東京法律事務所blog

カテゴリ: 弁護士

 弁護士の中川勝之です。

 大田区(区長松原忠義)が「会計年度任用職員制度」への移行による組合員の労働条件の変更等について申し入れた団体交渉に応じないこと等について、東京公務公共一般労働組合が東京都労働委員会に対して救済命令を申し立てた事件(都労委平成31年不第32号)の第3回調査が8月28日に行われました。

 大田区からは8人の代理人が出席(対席時)していました。

 大田区は7月いっぱい団体交渉拒否を繰り返し、同月31日の第2回調査で、ようやく次のことが決まりました(第2回調査調書の記載による)。

 次回期日に向けて、申立人(注:組合)と被申立人(注:大田区)との間で、8月下旬から9月初旬までに適切なやり取りを行う話合いの機会を設けて、次回期日はその報告を求めることとなった。

 第2回調査を受け、8月14日及び同月21日に「やり取りを行う話合いの機会」があり、大田区の発言内容は、雇用、労働時間(日数、各日の時間等)、賃金(報酬)にわたって不十分なものでしたが、前進の兆しはあります。

 1点目は、雇用に関する問題です。大田区は、現在非常勤職員に適用してきた5年更新限度の残余年数を、会計年度移行に際しても「公募によらない再度任用の回数限度の残余年数として継承させる」という制度案について、2020年3月で5年満期となる者に、2020年度に限り「特例選考」(公募に寄らない、内部的選考方法を指す)を例外的に適用すると初めて提案してきました。但し、2021年度以降については、実施の中で研究していくとの考えでした。

 2点目は、労働時間のうちの勤務時間帯の問題です。大田区は、「勤務時間帯を5通りのラウンドで働いてもらう」という提案を従前していましたが、2020年度に限り、現状の勤務時間帯の維持も検討できると提案してきました。なお、「やり取りを行う話合いの機会」後に、勤務時間帯の維持は最大5年間等と大田区は提案内容を拡大しました。

 1点目、2点目の両方が以前のブログで紹介した大田支部長に関わる問題です。
 意見陳述のおしまいの方に下記のように書かれています。

 私事ですが、新制度には3時間という働き方がありません。ダブルワークをしている私には、前の仕事を辞めるしかありません。また、私は今年5年満期です。1年~4年勤続の人たちは特別でスライドできるようですが、5年満期の者は改めて公募による応募をしなければならないとのことで、とても不安です。長く働いてきた者がふるいにかけられるなんて変です。働きたい人は全員働き続けられるようにして頂きたいと思います。

 いずれにせよ、大田区の提案は限定的であり、しかも、大田支部長が勤務する非常勤保育士については資格要件を突如持ち出し、従前必要ではなかった保育士資格が必要等と主張して幼稚園免許取得者である大田支部長を排除しようとする動きがありますので要注意です。

 いよいよ大田区議会の令和元年第3回定例会は9月12日招集であり、近々、「やり取りを行う話合いの機会」もありますが、皆様からのご支援を宜しくお願いします。
組合としては、大田区宛及び都労委宛の署名を団体と個人に分けて集めることとしたので、あわせてご協力の程宜しくお願いします(第1次集約は9月20日)。

 第4回調査期日は、10月16日(水)午後1時30分からです。
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弁護士の今泉です。

先日、平井康太弁護士と千葉地裁で取り組んでいた整理解雇事件の仮処分で
賃金の仮払いを命じる勝利決定をとることができました。

解雇事件の賃金仮払いの仮処分というのは、
解雇を争って最低1年はかかる通常訴訟をやっていたのでは労働者の生活が立ち行かなくなるので、
解雇が有効か無効か、賃金債権を保全する必要があるかどうかについて短期間の書面のやり取りで審理する手続きです。
労働者側に分があると裁判所が判断すれば、
通常訴訟で決着するまでの1年くらいの間、暫定的に賃金(全額ではなく、生活がギリギリ何とかなる程度)を仮払いするよう会社に命じます。

先日勝利決定を取った事件は、申立から決定までに約4カ月かかりました。
解雇事件の場合、解雇理由を巡って会社側が膨大な反論をしてくることも多く、
裁判所も会社側にそれなりに主張立証の機会を与えて慎重に判断をするので、
4か月程度はかかってしまうことが一般的です。
迅速性が求められるはずの仮処分手続きでこれだけの期間をかけるのが果たして「仮処分」の名に値するのか、
裁判所は決定を出すのに躊躇しすぎだといつも疑問に感じるところです。
通常会社には相応の資金がある一方、労働者は解雇ですぐに生活の危機にさらされるわけで、
暫定的な判断をもっと迅速にできないものでしょうか。

一方、最近私が取り組んだ別の解雇事件の仮処分手続きでは、
申立から2か月程度で、会社が1年間賃金の仮払いをするという和解で決着をすることができました。
これは、解雇理由についての客観的根拠が示せなかった会社側に対して裁判所が強く和解を勧めたことによるものです。

