東京法律事務所blog

カテゴリ: 江夏大樹


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(写真引用;http://www.tenshokudou.com/contents/radio_group/km)

KMグループは、タクシー業界・最大手の1つです。
先日、そのKMグループの会社の元運転手らが、残業代の支払いを求める裁判を起こしたことを理由に雇い止めを受けたとする事件の判決がありました(東京地裁民事19部 平成30年6月14日判決)。
(NHKのニュース https://www.nhk.or.jp/shutoken-news/20180614/0013111.html
(関連記事 https://www.bengo4.com/internet/n_8047/


会社に対して残業代請求したら、解雇されるって・・・(ブラックすぎる)

判決では、一部の元運転手らとの雇い止めを無効とするとともに、「労働組合」の団結権を侵害したとして、会社側に対しあわせておよそ4000万円の支払いを命じました。

本判決では「裁判を受ける権利」(憲法32条)と「団結権」(憲法28条)という2つの憲法上の権利に言及しており、画期的な判決です。

(裁判を受ける権利についての判決文)

訴訟の提起をしたことそのものを主要な動機としてされた被告会社による本件雇止め及びそれと相前後する一連の個人原告らに対する被告会社側からの働きかけは、国民の重要な基本的権利である裁判を受ける権利(憲法32条)に対する違法な侵害行為である


(団結権についての判決文)
本件雇止め及びそれと相前後する一連の組合員に対する被告会社側からの働きかけにより、原告組合から相当数の組合員の脱退を招いたものであるから、被告会社によるこれらの行為は、原告組合との関係では、団結権侵害の不法行為が成立する


ただし、一部満足いかない部分もあったことから、次は、東京高等裁判所で、第2ラウンドが始まる。

当日の記者会見の写真は良く撮れています。
江夏 菅 写真
(写真は弁護士ドットコムニュースより)

(弁護士 江夏大樹)


弁護士の江夏大樹です。
高校授業料の無償化の対象外とされた朝鮮学校の元生徒らが国に賠償を求めた裁判で、先日、東京地裁は、元生徒らの訴えを退ける判決を言い渡しました。


(判決日の東京地裁前の様子)
朝鮮学校無償化2

しかし私(あくまで個人的な見解)は、この東京判決はおかしな判決であり、無償化の対象外とすることは、許されない差別であると思います。
~東京判決のおかしなところ~
この事件では、2つの観点が大事です。1つは①教育の機会均等、もう1つは②就学支援金の適正利用という点です。

① 教育の機会均等の観点

高等教育の無償化の目的は、教育の機会均等に寄与することです。
したがって、建学の精神に基づいて特色ある教育をしている場合でもその自主性を尊重するために、公立のみならず、私立、そして民族学校(インターナショナルスクール、中華学園など)も無償化の対象となっています。

② 就学支援金の適正利用

他方で、無償化のために高校へと交付した就学支援金が、教育のために使われてないような場合には、就学支援金の支給をストップせざるを得ません。

ここで重要なのが、政治的外交的的理由により無償化の対象外とすることは許されない点です。
・拉致問題を解決することと朝鮮学校を対象外とすることは繋がりません。
・民族教育を理由に無償化の対象外とすることも許されません。日本国憲法は個人の自由を尊重しています(憲法13条)。
・もちろん、北朝鮮のミサイル問題も関係ありません。子どもたちへ責任追及することはお門違いです。

さて、①教育の機会均等②就学支援金の適正利用が重要な争点となった裁判で、東京地裁は以下のとおり判示しました。


おかしなポイントその1  広汎な裁量を認めた点

「外国人学校についても就学支援金の支給対象とし、もって教育の機会均等を図ることが望ましいと考えられる一方、各種学校には様々な学校が存在」「いかなる学校の生徒等に対して就学支援金を支給すべきかは、その性質上、教育行政に通暁した文部科学大臣の専門的、技術的な判断に委ねるほかない」(判決)
しかしながら、①教育の機会均等の要請に照らせば、大臣に広汎な裁量を認めることは許されません。
特に、民族学校を支給の対象とするか否かについては、民族差別は許されないとする平等権(憲法14Ⅰ)及び教育を受ける権利(憲法26Ⅰ)の観点から、裁量を広く認ならず、これを認めることは、少数者の教育を受ける権利は、多数者(国会・内閣)によって容易に奪うことが可能となってしまうことを意味します。


