東京法律事務所blog

タグ:テロ等準備罪

弁護士の今泉義竜です。

著名ジャーナリスト・山口敬之氏の不起訴に対し、被害者である女性が検察審査会に不服申立をしたという記事がありました。
「私はレイプされた」。著名ジャーナリストからの被害を、女性が実名で告白
被害者が実名で声をあげるというのは大変勇気のいる、貴重なことだと思います。
検察審査会は真摯に受け止めて公正な判断を下してほしいと思います。

ところで、週刊新潮などの報道によると、
この準強姦罪もみ消しの疑惑がもたれているのが中村格氏という方で、
共謀罪摘発を統括する予定の警察庁組織犯罪対策部長とのことです。
(高山佳奈子先生のフェイスブックからの情報)
警察庁人事

実は、「共謀罪」と「もみ消し」というのは親和性があります。

というのも、共謀罪(テロ等準備罪)法案には、「偽証の共謀罪」も含まれています。
捜査機関の見立てと異なる証言をしようとする者とその支援者(弁護士含む)を
「偽証の共謀容疑」で逮捕することも不可能ではありません。
冤罪を晴らすための第三者の証言についても、証言する前に偽証の共謀で摘発される危険が指摘されています。実際、真実を述べようとする第三者に対する捜査機関による圧力はこれまでにも多く報告されています。

加害者が政権と関係する重要人物である場合にも、
事件をもみ消す目的でこの偽証の共謀罪が濫用される危険は非常に高いと思われます。

共謀罪というのは捜査機関による事件もみ消し、権力の不正隠蔽にも好都合なツールなのです。

弁護士の今泉義竜です。
5月19日に衆議院法務委員会で採決が強行された共謀罪(テロ等準備罪)について、国連から日本政府に対して懸念を示す書簡が届いています。

「恣意的運用」国際視点から警告 国連報告者、首相に書簡 「共謀罪」採決強行/東京新聞
プライバシー制約の恐れ 国連報告者、政府に書簡/毎日新聞

政府は、TOC条約締結のために共謀罪(テロ等準備罪)が必要だという国内向けの嘘を押し通してきましたが、
国連報告者は、「新法案は、国内法を『国境を越えた組織犯罪に関する国連条約』に適合させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑問があります。」
と述べています。

日本政府は国連からの懸念と質問にどう答えるのでしょうか。

東京共同法律事務所の海渡雄一弁護士の解説及び海渡雄一・木下徹郎・小川隆太郎各弁護士による書簡の翻訳を転記します。


 

 

2017.5.20

国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏による

日本政府に対する質問状について(解説)

           海渡 雄一(共謀罪NO!実行委員会)

 

国連プライバシー権に関する特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏が、518日、共謀罪(テロ等準備罪)に関する法案はプライバシー権と表現の自由を制約するおそれがあるとして深刻な懸念を表明する書簡を安倍首相宛てに送付し、国連のウェブページで公表した。

書簡の全文は次のところで閲覧できる。

 http://www.ohchr.org/Documents/Issues/Privacy/OL_JPN.pdf

書簡では、法案の「計画」や「準備行為」、「組織的犯罪集団」の文言があいまいで、恣意的な適用のおそれがあること、対象となる277の犯罪が広範で、テロリズムや組織犯罪と無関係の犯罪を多く含んでいることを指摘し、いかなる行為が処罰の対象となるかが不明確であり刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があるとしている。

 さらに、共謀罪の制定が監視を強めることになることを指摘し、日本の法制度において、プライバシーを守るための法的な仕組み、監視捜査に対する令状主義の強化や、ナショナル・セキュリティのために行われる監視活動を事前に許可するための独立した機関の設置など想定されていないことを指摘している。また、我が国の裁判所が、警察の捜査に対する監督として十分機能していないとの事実認識を示している。

 そのうえで、政府に対して、法案とその審議に関する情報の提供を求め、さらに要望があれば、国連から法案の改善のために専門家を派遣する用意があることまで表明している。

 日本政府は、この書簡に答えなければならない。

 また、日本政府は、これまで共謀罪法案を制定する根拠として国連越境組織犯罪防止条約の批准のためとしてきた。同じ国連の人権理事会が選任した専門家から、人権高等弁務官事務所を介して、国会審議中の法案について、疑問が提起され、見直しが促されたことは極めて重要である。

日本政府は、23日にも衆議院で法案を採決する予定と伝えられるが、まず国連からの質問に答え、協議を開始し、そのため衆議院における法案の採決を棚上げにするべきである。そして、国連との対話を通じて、法案の策定作業を一からやり直すべきである。

 

プライバシーに関する権利の国連特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ氏

共謀罪法案について安倍内閣総理大臣宛の書簡全体の翻訳

 

翻訳担当 弁護士 海渡雄一・木下徹郎・小川隆太郎

(質問部分の翻訳で藤本美枝弁護士の要約翻訳を参照した)

 

 

国連人権高等弁務官事務所

パレスデナシオンズ・1211ジェネバ10、スイス

TEL+ 41229179359 / +41229179543FAX+4122 917 9008E-Mailsrprivacy@ohchr.org

 

 

プライバシーに関する権利に関する特別報告者のマンデート

 

参照番号JPN 3/2017

2017518

 

内閣総理大臣 閣下

 

私は、人権理事会の決議28/16に基づき、プライバシーに関する権利の特別報告者としての私の権限の範囲において、このお手紙を送ります。

 

 これに関連して、組織犯罪処罰法の一部を改正するために提案された法案、いわゆる「共謀罪」法案に関し入手した情報について、閣下の政府にお伝え申し上げたいと思います。もし法案が法律として採択された場合、法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があります。

 

 入手した情報によりますと次の事実が認められます:

 

 組織的犯罪処罰法の一部を改正する法案、いわゆる共謀罪法案が2017321日に日本政府によって国会に提出されました。

 

改正案は、組織的犯罪処罰法第6条(組織的な殺人等の予備)の範囲を大幅に拡大することを提案したとされています。

手持ちの改正案の翻訳によると、新しい条文は次のようになります:

 

6

(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)

次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ) の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

 

 

安倍晋三首相 閣下

内閣官房、日本政府

 

 さらにこの改正案によって、「別表4」で新たに277種類の犯罪の共謀罪が処罰の対象に加わることになりました。これほどに法律の重要な部分が別表に委ねられているために、市民や専門家にとって法の適用の実際の範囲を理解することが一層困難であることが懸念がされています。

 

 加えて、別表4は、森林保護区域内の林業製品の盗難を処罰する森林法第198条や、許可を受けないで重要な文化財を輸出したり破壊したりすることを禁ずる文化財保護法第193条、195条、第196条、著作権侵害を禁ずる著作権法119条など、組織犯罪やテロリズムとは全く関連性のないように見える犯罪に対しても新法が適用されることを認めています。

 

新法案は、国内法を「国境を越えた組織犯罪に関する国連条約」に適合させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑問があります。

