契約社員の月額給与のうち基本給は地域最賃の数十円上で固定されています。)、次のような大きな格差があります。

  まず、住居手当扶養手当年末年始勤務手当、祝日に勤務した際の割増手当となる祝日給寒冷地手当など正社員には支給されている各手当がまったくありませんでした。

  また、正社員には整備されている最大で90日ある有給の病気休暇や夏冬各3日ある夏期冬期休暇もありませんでした。

  賞与は、多くの企業において、月額給与の何か月分かという形で計算・支給しているところが多いと思いますが、郵政職場の時給制契約社員は、月額基本給ですでに正社員と差がある上に、賞与計算において、一律に「0.3」という乗率をかけられており、金額で比較すると正社員と数倍から、多いと10倍以上の差が出ています。

  「こんな格差はないだろう」というのが原告らの訴えです。

 

3、待遇格差の是正を求める先行訴訟

 

  このような「待遇差別」と言えるほどの大きな格差をなんとかしようと、郵政産業労働者ユニオンが組合員の中から代表となって裁判をたたかう原告を担ぎ、2016年5月に先行訴訟を提起しました。この訴訟は東京と大阪の2か所でたたかわれ、現在最高裁にかかっています。それぞれの訴訟で判決が認めた不合理な格差は組合作成の下表のとおりです。

表

  この訴訟で、住居手当、扶養手当、年末年始勤務手当、夏期冬期休暇、病気休暇について不合理な格差だと一部勝訴の認定を受けて、組合は、原告および組合員だけでなく、すべての時給制契約社員について早期に待遇格差を改善するよう会社に求めました。

  しかし、会社は、裁判を継続している最中に、①地裁で敗訴していた住居手当について、正社員(新一般職)にも段階的に支給しないようにし、②年末手当を廃止して年始手当について時給制契約社員にも正社員の8割支給するようにする、③無給の病気休暇の日数を増やすなど、敗訴が確定しても「傷が浅くなる」ような労働条件の変更を最大労組と労働協約で定め、郵政産業労働者ユニオンなど最大労組に加入していない労働者にも就業規則を変更して適用するようにしました。

 

4、早期に法の趣旨にのっとった待遇改善を

 

  昨年、「働き方改革関連法」の一環で、正社員との不合理な待遇格差を禁じた労働契約法20条やパート労働法8条などがまとめられてパートタイム・有期雇用労働法」ができました。この8条において、パートや有期など雇用形態の違いにかかわらず、職務内容や配置変更の範囲などを考慮し、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に照らして、不合理な格差があってはならないとされました。

  そして、何をもって不合理な格差となるのかはケース・バイ・ケースの判断となりますが、厚生労働省が「同一労働同一賃金ガイドライン」というのを発表しています。そこにおいては、地域手当や通勤手当、業務の対価としての性質を持つ各種手当や、福利厚生としての転勤者用社宅の利用や病気休暇はじめ各種休暇が不合理な格差をつけてはならない例としてあげられるほか、賞与についても、企業の業績等への貢献に応じて支払われる場合には、労働者の貢献の違いに応じた支給をしなければならない、と書いています。ですので、ほぼ同様の仕事をしていながら、賞与について、個々人の貢献割合と関係なく、有期雇用というだけで一律に「0.3」という乗率をかけるような、被告会社における賞与計算の仕方は不合理な格差と認定されるべきでしょう。

  被告会社は、本訴訟で問題としてとりあげている寒冷地手当についても、この先、正社員について廃止することを考えていますが、こうした正社員の待遇を引き下げる形での「悪平等」は望ましい対応とは言えないと厚生労働省はしています。

  約19万人もの有期契約労働者を雇用する日本郵便が率先して、有期契約労働者の待遇を引き上げて格差の解消をはかることは、少なからず他の産業にも影響を与えるでしょうし、待遇が改善された労働者の定着率の向上につながるほか、当該労働者が居住する地域にも消費という形でお金が循環することになろうかと思います。

