東京法律事務所blog

カテゴリ: 労働法制

弁護士の今泉です。
2月8日、厚生労働省で開催された第5回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長;岩村正彦東京大学教授)を前半だけ傍聴してきました。
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(写真は第4回のものhttps://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-12-28/2018122805_02_1.htmlより)
この解雇無効時の金銭救済制度、いわゆる解雇の金銭解決制度は、違法な解雇であっても一定の金銭を支払えば有効に労働契約を終了させることができる、という制度です。
現在、解雇の金銭解決制度を導入にあたって検討すべき法的な論点について、学者が中心になって議論が進められています。

解消金の上限・下限はどのように決めるか、解消金にバックペイも含めるかといった点について、制度創設にあたって検討する必要のある論点を一つずつつぶしていくという流れで進められており、いろんな論点が整理されつつあります。

今回の議論で印象に残ったのは、訴訟だけではなく労働審判にもこの制度を導入するかという点について、労働側弁護士だけでなく経営法曹(使用者側弁護士)からも反対の意見が出ているにもかかわらず、委員たちは「労働者のために」間口を広げていくべき、という議論をしていた点です。
実際に実務を担当している当事者たちの意見はあまり重視せず、とにかく同制度を広く導入していくという大きな意思に基づいて検討会が動いている印象をうけました。

既に労働審判では多くが金銭解決も含む柔軟な解決が図られています。
そこに金銭解決制度をあえて持ち込むということは、労働者にとっては単に解決金の上限を定めるという意味しかないのではと思われます。しかも、現在の議論では、解雇が違法・無効であっても、労働者に何らかの問題(帰責性)があったなら解決金を下げるということも検討されています。

検討会で解雇の金銭解決制度を固め、夏以降の労働政策審議会を通して、来年の通常国会で成立させる、というスケジュールが見込まれています。
ホワイトカラーエグゼンプション(高プロ)の次は解雇の金銭解決制度、いずれも下からの要求による制度設計ではありません。背景には米国の要求があるという見方もあります。

現場の労働者・実務家の声を無視しながら、あたかも「労働者のため」という美辞麗句ですすめられている様々な規制緩和に対して声を上げていく必要があります。

なお、金銭解決制度導入で解雇が容易になったイタリアの状況については、2016年にイタリア調査に行った小林譲二弁護士の下記記事をご参照ください。


※ これまでの流れ
○厚労省「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方検討会」研究会報告書(2017年5月31日)
○「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)
-「労働政策審議会において法技術的な論点についての専門的な検討に着手し,同審議会の最終的な結論を得て,所要の制度的措置を講じる。」
未来投資戦略2018(2018年6月15日)
-「可能な限り速やかに、法技術的な論点についての専門的な検討を行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる。」

 ○厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」2018年6月12日~


弁護士の今泉義竜です。

 

厚労省が、働き方改革一括法の政令案、省令案、指針案について、パブリックコメントを募集しています。
 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令案等に係る意見募集について

2018年8月21日が締め切りで、9月上旬に公布とのことで、意見を聞く気があるのか疑問ですが、少しでも労働者の待遇改善に役立つものになるよう、現場の声を上げていきましょう。

以下、厚労省が作成し公表した省令案等について〇として挙げ、それに対しての意見の案を→で記載します。

1 労働基準法施行規則等の一部改正

【36協定の関係】

〇労働者の過半数代表者は、使用者の意向によって選出されたものでないものとすること。

→使用者の意向が及んでいる場合は手続違反であり、同代表者によって締結された36協定には効力が認められないことを省令に明記するべきである。

〇使用者は、労働者の過半数を代表する者が事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならない。

→「必要な配慮」の具体的中身について、社内施設や社内のイントラネット利用など、具体例を省令で列挙するべきである。

〇使用者は、健康及び福祉を確保するための措置の実施状況に関する記録を前号の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存しなければならないこと

→3年では短い。賃金等労働債権の時効も5年となるし、税法上帳簿類の保存期間は7年であることとの均衡をはかるべきである。

【使用者による5日間の有給休暇の付与義務の関係】

〇使用者は、新労基法39条7項(5日間の有給付与義務)により有給休暇を与えるにあたっては、指定する時季について労働者の意見を聞かなければならない。また、使用者はその労働者の意思を尊重するよう努めなければならない。

→それに加え、「不当に権利を制限しない」と省令で明示すべきである(参議院付帯決議14)。


【上限規制の適用除外の関係】

〇上限規制の適用除外となる「建設事業」とは、
 ①法別表第一第三号に掲げる事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業)、
 ②事業場の所属する企業の主たる事業が法別表第一第三号に掲げる事業である事業場における事業、
 ③工作物の建設の事業に関連する警備の事業(当該事業において労働者に交通誘導警備の業務を行わせる場合に限る)の三つとする。