おかしなポイントその2  『疑い』のみで適法とした 
「朝鮮総連と朝鮮学校との関係については・・・資産や補助金が朝鮮総連の資金に流用されている疑いを指摘する報道等が繰り返しされていたことなどを勘案すると、学校運営が法令に従った適正なものであることについて、十分な確証を得ることができ」ないから、対象外として「文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとは認められない」(判決)
上記のとおり、判決では②適正な運用について、『疑い』『十分な確証を得ることができない』という理由で、対象外とする判断が適法とされています。
しかし、『疑い』だけで、朝鮮学校及びその生徒らを不利益に取り扱っていいのでしょうか??
憲法上の権利を単なる『疑い』で制約するこの判決はあまりにひどいと思います。
単なる疑いのみならず、むしろ②適正な運用を行わない十分な確証が認められた場合に限り、適法とすべきです。
なお、上記のように、判決において『疑い』のみで足りるとしたのは、大臣の裁量を広汎に認めたという出発点が間違っていることが原因です。


~差別は私たち皆の問題だ~
ナチスに抗した牧師の有名な一節があります。
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった

 私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった

 私は社会民主主義ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった

 私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき

 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
(マルチンニーメラ-牧師)

ある人が攻撃されている時、それを他人事として見て見ぬ振りでいいのでしょうか。
今回の判決を見て、僕は見て見ぬ振りができませんでした。
それは、大学時代や研修時代に出会った数多くの朝鮮学校出身者の素敵な友達を思い出したからです。

このポスターのように「違いを認め、互いの人権を尊重し合う社会」への進展とともに、このひどい判決が覆ることを強く願います。

ヘイトスピーチ







弁護士の江夏大樹です。(※以下は私の個人的感想です)
昨日(5月19日)に強行採決されたテロ等準備罪(以下、「共謀罪」といいます)ですが、
これに先立ち(5月16日)行われた法務委員会に参考人随行員として参加してきました。
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参考人として
木村圭二郎弁護士、椎橋隆幸教授、海渡雄一弁護士、加藤健次弁護士、指宿信教授がそれぞれ意見陳述を行いました。

(加藤健次参考人は、意気揚々と法務委員会に姿を現しました。)
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加藤健次参考人の意見は、今も行われている警察による市民監視の実態から、共謀罪法案の問題に切り込みました。
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(加藤)「まじめな警察官ほど、あるもの・道具を使って、全力で捜査する」
加藤健次参考人は、決して警察という組織自体を問題にしているわけではありません。
共謀罪法案という無制限の道具を警察に与えることによって生じる人権侵害に目を向けなければならないという加藤健次氏の言葉には、これまで堀越事件等数多くの無罪判決を勝ち取られ、警察の不当捜査の事実をその目で見てきたからこそ言える重みがありました。

他方で、木村参考人・椎橋参考人は、それぞれTOC条約の批准及びテロ対策等から国民の安全を守るために必要なものである旨の意見を陳述されました。
しかし、誠に残念ながら、その意見の中身は、抽象的に犯罪の抑止を訴えるにとどまり、「犯罪主体の定義が曖昧なこと」・「対象犯罪数があまりに多くテロ対策に直結しないこと」という大きな問題に答える内容とはなっていませんでした。
テロ対策に賛成するが、今回の法案には反対の人が多数います(僕もその一人です)。
木村参考人・椎橋参考人のご意見は、今回の法案に反対する人達の疑問に答える内容ではありませんでした。