 

政府は、新法案に基づき捜査される対象は、「テロ集団を含む組織的犯罪集団」が現実的に関与すると予想される犯罪に限定されると主張しています。

 しかし、「組織的犯罪集団」の定義は漠然としており、テロ組織に明らかに限定されているとはいえません。

新たな法案の適用範囲が広い点に疑問が呈されていることに対して、政府当局は、新たな法案では捜査を開始するための要件として、対象とされた活動の実行が「計画」されるだけでなく、「準備行為」が行われることを要求していると強調しています。

しかしながら、「計画」の具体的な定義について十分な説明がなく、「準備行為」は法案で禁止される行為の範囲を明確にするにはあまりにも曖昧な概念です。

 

これに追加すべき懸念としては、そのような「計画」と「準備行動」の存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起訴に先立ち相当程度の監視が行われることになると想定されます。

このような監視の強化が予測されることから、プライバシーと監視に関する日本の法律に定められている保護及び救済の在り方が問題になります。

 

 NGO、特に国家安全保障に関する機密性の高い分野で活動するNGOの業務に及ぼす法律の潜在的影響についても懸念されています。政府は、法律の適用がこの分野に影響を及ぼすことがないと繰り返しているようです。

しかし、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さが、例えば国益に反する活動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を作り出す可能性があるとも言われています。

 

 最後に、法律原案の起草に関する透明性の欠如と、今月中に法案を採択さえようとする政府の圧力によって、十分な国民的議論の促進が損なわれているということが報告で強調されています。

 

 提案された法案は、広範な適用がされる可能性があることから、現状で、また他の法律と組み合わせてプライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念が示されています。

とりわけ私は、何が「計画」や「準備行為」を構成するのかという点について曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために法が恣意的に適用される危険を懸念します。

 

法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確かつ正確な規定により限定されなければならないことを求め、もって何が法律で禁止される行為なのかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範囲が広がらないようにしています。現在の「共謀罪法案」は、抽象的かつ主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性をもたらすことから、この原則に適合しているようには見えません。

 

プライバシーに関する権利は、この法律の幅広い適用の可能性によって特に影響を受けるように見えます。更なる懸念は、法案を押し通すために早められているとされる立法過程が、人権に悪影響を及ぼす可能性がある点です。立法が急がれることで、この重要な問題についての広範な国民的議論を不当に制限することになります。

 マンデートは、特にプライバシー関連の保護と救済につき、以下の5点に着目します。

 

1 現時点の法案の分析によれば、新法に抵触する行為の存在を明らかにするためには監視を増強することになる中にあって、適切なプライバシー保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置にはないと考えられます。

 

2 公開されている情報の範囲では、監視に対する事前の令状主義を強化することも何ら予定されていないようです。

 

3 国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていないようです。このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると思われます。

 

4 更に、捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念があります。すなわちこれらの機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督です。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と検証の質という問題が含まれます。

 

5 嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める広範な機会を与えることになることから、新法の適用はプライバシーに関する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されます。入手した情報によると、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付するようです。2015年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められたようです(数字によれば、却下された令状請求はわずか3%以下に留まります。)

 

私は、提案されている法改正及びその潜在的な日本におけるプライバシーに関する権利への影響に関する情報の正確性について早まった判断をするつもりはありません。ただ、閣下の政府に対しては、日本が1978年に批准した自由権規約(ICCPR171項によって保障されているプライバシーに関する権利に関して国家が負っている義務を指摘させてください。

自由権規約第17条第1項は、とりわけ個人のプライバシーと通信に関する恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような干渉から保護される権利を有することを規定しています。

さらに、国連総会決議A/RES/71/199も指摘いたします。そこでは「公共の安全に関する懸念は、機密情報の収集と保護を正当化するかもしれないが、国家は、国際人権法に基づいて負う義務の完全な履行を確保しなければならない」とされています。

 

人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回答いただけますと幸いです。

 

1.上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞かせください。

 

2.「組織犯罪の処罰及び犯罪収入の管理に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい。

 

3.国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。

 

4.法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。

 

要請があれば、国際法秩序と適合するように、日本の現在審議中の法案及びその他の既存の法律を改善するために、日本政府を支援するための専門知識と助言を提供することを慎んでお請け致します。

 

最後に、法案に関して既に立法過程が相当進んでいることに照らして、これは即時の公衆の注意を必要とする事項だと考えます。したがって、閣下の政府に対し、この書簡が一般に公開され、プライバシーに関する権の特別報告者のマンデートのウェブサイトに掲載されること、また私の懸念を説明し、問題となっている点を明らかにするために閣下の政府と連絡を取ってきたことを明らかにするプレスリリースを準備していますことをお知らせいたします。

 

閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会の検討のために提出される報告書に掲載いたします。

 

閣下に最大の敬意を表します。

 

ジョセフ・ケナタッチ

プライバシーに関する権利の特別報告者

 


5月16日午前中の衆院法務委員会参考人質疑で、当事務所加藤健次弁護士が意見を述べました。

東京新聞が記事にしています。
「共謀罪法案 5識者が意見 維新参考人も反対」

PK2017051602100188_size0


以下に発言の速記録をご紹介します。

 
P5160590

【速記録より】

本日は、意見陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます。私は今、自由法曹団という全国約二千百名の弁護士が加入する団体の幹事長を務めております。きょうは、共謀罪を創設する法案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。

 

本法案に対する重要な論点の一つに、共謀罪の創設がいわゆる監視社会をもたらすのではないかという点があります。政府の方からは、例えば捜査機関において適切な運用がなされるとか、あるいは一般人が対象となることはないという答弁がなされております。しかし、これらの答弁は、法案の規定の内容からも、また警察等が現に行っている活動に照らしても、説得力のあるものではないというふうに考えます。

 

私たち弁護士は、具体的な事件を通じて捜査機関の具体的な活動内容に触れる機会がたくさんあります。今回、法案の審議に資するために、警察による市民監視が問題となった具体的事例を紹介することによって審議を深めていただこうと思いまして、事例集をつくりました。本日は、資料③ということで、今も行われている市民監視の実態事例集、そういう資料を配付させていただいております。そういう具体的な事実に基づいた議論をしていただきたいということで、以下、意見を述べさせていただきます。

 

まず、この事例集の具体的な事件を紹介する前に、市民の側から見た場合に警察というのは一体どういう活動を行っているのかという、特に情報収集にかかわる活動について、資料①、②を作成いたしました。よく国会の議論を聞いておりますと、いつ逮捕されるのかとかいう議論がされておりますけれども、実際に我が国の警察の活動は、警察法二条一項に基づく公共の安全と秩序の維持という、この目的のための情報収集活動、いわゆる行政警察あるいは予防警察と呼ばれる側面と、それから、実際に犯罪の嫌疑が生じた場合の犯罪捜査、いわゆる司法警察に大別をされます。そして、捜査の中には、令状を必要とする強制捜査、令状を必要としないいわゆる任意捜査と呼ばれているものに大別をされているわけですが、ここで確認をしていただきたいのは、警察による情報収集というのは、行政警察、司法警察を通じて、いわば切れ目なく、シームレスに行われているということです。そしてもう一つは、逮捕とか捜索・差し押さえ実はプライバシーを大きく侵害しかねない活動が現に行われております。この点は、いわゆる行政警察における情報収集においても同様の活動が行われていることをまず注意していただきたいというふうに思います。

