東京法律事務所blog

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 弁護士の中川勝之です。

 

 大田区(区長松原忠義)が「会計年度任用職員制度」への移行による組合員の労働条件の変更等について申し入れた団体交渉に応じないこと等について、東京公務公共一般労働組合が東京都労働委員会に対して救済命令を申し立てた事件(都労委平成31年不第32号)の第2回調査が7月31日に行われました。

 

 大田区からは第1回調査でも9人の代理人が出席していましたが、第2回調査でも8人の代理人が出席(対席時)していました。

 

 組合は第1回調査後の7月10日に団体交渉を申し入れましたが、大田区は同月17日に団体交渉を拒否し、やむなく組合は同月20日にも団体交渉を申し入れましたが、大田区は同月23日にやはり団体交渉を拒否してきました。

 

 組合は、大田区の答弁書に対して準備書面(1)で、審査の実効確保の措置勧告申立てに係る答弁書に対して準備書面(2)でそれぞれ反論し、さらには立会い団体交渉の要請書を提出して、団体交渉の開催を強く迫りました。

 

 その結果、第2回調査では、その名称はともかく、複数回の「やり取り」(大田区の言葉)ないし「話し合い」(公益委員の言葉)をすることになりました。

 

 組合は他区とは団体交渉を進めており、成果も勝ち取っています。準備書面(1)では江東区や世田谷区との団体交渉について、次のような主張もしました。

例えば、組合は、江東区と会計年度任用職員について団体交渉を進め、2019年5月30日、江東区との間で、「会計年度任用職員制度における公募によらない再度の任用に関する確認書」を締結した(甲16、17)。2019年度(2020年3月31日時点)で江東区の非常勤職員が会計年度任用職員に採用(任用)された場合、任用上限(更新回数制限)がない等の画期的な内容である。

なお、同確認書でいう「一般非常勤職員」とは特殊な職にかかる非常勤職員ではないという意味で特別職非常勤職員であり、地方公務員法17条に基づく一般職非常勤職員を意味するものではない。

 他にも、組合は、世田谷区とも会計年度任用職員について団体交渉を進め、世田谷区からの「会計年度任用職員制度の導入及び特別職非常勤職員制度の廃止について」の提案について、「公募によらない再度の任用」の上限回数が設定されないこととされた。また、2020年3月31日現在、世田谷区で任用されている特別職非常勤職員については、現在の職の職務内容と同様の会計年度任用職員制度の職が設置される場合、当該職員は、その職の「公募によらない採用選考」に申込みができることとされた。そのため、2019年6月14日、世田谷区に対し、了承する旨連絡した(甲18)。江東区と同様、2019年度(2020年3月31日時点)で世田谷区の非常勤職員が会計年度任用職員に採用(任用)された場合、任用上限(更新回数制限)がない等の画期的な内容である。

 以上のとおり、組合は、会計年度任用制度の導入に際しての雇用・労働条件について、各区と団体交渉を実施し、労使合意も勝ち取っている区もあり、組合としてはその取り組みを全都に広げていこうとしているところである。大田区も組合からの団体交渉に誠実に応じるべきである。

 
 
大田区議会の令和元年第3回定例会は9月12日招集と予定されており、組合との「やり取り」ないし「話し合い」の内容が注目されます。

 

 特別区人事・厚生事務組合の対応には矛盾・変遷等があり、準備書面でも主張しましたが、ここでは公表を差し控えておきます。

 

組合としても大田区が不誠実な対応を続けるのであればストライキの検討も辞さないとの強い態度で臨んでいます。第3回調査期日は、8月28日(水)午後4時からです。皆様からのご支援を宜しくお願いします。

 弁護士の中川勝之です。

 2019年8月1日、東京高等裁判所第14民事部に係属中の京王新労雇用延長差別事件が結審となり、同年10月24日に判決となりました。
 控訴人は、京王電鉄株式会社にバス運転士として職種を限定して採用・雇用され、30年前後にわたってバス運転士として働いてきた京王新労組合員3名です。控訴人らは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)のもとで定年後もバス運転士として雇用継続することを求めたにもかかわらず、1か月10万円にも満たない賃金で清掃業務に従事させる「再雇用社員」以外に雇用継続しない旨通告を受け、清掃業務を余儀なくされています。京王新労組合員以外のバス運転士で希望者は全員、バス運転業務を継続しており、差別にほかなりません。控訴人らは、本事件において、バス運転業務に従事する「継匠社員」(けいしょうしゃいん)としての地位確認、差額賃金支払及び損害賠償を求めています。

