マタハラってご存知ですか?
マタハラ(マタニティハラスメント) とは会社が働く女性の妊娠や出産を理由に解雇等の不利益な措置をおこなったり、上司が精神的・肉体的なハラスメントをすることです。
労働事件の相談を多数受けているとマタハラの事例に度々遭遇します。
今回は典型的なマタハラ事件について紹介し、どのように解決していったのかと現場の悩みをお伝えします。
- 妊娠を理由に退職勧奨
赤木さんは株式会社湘北(創立70年の老舗企業・企業名は仮名にしています)に勤務していたので、上司の部長(社長の息子)である堀田部長に伝えました。
すると堀田部長は「育休は会社の就業規則にないから与えられない。新設する予定もない。その為、産休のみとなる。産休後の会社復帰は難しいと思う。妊婦がコロナに感染したら大変だ。退職してほしい」と言いました。
赤木さんは諦めず、育休を取得したいと再度伝えると、堀田部長は「育休は無理だ!」と断言した上で復帰後は「茨城県の工場に勤務することになる」と言いました。
なお、この堀田部長は翌週に茨城県の工場にて、従業員らにハラスメント講習の講師を行っています。一体、堀田部長は講習で何を語ったのでしょうか。
- 会社は、赤木さんの能力不足が解雇理由と主張
しかしながら、解雇理由は以下のとおり、能力不足等を理由とするものでした(従業員名と会社名以外はそのままの実物です)。解雇理由をびっしりと主張してきたわけです。


このように実際の解雇理由(妊娠)とは全く無関係の解雇理由を羅列することは、悪質な会社の常套手段です。
本件では幸い、面談時の録音を従業員が録っていましたが、もし録音がなかったら。。。
- 和解をする意向があるも、口外禁止を執拗に求める会社
すると会社代理人は解雇が違法であることを前提として解決したいと提案してきました。
私たちは、①謝罪条項を入れること、②和解内容については秘密にせず、口外禁止としないことの2点を伝えました。
しかし会社は激しく抵抗し、赤木さんの要求する金額を満額払うため、①謝罪条項を削除し、②口外禁止(労働者が他人に合意内容を言ってはいけない旨の約束)をしてほしいと言いました。
- 赤木さんの決意と結果的に締結した合意書
結局、②口外禁止については企業名を伏せる形で和解することになりました。赤木さん自身も出産を間近に控えていることから、私たち代理人が公開するという形での妥結となりました。
このように会社が口外禁止を求めることは多く、易々としたがってしまうと、同じような被害者が出てきてしまいます。
苦渋の決断でしたが、以下のとおり、合意書を締結することになりました。
1項が謝罪条項、8項が口外禁止条項です。
※ 解決金は218万円となっていますが、この他にすでに相当額の解決金が支払われています。


- 事件は闇に葬りさられるのか
口外禁止の弊害は、違法行為が隠蔽される結果、他の労働者の被害は救済されず、会社は社会的な非難も免れるという点です。
なぜ、口外禁止条項がここまで蔓延したのか、その一つの理由として、中川拓弁護士は「労働者側弁護士が使用者側弁護士の要求に安易に応じてきたことにも原因があるかもしれない」と指摘しています(労働法律旬報2002号「労働事件における口外禁止条項の問題点と対応策」)。
この指摘にはチクリとする想いです。
今回も口外禁止条項が入ってしまったものの、謝罪と再発防止を約束しています。
会社が今後マタハラのような違法行為を繰り返さないことを願うとともに、日本社会からマタハラがなくなり、産休・育休が歓迎される世の中になることを願います







