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カテゴリ: 公務員

弁護士の中川勝之です。

 3月28日付けで、社保庁不当解雇撤回裁判について、最高裁判所第一小法廷は、上告棄却と上告不受理の両決定をしました。
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 最高裁判所第一小法廷の裁判官は次のとおりです。

 

 

氏名

前職(最高裁判所ホームページの略歴に基づく)

裁判長裁判官

池上政幸

平成26年大阪高検検事長

   裁判官

小池 裕

平成26年東京高裁長官

   裁判官

木澤克之

平成25年学校法人加計学園監事

   裁判官

山口 厚

平成28年弁護士名簿登録(第一東京弁護士会)

   裁判官

深山卓也

平成29年東京高裁長官

 

 

 国公労連は、最高裁決定に対して、司法の役割を投げ捨て、「政治のパワハラ」を黙認したとして抗議するとともに、分限免職処分の取消を求めるたたかいはこれで終わらず、愛媛事案及び秋田事案の裁判闘争とともに、裁判闘争と平行して2008年に閣議決定した「日本年金機構の当面の基本計画」を取り消し、年金業務に就くことを希望している元社保庁職員を年金職場に戻すたたかいもすすめる等と表明する談話を発表しています(末尾掲載)。全厚生緊急声明を発表しています。

 

 2月22日付けで、弁護団は「本件の審理に関する意見書」を提出し、最高裁による慎重かつ公正な判断を求めていましたが、約1か月で片付けられてしまいました。ここでは意見書の内容を掲載し、最高裁が無視した原判決(東京高裁判決)の問題点等を指摘します。

 国公労連も表明していますが、分限免職処分の取消を求めるたたかいは最高裁の不当決定によっても終わりません。引き続きご支援、ご協力、宜しくお願い申し上げます。

 

1 先行事案と異なる本件の経緯及び認定

 年金機構法に基づく2009(平成21)年末における社会保険庁の廃止に伴い、社会保険庁職員525名が、官制の改廃による廃職(国公法78条4号)にあたるとして分限免職された。本件は、そのうち、社会保険業務センターおよび東京の社会保険事務所に勤務していた申立人らが、分限免職処分の取消しを求めて争ってきたものである。

 こうした大規模な事件であるため、社会保険庁分限免職に関しては、全国各地で同種訴訟が提起され、京都事案、広島事案、愛知事案など、すでに上告棄却決定により確定した事案もある。しかし、本件は過去に例のない、国策による大量の国公法78条4号による分限免職であり、公務員の身分保障、分限免職回避努力義務の主体、分限免職回避努力義務の判断基準、定員枠と分限免職回避努力義務の関係、政治権力の行政への介入など、最高裁が新たな判断を示すべき、憲法・法令解釈上の重要で過去判断されたことのない事項が数多く含まれている。

 したがって、すでに同種訴訟に対して棄却決定がなされたのは、最高裁の判断の誤りであって不当であるが、本件東京事案は、後述するとおり、他の事案と異なる経緯があり、異なる認定がなされているので、その点に留意されたい。

 

2 本件は原判決が最高裁に判断を求めている

 もっとも、同種訴訟で結論が出されていても、原判決の憲法・法令解釈の誤りを上告理由・上告受理申し立て理由とする上告審の場合、訴訟ごとに「原判決」がそれぞれ異なる以上、別々に判断しなければならないことは言うまでもない。

 それのみならず、本件は、他の同種訴訟にはない特徴がある。

(1)原判決は、内閣(国)の分限免職回避努力義務の有無について、最高裁昭和50年2月25日判決を引用し、国家公務員と国の間の勤務関係を認めて国が信義則上の分限免職回避努力義務を負うとしつつも、それは抽象的ものであるとし、それでも国家公務員の身分保障原則を損なわないとした(37、38頁)。

(2)原判決は、公務員の分限免職回避努力義務の履行の程度について判示した最高裁昭和48年9月14日判決を引用して、内閣の分限免職処分回避努力が間接的配慮にすぎないと解しても、「社保庁長官等及び厚労大臣の取った取組が分限免職処分回避努力義務の履行として不十分であると認められれば、本件各処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法であるとされるのだから、48年判決に違反することにもならない。」と判示した(39頁)。