 裁判は、そろそろ先行訴訟の最高裁判決も出ることが予想されるため、速やかに決着をはかりたいと思いますが、大きな変更を迫ることになるものですから、簡単には進まないでしょう。会社が早期に法の趣旨にのっとって時給制契約社員の待遇を抜本的に改善する英断を下すことを望みます。

 組合としては、組合員を増やしながら、裁判を進めていこうとしていますが、郵便局員の方と話をする機会がありましたら、その方が原告かどうかはわかりませんが、「裁判頑張ってね」と声をかけていただければありがたいです。

  なお、当事務所からは、水口洋介弁護士、平井康太弁護士、そして私が東京訴訟弁護団に参加しております。

弁護士の平井哲史です。

12月6日(水)、参議院憲法審査会の傍聴に行ってみました。今泉義竜弁護士も傍聴しましたが、ちょうど入れ替わりでした。そのレポートと感想を書いてみます。

 

1、議場は閑散としてるかと思いきや、そこは良識の府を自負する参議院。数えたわけではありませんが委員は全員出席されてるようでした。傍聴席も埋まってました。

 

2、内容は各委員が問題意識を持ってることを5分程度で披露する発表会のような感じで、論点を設定して議論するという感じはありませんでした。

  前の国会では開かれず、今国会でも会期末に一回のみだと不満を述べる委員もいましたが、まぁ、そこは与党も含めて拙速はやめてじっくり腰を落ち着けて検討しようということであれば、議会の姿勢としては正しいと思いました。

  逆に、国民の声を代表する国会議員の中から様々提起される論点を整理し、議論するのが憲法審査会の役割だとすれば、論点や議論の順番も決めないうちから「憲法改正案が出ているんだから、それを議論しろ」というのは審査会の役割を無視した非民主的なやり方かと思います。

   憲法審査会がこういう状況ですから、9条だけ取り出してこれを変えようなどという安倍政権のやり方は、内容もさることながら、手続き的にも国会内部の審議ルールや審査会を無視したものとなるのではないかと思います。拙速はいけません。

 

3、たぶん一番多く出されていたのは、参議院選挙区の合区の問題でした。合区された県では自分たちの代表をちゃんと選べなくなるという問題があります。

  たとえば高知県と徳島県が合区とされましたが、高知出身の人は選出されませんでした。これにより「高知県民の声を国政に届ける人がいない」という状態になっています。過日、この合区がなされて実施された参議院の「1票の格差」訴訟で最高裁はこの選挙が憲法違反ではないとの判決を出ましたが、地方選出の委員からは強い批判的意見が出されていました。「それが憲法と何の関係があるの?」という感じではありますが、憲法92条の「地方自治の本旨」をおかすというのが論拠のようでした。

  委員の言いたいことはわかるのですが、でも、合区は別に地方の自主的な意思決定をおかすものではないんで、憲法を変えて都道府県単位で必ず一人選出されることを保障しようというのはなんだかこじつけのように見えます。もっとも、理屈は理屈。これも大事だから憲法審査会で議論してほしいというのであれば、結論がどうあれ、ひとまず議論のテーブルにのせればよいのではないかと思いました。

 
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4、次に関心の高かったのはやはり憲法9条でしたが、これについては、「そもそも日本国憲法はGHQに押し付けられたものだ」ということをいまだにおっしゃる方がおられたため、「制定経過にさかのぼって調査・検討をすべき」という意見が割と出ていました。それはそれで意味があるかな、と思いますが、そういう議論をするのであれば、なおさら拙速に9条だけ取り出して変えようというのは理がありません。

 

5、議論にはなってませんでしたが、民進党・緑風会の委員が次のような面白いつっこみを入れていました。いずれも、傍聴者としては、「そうだよな~」と思うものでした。

 ① 自民党はすでに改憲草案を出しているが、自民党の委員は誰もこれに触れない。また、石破氏は9条3項を加えるのではなく、2項を変えろと言ってる。

   自民党内では軍隊を保有することを明記すべきと公言している人たちがいる。党内で果たして意見が一致しているのか?

