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22年10月15日理研労集会チラシ
1 裁判の概要

2022930日、理化学研究所(理研)で勤務する研究者の雇止め事件の第1回期日(さいたま地裁)が開かれました(提訴日は727日)。

本件は、理研に所属して研究者として勤務する原告が、理研を被告として、20233月末日に予定されている雇止めが無効であると主張し、202341日以降の地位確認、雇止め後の賃金支払い、研究妨害が不法行為に当たることを理由とする損害賠償をそれぞれ求める訴訟です。

本件については、下記のとおり、各メディアで報道して頂いています。

理研の雇い止め巡る訴訟 研究者の雇用「続けて」朝日新聞 野口駿、仁村秀一 2022年10月1日 10時45分)

迫る大量リストラ、理研研究者が募らせる危機感 日本の科学技術力に影を落とす可能性も(東洋経済オンライン 奥田 貫 2022/10/01 6:01

※関連記事

理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉、中座し戻らぬ人事部長(東洋経済オンライン 奥田 貫 2022/10/01 6:00

雇い止め前提、研究行えず…「科学技術力は衰退する」理研の研究者、地位確認など求める 対象は400人に(埼玉新聞)

 

 なお、本件の担当弁護士は、水口洋介、菅俊治、平井康太、私(いずれも東京法律事務所)の4名です。

 

2 約400名の研究者を雇止め!?~本件裁判での原告側の主張~

 理研は、20233月末で約400名もの多数の研究者(研究系職員)の雇止めを強行しようとしています。

 理研では多くの職員が有期雇用労働者として契約を更新しながら勤務しており、その割合は全体の8割にも上ります。本件の原告も同じく1年毎に有期雇用契約を更新してきた労働者(研究者)の一人です。

 理研には、大別して事務系の職員と研究系の職員が在籍していますが、現在雇止めが問題となっているのは、研究系職員です。

 労働契約法18条は、有期雇用労働者の雇用安定を目的として、5年(研究者の場合は10年)を超えて有期雇用契約を更新した労働者に「無期転換権」を付与しています。

 理研では、有期雇用契約を10年以上にわたり更新してきた研究者(研究系職員)が多数在籍しています。本件の原告も、現在の20233月末までの雇用契約が更新され、4月以降も雇用契約が継続すれば、無期転換権を行使し、期間の定めのない雇用契約に転換することができます。しかし、20233月末で雇止めとなれば、無期転換権を獲得することができません。

 

 理研は、改正労契法18条の施行から3年後の20164月に就業規則を改定し、10年の雇用上限(研究系職員の場合。事務系職員については5年上限)を盛り込みました。しかも、雇用上限の規定の効力を、改正労契法18条の施行日である201341日に遡及させて適用するという内容でした。

 また、理化学研究所は、201641日以降に雇用契約を更新する労働者(研究者)に対し、雇用期間の上限を10年とする内容の条項を含む雇用契約書を提示するようになりました。

 本件裁判では、上記の就業規則の改定は、不利益変更に該当し、労契法18条を脱法する目的であり合理性を欠くため、法的拘束力はないと主張しています。また、(原告との関係で)雇用契約書における雇用上限の条項が無効であると主張しています。

 

 本件の原告は、2011年から理研で勤務を開始し、これまで雇用契約を10回更新してきました。長年にわたって研究を続けてきた分野で成果を上げ、医療分野での応用化まであと一歩のところまできています。2022年度には科研費も採択され(2024年度まで交)、研究は順調に進んできました。ところが、理研からの雇い止めの通告により、その研究の途が閉ざされようとしています。

本件裁判では、原告には契約更新に対する合理的な期待があり、雇止めには合理的な理由を欠く等として、雇止めの無効を主張しています。

 さらに原告は、20233月末での研究室閉鎖に向けて、理研側から研究機材の片付けを指示されており、現在、新規の研究・実験ができない状況にあります。

 本件裁判では、こうした指示が研究妨害に当たり、不法行為が成立するとして、損害賠償を請求しています。

 