決定を出すまでに時間がかかるのであれば、こうして裁判所が会社を強く説得する形で
暫定的な仮払いの和解をさせるというのは悪くはないと感じます。

いずれの事件も、仮払いを受けながら本訴できっちりと勝負していくことになります。


 弁護士の中川勝之です。

 遅くなりましたが、7月27日に「オリパラ都民の会第9回提言討論会 これでいいのか2020東京オリンピック」(2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会主催)に参加しましたので、その後も踏まえ、少しだけ報告します。
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 まずは、1964年の東京オリンピックについての体験が数人から語られました。当時、中学生、高校生、大学生、さらには社会人であった方の話でした。

 具体的な問題点としては、私も弁護団の一員である「晴海選手村土地投げ売りを正す会」住民訴訟の問題、大会経費の問題、学校教育・行事への影響の問題、酷暑・熱中症の問題等が報告されました。

 学校の先生から、「オリンピックの常識・非常識」として2点取り上げられたことについて私が初めて知ったので紹介します。東京都教育委員会が「オリンピック・パラリンピック学習読本」を各学校に配布しているそうですが、それが取り上げない2点とのことで、その1だけを紹介します。

国別のメダル競争は禁止?
 
 オリンピック憲章57条でランキング表作成が禁じられているとのことで、理由は、メダル獲得は、選手の栄誉であって、国の栄誉ではないからとのことでした。ネットで調べると、次のとおりでした(下線は私)。

57 Roll of honour

The IOC and the OCOG shall not draw up any global ranking per country. A roll of honour bearing the names of medal winners and those awarded diplomas in each event shall be established by the OCOG and the names of the medal winners shall be featured prominently and be on permanent display in the main stadium.

57 入賞者名簿

IOCOCOGは国ごとの世界ランキングを作成してはならない。OCOG は各種目のメダル獲得者と、賞状を授与された選手の氏名を記す入賞者名簿を作成し、メダル獲得者の氏名をメーンスタジアム内に目につきやすいよう、恒久的に掲示するものとする。

 OCOGとは各国の「オリンピック競技大会組織委員会」です。でも、新聞とか読むと、ランキング表とかがあるのは、「マスコミが勝手にやっている」からだそうです。

 私からは、オリンピックのスポンサーの中に労働争議が存在する企業があることを発言しました。
 後で調べたところ、
「東京2020オリンピックゴールドパートナー」の中には、
 株式会社アシックス、株式会社明治
「東京2020オリンピックオフィシャルパートナー」の中には、
 東京地下鉄株式会社、日本郵政株式会社、日本航空株式会社
があり、私が知っている限り、同社又は子会社において労働争議が存在していると思います。

 討論会参加後、オリンピックに関する報道がされる中で、トライアスロンの会場となるお台場が話題となりました。
 そこで、「2016石原オリンピック招致反対行動の記録」を開いてみたら、「2016東京招致の問題点とオリンピック運動の今後について」と題する意見書をIOCに対して「異議あり!2016石原オリンピック連絡会」が送付していたことに気付きました。
 その意見書には「また、トライアスロンのスイムや水泳の10kmマラソンなどの屋外の水泳会場も、「8km」に競技会場を集中させるために都心部付近の東京湾内に指定されています。その予定地である「お台場」は、環境省の水浴場水質判定基準に照らして「不適」とされる海域であり、2016年までに浄化される具体的な見通しを示されていません。」と記載されていました。

 開催まで11か月弱ですが、今後も東京2020オリンピック・パラリンピックに注目していきたいと思います。

弁護士の岸朋弘です。
この夏の前半は、アメリカに赴き、労働運動や社会運動に取り組んでいる人たちと交流してきました。

アメリカといえば移民国家。そこで今回の連載では、移民と憲法というテーマを考えたいと思います。

今日の日本には、たくさんの「移民」(この投稿では、国境を越えて別の地に移住した人を指しています)が暮らしています。政府は「移民は受け入れない」「移民政策をとらない」などと説明していますが、それは現実から目を背けるものに過ぎません。

また、今年4月には改正入管法が施行され、新たな移民労働者の受入れが始まり、今後より多くの移民が日本で暮らすようになることは確実です。それでは、彼ら彼女らの基本的人権は憲法でどのように扱われているのでしょうか。
 
基本的人権について定めている憲法第3章の表題は「国民の権利及び義務」となっています。

これを形式的に捉えると、日本国籍を持たない者(「外国籍者」と呼びます)は基本的人権の享有主体にならないと考えてしまうかもしれません。しかし、基本的人権は国家が存在するか否かにかかわらず生まれながらにして当然に享有すべきものであること、日本国憲法が国際協和を謳っていることなどから、外国籍者にも基本的人権が保障されると考えられています。権利の性質上、日本国民のみを対象としている人権につ�いては外国籍者には保障されないと考えられていますが、実際には、日本国民のみを対象としているというべき人権は極めて限定されるというべきです。