(3)前述のとおり、本件は、国公法78条4号に基づく分限免職回避努力義務の効力が裁判所で争われた初めての事案である。したがって、その判決は、国公法78条4号の解釈適用の先例となるべき内容を持ったものでなければならないことは当然である。原判決が最高裁判例を引いて論旨を展開しているのは、この点を意識してのことと考えられる。つまり、原判決は、結論はともかく、法令解釈に関する重要な事項を含む問題があることを前提に争点の設定と判断を行っているものといえる。

そうである以上、これらの点について、上告審として、原判決から判断を求められている問題として受け止めて、判断を示すことが最高裁の最低限の責任なのである。

 

3 本件で検討されるべき事項

 上記に述べたほかにも、本件には他の同種事案にない訴訟の経緯や独自の判示があり、法令解釈に関する重要な事項を有している。

(1)本件は、同種訴訟の中でも唯一、一審で、年金機構採用を希望していた申立人の一人が分限免職取消認容の判決を得た。ところが、控訴審の原判決で、「機構の正規職員として採用されるための努力を最大限尽くしたものでなければ足りないとまでいう法的根拠はない」として、その判断は覆された。しかし、年金機構は、国とは別の法人格を持つとはいえ、厚生労働大臣の直接の監督下にある。国および厚労大臣は、年金機構の採用基準についても直接監督することができる。そのもとで、年金業務を担う一方、大量の欠員のある年金機構に対して、国及び厚労大臣はどの程度の分限免職回避努力義務を負うかは、公務員の身分保障原則ともかかわって、法令解釈上重要である。

(2)原判決は、内閣法制局への説明資料にも、行革推進法に基づく雇用調整本部を活用すれば分限免職回避努力義務違反にならないと記載されていたことについて、作成者の思い込みであるとして、雇用調整本部を使って省庁間配転を行った農林統計、食糧管理、北海道開発と異なっても公正原則、平等取扱原則に反しないとした点も、法令解釈上重要である。

(3)原判決は、懲戒処分歴のある社保庁職員を一律年金機構に採用させないとした「基本計画」の閣議決定が、政権与党の政治的圧力により再生会議の「最終整理」を捻じ曲げたものであることを実質的に認定しつつ、議院内閣制の下では与党の関与も当然であるとした(58頁)。これは、行政は政治権力ではなく法律に基づいてなされるとの行政の中立性、公務員の全体の奉仕者性と身分保障原則に照らして、法令解釈上重要である。

(4)原判決は、「社保庁や公的年金制度に対する国民の信頼の失墜は(中略)個々の社保庁職員にその責任を帰することができない」としつつ(62頁)、懲戒処分歴のある社保庁職員を一律年金機構に採用させないとした「基本計画」の閣議決定を政策的判断として容認した(53頁)。これは目的と手段との合理的関連性を欠いており、やはり平等取扱原則や身分保障原則にかかわって法令解釈上重要である。

(5)原判決は、2010(平成22)年3月末時点での厚労省の欠員と年金機構への出向による人員不足の存在を認めながら、その穴を埋めなくても分限免職回避努力義務違反とは言えないとしており、分限免職回避努力義務の程度にかかわって法令解釈上重要である。

以上にかんがみ、貴裁判所におかれては、本件上告受理申立理由を受理する慎重かつ公正な判断をなされたい。

 

司法の役割を投げ捨て、「政治のパワハラ」を黙認した上告棄却に抗議する
――社保庁不当解雇撤回裁判・東京事案の上告棄却にあたって(談話)

 2019年3月29日

                      日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)

                               書記長  九後 健治

 

1、最高裁判所第一小法廷(裁判長:池上政幸、裁判官:小池裕、木澤克之、山口厚、深山卓也)は3月28日、「分限免職取消等請求事件」(東京事案)について、裁判官全員一致の意見として、①本件上告を棄却する。②本件を上告審として受理しない。③上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。との決定を行った。