 2018年9月20日、東京地方裁判所民事第19部(春名茂裁判長裁判官、西村康一郎裁判官及び関泰士裁判官)が原告ら3名の全ての請求を却下・棄却する判決を下したため、控訴してたたかってきました。

 雇用延長差別の本質は、京王新労及びその組合員に対する不当労働行為です。

 本年5月22日付けの中労委命令は、2013年6月4日付けの都労委命令に引き続き、任用社員制度に係る会社の対応について労働組合法7条1号(不利益取扱い)・3号(支配介入)の不当労働行為であることを認めています。

 高裁判決においては、
「許されるなら中央線の線路に突き落としてください。」
との記載からも明らかな不当労働行為に関して正しく判断される必要があります。

 また、継続雇用における業務について、地裁判決のようにバス運転士が大幅賃下げを伴う清掃業務に従事させられても許容されるとすれば、高年法の趣旨に反していると言わざるを得ません。京王新労は、
「これでは労働者は生きていけない冷酷無比!春名茂判決」これでは労働者は生きていけない冷酷無比!春名茂判決

「春名茂裁判官よ!あなたも裁判所の掃除をしてから判決を!」
「裁判官に裁判所の清掃業務だけを提示すればいいの?」
春名茂裁判官よ!あなたも裁判所の掃除をしてから判決を!

等とチラシに記載して批判していますが、この点についても正しく判断される必要があります。

 さらに、そもそも控訴人らは全員京王電鉄に雇用され定年まで同社の社員でしたが、「定年後の継続雇用関係の得喪」、すなわち、定年後の雇用がどのような扱いになるのかについて規則がなかったという事態を高裁に至って会社が自白することになりました。この点についても正しく判断される必要があります。

 提起予定の中労委命令の取消しを求める行政訴訟とともに、引き続き京王新労雇用延長差別事件のご支援、ご協力、宜しくお願い申し上げます。

 弁護士の中川勝之です。

 

 憲法の条文を見ると、27条1項が勤労の権利・義務、同条2項が勤労条件(労働条件)の基準の法定をそれぞれ定め、次の28条が勤労者(労働者)の団結権、団体交渉権及び団体行動権のいわゆる労働三権を定めています。すると、労働条件の最低基準として労働基準法があり、二次的に労働条件の改善向上のために労働組合の活動・運動が期待されていることになりそうです。

 しかし、歴史的には労働者・労働組合の活動・運動が先にあり、それが厳しい規制・抑圧の対象とされつつも、工場法といった一定の労働者保護立法がなされ、敗戦を経て、1945年12月22日に労働組合法が公布されました。その後、憲法が1946年11月3日に、労働基準法が1947年4月7日にそれぞれ公布されたことからすれば、労働組合による活動・運動こそがまず重要ということではないでしょうか。まだ実現されていませんが、最近の各政党の最低賃金大幅アップの政策も、労働組合による地道な活動・運動によって浸透していったように思えます。

 他方で、近年のブラック企業においては、労働基準法すら遵守されていない実態もあり、その労働者からの相談を多く受け入れる一般・合同労組(ユニオン)が広がってきています。


 今では労働条件の最低基準を遵守させることから改善向上に至らせることまで、労働組合の役割は大きくなってきていると言えるでしょう。労働者一人では使用者とたたかえないという実態が依然として存在するわけです。

 そうすると、労働者が労働組合に加入してたたかう意義は従前と変わらず、それだけに労働組合を嫌悪する不当労働行為は絶対許されないと私は思っています。義務的団交事項ではないと主張して延々と団交拒否を続ける、業績評価と称して組合員の賃金・昇格・雇用延長について差別する、組合員の職種ないし職場を変更する等の事件を私は受任してきましたが(ブログ参照)、やはり労働組合自身による活動・運動で不当労働行為のない職場を作らなければ解決とならないことも実感しています。最後は労使の力関係が事を決するのであり、これまた地道な活動・運動によるほかありません。