3 大量雇止めを強行しようとする理研

 理研で勤務する事務系の職員については、5年の雇用上限が設定され、20183月末での一律かつ大量の雇止め問題(いわゆる「2018年問題」)として、当時、社会問題となりました。理化学研究所の職員で構成される理化学研究所労働組合(理研労)は、理研と交渉を行いましたが、理研は雇止めの撤回に応じませんでした。

そこで、理研労は、201712月に東京都労働委員会に不当労働行為の救済申立てを行いました。労働委員会での協議の結果、理研は、雇止めを回避する方針を決定し、就業規則の雇用上限条項を「適用除外」とする規定を新設し、一応の問題の解決が実現しました。

 その後も、理研労は、理研に対し研究系職員の10年の雇用上限の撤廃や最終年度契約での雇止めをしないよう繰り返し求めてきました。理研は、雇用上限の撤廃を拒否しつつも、20204月には一部の研究系職員について、雇用上限の「適用除外」を認める対応をしました。もっとも、雇用上限がなくなった研究系職員は一部にとどまり、多くの研究系職員について就業規則上の10年の雇用上限が適用される状況であることに変わりはありませんでした。

そこで、理研労は、引き続き研究系職員の雇用上限の撤廃を求めて、理研との労使交渉を継続してきました。

 

 20228月、理研は、20234月から10年の雇用上限を撤廃する方針を決定し、930日には「新しい人事施策の導入について」と題する記事がホームページに公開しました(下記参照)。

 理化学研究所HP「新しい人事施策の導入について」

https://www.riken.jp/pr/news/2022/20220930_1/index.html

 

 この記事は、本件訴訟の第1回期日と同じ日に公表され、複数の大手メディアで報道されてました。報道では、理研側が発表した「雇用上限の撤廃」や「研究職・技術職の公募」等が紹介されていますが、理研は、20233月末での約400名もの大量雇止めの方針を変更していません。

 理研が20234月以降の雇用上限の撤廃の方針を示して以降も、理研労は、雇用上限の撤廃時期を前倒しして、大量の雇止めを回避するよう求めています。

 20234月に雇用上限の撤廃を撤廃するのであれば、これを同年3月以前に前倒しすることも十分に可能であり、約400名もの多数の研究者(研究系職員)を雇止めにする方針を直ちに変更すべきです。そうすることが、理研にとっても、日本の科学技術の維持・発展にとっても最善の策であると思います。

 

4 本件裁判の意義

 上記のとおり、理研は、20233月末での大量雇止めの方針を崩していません。本件裁判の原告もその雇止め対象者の一人です。この裁判を通じて、原告の雇止めが違法・無効であることを明らかにしていくとともに、理研の大量雇止めの不合理さについても広く社会に訴え、雇止めの阻止を実現したいと思います。

 なお、2022630日、理研労らは20233月末での雇止めを巡る団体交渉における理研の対応が不誠実であるとして、東京都労働委員会に対し、不当労働行為の救済を申し立てています(現在も係争中)。

 

5 署名へのご協力のお願い

 下記の署名にご協力ください!

理化学研究所は約400人の研究系職員の雇止めをやめてください! 不当な雇用上限を直ちに撤廃してください。

 

 10月15日(土)午後2時~、「理研の400人雇止め STOP! 署名倍加キャンペーン集会」が開催されます。(理研労Twitterより)

こちらも是非ご参加ください。

 弁護士の川口です。

 昨日、シフト制労働対策弁護団の結成・ホットライン開催(シフト制労働対策弁護団と民法協の共催)について記者会見を行い、複数のメディアに取り上げていただきました。 

NHK2022414日首都圏ニュースWEB

 「シフト制」労働の改善求め弁護団結成 法整備など国に要望へ

 「シフト制」労働 生活困窮相次ぐ 改善へ法整備を 弁護団結成

東京新聞(2022415WEB

 「シフト制」休業手当未払い続く 厚労省紛争防止促すも、救済見えず 弁護団発足

毎日新聞(2022415WEB

 新型コロナ 勤務減、電話で相談を 大阪の弁護士団体があす /大阪

赤旗(2022415WEB

 「シフト制」弁護団結成

東京民報(2022年4月14日Twitter

◆「シフト制」労働に関するホットラインを下記の日時で開催します◆

 「シフト制」で働く方の労働問題について、ホットライン(相談無料)を受け付けます。
 「シフトを減らされたが、休業補償がない」「シフトが減ったことで、社会保険から脱退するように言われた」「休業支援金制度を使いたいが自分が対象になるのかわからない」など、お困りの方はご相談ください。
【シフト制労働対策弁護団(東京)】

4月16日(土)11時~18時 ホットライン番号 0353955359

【民主法律協会(大阪)】

4月16日(土)11時~18時 ホットライン番号 0663618624  


「シフト制」労働とは?