 

結論から言いますと、共謀罪を創設するということは、犯罪の成立時期を、具体的な結果発生、あるいは結果発生の危険性がある段階よりも前に前倒しをすることになります。

kato1
kato2


 この表でいいますと、①、②を比べていただくと、捜査の開始時期がかなり早まるということが御理解いただけるというふうに思います。しかも、この前倒しというのは単に時間的に早くなるというだけではなくて、客観的な結果が発生していない、あるいは客観的に見て結果の発生の危険性、そういうものを示すものがない、そういう段階での捜査の開始になりますから、極めてハードルが低くなり、濫用の危険が多くなる。そういう意味で、この共謀罪の創設は、警察の情報収集活動、捜査権限の拡大につながるということは明らかだというふうに考えます。

 

幾つか具体的な事例を御紹介いたします。事例集の二ページに、大垣市における大垣署の市民監視事件を紹介してあります。これは、風力発電に反対する運動が広がる、そういう見込みのもとに、大垣警察がさまざまな市民の情報を収集し、風力発電を計画している会社に提供したというものであります。この中で、大垣警察の署員は、大垣警察署としても回避したい行為、つまりこの反対運動が広がることを回避したい、そして、今後情報をやりとりすることによって平穏な大垣市を維持したい、それで協力をお願いするというふうに述べています。しかも、岐阜県警は、当事者からの質問状あるいは抗議に対して、大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしましたというふうに明確に回答しております。

 

それから、四ページの、イスラム教徒、いわゆるムスリム監視事件においては、警察が、我が国に居住するイスラム諸国会議機構に加盟する五十七カ国の出身者全員の身元把握を目標にして、大使館員を含むムスリムに対する情報収集活動を行ったというものです。これはまさに、犯罪の嫌疑も何もない段階でムスリム全体をテロ予備軍というふうに勝手に決めつけて情報収集を行う、プライバシーを侵害するというものでした。

 

そして、三ページにある別府の盗撮事件。これは実は、警察の弁解によりますと、公職選挙法違反の捜査という名目で労働組合事務所の人の出入りを盗撮していたという事案です。このときの犯罪の嫌疑というのは何かというと、この労働組合事務所には公務員の労働者が出入りしている、そうすると、この公務員労働者が公職選挙法違反をする可能性があるから、それを捜査するために盗撮したというのが警察の言い分です。そして、この事件が発覚した後、警察庁は、要するに無断で敷地に入って設置したのが間違っていた、そういう総括をいたしまして、令状なしの盗撮をもっと、見つからないようにというか、問題にならないようにやれ、そういう通達を出しております。

 

こうしたいわゆる警察の市民監視の事件は、たまたま一人、二人の警察官が思いつきで行ったとか、突出して行ったというものではありません。いずれも、警察の組織方針に基づいて、日常活動として行っている活動です。そして、このときに警察が何をもって公共の安全と秩序に反するものとみなすのか、あるいは公職選挙法に違反する人たちとみなすのかというのは、結局、監視をする警察の判断に委ねられている、そういうことがこの事例からもおわかりいただけるというふうに思います。ぜひこの点を前提にした議論をお願いしたいというふうに考えております。

 

次に、事例集にも掲載されておりますが、私が直接関与しました、堀越さんという方の国家公務員法事件。これは、国家公務員であった堀越さんが休日に赤旗号外を配布したことが政治的行為の禁止規定に反するということで逮捕、起訴された事件です。約九年にわたる裁判を経て、最高裁は、二〇一二年十二月七日に、この堀越さんの機関紙配布行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない、そういうふうに判断をしまして、無罪判決を言い渡しました。

つまり、法益侵害の危険性がない、そうい活動の自由として保障されるべき行為でありますが、この行為を把握するための捜査と称して、どのような形で堀越さん本人、それから関係者のプライバシー侵害がされたかということです。

お手元に資料④というのを配ってあります。これは行動確認実施結果一覧表と申しまして、警察というのは尾行のことを行動確認といいますが、その結果の一覧表であります。この出所は、この裁判で裁判所の勧告に応じて検察から提出された資料の一部をコピーしたものですから、出所は明らかであります。

katokodokakunin
katokodokakunin_01
katokodokakunin_02
katokodokakunin_03

全部を紹介している暇はないのですが、例えば一枚目の十月十二日の欄を見ていただきたいと思います。この日は休みで、日曜日なんですけれども、自宅を出てから、最後はカラオケ屋に入るんですけれども、そこまでびっちり捜査員六名が尾行し、行動を確認しています。この中で、堀越さんが演劇を見に行く、一緒に行った人、それからその後一緒に飲食店に入った人、さらにはその後カラオケに入った人、この人たちは全部監視の対象となっております。そして、この中で、居酒屋に入った後も尾行を続けておるんですね。この点について、実際にこの尾行をした警察官に、なぜ居酒屋に行った後も尾行を続けておるんですかと聞いたところ、いや、飲んだ後だってビラをまく可能性があるというふうに明確にお答えになりました。

結局、この堀越さんの事件では、三日間の配布行為だけが起訴の対象となっているんですが、二十九日間にわたって、捜査員延べ百七十一名、少なくとも四台の車両と六台のビデオカメラが使用され、堀越さんの行動は、こうやって記録に残されるだけではなく、ビデオカメラにもおさめられておりました。ここで強調したいのは、堀越さんというターゲットを決めた瞬間に、本人のプライバシーがまず丸裸にされるだけではなくて、これと接触するあらゆる人が監視の対象、プライバシーの侵害の対象となる、この現実が実際にあったということです。

この事件は、最終的には無罪になりました。しかし、こうした堀越さんの権利侵害に対する謝罪等は全く行われておりません。

詳しいことは後で資料を読んでいただきたいのですが、こうした事例からわかることは、一つは、警察というのは、法律上与えられた権限を抑制的に使うということはないということです。真面目な警察官ほど、使えるものは全て使うというのが警察の実態です。

それからもう一つは、そのときに何を監視の対象とするか、例えば先ほど言っている公共の安全と秩序の維持に反する動き、あるいは反する人は誰なのか、あるいは犯罪を犯したと思われる人は誰なのか、この判断が極めて恣意的かつ主観的に行われていることです。

とりわけ、今の政府に反対の意見を持っている、そういうグループあるいは人に対しては警察は極めて厳しい目で監視をしているということが、これらの事例からわかるというふうに思います。

 