 労働組合の活動・運動が憲法28条によって保障されて現在の労働条件があるが、これとてたたかわなければ維持されないと言えるのではないでしょうか。私も微力ながら、今後も労働組合の活動・運動に寄与していきます。

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(六法から憲法28条を読む中川勝之弁護士)

 弁護士の中川勝之です。

 京王新労が、賃金・昇進(雇用延長制度も含む)差別を受けたとして、京王電鉄株式会社、京王電鉄バス株式会社及び京王バス小金井株式会社を被申立人として不当労働行為の救済命令を申し立てた事件について、今月3日、中央労働委員会から本年5月22日付けでの命令書の交付を受けました。

主文は次のとおりです。

主       文 

Ⅰ 初審命令主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。

 1 京王電鉄バス株式会社及び京王バス小金井株式会社は、本命令書受領の日から10日以内に、下記の内容の文書を、全日本建設交運一般労働組合東京都本部及び同バス関連支部に交付しなければならない。

                 記

年  月  日

全日本建設交運一般労働組合東京都本部

執行委員長 松田 隆浩 様

全日本建設交運一般労働組合東京都本部バス関連支部

執行委員長 佐々木 仁 様

京王電鉄バス株式会社

代表取締役 丸山  荘 ㊞

京王バス小金井株式会社

代表取締役 奥田 泰大 ㊞

京王電鉄労働組合との協定に基づいて平成18年5月16日に導入した任用社員制度に係る当社の対応は、中央労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であると認められました。当社は、このことを誠実に受け止めます。

(注:年月日は、文書の交付の日を記載すること。)

2 平成19年4月16日以前に行われた格付に基づき支払われた賃金並びに平成20年10月15日以前に支払われた賞与及び報奨金に係る申立てを却下する。

Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。 

 まずは、賃金・昇進の差別=不当労働行為性を初審命令(都労委命令)に引き続き認めなかったことは不当極まりないことは言うまでもありません。

従前のブログ記事で、2008年7月11日付けの㊙と明記された「小金井営業所引継ぎ事項」(引継文書)は京王新労及びその組合員に対する不当労働行為の証拠として紹介しましたが(京王新労雇用延長差別事件、9月20日判決へ♪)、それは裁判所における京王新労雇用延長差別事件より前に中労委に証拠として提出したものです。

中労委命令も「当該引継文書は、…副所長が異動に伴い、その職務を引き継ぎ、情報を共有すべく業務上作成したものであるところ、その中において、新労に対して「中央線の線路に突き落としてください」などと、いかにも不穏当な記載がなされているのであるから、…新労に対する嫌悪意思を有していたことを否定することは困難」と判断しました。

また、「電鉄バスが、報奨金確認書の履行に関する社内検討資料において「毒抜き」と表現したことについても、その趣旨はともかく、新労に対する好ましくない感情が示されたものとみるのが自然であるから、いずれも組合嫌悪の情を示すものではないとする会社の主張は採用の限りではない」とも判断しました。

このように、不当労働行為意思を認めながら、賃金・昇進の差別=不当労働行為性を認めなかったことに理由はありません。 

そして、中労委命令は、都労委命令の第1項及び第2項を変更していますが、都労委命令の第1項は、「被申立人京王電鉄バス株式会社及び同京王バス小金井株式会社は、申立人全日本建設交運一般労働組合東京都本部京王新労働組合支部に対し、任用社員制度に係る被申立人京王電鉄バス株式会社と申立外京王電鉄労働組合との労使協定と同内容の提案をしなければならない。」という内容でした。

任用社員は、「定年後の働き方の選択肢の一つ」ですが、要するに、

<任用社員制度に係る別組合との労使協定と同内容の提案を京王新労に対してしなければならない>

という内容が、

<任用社員制度に係る会社の対応は労働組合法7条1号・3号の不当労働行為である、会社はそれを誠実に受け止めて、その内容の文書を京王新労に対して交付しなければならない>

という内容に変更されました。

都労委命令も、任用社員制度に係る会社の対応について労働組合法7条1号(不利益取扱い)・3号(支配介入)の不当労働行為であることを認め、不十分ながらも会社に提案をすることを命じたのですが、中労委命令は会社に誠実に受け止めること及びその内容の文書の交付をすることを命じただけです。これでは全く実効性がありませんが、中労委命令ですら、京王バス小金井の奥田泰大代表取締役は、履行しないとして、京王新労に対し、中労委命令の取消しを求める行政訴訟を提起する旨、通知してきました。 