→建設事業において過労死が多発している現状の実態に鑑みれば、適用除外の範囲は極力狭く考えるべき。①に加えて②までをも適用除外の対象とするのはふさわしくない。すなわち、②事業場の所属する企業の主たる事業が建設業であったとしても、企業組織内において実際の建設事業に直接携わらない別部門で働く労働者についてまで適用除外とすべき理由はないので省令から削除すべきである。また、③の交通誘導警備の業務まで建設事業に関連する事業として対象を広げるべきではなく、省令から削除すべきである。

〇上限規制の適用除外となる「自動車運転業務」とは、
 ①一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法第3条第1号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業:一個の契約により乗車定員十人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)、
 ②貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法第2条第1項の貨物自動車運送事業:一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業)、
 ③その他四輪以上の自動車の運転の業務の三つとする。

→自動車運転業務においても長時間労働に伴う過労による事故が多発している実態に鑑みれば、適用除外とする対象事業は極力限定すべきである。省令案の挙げる3項目のうち①②については法律の規定の通りであるものの、③の「その他四輪以上の自動車の運転の業務」という項目は何ら限定となっておらず、適用除外の範囲をほぼ無制限に広げるものであって妥当でないため、省令から削除すべきである。

 

2 労働安全衛生規則の一部改正 

〇新安衛法66条の8第1項に基づき使用者が医師による面接指導をさせる義務を負うのは、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者とする。

→「疲労の蓄積が認められる者」という要件が曖昧であり、省令から削除すべきである。また、80時間は過労死ラインであり、医師による面接指導はもっと早い段階で義務付けるべきである。

〇新安衛法66条の8の2第1項(研究開発業務従事者)に基づき使用者が医師による面接指導をさせる義務を負うのは、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月あたり100時間を超えた者とする。

→100時間を超えないと面接指導の実施を義務付けないというのはあまりに緩い。もっと早い段階で医師による面接指導を義務付けるべきである。

※なお、今回のパブリックコメントは現在労政審で議論されている、上限規制や有給休暇に関わる省令等についてだけです。同一労働同一賃金は8月末から、高度プロフェッショナル制度は9月から、労政審で議論が始まります。そちらも注視していくことが必要です。

【参考資料】 
・「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

衆議院付帯決議
参議院付帯決議

 

弁護士の青龍美和子です。
 

 6月13日、お昼の11時30分~13時、新橋駅SL広場で、自由法曹団主催の高プロ反対の街頭宣伝に参加しました。

「過労死を考える家族の会」のみなさんや労働組合のみなさん、東京支部の団員・事務局の方々、総勢約60名が参加して、盛大に宣伝しました。

SLの前に、横断幕やのぼり、パネルを持ってずらっと並ぶ光景はかなり目立ちました(12時になるとSLが汽笛を鳴らすことを初めて知りました。)。目立つので通りかかる人はチラっとでも見てくれていました。チラシの受け取りもよかったようです。当日は暑かったですが、ちょうどランチタイムで人通りが多く、立ち止まって聞いてくれる人たちも結構いました。

高プロ反対3


 「家族の会」の方々から、次々と長時間労働で大切な家族の命を奪われた辛いエピソードとともに、労働時間の規制をなくす高度プロフェッショナル制度の導入によって、過労死を増やしたくない、自分たちのような思いをする人を生み出したくない、という訴えが新橋駅頭に響きました。


 ずっと立ち止まって話をきいている人がいるなあと思っていたら、旦那さんが過労で3回の自殺未遂をしたという方で、ひとごとではないと熱心に聞いてくれていたそうです。暑いなか日傘をさしてずっと聞いてくれていました。


私個人のツイッターやフェイスブックでも参加を呼びかけたところ、何人かの人から後で直接会った時に「見たよ」「行きたかったけど残念」などと声をかけられました。また、SNS上で「#高プロ止めろ全国一斉抗議」が広がっており、新橋駅や東京駅前でスタンディングをしている個人の方から、今回のような街宣を「丸ノ内でもやってほしい」とコメントいただきました。SNSでつながっている人たちも、結構見てくれています。


 私が作った「『働き方改革』法案を批判する」パワーポイントによるスライドを、パネル(A2サイズ)にして、街頭宣伝でも紹介しました。
近くに寄って写真を撮ったり、ずっと聞いてくれたりする人もいました。

高プロ反対1
当事務所の井上幸夫弁護士のブログ記事を参照して作成)


高プロ反対2



 今回の反省点は、このような街頭での宣伝を「なぜ、もっと早くやらなかったのだろう」です。
しかし、後悔しても始まりません。高プロ反対を掲げるスタンディング行動もあちこちでおこなわれています。
あきらめずに、引き続き声を上げていきたいと思います!!