それから、あと、事例集の六ページに高層マンション建設反対の事例を挙げました。実際、私たちも弁護士の仕事をしておりますと、高層マンションが建って環境が破壊される、何とかしたいという相談を受けることはたくさんあります。当然、住民の皆さんは、何とか建設をやめてもらいたいということで、どうやったら建築をとめられるかということを一生懸命考えます。そして、現場でいろいろなやりとりをするわけですけれども、威力業務妨害に当たるかどうかというのは、現場でのやりとりを通じながら、その場で判断をしながら進めていくというのが実際のやりとりなんですが、共謀段階で犯罪の対象となるということになると、威力業務妨害をやろうとした、つまり、マンション建築を何としても阻止するぞ、こういうことを話し合っただけでこの犯罪の対象になり得る、そうすると、意見表明自体が犯罪の対象となるというゆゆしき事態になります。

そうではないという意見をよく聞きますけれども、この法律の規定を見ますと、別に、その人がある暴力団等の組織集団に属しているかどうかは問題ではありません。二人以上が法律に決められている犯罪をやろうと計画をし準備行為を行った、そしてその際にその二人以上の集団がその犯罪をいます。

 

最後に申し上げたいのは、今言いましたように、共謀罪の新設というのは、極めて強力な意見表明に対する抑止力をもたらします。この点に関して、法案審議の中で、よく政府が一般人という言葉を使います。しかし、法律の中にはこの一般人などという言葉はないんですね。私が言いたいのは、政府が、あなたは一般人、あなたは一般じゃないという仕分けを平気でしゃべっているこの状況、これ自体が非常に、憲法の個人の尊厳だとかいう点から見て問題ではないかというふうに思うわけです。

したがって、私は、共謀罪の創設というのは、単に新しい法律が一つできるということではなくて、警察の活動領域そのもの、活動の仕方そのものを大きく拡大していく。そして、犯罪の発生も、あるいは、結果、危険の発生もない段階で捜査をするためには、話し合い自体、あるいは準備行為と言われる行為が何を目的としているかということを探らなければいけなくなります。

そうすると、既に警察からは盗聴法の拡大、会話の傍受、あるいは潜入捜査などを要望する意見が出ておりますけれども、必ずそういう、さらに権利侵害の高い捜査手法を求める可能性は否定できないというふうに思います。皆さんが、ぜひ、こういう具体的な今の警察の活動、そして共謀罪の創設がもたらす状況を具体的に考えていただいて、一体どういう法律をつくろうとしているのかについて責任を持った議論をお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

P5160455


弁護士の今泉義竜です。

5月9日、共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会が衆議院議員会館で集会を開催しました。会場はすぐに満杯となり、私は入れませんでしたが、集会で配布された、「今も行われている市民監視の実態事例集」を抜粋して以下にご紹介します。


「話し合い」だけで処罰するような共謀罪(テロ等準備罪)が成立すればどうなるのかを考える上で、捜査機関による違法な捜査が横行している実態を知ることは不可欠です。政府がしきりに答弁している、「一般人が捜査対象となることはない」というのは現実の捜査実務からあまりにもかけ離れた議論であることが分かると思います。ぜひお読みください。




1 大垣警察市民監視事件と共謀罪 

2 大分県・別府警察署による盗撮事件 

3 イスラム教徒もあなたも~イスラム教徒監視事件 

4 自衛隊の国民監視差止訴訟からみた「共謀罪」の危険性 

5 名古屋市マンション建設反対運動弾圧事件 

6 倉敷民商事件と共謀罪 

7 緒方宅電話盗聴事件無反省の警察に「共謀罪」は渡せない! 
8 「堀越事件」と共謀罪による「捜査構造」







大垣警察市民監視事件と共謀罪

 

弁護士 山田秀樹(岐阜)

 

岐阜県大垣市において、共謀罪の先取りとでもいうべき事件が起きている。

 2014年7月24日付け朝日新聞は、「岐阜県警が個人情報漏洩」との見出しのもと、「岐阜県大垣市での風力発電施設建設をめぐり、同県警大垣署が事業者の中部電力子会社『シーテック』(名古屋市)に、反対住民の過去の活動や関係のない市民運動家、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言したうえ、学歴または病歴、年齢など計6人の個人情報を漏らしていた。」と報じ、大垣警察による情報収集とシーテック社(シ社と省略)との情報交換が明らかとなった。私たちは、これを大垣警察市民監視事件と呼んでいる。

 この事件が明るみに出たのは、シ社が、警察との情報交換を記録した「議事録」を残していたからである。我々は裁判所の証拠保全の手続によってこの議事録を入手したところ、情報交換は4回行われていた。議事録から、警察の発言とされる部分を抜粋する。なお、原文のままで、当事者名は仮名とした。

 ㋐「岐阜新聞7月31日(水)版に『大垣市上石津町で風力発電について学ぶ勉強会が行われた』ことが掲載されたことを知っているか。」「同勉強会の主催者であるA氏やB氏が風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか。」

 ㋑A及びBは、「同じ岐阜県内で活発に自然破壊反対や希少動物保護運動にも参画しており、岐阜コラボ法律事務所とも繋がりを持っている。」

 ㋒「また、大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『C氏』という人物がいるが、御存じか。本人は、60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる。」

 ㋓「このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。」「大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする。」

 ㋔Bが、「風車事業に関して一部法律事務所に相談を行った気配がある。」

 ㋕「Aは、岐阜コラボ法律事務所の事務局長である『D』と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在、Dは気を病んでおり入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考えられる。」

 ㋖「Cは、徳山ダム建設中止訴訟を起こした張本人である。」「反原発・自然破壊禁止のメンバーを全国から呼び寄せることを懸念している。」

 これは、警察による市民監視という他ない。その根本には、警察が市民運動を違法視していることにある。

 岐阜県警は、監視対象となった当事者からの「公開質問状」や「抗議・要求書」に対して、「大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしました。」と開き直っている。

 共謀罪が成立すれば、警察が市民運動を「組織的犯罪集団」と一方的に決めつけ、監視が行われることは必至である。


大分県・別府警察署による盗撮事件

 

弁護士 河野善一郎(大分)

1 事件の概要

  昨年7月の参議院選公示前の6月18日深夜に、大分県別府警察署の捜査員2名が、民進党の野党統一候補を支援していた連合大分労組や社民系の平和運動センターが入っている「別府地区労働福祉会館」の敷地内に無断で侵入し、2箇所の木立に木の葉でカムフラージュしたビデオカメラを設置して、公示後の同月24日に発見されるまで、会館に出入りする人や車を隠し撮りしていた事件が発覚した。会館関係者が保存していた記録媒体の映像がテレビで報道されたが、会館に出入りする人の顔や車のナンバーが明瞭に読み取れる状態であった。

 後日県警は、参議院選の選挙違反事件の捜査のためと弁明したが、現行犯性がなく、会館を出入りする人物を無差別に撮影しているから、むしろ選挙、政治活動の動きや人と人の接触情報の収集を目的とした疑いが濃厚である。

