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司法書士の半田久之です。

 

先般、法制審議会は、相続登記の義務化や相続した土地を国所有とする制度の創設などを含む、民法や不動産登記法の改正を答申しました。

001340751.pdf (moj.go.jp)


この答申をもとにして、今行われている通常国会に法案が提出される予定となっており、報道等によれば2年後の施行を目指しているようです。

まだ法案も提出されていませんし、国会での議論や修正により法案がそのまま成立するかどうかはわかりませんが、多くの方に大きな影響がある改正となることは間違いないと思います。

そこで、まずは、答申における相続登記の義務化についてご紹介したいと思います。

 

目次

1 相続登記とは?

2 どのように義務化されるのか?

3 義務に違反した場合は?

4 法律が施行されたときにすでに相続が開始している不動産は?

5 義務化するなら登録免許税を非課税にしては?

6 過料制裁運用の明確化が必要

 

1 相続登記とは?

不動産を所有している方が亡くなると、その名義を相続人に変える相続登記を行います。

現在は、相続はもちろん、売買や贈与で所有者が変わった場合でも所有者名義を変える登記は義務とはされていません。

しかし、所有者が亡くなっても名義を変えておらず、直ちに所有者がわからない不動産が、九州全部の面積よりも多くあるとされ(「所有者不明土地問題」)、東日本大震災の復興事業などでも現在の所有者を探すことが困難な事例がでるなど大きな問題となってきました。

そこで、所有者が亡くなった場合には、相続人に登記名義を変えることを義務化しようとの議論がされてきたのです。

 

2 どのように義務化されるのか?

答申では、不動産の所有者が亡くなったとき、この「相続により当該不動産の所有権を取得した者」は、「自己のために相続があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」(答申16頁)に相続登記を申請しなければならないとされています。


ここでいう「相続により当該不動産の所有権を取得」とは、相続人全員が法定相続分割合で取得した場合のみならず、遺言や遺産分割によって特定の相続人が不動産全部を取得した場合も含みます。


また、法定相続分割合で相続人全員名義とする相続登記がされた場合や、後述する相続人申告登記がなされた場合であっても、その後に遺産分割が成立し、特定の相続人がその不動産全部を取得することとなった場合も、遺産分割成立の日から3年以内に登記申請をしなければならないとされています。


さらに、新たに「相続人申告登記(仮称)」が設けられ、これを行うことでも義務を果たしたとみなされるとされています(答申17頁)。この制度は、相続登記そのものではありませんが、相続人の一人から法務局に対し、不動産所有者が死亡したこと、自らが相続人であることを申し出るというものです。申し出を受けた法務局は、職権で登記簿に所有者が死亡した旨などを付記するとされています。相続登記では、所有者の生まれてから亡くなるまでの戸籍全部、相続人の戸籍、遺産分割協議書などを添付することが多いのですが、この制度では所有者が死亡したことが記載された戸籍と申出人が相続人であることがわかる範囲の戸籍で足りるようにするようです。死亡届の登記版といったところでしょうか。

 

3 義務に違反した場合は?

相続登記を申請すべき義務を負っている相続人が、「正当な理由がない」にも関わらず、申請しなかった場合にはペナルティーとして10万円以下の過料に処するとされています(答申16頁)。


「過料」とは刑事罰ではなく行政罰の一種です。例えば、会社の登記でも、役員が代わったのにこれを長期間登記しないでいた後に登記を申請すると、法務局から裁判所へこのことが通知され、裁判所から過料を払いなさいとの通知が届くことがあります。相続登記でも同じような扱いにしようということです。


しかし、義務を負っている相続人が所定の期間内に登記ができなかった場合の全てにおいて、過料の通知が届くことになるかというと必ずしもそうではないようです。


この点、答申に先立つ中間試案段階では、先ほど述べたように申請義務を負う相続人は、「自己のために相続があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った」ということが前提ですので、相続開始をそもそも知らない場合や亡くなった人が不動産を所有していたことを相続人が知らなかった場合などは、これにあてはまらないので義務違反の状態が生じないものとされていました(中間試案補足説明177頁)。