 ② 合区をうんぬんしているが、1票の格差が大きくならないようにするためというならいっそ定数を増やせばいい。それは検討したのか?

  (これは確かに、定数を減らすから人口集中部と過疎地域との格差が広がってるもとでは合区をしなきゃとなるわけで、定数を昔のように戻せば解決する話なのでしょう。)

 ③ 自衛隊の指揮権は内閣が持つのだろうが、その内閣の権限行使をどう国会が監視するのか、その中身がない。

 ④ 集団的自衛権を一部行使することを内容とする安全保障関連法が制定されたが、これが発動されれば間違いなく海外での戦闘行為で自衛隊員が死ぬ。この安全保障法制は内容も手続過程も違憲と考えるが、発動されてからでは遅いので、まずもってこの安全保障法制が合憲なのか、違憲なのかから議論すべきだ。

  

6、他方、自民党の山谷えり子委員が、36都府県で憲法改正を求める意見書が出ているということをおっしゃっていました。

  でも、これって本当? たいして報道もされていないように思いますが、いったいいつそんな意見書採択したの?と気になって少し調べてみました。でも、今年の東京都議会ではそれらしきものは何もなく、昨年の議会でもありませんでした。

  「もしかして嘘?」と思いさらに探したら、一昨年の6月議会で「国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書」というのがあがっていました。

  ですが、その内容は、「東京都議会は、国会及び政府に対し、国の責任において、日本国憲法について、活発かつ広範な議論を推進するとともに、広く国民的議論を喚起するよう強く要請する。」というものであって、憲法改正を求めるとはなっていません。むしろ、冒頭で、「日本国憲法は、昭和2253日の施行以来、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三原則の下、我が国の発展に重要な役割を果たしてきた。この三原則こそ、現憲法の根幹を成すものであり、今後も堅持されなければならない。」としています。

  これだと普通は、憲法の論議は深めよう、でも前文やその精神を具体化した憲法9条は変えちゃいけないよね、と確認しているように読むのではないでしょうか。

  山谷委員の発言は改憲を求めていない意見を改憲を求めるものだと言って紹介するもので、ミスリードだと思います。

 

7、なお気になったのが議事運営の仕方。
  議長が、ほかに意見のある方いませんか?と聞いて、社民党の福島みずほ議員が手をあげていたのですが、議長は、福島議員が自分の正面近くに座っていたにもかかわらず、これを無視して、ほかに意見がないものと認めますと言って議事を締め切ってしまいました。
  これは誰がどう見ても発言封じです。
  国会でこんなことが平然とおこなわれることはゆゆしき問題だろうと思います。福島議員含め議員全体が苦笑いしてました。もし故意ではなく、見えなかったとか言い訳するのであれば、それはそれで議長として不適格だろうと思います。次の憲法審査会までに議長は福島議員に陳謝等の対応をすべきではないかと思いました。

 

弁護士の平井哲史です。
10月25日に、東京都労働委員会が桐原書店に対して不当労働行為救済命令を発しました。
桐原書店(事業譲渡)事件命令書交付について(東京都労働委員会公式サイト)

1 事案の概要
 この事件は、2015年8月に会社が画策した事業譲渡に際して、これに異を唱えて組合が権利義務関係が移転することとなる著者に事情を訴え雇用確保への協力を求める手紙を送付したことに対し、会社がこれを「事業譲渡に対する妨害」とみて、組合の行動を非難する社内世論を醸成しようと、
①管理職から組合執行部を非難する声をあげるよう求めるメールを組合員である部門長らに送信し、
②社内ブログで組合を名指ししないものの組合のおこなった行為を「妨害」とし、事業譲渡が実現しないと退職金も払われなくなるなどと社員の不安をかき立て、組合を悪者にして事業譲渡への協力を求める文章を掲載し、
③さらに管理職が部下に対して組合からの脱退を求めるメールを送るなどしたことについて、
組合が救済命令を求めていたものです。