 京王新労も、中労委命令の取消しを求める行政訴訟を提起します。東京高裁での京王新労雇用延長差別事件とともに、ご支援、ご協力、宜しくお願い申し上げます。 

※過去記事はこちらをご参照下さい。

京王新労の雇用延長差別事件、東京高裁に学者の意見書を提出♪

京王新労の雇用延長差別事件の高裁始まる&賃金・昇進差別事件の中労委は命令へ

「副所長の労働組合に対する強い敵意」を認めながら差別を容認~京王新労雇用延長差別事件・東京地裁不当判決~

京王新労雇用延長差別事件、9月20日判決へ♪

京王新労、中労委で鎌田耕一公益委員を忌避申立(続報)

京王新労、中労委で鎌田耕一公益委員を忌避申立 

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<不当な中労委命令に屈せず、たたかう決意を新たにする佐々木仁委員長>

 

 弁護士の中川勝之です。

 

 6月28日、株式会社アシックスに勤務している首都圏青年ユニオン組合員が同社を被告として、東京地方裁判所に提訴しました。笹山尚人弁護士とともに担当しています。

 

事件の概要は、訴状の「はじめに」で次のようにまとめました。

 

本件は、労働者である男性の原告が、使用者である被告における問題を通報等したことでいじめ・嫌がらせを受け始め、さらに、被告はそのダイバーシティ(多様性)の推進の方針に反し、育児休業を取得したことを理由に、原告に対して出向命令や配転命令をし、人事部付きに追いやっていじめ・嫌がらせ(パワハラ)乃至いわゆるパタハラを続け、さらには二度にわたって懲戒処分をしてきたため、原告は、働きやすい職場を求めて、現在の配属部署に勤務する労働契約上の義務の不存在の確認、二度の懲戒処分の無効の確認、損害賠償等を請求するに至った事案である。

 

 原告の職場は、概要、次のように推移しました。

 

入社してプロモーション業務にかかわる2つの職場

↓配転

A(10か月)

↓配転

B(約2か月半)

↓配転

C(約10か月半)

↓配転

D(約1年7か月、うち合計約1年2か月半育児休業取得)

↓出向(本件出向命令)

E(3か月)

↓配転(本件配転命令)

F(6月末現在で2年9か月、うち合計約1年育児休業取得、取得前に本件譴責処分、本件減給処分を受ける)

 

 原告は記者会見で、子育てしやすい環境を求めたいと語りました。皆様からのご支援を宜しくお願いします。

 なお、当事務所では、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券パタハラ事件」を今泉義竜弁護士及び江夏大樹弁護士が取り組んでいます。あわせてご支援を宜しくお願いします。

 

<報道ありがとうございます>

「育休復帰直後、子会社に」 アシックス男性社員が提訴

https://www.asahi.com/articles/ASM6X4W4RM6XULFA012.html?iref=pc_ss_date

育休後に子会社出向、男性社員がアシックスを提訴

https://mainichi.jp/articles/20190628/k00/00m/040/204000c

「育休取ったら嫌がらせ」 アシックスを男性社員提訴

https://www.sankei.com/affairs/news/190628/afr1906280034-n1.html

アシックス男性社員が育休で提訴 「取ったら嫌がらせ」

https://this.kiji.is/517254901789918305

「パタハラ」でアシックス提訴=「配置転換で嫌がらせ」-東京地裁

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062801108&g=soc

「パタハラ」などでアシックス男性社員が同社を提訴、育休復帰後初日の出向命令などを不当と訴え

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d15cdf5e4b07f6ca57b52fd

アシックス男性社員「パタハラ」で提訴 育休明け倉庫勤務「圧力であり、見せしめ」

https://www.bengo4.com/c_23/n_9816/

アシックス社員「パタハラ」提訴

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190628/1000032062.html

アシックス社員が会社を提訴、関連会社出向は「パタハラ」

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3712096.html

男性社員 アシックス提訴 育休後 不当配置転換など

https://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/news/post_180332/

育休めぐり「パタハラ」被害 アシックス現役社員が会社を提訴

https://www.fujitv.co.jp/goody/

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