次に、「正当な理由」についても、例えば、①相続発生後、相続人がさらに亡くなるなどして相続人が極めて多数である、②遺言の有効性を争う裁判をしている、③登記申請義務者が重病等である、④登記簿は存在しているものの、公図が現況と異なり現地を確認することができないときなどが、これにあたると考えられると説明されていました(中間試案補足説明178頁)。


さらに、法務局から相続人に対し、登記をするよう促してもなお申請しない場合に過料に処すとの考えも述べられていました(部会資料60、3頁)。

 

4 法律が施行されたときにすでに相続が開始している不動産は?

ところで、相続登記が義務化される法律が施行されたときに既に所有者が亡くなっていた場合にはどうなるでしょうか?


この点、答申は触れていません。しかし、法制審議会での議論では、法律施行時に既に所有者が亡くなっている不動産においても、義務化の規律を同様に及ぼすべきとの議論がなされていました(部会資料57、3頁)。


つまり、この場合、既に所有者が亡くなっている不動産についても、法律が施行された時点を起算点として、一定の期間内に相続人が相続登記をすべきこととなります。


この点がどうなるかは、法律の経過措置としてどのように定められるかによることとなります。既に相続が開始している不動産についても義務化の規律を及ぼす場合、その影響はかなり大きいと思います。

 

5 義務化するなら登録免許税を非課税にしては?

ここまで相続登記義務化の議論を見てきました。


私は、所有者が亡くなった場合に相続登記がなされていない不動産が多数存在しており、これを解消するとの政策目的は肯定できます。


しかし、その手段として、義務を設けて、これに違反した場合にペナルティーを設けるとの点については否定的な立場です。


仮に、義務化するのであれば、現状、相続登記の際には登録免許税という税金を納付する必要があるのですが、まずはここを変える必要があると思います。登録免許税は、不動産固定資産評価額の0.4%の税率の金額ですので、都心部では結構高額となります。現在でも、相続登記を促進するため一定の場合には非課税とする時限措置がなされています(例えば、数代にわたって相続登記がされていない土地の名義を、まず亡くなった相続人名義にする場合や、法務大臣が指定した市街化区域以外の土地で評価額が一定額以下の土地の相続登記など)。

義務化する場合には、例えばこれらの措置を恒久化するとともに、さらに非課税の範囲を拡大して、いっそ非課税にするなどの措置が必要であると考えます。

 

6 過料制裁運用の明確化が必要

次に、ペナルティー(過料)についてです。先程、会社登記の場合の過料についても触れました。会社登記の場合、会社法では登記事項に変更が生じたときは2週間以内に登記をしなければならないとされており(会社法第915条1項)、この登記をすることを怠ったとき(会社法第967条1号)に100万円以下の過料制裁があるとされています。


しかし、実際の過料制裁の運用では1年超登記をしなかった場合などに制裁がされているように思われ、どれくらい期限を過ぎると制裁がなされるか?その場合の金額はいくらなのかを説明することは困難であり、運用は明確とは言えないのが現状です。そこで、相続登記義務化で過料制裁が入らざるを得ないのであれば、どのような場合に過料制裁がされるのか、少なくとも上記3で紹介したことが法令上も明確となり、運用も明確となることが必要だと思います。

司法書士の半田久之です。

 

2017年5月29日(月)から、全国の法務局にて、「法定相続情報証明制度」がスタートします。「相続手続が簡単に」との報道もありますが、どのような制度なのでしょうか?