2 警察は大量のビデオメラを日常的に使っている

  さらに今年3月議会で、県警はビデオカメラを190台所有しているうえに、業者から平成27年度79台(560万円)、28年度59台(390万円)リースして多額の県費を使っていることが明らかにされ、警察が日常的に大量のカメラを使用している実態の一端が判明した。全国では驚くべき数になる。

3 事件発覚後も警察庁が令状なし盗撮を容認

 警察庁は、本件が発覚した後の平成28年8月26日、「捜査用カメラの適正な使用の徹底について(通達)」を出した。

 この中で「捜査用カメラによる被疑者の撮影・録画(以下「撮影等」というは、その捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ、相当な方法によって行われる場合に限り任意捜査として許される。」として、令状なしの盗撮を容認している。

4 共謀(内心の意思)を探るには盗撮、盗聴しかない

  共謀は、内心の意思の合意であるから、それを把握しようとすれば、人の行動、人と人の接触、会合、会話、通信などを探るしかない。盗撮、盗聴が野放しにやられる恐れが現実になる。

 市民団体や労働団体の活動でも、抗議の座り込み(組織的威力業務妨害罪)、団体交渉(組織的強要・監禁)、ビラ配布(組織的信用毀損罪)等々が対象にされる。

 本来の市民団体は対象にならないなどと政府は答弁しているが、市民団体等でも、組織的に上記の行動を行うことを役員会で決めれば、その時点から組織的犯罪集団に一変したと見做されるのである。一変したと見做す「疑い」は、警察が抱く疑いであるから、警察は、盗撮、盗聴をその「疑い」を裏付ける証拠として、最大限に活用するであろう。

 共謀罪は、間違いなく監視社会、盗聴社会をつくり出す。


イスラム教徒もあなたも~イスラム教徒監視事件

 

弁護士 梓澤和幸(東京)

 

 共謀罪法。適用される277の犯罪一覧表を見つめては毎日ため息をつきながらツイッターを書き、寸劇の台本を作る。法律を専門としていない国会議員、市民の方々にとっては本当の怖さはまったく霧の中だと思う。

 この闇に光をあてるためにイスラム教徒(以下ムスリムという)に行われた捜査のことを振り返ってみたい。ムスリムが味わった恐怖、不安、孤独を次にこの文章を読むあなたも味わうことになるかもしれない。

 2010年10月28日ごろ 在日のムスリムに災難が襲いかかった。警視庁公安部が国際テロ犯罪の捜査と称して行ってきたイスラム教徒捜査の記録フアイル114点がインターネット上に公開拡散された。

 犯罪の実行はもちろん、嫌疑もないのに、ムスリムというだけで捜査対象となった個人の氏名、住所、写真、取引先、交友関係が詳細に記録されていた。

 近隣の交際、商取引、などに深刻な影響が出たうえ、信仰に関する情報を突如自分の意思に関係なく拡散されたことへの不安は少なくなかった。

 しかし一層の憤りはムスリムであるというその一点で違法にして執拗な捜査の対象とされたことである。

 イスラームの礼拝に現場で立ち会った人ならば誰しも大地や床に身を投げうち、すすりなくように神と対話しながら祈る敬虔な姿に心を打たれると思う。信仰とはそのようなものなのだ。

 流出した資料が語る捜査はかかる内心の営為の核心に踏み込むものであった。毎週金曜日にモスクに祈りに参集する人々の一人ひとりの出入りを確認し、自宅まで尾行して住所氏名一覧表を作り上げた。自宅に複数の警官が身分証明書も呈示せずに入り込んできた。レンタカー記録、銀行の取引記録も調べられた。

 流出した警察の内部文書にはその「成果」が誇らしげにこう記されている。

「わが国には9万人を超えるOIC(筆者注イスラム諸国会議機構57か国加盟)諸国出身者が居住するとみられていますが、昨年のサミット(北海道洞爺湖サミット)までに、略72000人 (把握率98パーセント 原文のまま)を把握できました。以下略」

 関東地域圏テロ担当補佐等会議概要 警察庁 1・9(平成21年1月14日 国際テロリズム対策課)(文書の引用は青木理ほか編 国家と情報 現代書館 2011年198ページから)内部資料に実名で記載された被害者は国家賠償請求訴訟を起こした。一審(判例タイムズ2016年3月号掲載)に始まり上告審まで、裁判所は機微に触れる個人情報が拡散したことの警視庁(東京都)の管理責任は認めたが、捜査の違法、個人情報の収集、保管、管理についての違法は認めなかった。司法とて頼りにならぬ。

 所得税法や消費税の節税相談会が法違反とされ、著作権法違反(歌や朗読の入る集会)、商標法違反(コピーブランドのバザー)、森林法違反(山菜狩り、キノコ狩りの準備)、組織的威力業務妨害罪(住民運動ピケットをやるとのの集会)など市民団体、労働組合の行う勉強会、集会は共謀罪を使っていくらでも「適法的な捜査の名目で」干渉と監視、スパイの対象となる。

 昨日ムスリムに向けられた牙はいま私たちに、向かってきている。


自衛隊の国民監視差止訴訟からみた「共謀罪」の危険性

-国民「監視」から国民「弾圧」へ-

 

弁護士 小野寺義象(宮城)

 

 共謀罪による国民監視の危険が指摘されているが、それを裏づける事実が、自衛隊情報保全隊の国民監視差止訴訟の中で明らかにされている。

 

 政府は、「共謀罪は一般人とは無関係」と言っているが、これが事実に反することは、自衛隊の内部文書(裁判所が自衛隊作成文書と認定したもの)をみれば明らかである。

 自衛隊は、イラクへの自衛隊派兵に反対する一般市民の集会やデモなどを「反自衛隊活動」と呼んで敵視し、個人が特定できる写真撮影や録音、実名・職業・所属団体・政党などの個人情報の収集をまで行っている。

 監視の範囲も、自衛隊とは関係のない年金改悪反対・消費税増税反対の運動、写真展や小林多喜二展にまで及び、一般市民、国会議員、地方議会議員、新聞記者、学者、映画監督、弁護士会も監視対象になっていた。生協前でイラクへの自衛隊派兵反対ライブをしていたシンガーソングライターは、実名や職業まで追跡調査された。

 しかも、裁判所がこれは違法なプライバシー侵害として国家賠償を命じ、国自身も上告を断念したにもかかわらず、謝罪も反省もない。

 このように国民監視態勢はすでに完成しているといえる。

 この監視の目的について、自衛隊の教科書(教範)には、このような「探知活動」は「無力化活動」のための情報収集であり、「無力化活動」には「敵等の情報・謀略活動を無効化する分野(防勢的活動)」だけでなく、「情報・謀略活動を行う敵部隊等の撃滅、施設・機材の破壊等により敵の情報・謀略活動そのものを排除する分野(攻勢的活動)」も含まれていると記載されている。つまり、自衛隊が「敵」に該当するとすれば、一般市民であっても「無力化活動」の対象になるのである。