 シフト制労働(者)とは、労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務割や労働時間が確定するような働き方(労働者)のことを言います。

 一般的には「パート」「アルバイト」と呼ばれる労働者がこれに当たります。労働契約書や労働条件通知書などに、労働日や労働時間は「シフトによる」とだけ記載されており、具体的な労働日数や労働時間が記載されていない点に特徴があります。 

コロナ禍とシフト制労働者

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの事業が休業状態になりましたが、その際、シフト制で働くパートやアルバイトの労働者がシフトゼロ(シフトを全く入れてもらえないこと)や、大幅なシフトカットを受けるという被害が多発しました。

政府は、雇用調整助成金制度の適用を拡大して、休業者への補償を拡充しましたが、シフトで働く労働者は「シフト制」であることにより、補償の対象から漏れてしまいました。その結果、大幅な収入減となるシフト制労働者が多く発生しました。シフト制労働者は、時給制で働いている者が大半のため、シフトに入れず、休業補償もなければ、直ちに生活困窮に陥ってしまいます。

 また、コロナ禍では感染情勢によってシフトを変動させられ、十分な収入を得られないシフト労働者も続出し、シフト労働者が人件費の調整弁として使われる実態も浮き彫りになりました。

 このように、シフト制労働者は、企業の都合により、シフトを簡単に減らされる恐怖に晒され、非常に脆弱・不安定な立場にあります。

 シフト制労働の問題は、コロナ禍で浮き彫りとなった非正規労働の新たな課題であるとして、社会問題化しました。 

 2020年4月以降、首都圏青年ユニオンは、シフト制労働の問題に取り組み、シフト制労働者を組織化し、企業と交渉したり、国に救済制度の創設を求め、成果を上げてきました。

 こうした活動の成果として、休業支援金・給付金制度の創設があります。この制度の改善(適用拡大)についても、首都圏青年ユニオンは大きな役割を果たしました。
 また、首都圏青年ユニオン顧問弁護団は、青年ユニオンとともに、「シフト制労働黒書」を共同で作成し、シフト制労働者の事件に取り組むなど、シフト制労働者の権利を守るためにたたかってきました。 

 ※これまでの取組みについては、以前のブログ記事(下記)をご覧ください。

  「シフト制労働」についての取組み 

シフト制労働対策弁護団の結成

 首都圏青年ユニオン顧問弁護団は、青年ユニオンなどの労働組合とともに、国への要請行動を行ったり、事件活動をする中で、現在の法令では、コロナ禍でのシフト制労働者の救済に十分に対応できていないことを痛感するようになりました。 

 また、厚生労働省は、20221月に「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」という通達を出し、現在の法令に基づく

 コロナ禍で問題となった「シフト制労働」に関する通達が出されたのは、初めてのことです。首都圏青年ユニオンや顧問弁護団が取り組んできた活動の成果とみることができます。しかし、この通達は、基本的には現在の法令の範囲内でシフト制労働に関するルールをまとめた内容であり、休業補償の問題に言及していなかったり、シフトの作成・変更に関する労使間でのルール化を「勧める」内容にとどまっています。

 今後、労働者・労働組合が活用することは十分に考えられますが、シフト制労働の問題を根本的に解決できる内容にはなっていません。 

 そこで、首都圏青年ユニオン顧問弁護団の有志(若手を中心に10名の弁護士)で、新たにシフト制労働の問題に特化した弁護団として、「シフト制労働対策弁護団」を結成することにしました。 