次に、海渡雄一弁護士(右から2番目)の意見陳述です。
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「刑法は、犯罪の要件を定めているが、これは裏を返せば、人の行動の自由の範囲を定めている」との一言から始まりました。
共謀罪は、犯罪処罰の範囲を大きく変える制度改革ですが、
これは、裏を返せば、社会自由の基礎的制度のあり方を変える非常に重要な問題です。
海渡参考人が提起されたように、共謀罪創設は、極めて重要な問題です。
しかし、これを軽視し、強行採決を行うことなど言語道断のはずですが・・・。

維新の推薦参考人である指宿信教授の意見陳述は、捜査手法に関するもので、
最新の捜査手法を示す他に、
「共謀を認定するには、自白の獲得しかなくそれ自体問題である上に、取調の可視化すらされていない。」
旨の意見が述べられ、共謀罪法案の問題点を捜査手法の観点から浮き彫りにするものでした。
(共謀罪に反対する刑事法学者の意見書にも名を連ねています。)
昨日の強行採決を主導した維新さんは、自ら参考人として呼んだ指宿教授の意見に耳を傾けようとは思わなかったのだろうか。

かくして、法務委員会の参考人意見陳述では、共謀罪法案に問題があることが5人中3人の参考人から指摘される事態になりました。
しかしながら、昨日の強行採決・・・

(ぼやき)せめてさ、議論だけでも尽くそうよ。






1 スノーデンの暴露


弁護士の江夏大樹です。
インターネットは進化し、今や手紙・ハガキなどでメッセージを書く機会も減ったのではないでしょうか。(平成世代の私は、年賀状も全く出さず、ライン(携帯アプリ)で「あけおめ」と言うくらいです)

私たちの日々の生活において、インターネットの重要性が極めて高いことは言うまでもないですが、そんな状況下、(2013年)当時若干29歳の元CIA職員エドワード・スノーデンは、衝撃的な暴露をし、映画(「スノーデン」オリバーストーン監督)にもなりました。


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その暴露内容は、電話・メール・ライン・Facebookその他インターネットを通じた情報のやり取りはすべて、アメリカ国家安全局(NSA)に監視され、パソコン・携帯付属のカメラを秘密裏に起動させ、その映像を映し出すことなど朝飯前のようです。映画でもその様子が、克明に描かれています。

2 情報収集の目的はテロ防止目的ではない


この凄まじい情報収集は、2001年同時多発テロ事件以降、テロの未然防止という目的のもと開始されたものです。

しかしながら、集められた情報の使用は、テロ防止のみならず、アメリカの覇権を維持するために、濫用されていたのでした。もちろん、監視されていることすら知らされない世界中の人たちは、情報が濫用的に使用されているなんて知る由もありません。

 

3 共謀罪と監視はセット


さて、今国会、安倍政権は、共謀罪の成立を目指しています。

しかしながら、犯罪結果が発生しておらず、共謀した段階(計画段階)で、どのように捜査機関は、その共謀を覚知するのでしょうか?

警察が犯罪計画を把握するには、市民を日常的に監視する他ないと思います。

「処罰の前倒しは、捜査の前倒しを招く」と言われますが、今回でいうと、「共謀罪の導入は、監視を招く」と言ってもよいと思います。


4 スノーデンが教えてくれたこと


スノーデンは、監視システムがテロ防止と無関係な目的に使われ、濫用されることを暴くとともに、「監視は、時の政権が邪魔者を排除するために用いてきた」ことを私たちに伝えてくれました。

そうすると、日本においても、共謀罪処罰のために集まられた情報について、時の政権に邪魔な個人・グループを排除するために、その情報が濫用されることも自明の理です。


私は、共謀罪が創設さるようとしている中、スノーデンの暴露から、監視の実態を学ぶとともにその是非を議論し、監視社会を招く共謀罪に反対します。

江夏









 