 この「無力化活動」を実施できる法律が現在はない。

 「共謀罪」は「無力化活動」実施の突破口となる法律である。

 共謀罪の成立によって、「監視」から「弾圧」の時代が始まる。これは絶対に阻止しなければならない。


名古屋市マンション建設反対運動弾圧事件

 

弁護士 中谷雄二(愛知)

 

1 平成28年10月7日、名古屋市内の閑静な住宅街に建設中の高層マンションの建設現場に出入りしている大型ダンプの監視活動をしていた反対派住民のリーダーの男性(O氏60歳)に現場監督が立ちはだかり、両手で抱え込むなどした。

 束縛を逃れようと、O氏が両腕を組んだまま身体をねじった際、現場監督と軽く接触、現場監督が体勢を崩して、後ろにいた大型ダンプの荷台側面に触れた。現場監督はただちに110番通報し、O氏は「傷害罪」で勾留、その後、暴行罪で起訴された。現在、O氏は暴行の事実はなかったと無罪を主張して争っている。

2 O氏は自営業者で自宅近くで店舗を経営している。家族と一緒に住み逃亡の恐れなどない。ところが、否認したことを理由に14日間に及ぶ勾留がされた。勾留終了後、釈放をされて、暴行罪で在宅起訴された。ところが、釈放の前日には自宅と経営する2か所の店舗にも家宅捜索が行われた。釈放を目前に控えた家宅捜索は異例であり、何も差し押さえるべきもの出てこはなかった。

3 住宅街に高層マンションの建設計画が公表されたことから地域住民は住環境の悪化を心配し、計画変更を求めたが、建築会社はまともに取り合おうともしなかった。住民は、法的な争いと合わせて建築現場の出入り口にカラーコーンを置くなどの抗議行動・監視活動を繰り広げてきた。

 起訴後開示された証拠によれば、住民が抗議行動を行う度に建設会社の現場監督や代理人弁護士から110番通報等が頻繁に行われていた(現場監督の証言では13回110番したと証言している)。事件前日には、警察官7名が建設現場に来ていたことを付近住民は目撃している。

  この事件では全く政治活動の経験などないマンション建設反対運動のリーダーが逮捕された。警察・検察は、企業側から住民が事業を妨害していると訴えられるや、紛争を調整するのではなく、一般住民を逮捕・勾留し、起訴まで行った。地域の平穏を守り、安全をまもってくれる筈の警察は、住民の言い分を聞くこともなく企業側に立ち強行措置をとったのである。

 共謀罪が導入されれば、この事件のように軽微な接触すらない段階でも、住民が大型車両の出入りを実力で止めようと話し合っただけで、準備行為(プラカードの作成等)があれば、組織的威力業務妨害罪の共謀で、逮捕することが可能となる。

 その時、逮捕されるのは、「組織的犯罪集団」として政府が宣伝する「テロ組織」などではなく、「〇〇地区の住環境を守る会」のメンバーが逮捕される可能性があること、一旦、逮捕勾留されれば、大変な被害を被ることをこの事件は教えている。

 


倉敷民商事件と共謀罪

弁護士 岡邑祐樹(岡山)

  倉敷民商事件とは

 広島国税局は、2013年5月、全国商工連合会(全商連)加盟の倉敷民主商工会(倉敷民商)の法人会員I(後に退会)の法人税法違反にかこつけて、倉敷民商の事務所とIの事務所に法人税法違反で国税犯則取締法に基づく捜索差押えを行った。その後、2014年1月、岡山県警は、I担当の禰屋町子さんがIの脱税を手助けしたとして法人税法違反幇助(勾留までは共同正犯が被疑事実だった)及び税理士でないのに会員の税務書類を作成したとして税理士法違反で逮捕・起訴した。同年2月には、事務局長の小原淳さんと事務局次長の須増和悦が税理士法違反で逮捕起訴された。

 2013年の国税犯則取締法に基づく捜索差押えでは、広島国税局は倉敷民商から、事務所にあったパソコンのすべてやIと関係のない会員の記録まで差し押さえ、Iからも元帳等を差し押さえた。この記録をもとにして国税局は法人税法違反のストーリーを作ってIの社長とその妻に認めさせ、I以外の会員についての税理士法違反の資料としたのである。

  民商と共謀罪

 本事件では、弾圧の材料とされたのは直接的には税理士法違反(倉敷民商職員による会員の税務についてのサポート)であるが、倉敷民商会員の脱税疑惑が弾圧の契機となった。税理士法違反について、捜査当局は強制捜査以前には強制捜査が認められる程度の証拠を何ら得ていなかった。逆に言えば、ある程度の脱税疑惑がなければ、倉敷民商の弾圧に踏み切れなかったともいえる。

 一方で、現在審議されている共謀罪の対象構成要件には、法人税法違反も含まれている。テロ対策と法人税法違反とがどう関係するのかと首をかしげたくなるが、共謀罪が新設されたならば、民商の正当な活動が、法人税法違反の準備行為として捜査の対象となる恐れが十分にある。

  岡山県警の横暴

 本事件の捜査に当たっては広島国税局だけでなく岡山県警も国家権力としての本性をあらわにした。

 岡山県警は、捜査員を多数投入して倉敷民商会員のほぼ全員に聞き込みをかけるローラー作戦を展開し、その中で、倉敷民商が犯罪組織であると会員に吹聴して、倉敷民商からの脱退を促したのである。その結果、倉敷民商からは脱退者が続出した。

 また、裁判が始まると、支援者に混じり支援団体のビラを受け取って誰ともしゃべらない不審な者が何回も傍聴に来ていた。私はその者を常に監視していたが、目が合うとすぐに背け、裁判後はただ一人報告集会に出ず、裁判所を後にしていた。私はその者が公安警察であったことを確信している。支援者になりすまして市民の運動を監視するというなんとも汚いやり口である。

 また、禰屋町子さんの第1審判決の言い渡しについては、岡山県警40名ばかりが法廷に投入され、裁判長の走狗となって傍聴人を強制的に追い出した。本来市民を守るべき警察が善良な市民に牙をむいたのである。情けない限りである。

  共謀罪は廃案に

 このような横暴な警察に、強力な弾圧の武器である共謀罪を与えることは断じて避けねばならない。共謀罪は廃案にするほかない。


緒方宅電話盗聴事件無反省の警察に「共謀罪」は渡せない!