4/16ホットラインの開催・今後の取り組み

 シフト制労働対策弁護団の第1弾の活動として、「シフト制労働」に関するホットラインを、大阪でシフト制等の非正規労働者の労働問題に取り組む「民主法律協会」と共催で開催します(開催日時は本ブログの冒頭のとおり)。

また、シフト制労働対策弁護団では、シフト制労働に関するよくある質問と回答をQ&A形式でまとめました。ぜひご覧ください。

ホットラインの開催後も、シフト制労働対策弁護団は、シフト制労働者からの相談に対応し、その実態を社会に訴えながら、シフト制で働く労働者の権利擁護や被害救済のため、立法・政策実現の活動などに取り組んでいきます。

今後のシフト制労働対策弁護団の取組みについては、下記ホームページ(首都圏青年ユニオンホームページ内)で随時ご案内します。 

シフト制労働対策弁護団WEBページ

 

 
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【記者会見の写真】手前から藤原朋弘弁護士、青龍美和子弁護士、私(いずれもシフト制対策弁護団員のメンバー) 

 2021年9月2日(木)18時~20時、「シフト制労働」に関するシンポジウムを開催します。コロナ禍で表面化したシフト制労働の問題を取り上げます。

 シフト制労働の問題は、学会でも実務家(弁護士)の間でも、これまで十分に議論されてきたとは言えません。

シンポジウムでは、龍谷大学名誉教授の脇田滋先生から、シフト制労働について、労働法学者の立場から基調報告をして頂きます。

首都圏青年ユニオンが取り組んできた立場から実例を報告し、当事者の発言を予定しています。

 ぜひご参加ください。

 

現在コロナ禍の中で、シフト制労働者がシフトカット・シフト外しにより

収入を失い、生活に困窮する事態が相次いでいます。

今回の集会では、コロナ禍によって浮き彫りになったシフト制という働き

方の問題点や現場の労働者の実態をご報告いただき、シフト制労働者の権

利保護・生活保障のためにどのような制度・政策が必要なのか皆様と一緒

に考えたいと思います。

<基調報告>

「『 シフト制 』 労働の法・政策的問題点と課題」

報告者:脇田滋龍谷大学名誉教授

<現場からの声>

・首都圏青年ユニオンからの報告・提言

・当事者より 

2021年9月2日(木)

   18:00~20:00

*オンライン(zoom)で開催いたします

*参加費無料 

●お申込み方法 ※チラシにはQRコードが掲載されています。

以下のはURLからお申込み下さい(ウェビナー登録) 

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_IqC9ggP3Rdu2rGmJ1q3sUQ 



シフト制 緊急オンライン集会チラシ 20210805


 コロナ禍で、「シフト制」で働く労働者の労働問題が頻発しています。昨年4月以降、首都圏青年ユニオンは、シフト制労働者から寄せられる多数の相談に対応し、企業と交渉を続けてきました。また、厚労省や国会議員への要請活動にも取り組み、雇用調整助成金制度の拡充や休業支援金制度の創設・改善につなげてきました。

  今年5月以降、首都圏青年ユニオンの取組みを踏まえ、シフト制労働の実態告発・政策提言を内容とする「シフト制労働黒書」(首都圏青年ユニオンと顧問弁護団が共同で作成)を発表し、訴訟提起・労働審判の申立を行いました。 

 シフト制労働に関する首都圏青年ユニオン・同顧問弁護団の取組みをご紹介します。

 当事務所では、青龍弁護士(首都圏青年ユニオン顧問弁護団事務局次長)、本間弁護士(同事務局次長)、浅野弁護士(同弁護団員)、私(同事務局長)が首都圏青年ユニオンとともにシフト制労働の問題に取り組んでいます。


【シフト制労働黒書(こくしょ)の発表】

  今年5月6日、「シフト制労働者黒書」を発表し、厚労省にシフト制労働者の休業補償の拡充などを要請しました。 

 複数のメディアに記者会見と厚労省への要請の様子を報道して頂きました。

  シフト制労働黒書こちら首都圏青年ユニオンHPからダウンロードすることができます。 

NHK(202156 1525分配信)

“シフト制労働者にも休業手当義務づけを”労働組合が国に要請

朝日新聞(202157 630分配信)