最高裁判所は、不当な東京高裁判決を審理を開かずに容認し、不当解雇を不問にするもので、極めて遺憾である。加えて、最高裁判所は決定理由として、①上告については民事訴訟法312条1項又は2項に該当しない(※1参照)、②上告受理申立てについては同318条1項により受理すべきものとは認められない(※2参照)とした。これは、先に上告棄却された京都、広島、愛知と同じ理由であり、社会保険庁職員に対する分限免職の問題点を正面から受け止めず、上告を門前払いとした最高裁判所に厳重に抗議するものである。

 

2、この事件は、2004年に発覚した国会議員の年金未納問題を末端の社会保険庁職員の責任にすり替えたうえ、2008年には自民党の求めに応じて懲戒処分歴のある職員を日本年金機構に採用しないという基本計画を閣議決定し、2009年12月31日付けで525人の分限免職処分を強行した「政治のパワハラ」そのものである。分限免職の非合理制は、25人の分限免職を取り消した人事院判定からも明らかであるとともに、本事件の第一審で、原告のうち1人について分限免職回避努力が不十分だったとする判断が行われた(後に高裁において一審判決は取り消された)ことを鑑みれば、まともな審理も行わず門前払いとしたことは、政府の主張を鵜呑みにし「政治のパワハラ」を黙認したことに他ならず、司法の役割を投げ捨てたものと言わざるを得ない。

 

3、東京事案は、全国7つの事案のうち、唯一地裁段階で一人とはいえ分限免職処分の取り消しを勝ちとったたたかいであった。そのことは全国の仲間を励まし、全国のたたかいを牽引するとともに共闘を広げるなど大きな役割を果たしてきた。これまで、裁判闘争で奮闘されてきた原告と東京事案のたたかいを支えてきていただいた全国の仲間にあらためて敬意を表し感謝を申し上げる。

しかし、分限免職処分の取消を求めるたたかいはこれで終わらない。愛媛事案は昨年12月に高松高裁での不当判決を受けて最高裁に上告しており、秋田事案は仙台高裁で5月17日に判決が出される。引き続き、政府や内閣に屈することなく、公平・公正な裁判所としての役割を果たすようたたかいをすすめる必要がある。また、裁判闘争と平行して2008年に閣議決定した「日本年金機構の当面の基本計画」を取り消し、年金業務に就くことを希望している元社保庁職員を年金職場に戻すたたかいもすすめなければならない。

加えて、すべての公務員が時の政権に忖度することや不当な圧力に屈することなく、憲法に規定された「全体の奉仕者」として働くことのできる民主的公務員制度の確立も求められている。国公労連は全厚生の社保庁不当解雇撤回闘争を全面的に支援するとともに、すべての公務員が国民のための公平・公正な行政・司法が行われるよう奮闘するものである。

以上

【※1・上告】

第312条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。

2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第4号に掲げる事由については、第34条第2項(第59条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。

一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。

二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。

二の二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。

三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第6条第1項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。

四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。

六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。

 

【※2・上告受理の申立て】

第318条 上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。

 

 弁護士の笹山尚人です。


 今回は、今国会に提出されている法案について、考えるところを紹介します。


 総務省所管ということで、政府は、現在開催されている第193回国会に、地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案(3月7日)、地方自治法等の一部を改正する法律案(3月10日)を提出しました。
 地方自治体の仕事のあり方、および地方公務員の労働条件についてがテーマです。地味かもしれませんが、結構大事な問題ではないかと考えています。


1 提出法案
(1)3月7日提出法案は、総務省の研究会報告に基づくが、逸脱した部分も
 2016年12月27日、総務省は、「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」(以下、「研究会報告書」といいます。)を発表しました。3月7日提出法案は、基本的には、この研究会報告書に基づいています。

 研究会報告は、自治体の非常勤職員のうち、「特別職非常勤」を専門的な場合に限定し、「会計年度任用職
員」という一般職非常勤職員制度を設ける、などの内容です。

 これは、地方の厳しい財政状況が続く中、多様化する行政需要に対応するために臨時・非常勤職員が増加しているが、適正な任用ができていないから行う、というのが理由とされています。