2 都労委命令
 会社側の行為がメールやブログといった機械的に証拠が残る形でやられていたことから、都労委は、割と簡単にいずれも「支配介入」にあたると認定し、ポストノーティスを命じました。

 

 会社側は、組合が著者に手紙を送付したことは正当な組合活動の範囲を逸脱するもので、会社側の行為は許されると反論していましたが、都労委は、

① 仮に正当な組合活動の範囲を超えていたからといって、支配介入が正当化せれるかは「大いに疑問」だし、

② 組合の行為は、会社が著者に十分な情報を提供しないもとで、雇用確保を目的として協力を訴えたもので、著者の個人情報も従前から組合が収集していたものを使用したものであるから正当な組合活動の範囲を逸脱したとまで断定できるものではない

としました。

3 本件の意義

 事業譲渡といった大がかりな組織変動がおこる場合には、社内だけでなく社外での組合活動がおこなわれることもしばしばで、取引先(本件では著者も取引先の一つ)に対する働きかけがおこなわれることもあります。本件で会社は、こうした働きかけが都合が悪いと考え、組合活動を抑制しようと各不当労働行為に出たわけですが、都労委が組合の活動について正当な範囲を逸脱していないと判断したことは、雇用が危ぶまれる事態に際しての組合の活動を萎縮させない効果があり、会社の行為を不当労働行為と認定した以上に意味のあるものだと思います。

 

 都労委の判断は至極正当なものだと思いますが、そもそもは会社が事業譲渡にあたり、情報を十分開示し、また雇用確保の努力を見える形で示しながら組合に協力をあおぐことをしていれば、組合が窮余の一策として著者に協力を訴えることもなかったろうと思われます。その点で、会社の経営陣には厳しく反省を迫るものとなろうと思います。
 以下に声明を貼り付けます。


20171026

 

桐原書店 事業譲渡事件(平成27年不第84号事件)

組合活動の正当性を認める画期的な東京都労働委員会救済命令に対する声明

 

桐原ユニオン

日本出版労働組合連合会

ピアソン桐原争議弁護団

 

1.桐原書店事業譲渡事件の概要

株式会社桐原書店は、高等学校向け英語・国語教科書、学習参考書・問題集を発行する出版社であり、本件に先行し、組合は桐原書店とピアソン・ジャパンを被申立人として不当労働行為救済申立てを行っていた(平成27年不第5号事件)。その事件の審査中の20158月、会社は事前協議もなくTAC株式会社への事業譲渡を強行し、全従業員の解雇を通知した。組合は雇用確保を求めるとともに、著者に対して組合への理解・協力を働きかけたところ、会社は組合に対してさまざまな支配介入を行った。これが不当労働行為として問われたのが本件である。

 

2.東京都労働委員会命令

東京都労働委員会は、平成27年不第84号事件の一部について1025日、組合の主張を概ね認め、「被申立人株式会社桐原書店は、自ら若しくはその管理職をして、申立人桐原ユニオンの活動を非難し、従業員間で同組合への批判的な意見の醸成を図ったり、同組合内部の意思形成に介入したり、同組合の組合員に対し、同組合からの脱退を勧奨するなどして、同組合の組織運営に支配介入してはならない。」とし、謝罪文については、掲示板への掲示および社内ブログへの掲載を命じた。

 

3.本命令の意義

今回の東京都労働委員会命令は、著者への働きかけなどの組合活動が、雇用を守るための正当な組合活動であることを認め、会社による管理職を使っての組合批判などが、支配介入の不当労働行為に当たるとして明確に判断したものである。そして、命令主文にあるように、将来にわたって予想され得る会社の支配介入行為を網羅的に示して、不作為命令を出した点でも高く評価できるものである。昨今、企業が行う事業譲渡などの企業組織再編について、それが労働者の雇用と権利を蔑ろにしているが、本命令は、辛酸をなめてきた労働者・労働組合を勇気付けるものでもある。

 

最後に、私たちは、会社に対して命令を速やかに履行し、労使関係の健全化のため争議の全面解決を強く求めるものである。

以上


 

 

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