 

■ かなりの分量となる戸籍謄本等

 

ご家族の方が亡くなると、不動産の名義を変える登記、銀行預金の解約払い戻しなどの各種相続手続で使用するために、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等や、相続人の方の戸籍謄本等を集めることになります。

 

しかし、戸籍は、婚姻などの身分関係の変動や本籍の移転、コンピュータ化などによって作り直されていたり、また、相続関係が複雑であったりして、かなりの分量になるということが珍しくありません。

 

■ 戸籍謄本類の提出・返却を繰り返す

 

そして、各種相続手続では、これらの戸籍謄本等の束を提出し、戸籍謄本等の原本を確認してもらった後(この時間が結構長くかかります)、これを返却して貰い、次の提出先に提出し、原本を返却してもらうという作業を繰り返していきます。

 

そうすると、たくさん不動産を持っている方や、預貯金口座が多数ある方は、全ての相続手続を完了させるまでに相当の時間を要していました。

 

なお、提出先が多数の場合、必要通数分戸籍を集めるということも考えられますが、その分、費用がかさむため、1セット分集めるという方が多いものと思います。

 

■ 法定相続情報証明制度とは?

 

2017年5月29日(月)から始まる「法定相続情報証明制度」では、これら戸籍謄本等の束と法定相続情報一覧図を法務局に提出すると、登記官が戸籍の内容を確認し、法定相続情報一覧図の写しに認証文を付してくれます(下記イメージ)。

この手続は無料で、法定相続情報一覧図の写しは必要な通数を発行してもらえます。

また、この手続は、亡くなった方に不動産がなく、銀行預金しかない場合でも利用することが可能とされています。


法定相続情報一覧図の写しイメージ



(法務省HP「~法定相続情報証明制度について~」より) 


■ 期待される効果

 

これにより、これまでの戸籍謄本等の束の提出・返却を繰り返すという作業ではなく、法務局で必要通数分の法定相続情報一覧図を取得し、提出先に一斉にこれを提出して相続手続を進めることができるようになることが期待されています。

 

したがって、「相続手続が簡単になる」というのは、今まで集めていた書類が不要になるというわけではなく、手続が同時に進められて時間短縮が見込めるとの意味です。

 

■ 金融機関や法務局以外の役所で使える?

 

もっとも、法定相続情報一覧図をもって戸籍謄本の提出に代えることができるとの法令の改正がされるのは、今のところ不動産登記の場合のみです(不動産登記規則第37条の3)。

 

そうすると、銀行等の手続において、法定相続情報一覧図をもって戸籍謄本等の束の提出に代えることができるか否かは、手続がスタートした後、銀行等がどう対応するかによります。

 

また、相続税の申告手続に際しても戸籍謄本等の提出が必要ですが、これら行政の手続においても利用できるとの法令の改正も今のところされていません。

 

これら金融機関や法務局以外の役所においても利用できるようになると、手続をする相続人はもちろん、社会全体の相続手続きのコスト低減につながる有用な制度と思います。

 

■ 法律によるべきだったのでは?

 

最後に、私がこの制度について疑問に思っていることを一点述べたいと思います。

 

それは、この制度が、法律ではなく不動産登記規則の改正によって行われますが、それで良いのかという疑問です。

 

例えば、この制度では、手続をする法務局が、亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人となる相続人の住所地または亡くなった方が所有する不動産所在地を管轄する法務局のいずれかとされています(不動産登記規則第247条第1項)。

 

このように、いくつかの法務局から選択して手続が行えるようにされたのは、相続人の利便性を考えてのことと説明されています。

 

しかし、不動産登記手続においては、不動産登記法で管轄が規定されており、その不動産所在地を管轄する法務局とされています(不動産登記法第6条第1項)。

不動産登記規則である以上、不動産登記法の委任に基づく範囲でしか制定できません。それにも関わらず、なぜ法の規定から管轄を大幅に拡張することができるのか。このような規定が果たして、不動産登記法の委任に基づくと言えるのか疑問があります。

 

不動産登記手続を定めた法令に、不動産登記以外をも対象とする制度を持ち込んだが故の矛盾なのだと思います。

私は、相続人の利便性を考え、いくつかの法務局で手続が出来ることには賛成です。

したがって、私は、しかるべき法律によって、この制度が創設させるべきではなかったのかと考えています。

 

 

いずれにしても、まもなく制度がスタートします。

相続登記や法定相続情報証明制度に関する御相談は当事務所までお寄せください。

 

司法書士  半田久之
https://www.tokyolaw.gr.jp/lawyer/handa_h.html

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