「店長の独断でシフト減らされ」 手当も途絶えた非正規 

弁護士ドットコム(Yahoo!ニュース)(5/6() 17:14配信)

バイト学生ら、シフト未確定分は「休業手当」の対象外 コロナで苦境、改善求める

しんぶん赤旗(202157()配信)

「シフト制労働者黒書」 首都圏青年ユニオン発表

東京新聞(2021522 0600分配信)

パートやバイトはコロナで休業補償なし、正社員との格差浮き彫り 首都圏青年ユニオンが「黒書」まとめる

 

 【フジオフードシステム事件】

  7月21日、大手飲食チェーン・フジオフードシステム(グループ)が運営するカフェで勤務するアルバイト(首都圏青年ユニオン組合員)が、同社を被告として横浜地方裁判所に提訴しました。

  裁判において原告は、未払い休業手当(賃金)の支払いを求めるほか、正社員と非正規社員である原告と間に不合理な待遇の格差があると主張し、損害賠償を求めています。10月に第1回期日が予定されています。

  担当弁護士は、私、青龍弁護士(以上、東京法律事務所)と有野優太弁護士(横浜法律事務所)の3名です。

  提訴と併せて記者会見を開催し、テレビ朝日・報道ステーションや複数のメディアで報道されました。

 

朝日新聞(2021721 2100分配信)

コロナ禍の休業手当「バイトにも」 決着めざし提訴 

弁護士ドットコム(Yahoo!ニュース)(7/21() 16:34配信)

コロナで施設ごと休館、テナントは労働者に休業手当を支払うべき? アルバイト女性が会社提訴

 

【かつや事件】

8月5日、大手飲食チェーン「かつや」で勤務するアルバイト(首都圏青年ユニオン組合員)が東京地裁に労働審判を申し立てました。 

 この労働審判において申立人(労働者側)は、シフトカットに対する休業手当(賃金)の支払いや報復的なシフトカットがなされたと主張し損害賠償を求めています。 

 担当弁護士は、青龍弁護士、本間弁護士、私の3名です(いずれも東京法律事務所)。

  提訴と合わせて記者会見を開催し、報道されました。 

弁護士ドットコム(Yahoo!ニュース)(8/5() 15:50配信配信)

コロナ不安で出勤拒否の「かつや」店員、労働審判申立て「報復としてシフトカットされた」

 

【その他の「シフト制労働」に関する報道】

その他にも複数のメディアでシフト制労働の問題が取り上げられて、注目を集めています。 

毎日新聞(2021/6/30東京朝刊)

シフト制、休業手当「対象外」 シンクタンク推計、コロナ後146万人 

TBSラジオ 荻上チキ・ Session特集 コロナにおける非正規雇用のシフト制労働 その実情課題7月15日OA出演しました。

 *本稿の写真は、本番組に出演した際のものです。

東京新聞(202187 0600分配信)

あいまい契約「シフト」の穴 休業補償求め、司法の場に続々政府も補償義務指針示さず

 

【今後の取組み】

 長引くコロナ禍において、シフト制労働者(非正規労働者)はますます苦境に立たされています。残念ながら、企業による補償のない休業が常態化し、休業支援金制度等による公的な救済はシフト制労働者に十分に届いているとは言えない状況です。

首都圏青年ユニオン・顧問弁護団は、シフト制労働者を雇用する企業に対する責任追及を継続するとともに、政策による救済に向けてさらに取り組みを進めていきます。

弁護士の川口智也です。

昨年末、株式会社フジオフードシステムを相手方として、休業手当の支払い等を求める調停を神奈川労働局に申し立てました。

今年129日付けで調停が開始され、25日に記者会見を開催しました。同日に休業支援金制度の適用対象が大企業にも拡充されることが政府から発表されたこともあり、複数のメディアに取り上げてもらいました。

弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_23/n_12473/

しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-06/2021020613_01_1.html
BUSINESS INSIDER
https://www.businessinsider.jp/post-229219