私(江夏大樹)は、本日、最高裁判所第三小法廷で行われたKMタクシー(国際自動車)残業代裁判の弁論に行って参りました。
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★この事件で問われていること!
労働時間は原則1日8時間、週40時間。
それを超えた時間外労働については、割増賃金(=残業代)を払わなければいけないというルールが、労働基準法37条です。
本件では「時間外労働をしたタクシー労働者に、割増賃金(=残業代)を支払わない仕組みの可否」が問われました。

★残業代を払わない仕組みとは、このような仕組みです!
タクシー乗務員が残業をすれば、
 ①基本給+②歩合給+③残業代 =給料 
※歩合給とは、タクシーで言えば、その日の売上に比例するものです。
 (例)売上×0.6=②歩合給
しかし、KMタクシーでは、②歩合給の計算が以下のようになっていました。

【KMの賃金の仕組み】
①基本給+②歩合給=歩合部分-③残業代③残業代
つまり、③残業代を形式的に支払っていますが、②歩合給の計算{}において、③残業代分を控除(マイナス)している
↓↓
労働者の手元に残業代がない!!という結果に。
脱法行為とは、「一定の行為が法律上禁止されている場合に、形式上別の行為によって同一目的を達成しようとすること」(コンメンタール)ですが、これまさに見事な脱法行為!!

★会社の言い分
さて、この問題について、
会社主張の一つに以下のものがあります(AさんとBさんの比較)
~AさんとBさんを比較してみよう~
【Aさん 残業せずに3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}
【Bさん 残業して、3万円売り上げた場合】
 給料=①基本給+②歩合給{3万円×0.6}+③残業代

おいおい、これだと、時間内に3万円稼いだ優秀なAさんよりも、
残業したBさんの方が③残業代の分多く給料もらうなんておかしいだろ!?
だから、残業代は控除しよう!⇒この賃金の仕組みはOKだ!

★裁判所においても結論が分かれている
なお、東京地方裁判所(労働部)でも結論が分かれました!!
地裁民事11部・高裁23部(残業代支払え)
     vs
地裁民事19部(この賃金の仕組みはOK)

★労働基準法37条の趣旨目的に反しています
しかし、会社の上記主張は、労働基準法37条の制度趣旨・目的に沿わない、おかしなものです!!

そもそも、労働基準法37条の制度趣旨・目的は、下記の2つです。
1.使用者(社長や上司)に対して、残業代支払を義務づけることで、労働時間抑制を図った
2.残業代をもらう労働者も、過重労働の疲れを癒やす

この目的と上記賃金の仕組み(歩合給の計算)を見ると、
1.使用者は、残業代支払義務を負わない(だって、歩合給から引かれる)から、労働時間抑制に取り組まない
2.残業代をもらえない労働者は、くたびれるばかり
と言う風に、法の趣旨・目的に真っ向から反しています。

実際にも、この賃金の仕組みが利用され、会社は乗務員にたくさん残業させて、タクシー労働者の売上を会社の売上として確保しているという実態もあります。

さらに・・・と
他にも書きたいことは山ほどあるのですが、とりあえず問題の所在を示すのみで、終わります。

★この問題はタクシー乗務員だけの問題ではありません。
問題となっているのは、
「残業代を、その他の給与から控除する仕組みの可否」

であり、タクシー乗務員に限られない問題です。

上記問題の最高裁の判決は、今年の2月28日に出ます。
追って、結果を報告します。

※高裁で労働者が勝った判決について、最高裁で弁論が開かれています。
 したがって、最高裁で結論がひっくり返ることになるのですが、
 労働者全部敗訴(賃金の仕組みOK)
        or
 一部認容(賃金の仕組みダメ。但し、再計算。※私の予想はこっち)
のどちらになるのかが、その結論が注目される事案です。

 文責 弁護士 江夏大樹
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/enatsu_t.html

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