弁護士の平井哲史です。

12月6日(水)、参議院憲法審査会の傍聴に行ってみました。今泉義竜弁護士も傍聴しましたが、ちょうど入れ替わりでした。そのレポートと感想を書いてみます。

 

1、議場は閑散としてるかと思いきや、そこは良識の府を自負する参議院。数えたわけではありませんが委員は全員出席されてるようでした。傍聴席も埋まってました。

 

2、内容は各委員が問題意識を持ってることを5分程度で披露する発表会のような感じで、論点を設定して議論するという感じはありませんでした。

  前の国会では開かれず、今国会でも会期末に一回のみだと不満を述べる委員もいましたが、まぁ、そこは与党も含めて拙速はやめてじっくり腰を落ち着けて検討しようということであれば、議会の姿勢としては正しいと思いました。

  逆に、国民の声を代表する国会議員の中から様々提起される論点を整理し、議論するのが憲法審査会の役割だとすれば、論点や議論の順番も決めないうちから「憲法改正案が出ているんだから、それを議論しろ」というのは審査会の役割を無視した非民主的なやり方かと思います。

   憲法審査会がこういう状況ですから、9条だけ取り出してこれを変えようなどという安倍政権のやり方は、内容もさることながら、手続き的にも国会内部の審議ルールや審査会を無視したものとなるのではないかと思います。拙速はいけません。

 

3、たぶん一番多く出されていたのは、参議院選挙区の合区の問題でした。合区された県では自分たちの代表をちゃんと選べなくなるという問題があります。

  たとえば高知県と徳島県が合区とされましたが、高知出身の人は選出されませんでした。これにより「高知県民の声を国政に届ける人がいない」という状態になっています。過日、この合区がなされて実施された参議院の「1票の格差」訴訟で最高裁はこの選挙が憲法違反ではないとの判決を出ましたが、地方選出の委員からは強い批判的意見が出されていました。「それが憲法と何の関係があるの?」という感じではありますが、憲法92条の「地方自治の本旨」をおかすというのが論拠のようでした。

  委員の言いたいことはわかるのですが、でも、合区は別に地方の自主的な意思決定をおかすものではないんで、憲法を変えて都道府県単位で必ず一人選出されることを保障しようというのはなんだかこじつけのように見えます。もっとも、理屈は理屈。これも大事だから憲法審査会で議論してほしいというのであれば、結論がどうあれ、ひとまず議論のテーブルにのせればよいのではないかと思いました。

 
IMAG1629

4、次に関心の高かったのはやはり憲法9条でしたが、これについては、「そもそも日本国憲法はGHQに押し付けられたものだ」ということをいまだにおっしゃる方がおられたため、「制定経過にさかのぼって調査・検討をすべき」という意見が割と出ていました。それはそれで意味があるかな、と思いますが、そういう議論をするのであれば、なおさら拙速に9条だけ取り出して変えようというのは理がありません。

 

5、議論にはなってませんでしたが、民進党・緑風会の委員が次のような面白いつっこみを入れていました。いずれも、傍聴者としては、「そうだよな~」と思うものでした。

 ① 自民党はすでに改憲草案を出しているが、自民党の委員は誰もこれに触れない。また、石破氏は9条3項を加えるのではなく、2項を変えろと言ってる。

   自民党内では軍隊を保有することを明記すべきと公言している人たちがいる。党内で果たして意見が一致しているのか?

 ② 合区をうんぬんしているが、1票の格差が大きくならないようにするためというならいっそ定数を増やせばいい。それは検討したのか?

  (これは確かに、定数を減らすから人口集中部と過疎地域との格差が広がってるもとでは合区をしなきゃとなるわけで、定数を昔のように戻せば解決する話なのでしょう。)

 ③ 自衛隊の指揮権は内閣が持つのだろうが、その内閣の権限行使をどう国会が監視するのか、その中身がない。

 ④ 集団的自衛権を一部行使することを内容とする安全保障関連法が制定されたが、これが発動されれば間違いなく海外での戦闘行為で自衛隊員が死ぬ。この安全保障法制は内容も手続過程も違憲と考えるが、発動されてからでは遅いので、まずもってこの安全保障法制が合憲なのか、違憲なのかから議論すべきだ。

  

6、他方、自民党の山谷えり子委員が、36都府県で憲法改正を求める意見書が出ているということをおっしゃっていました。

  でも、これって本当? たいして報道もされていないように思いますが、いったいいつそんな意見書採択したの?と気になって少し調べてみました。でも、今年の東京都議会ではそれらしきものは何もなく、昨年の議会でもありませんでした。

  「もしかして嘘?」と思いさらに探したら、一昨年の6月議会で「国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書」というのがあがっていました。

  ですが、その内容は、「東京都議会は、国会及び政府に対し、国の責任において、日本国憲法について、活発かつ広範な議論を推進するとともに、広く国民的議論を喚起するよう強く要請する。」というものであって、憲法改正を求めるとはなっていません。むしろ、冒頭で、「日本国憲法は、昭和2253日の施行以来、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三原則の下、我が国の発展に重要な役割を果たしてきた。この三原則こそ、現憲法の根幹を成すものであり、今後も堅持されなければならない。」としています。

  これだと普通は、憲法の論議は深めよう、でも前文やその精神を具体化した憲法9条は変えちゃいけないよね、と確認しているように読むのではないでしょうか。

  山谷委員の発言は改憲を求めていない意見を改憲を求めるものだと言って紹介するもので、ミスリードだと思います。

 

7、なお気になったのが議事運営の仕方。
  議長が、ほかに意見のある方いませんか?と聞いて、社民党の福島みずほ議員が手をあげていたのですが、議長は、福島議員が自分の正面近くに座っていたにもかかわらず、これを無視して、ほかに意見がないものと認めますと言って議事を締め切ってしまいました。
  これは誰がどう見ても発言封じです。
  国会でこんなことが平然とおこなわれることはゆゆしき問題だろうと思います。福島議員含め議員全体が苦笑いしてました。もし故意ではなく、見えなかったとか言い訳するのであれば、それはそれで議長として不適格だろうと思います。次の憲法審査会までに議長は福島議員に陳謝等の対応をすべきではないかと思いました。