 しかし、研究会報告と全く同じかというとそうでもありません。ここでは、会計年度任用職員に、パートとフルの区別が設けられています。
「1週間あたりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの」=パートタイム会計年度任用職員には、生活保障的な要素を含まない報酬と費用弁償に加えて期末手当を支払うとしています。一方、「一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの」=フルタイム会計年度任用職員には、勤務に対する反対給付で生活給としての給料、手当(扶養手当、退職手当等)を支払う、としています。

(2)3月10日提出法案は、窓口業務の委託が問題
 3月10日提出法案は、様々な内容が含まれますが、私が問題意識を持っているのは、戸籍謄本等の発行等についての自治体の窓口業務を地方独立行政法人へ委託できるという内容にする、という部分です。
 この委託は、「地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため」「地方独立行政法人について、その業務への設立団体である市町村等の申請等関係事務の処理業務の追加及び適正な業務を確保するための規定の整備を行う等の措置を講ずる。」というのが理由です。


2 私の問題意識
 私は、この2つの法案を併せ考えると、これは、地方公務員のあり方を根本的に変更し、民営化自治体リストラが進むのではないかと危惧しています。そうなると公務労働者の職場が奪われるとともに、利益度外視で行われるべき福祉等の公共サービスが利益事業となって国民の社会権が脅かされる結果になるのではないか、という問題意識を持っています。
 また、パートとフルをわけるという法案段階で設けられた区別は、パート職員の労働条件を期末手当のみに限定してその他の手当の支給やそのための処遇改善を阻むものになっていると思われ、この点にも問題意識を持ちます。


 以下で、その内容を具体的に説明します。


3 研究会報告書の言う「本格的業務」「常勤職員が行うべき本格的業務」?
 いまや、自治体には多くの非常勤労働者が就労しています。自治体によっては5割近い非常勤職員がいるところもあるようです。いまや非常勤抜きには自治体の業務はまわらないわけです。

 研究会報告書では、臨時、非常勤職員の業務の中には、「常勤職員と同様の本格的な業務を行う職が存在する」とし、その上で、「本格的業務に従事することが可能である任期付職員制度の活用について検討する事が必要である」として、「会計年度任用職員」制度の創設が提案されています。

 研究会報告書は、「常勤職員が行うべき業務である本格的業務」として、「組織の管理・運営自体に関する業務や、財産の差押え、許認可といった権力的業務」を例としてあげています。

 しかし、「本格的業務」と言うなら、それは常勤職員をもって対応するのが地方公務員法の本来の在り方のはずです。2010年11月11日、第176国会の参議院総務委員会で、山下芳樹議員の「公務の継続性、安定性、公平性ということからいっても、本来、公務というのは任期のない常勤職員で運営するというのが基本であるべきだと考えますが、いかがでしょうか。」という質問に対し、片山総務大臣は、「基本的認識は今、山下議員がおっしゃったことと私は全く同じであります。」と答弁しました。

 自治体業務のうちの「本格的業務」というのを、なにをもって「本格的業務」というのか定かではありませんが、本格的業務というのなら、今の地方公務員法の考え方からすれば、それは常勤職員が担当することにしかならないのではないか。それが常勤でなくてもできるというのは、地方公務員法の考え方の根本的変更ではないでしょうか。


 実際に多くの非常勤職員が自治体の本格的業務を担っている実態があるのだから、これをきちんと法制化しようというのであれば、それはなんだか憲法9条に違反する自衛隊が現実に存在して活動している実態があるのだから、憲法9条を変えて自衛隊を認める規定を設けようという意見と同じではないかと思えます。


 別の例で言うと、派遣労働者がいっぱいいるから労働者派遣法を変えようということで、労働者派遣法の「臨時での活用」との本来の基本理念を結局放棄していったたのと、同じ現象ではないでしょうか。


4 「常勤職員が行う本格的業務」は狭い
 また、「常勤職員が行うべき本格的業務」なる区分けは、常勤職員の担当業務を著しく狭く捉える発想に基づくものです。
 これは、福祉に関わる職場の業務などについては、本格的業務であっても常勤職員が行うべき業務ではないとし、こうした業務を非常勤職員や、民営化して民間にゆだねていくことを推進していく発想と考えられます。