 

弁護士 弓仲忠昭(東京)

 

 1986年11月、当時、共産党の国際部長だった緒方靖夫さん宅の電話盗聴が発覚した。緒方宅電話の電話線が約200メートル先の「メゾン玉川学園206号室」に引き込まれ、同室内の電話器で緒方宅電話の通話内容が盗聴できる状態になっていた。緒方さんの告訴(電気通信事業法違反、職権濫用罪等)を受けた東京地検特捜部の捜査の結果、206号室内で押収した文書類の筆跡、複数の指紋、神奈川県警職員共済組合関係文書などから、盗聴実行犯として神奈川県警警備部公安一課所属の5名の現職警察官が特定され、処罰可能な証拠もあった。

 しかし、検察庁は不当にも5名の警察官を不起訴(2名は起訴猶予)にした。当時の伊藤栄樹検事総長がその回想録「秋霜烈日」で、「おとぎ話」として、「末端部隊による実行の裏には、警察のトップ以下の指示ないし許可がある」と思われるが、「末端の者だけを処罰したのでは、正義に反する。」「指揮系統を遡って、次々と検挙してトップにまで至ろうとすれば、…、警察全体が抵抗する」等と述べ、今後の警察と検察の協力関係維持のために手打ちをしたことを事実上認めた。

 

 緒方さん家族は、1988年9月、盗聴警察官と神奈川県警及び警察庁の責任追及のため、民事国家賠償訴訟を提起。被害者緒方さん、支援者、弁護団の三者が固く団結、法廷の内外で警察の不正を許さず真相を究明する闘いを展開し、1994年9月に東京地裁、1997年6月に東京高裁と勝訴し高裁判決が確定した。

 確定判決は、① 緒方宅電話盗聴は、共産党の情報収集を目的とし、県警警備部公安一課所属の3名以上の警察官が関与し10ヶ月近くにわたり継続的に行われた、② 情報収集活動を末端の警察官が職務と無関係に行うことはあり得ず、本件盗聴は、同公安一課所属の警察官が県の職務として行ったと推認できる、③ 警察庁は、一貫して共産党を警備情報収集の対象とし、全国警察に同党関係の情報収集の一般的指示を行い、各県警等が収集した同党関係の情報の報告を受けていたと推認できると警察の関与を認定、国及び県に損害賠償の支払いを命じた。

 

 裁判所に断罪された警察は、619万円余(遅延損害金を含む)を支払ったものの、未だ緒方さんや家族に対して、一片の謝罪の言葉もないままである。 

  また、事件発覚から約半年後の参議院予算委員会(1987年5月7日)で、山田英雄警察庁長官が、「警察におきましては、過去においても現在においても電話盗聴ということは行っていない」と答弁した。さらに、組織的関与を推認した高裁判決確定後も、高橋清孝警察庁警備局長は、「組織的犯行と断定したものではなかった」、「警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておらず、今後も行うことはございません」(衆議院法務委員会、2015年4月17日)と警察による組織的・計画的盗聴の事実を否定し続けている。

  未だに組織的盗聴の事実を認めない警察に、話し合っただけで処罰する「共謀罪」という「武器」を与えたならば、その取り締まりを名目に「盗聴」が拡大され、市民の通信の秘密やプライバシーが大きく侵害されることになろう。

 監視社会をもたらす憲法違反の悪法「共謀罪」法案は廃案にするほかはない。


  「堀越事件」と共謀罪による「捜査構造」

   ~国家公務員法による政治活動禁止規制にもとづく捜査の実態に照らして

 

弁護士 船尾徹(東京)

 

「堀越事件」における「捜査構造」

 

 国家公務員の政治活動禁止規制は、公務とまったく無関係に行われる「勤務時間外」の政治活動を禁止していること、公務員の地位を前提とする、あるいは公務の遂行に関連した「政治的行為」の禁止に限定されずに、市民生活の場における「市民」としての政治的表現行為を広範に禁止する規制となっていること、政治活動に対する制裁として懲戒処分にとどまらず「刑事制裁」まで科す規制となっているなどから(国家公務員法102条1項、110条1項19号、人事院規則14-7)、こうした過度に広範な政治活動禁止規制はかねてから違憲であると圧倒的多数の憲法研究者から指摘され、最近では高裁段階で違憲判決、最高裁段階で無罪判決が出されている。

 

 こうした政治活動禁止規制にもとづく捜査は、公務員の「勤務時間外」における市民生活を日常的に監視してやまない捜査構造とならざるを得ない。

  目黒社会保険事務所職員が、政党機関紙を各戸に投函するのではないかとの嫌疑のもとに、29日間ほぼ連日、警視庁公安部総務課の警察官が大量に投入され、その間に投入された警察官はのべ171人、とくに勤務のない土・日・祝日には、1日に11人、ビデオカメラ6台、自動車4台といった異様な捜査体制のもとに、その職員の日常の生活行動が執拗に監視・尾行の対象とされ、盗撮されていた(「堀越事件」)。

 この「公安警察」による監視・尾行による情報収集活動の一端が、「行動確認実施結果一覧表」というタイトルの捜査記録として作成されていた。その内容をみて弁護団のだれもが息をのんだ。職員の日常の生活行動が文字通り分刻みで、「公安警察」の監視・捜査の対象となり、その情報が詳細に収集されていた。たとえば10月12日(日曜日)の「行動確認結果」には、

 

  「12時8分自宅を出てくるの再捕捉、12時25分有楽町駅改札を出たところで氏名不詳の女(身長150cm位、年齢35歳前後)と接触、銀座インズ地下1階『月の雫』に入店、13時20分同店を出る。徒歩にて築地方向、中央区銀座2-15-6『区立中央会館』に入る、14時30分演劇『銃口』を見る、17時25分演劇を終了し同演劇を見ていた男女10名位と、居酒屋にはいる、19時50分居酒屋から出た後、被疑者は女と手をつなぎながら、氏名不詳の男と3人でカラオケ店『デイアナ銀座』(中央区銀座3-9-6)に入店、20時30分視察を打ち切る」

と記載されていた。

 

 この捜査の責任者(警視庁公安部警視)は証人として、「我々の捜査のスタンスというのは、そういったもの(国家公務員法所定の「政治活動」と無関係の市民生活における「生活行動」をさす)を回避するかどうかとか、そういう問題ではなくて、それは行動確認してみなければ結果として分からない」、「行動確認をしている過程でそれが私生活だからといって、いったん行動確認を打ち切って、そのあと行動が把握できなければ捜査にはならない」と、このとき行われた捜査の実態を証言をしている。

 この証言は、この政治活動禁止規制が「勤務時間外」における「市民」としての政治活動を「刑事制裁」の対象とする広範な法規制のもとでは、「公安警察」は国家公務員法(人事院規則)が禁止している「政治活動」とそうした「政治活動」と無関係の市民としての日常生活における営みを、捜査上分離することなど不可能なことであり、後者の「生活行動」をも含めて網羅的に監視・捜査の対象として実行せざるを得ないことを明らかにしたものである。