当事務所では、下記の「『働き方改革』一括法案撤回の要請書」を衆議院厚生労働委員会委員に送付しました。


「働き方改革」一括法案撤回の要請書

 

厚生労働委員の先生

2018年5月21日

東京都新宿区四谷1-4 四谷駅前ビル

東京法律事務所

電話  03-3355-0611

FAX 03-3357-5742

 

                 

私たちは、弁護士31名、司法書士1名の法律事務所であり、1955年の創立以来、労働者の事件を多数取り扱い、長時間労働にまつわる事件、過労死事件も多数担当してきました。こうした経験から次のとおり要請します。

なお、当事務所の井上幸夫弁護士のブログが非常によく読まれていますのでご参照までにお読みください。

 

1 労働時間データのねつ造、過労自殺の隠蔽に基づく「働き方改革」一括法案を撤回し、残業時間の上限規制、パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法の「改正」案等を抜本的に見直して下さい。

 

2 残業代をゼロにし、過労死を激増させる高度プロフェッショナル制度は、絶対に容認できません。直ちに撤回して下さい。

また、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大は、きっぱり断念して下さい。

 

 

以上

 

 

添付 東京法律事務所Blog

 




20180521作成
衆議院 厚労委員名簿4桁の番号の頭は3508
役職名前所属FAX番号
委員長髙鳥 修一自民3987
理 事後藤 茂之自民3452
理 事田村 憲久自民3502-5066
理 事橋本 岳自民3816
理 事堀内 詔子自民3367
理 事渡辺 孝一自民3881
理 事西村 智奈美立憲3994
理 事岡本 充功国民3212
理 事桝屋 敬悟公明3703
 赤澤 亮正自民3370
 秋葉 賢也自民3632
 穴見 陽一自民3716
 安藤 高夫自民3715
 井野 俊郎自民3219
 大岡 敏孝自民3208
 木村 哲也自民3039
 木村 弥生自民3597-3340
 国光 あやの自民3836
 小泉 進次郎自民なし
 小林 鷹之自民3997
 後藤田 正純自民3315
 佐藤 明男自民3815
 塩崎 恭久自民3619
 繁本 護自民3521
 白須賀 貴樹自民3916
 田畑 裕明自民3454
 高橋 ひなこ自民3821
 長尾 敬自民3360
 船橋 利実自民3537
 三ッ林 裕巳自民3896
 山田 美樹自民3837
 池田 真紀立憲3808
 尾辻 かな子立憲3935
 長谷川  嘉一立憲3827
 初鹿 明博立憲3241
 吉田 統彦立憲3404
 大西 健介国民3408
 白石 洋一国民3514
 山井 和則国民8882
 柚木 道義国民3301
 伊佐 進一公明3631
 中野 洋昌公明3415
 高橋 ちづ子共産3936
 足立 康史維新6410
 柿沢 未途無所属8807




弁護士の今泉です。

高度プロフェッショナル制度について、憲法学者の木村草太教授が、憲法上の疑問点を指摘しています。
木村草太の憲法の新手(80)高度プロフェッショナル制度 労働者側にメリットなし

要旨は、高プロの規定の肝心部分が「厚生労働省令で定める」と行政の判断で変えられる形となっており、国会が労働基準を決定しているとは言えず、憲法27条2項「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」との規定と整合しない、というものです。
憲法学者ならではの重要なご指摘です。

労働法学者の菅野和夫氏は「労働法」(第11版29頁)にて
「憲法27条2項は、その政策義務に明白に反する国の立法および行政行為を違憲無効ならしめるという自由権的効果をも包含している」
と述べています。

また、労働法学者の西谷敏氏は、「労働法」(第1版26頁)にて、「過剰な規制が許されない(過剰禁止)と同時に、必要な規制をしないことも禁じられ(過少禁止)、国の立法裁量はこの枠内において認められる」
と述べています。

年104日、4週4日の休日のみが保障されるだけで、
4週28日の最後の4日間休日を与えれば、24日連続で24時間勤務を命じることも合法となるのが高プロ制度です。
これは、どんな立場であっても否定することのできない、本法案の内容です。

このような立法は、労働者保護のために必要かつ適切な労働条件基準を定めるという政策義務に
明白に反する国の立法であり、「過少規制」に該当するものといえます。
国会に与えられた立法裁量の範囲を逸脱しているというべきです。

また、労働者の「休む権利」を保障した労基法の規定を適用除外とする高プロ制度が適用されれば、
健康で文化的な最低限度の生活を維持することはおよそ不可能であり、憲法25条にも反するといえます。

憲法違反の高プロ制度の強行採決は許されません。

22日は日比谷野音へお越しください!
#0522野音

0522yaon1








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