本件を担当しているのは、当事務所の青龍美和子弁護士と私です。


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1 事案の概要

当事者のIさん(仮名)は、株式会社フジオフードシステムが運営する首都圏にあるカフェで、パート労働者として働いていました。Iさんは、子育てをしながら、週4日、一日あたり5時間という条件で働き、実際に勤務をする日はシフトによって決められる、いわゆる「シフト労働者」でした。

Iさんはこの店舗で最も長く勤務する従業員の一人で、店舗の運営に必要な重要業務を担当するなど、店舗にとっては欠かすことのできない存在でした。

昨年4月、緊急事態宣言の発令を受けて、Iさんの勤務する店舗・商業施設が一時閉鎖されることとなり、店舗が営業を再開するまでの間、Iさんは休業を余儀なくされました。

休業期間中、Iさんを含めてパートやアルバイトの従業委員にはごく僅かな休業手当しか支払われず、Iさんはやむなく有給休暇を使わなければなりませんでした。

会社の対応に疑問を感じたIさんは、職場の同僚と一緒に首都圏青年ユニオンに加入し、休業手当の不払いは非正規労働者に対する差別だと主張して、休業手当の支払いや職場での待遇改善などを求めました。

ところが、会社側は、商業施設が閉鎖していたこと等を理由に、そもそもIさんに対する休業手当の支払義務はない、休業手当の不払いは非正規差別ではない等と述べて、青年ユニオンの要求を拒否しました。

2 本件の問題点

(1)パート有期法8条違反

  首都圏青年ユニオンとの団体交渉において、会社側は正社員には10割の休業手当を支払ったと述べました。その一方で、Iさんを含むパート・アルバイトの労働者には、ごく僅かな額の休業手当しか支払われていません。

  202041日から施行された、いわゆるパート有期法第8条は、通常の労働者(いわゆる正社員)と短時間(パート)・有期の労働者との間の待遇について、不合理な格差を設けることを禁止しています。

正社員には10割の休業手当を支払う一方で、Iさんら非正規労働者には休業手当の一部しか支払わないということであれば、正社員と非正規社員とで休業手当の取扱いに差を設けているということになります。

しかし、生活するために給料が必要なのは、正社員も、非正規労働者も変わりません。休業手当の趣旨は、休業をした労働者の生活を保障することにあり、正規・非正規で休業手当に差をつける合理性は一切ありません。

また、Iさんは店舗運営に必要な重要業務を担当しており、正社員と比較しても、その担当業務の内容や責任の程度等は同等といえます。

結局、会社側が休業手当に格差をつけたことは、非正規労働者に対する差別であり、パート有期法8条が禁止する不合理な待遇格差に当たると言わざるを得ません。

(2)「シフト労働」と休業手当

会社側は、「シフトが決まっていた日」、つまり「シフトが決まっていたが、店舗が営業を中止したことで、勤務がなくなった日」については「休業補償」を支払う一方で、「シフトが決まっていない日」については、休業手当を支払う法的義務はないとしています。

  しかし、会社側の考え方によると、「シフト労働者」は自分ではコントロールできない「シフト決定の有無」という事情によって、休業手当の有無が左右されることになり、一方的に不利な立場に置かれます。

  また、休業手当の趣旨は、休業をした労働者の生活を保障することにあり、正規・非正規で休業手当に差をつける合理性は一切ありません。

「シフトが決まっていない日」についても、会社側は法的に休業手当の支払義務が負うと考えるべきです。

(3)労働局の調停制度の活用

  本件は、労働局の調停手続を活用している点に特徴があります。

  弁護士が関与する事件では、裁判所や労働委員会の手続を活用することが一般的です。しかし、これらの手続には一定の時間と労力を要するため、当事者の負担が小さくありません。また、これらの手続を利用するためには法律の専門知識が不可欠ですので、基本的には弁護士に依頼する必要があり、弁護士費用がかかるため、そこまではできないと諦めてしまう場合が少なくありません。

  一方、労働局の調停手続であれば、制度を利用すること自体は無料ですし、法律の専門知識をもつ調停委員の協力を得て、当事者同士の協議で解決できる可能性があります。

  この制度には、裁判とは異なり、紛争の相手方を調停の場に連れ出す強制力がないというデメリットがあるものの、今後、労働者自身の力で(労働組合の支援も受けて申立てをすることも可能です)紛争を解決するための手段の一つとして、さらに活用が広がる可能性があると考えています。

  もちろん、弁護士に依頼をして交渉をしたり、場合によっては裁判などの法的手続きをとることで、休業手当の支払いを求めていくことも十分に考えられます。

3 休業支援金制度の活用を!