5 本来、自治体業務を「本格的業務」とそうでない業務とに分けるべきなのか
 しかし、自治体業務のうち、「本格的業務」とそうでない業務、そして「本格的業務」のうち「常勤職員が行うべき業務」とそうでない業務を区分けする考え方自体、なんの根拠もありません。かえって福祉の業務を自治体の常勤職員が行う業務ではないとするのであれば、それは社会権を定め国と自治体に福祉事業を行うことを求める憲法からして許されない発想ではないかと考えます。
 つまりこの考え方は、結局自治体職員が担う自治体業務を中枢機能にまで限定して、自体業務の多くを民営化したり、解雇しやすい非常勤職員にゆだねる「自治体リストラ」の手法そのものだと私には思えます。


6 軌を一にする地方独立行政法人への判断権移譲を伴う民営化
 3月10日提出法案は、自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託する内容が含まれています。


 この点、東京都足立区では、戸籍課の窓口業務の民営化が行われたことがありました。その際、民営化受託会社が自治体が行うべき判断業務を行和ざるを得ない実態にあることが問題になりました。
 戸籍や住民票には、プライバシー情報が多数含まれます。交付請求に対して、応じてよいのか、判断を求められる場面があります。この自治体としての判断業務が、受託者にゆだねられるのは、それ自体大きな問題です。地方公務員が法律上の守秘義務を負って責任もって管理することが求められる情報が、ダダ漏れすることになりかねません。
 足立区当局がぶつかったこの問題を解決するために、地方独立行政法人への判断権を伴う事業処理を行える改正をするのではないか。この懸念どおりなら、自治体事業の委託化、ひいては民営化への道筋が、大きく推進されることになるわけです。
 この法案の改正案と軌を一にするように、地方公務員法・地方自治体法の改正案が提出されているのは、自治体の常勤職員の行う業務を狭め、自治体業務を非常勤や民営化にゆだねていくやり方を進めるものではないでしょうか。


7 パートとフルの処遇を異なるものにしてこれまで勝ち取られてきた権利を奪うもの
 また、3月7日に閣議決定された法案では、フルには給料と手当、パートには報酬・費用弁償と期末手当を支払えるとしたのですが、これはこれまでの裁判例の流れに反するものといえます。

 枚方市非常勤職員一時金等支給事件(大阪高判平22・9・17)では、「常勤職員の週勤務時間(38時間45分)の4分の3に相当する時間以上」勤務している非常勤職員について「常勤の職員」と判定し、給料・手当が支給される対象としました。東村山市事件(東京高判平20・7・30)では、「嘱託職員は勤務時間のみならずその職務内容も常勤職員と同様であり、勤務実態からみて常勤職員に該当する」とし、常勤職員と同じ仕事をしていれば「常勤の職員」と判定しています。
 成案では、判例上「常勤の職員」と認められてきたパートの非正規公務員から、将来に渡って退職手当をはじめとする様々な手当受給の権利を奪ったことになると考えられます。


8 法案実現の結果
 もし法案が成立すると、次の現象が起こるのではないかと考えています。

(1)本来利益ベースで検討してはならないナショナルミニマムを図るべき部分の業務を利益を追い求める事業体の競争の渦中におく道を開き、公共サービスとしての質的劣化を招く。

(2)公務員の働く職場を奪うことにもなり、公務員労働組合の組織そのものに対する攻撃となる。

(3)非常勤の労働者にとっては、大きな問題として、雇用の保障がなされない、という問題がある。さらにこれまで裁判例で勝ち取られてきた手当を受けられる権利が狭められることになる。

(4)労働組合法の適用が認められている特別職非常勤が限定されることにより、公務員から労働基本権がはく奪される動きがますます進む。


9 自治体労働者を中心に、大きな議論を
 というわけで、これは、今国会に提出されている法案の話なので、関係各所で、とくに自治体の労働者、労働組合を中心に議論を早急に進め、検討すべき課題ではないかと考えます。少なくとも、国民的議論のないまま、進めて良い話ではないと考えます。
 
 私は、今回のような改正案ではなく、現状の臨時・非常勤問題の抜本的改善、具体的には正規職員化と、任期の定めのない均等待遇に基づく一般職短時間公務員制度の確立、が必要ではないかと考えています。


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