ここで重要なのは、外国籍者の人権も憲法によって保障されているということであって、政治的・道義的に外国籍者が保護されるわけではないということです。そのため、外国籍者であるからといって、不当に権利を奪われれば憲法で保障された人権侵害の問題になるのです。
 
しかしながら、現在、日本で暮らす移民の人権が十分に尊重されているとはいえない状況があります。

例えば、驚くべきことに外国籍の子どもについては義務教育の対象外です。そのため、憲法26条1項が定める「教育を受ける権利」を十分に実現できない外国籍の子どもたちがいます。

また、オーバーステイとなってしまった外国籍の人々は健康保険に加入できず、十分な医療を受けることができません。これは、憲法25条1項の定める生存権が実現されていない例といえます。

さらに、基本的人権の根底にある「個人の尊厳」を否定するヘイトスピーチも行われているにもかかわらず、それへの対策は不十分であることが指摘されています。これは憲法13条の問題ということもできます。

以上はほんの一例で、今日の日本では移民の権利が多く奪われています。

日本が既に移民社会である現実と向き合い、国籍やルーツを問わず基本的人権が保障され共生できる世の中のための施策が採られることが急務です。そして何より私たちひとりひとりが、移民として生活している人々の人生に思いを巡らせることが求められています。


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(アメリカにて)

 弁護士の中川勝之です。

 

 大田区(区長松原忠義)が「会計年度任用職員制度」への移行による組合員の労働条件の変更等について申し入れた団体交渉に応じないこと等について、東京公務公共一般労働組合が東京都労働委員会に対して救済命令を申し立てた事件(都労委平成31年不第32号)の第2回調査が7月31日に行われました。

 

 大田区からは第1回調査でも9人の代理人が出席していましたが、第2回調査でも8人の代理人が出席(対席時)していました。

 

 組合は第1回調査後の7月10日に団体交渉を申し入れましたが、大田区は同月17日に団体交渉を拒否し、やむなく組合は同月20日にも団体交渉を申し入れましたが、大田区は同月23日にやはり団体交渉を拒否してきました。

 

 組合は、大田区の答弁書に対して準備書面(1)で、審査の実効確保の措置勧告申立てに係る答弁書に対して準備書面(2)でそれぞれ反論し、さらには立会い団体交渉の要請書を提出して、団体交渉の開催を強く迫りました。

 

 その結果、第2回調査では、その名称はともかく、複数回の「やり取り」(大田区の言葉)ないし「話し合い」(公益委員の言葉)をすることになりました。

 

 組合は他区とは団体交渉を進めており、成果も勝ち取っています。準備書面(1)では江東区や世田谷区との団体交渉について、次のような主張もしました。

例えば、組合は、江東区と会計年度任用職員について団体交渉を進め、2019年5月30日、江東区との間で、「会計年度任用職員制度における公募によらない再度の任用に関する確認書」を締結した(甲16、17)。2019年度(2020年3月31日時点)で江東区の非常勤職員が会計年度任用職員に採用(任用)された場合、任用上限(更新回数制限)がない等の画期的な内容である。

なお、同確認書でいう「一般非常勤職員」とは特殊な職にかかる非常勤職員ではないという意味で特別職非常勤職員であり、地方公務員法17条に基づく一般職非常勤職員を意味するものではない。

 他にも、組合は、世田谷区とも会計年度任用職員について団体交渉を進め、世田谷区からの「会計年度任用職員制度の導入及び特別職非常勤職員制度の廃止について」の提案について、「公募によらない再度の任用」の上限回数が設定されないこととされた。また、2020年3月31日現在、世田谷区で任用されている特別職非常勤職員については、現在の職の職務内容と同様の会計年度任用職員制度の職が設置される場合、当該職員は、その職の「公募によらない採用選考」に申込みができることとされた。そのため、2019年6月14日、世田谷区に対し、了承する旨連絡した(甲18)。江東区と同様、2019年度(2020年3月31日時点)で世田谷区の非常勤職員が会計年度任用職員に採用(任用)された場合、任用上限(更新回数制限)がない等の画期的な内容である。

 以上のとおり、組合は、会計年度任用制度の導入に際しての雇用・労働条件について、各区と団体交渉を実施し、労使合意も勝ち取っている区もあり、組合としてはその取り組みを全都に広げていこうとしているところである。大田区も組合からの団体交渉に誠実に応じるべきである。

 
 
大田区議会の令和元年第3回定例会は9月12日招集と予定されており、組合との「やり取り」ないし「話し合い」の内容が注目されます。

 

 特別区人事・厚生事務組合の対応には矛盾・変遷等があり、準備書面でも主張しましたが、ここでは公表を差し控えておきます。

 

組合としても大田区が不誠実な対応を続けるのであればストライキの検討も辞さないとの強い態度で臨んでいます。第3回調査期日は、8月28日(水)午後4時からです。皆様からのご支援を宜しくお願いします。

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