休業支援金は、財政的に体力のある大企業については、大企業が自ら休業手当を支払うだろうという見込みの下で、中小企業の労働者が休業を指示された場合に、労働者自身が申請することで国から一定の支援金を受給できる制度でした。

ところが、実際には大企業の非正規労働者を中心に、休業手当の不払いが頻発し、休業支援金を受給することもできないというケースが多発しました。本件の当事者であるIさんもそのような状況に置かれた労働者の一人です。

昨年夏ころから、青年ユニオンは、休業支援金制度が実際に生じている問題の解決につながっていない実態を告発し、大企業の非正規労働者にも適用するよう求めてきました。

 そして、今年25日、政府は従来大企業には適用しないとしていた休業支援金・給付金制度を改正し、大企業の労働者に対しても、制度を適用すると発表しました。

 この休業支援金の大企業への適用拡大についても、青年ユニオンとIさんが大きく貢献しました。今年129日、Iさんは、青年ユニオンの尾林事務局次長とともに、菅首相と面会し、大企業で働く非正規労働者に対する差別の実情を直接訴え、休業支援金制度の拡充を求めました。こうしたIさんなどの当事者の訴えにより、政府が重い腰を上げて、制度改善が実現したのです。

もっとも、25日に発表された休業支援金制度の改正案では、今年1月以降の休業しか適用されず、昨年4月以降の休業は対象外とされていました。労働組合や野党などから批判が殺到し、212日、厚労省は、休業支援金の適用対象を大企業に拡大したうえで、昨年4月~6月の休業についても賃金の6割を補償すると発表されました。休業支援金制度には、まだ不十分な点もありますが、現在の制度でも、一定の支援金を得ることが可能ですので、ぜひご活用ください、。

なお、休業支援金は、労働時間が短縮された場合(シフトカット)についても適用されます。シフトがなくなってしまった方だけでなく、シフトが減らされてしまった方も、一定の要件を満たせば、支援金を受給することができます。

※休業支援金制度の詳細は厚労省HPをご覧ください(随時更新されています) 

4 非正規労働者の救済・非正規差別の解消に向けて

 現在発表されている休業支援金制度は、適用対象を大企業にも拡大するなど改善がありましたが、昨年7月~12月の休業については支援金を受給することができず、また中小企業の場合には賃金の8割を補償する一方で、大企業については6割しか補償してもらえないなど、不十分な点があります。

休業手当を支払ってもらえない非正規労働者は、多数存在するとされており、特に「シフト労働者」は、シフトカット(労働時間の短縮など)やゼロシフト(雇用契約が存在するのにシフトを全く入れてもらえない)の問題が指摘されています。これらの問題を救済するためには、休業支援金制度が広く周知され、活用されていくことが必要で、支給対象期間の拡大などの改正も必要となります。

休業手当は、本来、企業が負担して労働者に支払うことが原則であるという点も忘れてはなりません。休業支援金を受給したとしても、会社が負う休業手当の支払う義務がなくなるわけではないとされており、引き続き会社に対して休業手当の支払いを求めることは可能です。

また、繰り返しになりますが、正社員と非正規労働者との間で、休業手当に格差をつけることは、雇用形態を理由とした非正規労働者に対する差別であり、パート有期法8条に違反することになります。

非正規労働者は、休業手当以外にも基本給や賞与、諸手当、勤務条件等の様々な場面で差別を受けることがあります。こうした差別解消するためには、大企業はもちろん、中小企業であっても、正社員と同等の休業手当の支払いを求めていくことが重要です。休業手当もその差別の一つの現れということができます。

 本件でも、休業手当の差別はもちろん、非正規労働者に対するあらゆる差別解消のため取り組んでいきたいと思います。

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