 政治活動禁止規制にもとづく公安警察によるこうした捜査は、職員がいまだ犯罪を実行してもいないにもかかわらず、市民生活の場で政治活動を行うのではないかとの嫌疑のもとに行われた「事前捜査」として拡大・増殖し、この職員の市民としての日常生活にとどまらず、その職員の友人・知人らとの日常的な人間関係、さらには職員が参加・交流している特定の団体やメンバーに狙いをつけ、平素から組織的かつ秘密裡にその思想・動向などを監視の対象にした「一般情報」を収集する捜査の重要な一翼を形成しているのである。

 国家公務員法による政治活動禁止規制にもとづく公安警察の捜査の恐ろしさは、監視・捜査の対象を、職員の市民生活、そして、職員がさまざまな政治的思想・信条を有する者との間の日常的な交流にまで拡大し、職員やその知人のプライバシーを全面的に剥奪することにより、市民が自由に情報を交換し自己の意見を形成することを萎縮させる点にある。それは、この国の政治とあり方を自由に決定しようとする民主主義の基盤そのものが破壊されることにつながる。

 

共謀罪にもとづく「捜査構造」と監視社会

 

 共謀罪の新設は、こうした公安警察にいかなる捜査権限を与えることになるのか。それは市民の自由な意見表明・活動にどのような影響を与えるのか。

 共謀罪の新設は、「予備」「陰謀」にも至らないはるか前の計画・準備段階である「共謀」「合意」にまで「前倒し」して犯罪化することにより、「処罰の網」(構成要件)を広範に拡げる。それに応じて警察の捜査権限は飛躍的に拡大し、「堀越事件」にみられる市民の日常生活を奥深く監視する捜査が横行する「監視社会」をつくり出す。

  共謀罪新設によって警察権力が取得することになる捜査権限は、共謀罪の対象とされた犯罪を実行するための「準備行為」があった時、はじめて発動されるというものではない。「準備行為」前でも、共謀・計画の疑いがあるとして捜査を始めることができるのである(法務省の林真琴刑事局長は、準備行為が行われていない段階でも、「犯罪の嫌疑があり、捜査の必要性が認められる場合、手段の相当性が認められる範囲で任意捜査を行うことが許される」と4月21日の衆議院法務委員会で答弁している)。

 さらには「共謀」「計画」が成立した時にその捜査が始まるというものでもない。「共謀」「計画」が成立していない状況のもとでも、つまり、話し合いや計画などが行われていない時点でも、「堀越事件」において政党機関紙を各戸に投函するのではないかといった嫌疑のもとに監視・尾行・盗撮を行ったように、これから共謀・計画をするのではないかとの嫌疑のもとに、ターゲットとされた市民・団体に対する監視・捜査が行われていく。

 警察庁警備部が1957年に公刊している「警備犯罪に関する諸問題」によると、警察活動を、①犯罪発生後、その捜査のための情報収集活動(「捜査情報」)、②具体的に公安を害する事態又は犯罪発生のおそれがある場合、その予防鎮圧に備えて情報を収集する活動(「事件情報」)、③具体的に公安を害する事態あるいは犯罪発生のおそれはないが、一般的に公安の維持または犯罪の予防鎮圧に備え、平素から情報を収集する活動(「一般情報」、「争議に入っていない平和な状態にある労働組合の組織や動向を調査しておく」活動などがその例として挙げられている)に分類している。

  上記②③の警察活動は、「犯罪そのほか公安を害する事態の発生する以前に行われる事前情報活動であり、狭義の警備情報活動はこれを指す」として、犯罪の具体的発生のおそれとは関わりなしに、平素から組織的かつ秘密裡に特定の団体や個人に狙いをつけ、その組織の動向などの情報収集を行う③の活動こそ、「公安警察」がその本領を発揮する主要な任務とされている。

 そこで、共謀(計画・準備)がいまだ成立する前から「公安警察」は、共謀・計画をするのではないかと平素から狙いをつけた団体とそのメンバーの人間関係、そのメンバーである市民相互の間で行われている室内の会話を含め、携帯電話、電子メール、ライン、ツイッター、フェイスブックなどによって行われている市民相互のコミュニケーションや日常的な行動にかかる情報のすべてを、長期間にわたって網羅的に取得するための監視・盗聴をする捜査権限を求めていくことになる。

 そうしてその団体のメンバーである市民の思想、信条、性格、その友人・知人との交流関係、さらには団体の動向にかかわる情報など、犯罪と無関係の情報までも網羅的に捕捉しようとする「公安警察」の監視・捜査が日常化していく。

 こうした監視・捜査が、偶々逸脱して行われると捉えるのは、共謀罪の本質を正しく把握したことにはならない。共謀罪の捜査は、構造的にそうした監視・捜査を、市民生活のなかに日常的に肥大化させていくのである。2016年に通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって市民相互の日常的な通信・コミュニケーションがたやすく盗聴され、歯止めのない監視・捜査が拡大した「監視社会」へと拍車をかけ、民主主義の基盤ともいうべき市民の自由な活動を萎縮させていく。

 ひとたび「共謀罪」による警察権限を拡大して形成された「監視社会」をもとに戻すことは容易ではない。それはこの国の戦前の歴史に照らし明らかとなっている。



2017年5月9日

 

編集発行 共謀罪に反対する法律家団体連絡会

(構成団体)

社会文化法律センター

自由法曹団

青年法律家協会弁護士学者合同部会

日本国際法律家協会

日本反核法律家協会

日本民主法律家協会

日本労働弁護団

(連絡先)日本民主法律家協会

160-0022 東京都新宿区新宿1丁目14番4号

            AMビル2・3階

         TEL03-5367-5430

                                    

 

弁護士の今泉義竜です。
こんな記事がありました。

「共謀罪」食い違う世論調査結果 「テロ」文言影響か
http://www.asahi.com/articles/ASK4P3HFYK4PUZPS001.htmlhttp://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1065046269.html

「(法案の)主眼をテロ対策と受け止めると、賛成が増えるようだ」とのことです。
法律の中身についてそれほど一般に広まっていない場合の世論調査というのは、
質問の仕方でいくらでも誘導ができてしまう側面が否めません。

しかも、立場によって呼称が違うので、
組織犯罪処罰法改正案とテロ等準備罪と共謀罪がすべて
同じものを指しているということすらまだ一般には十分周知されていないと思われます。

というわけで、条文を読んだことがないという方が殆どだと思いますので、
改正案の条文を添付します。
法務省ウェブサイト(要綱、法律案等)

 


【組織犯罪処罰法改正案6条の2第1項】


  次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第3に掲げる罪を実行することにあるものという。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

1号 別表第4に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固の刑が定められているもの

    5年以下の懲役又は禁固


2号 別表第4に掲げる罪のうち、長期4年以上10年以下の懲役又は禁固の刑が定められているもの 

     2年以下の懲役又は禁固


【組織犯罪処罰法改正案6条の2第2項】


  前項各号に掲げる罪に当たる行為で,テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ,又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し,若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も,その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配,関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは,同項と同様とする。

今問題となっているのはこの条文です。
中身はこれまで3度廃案となった共謀罪の新設ですが、
これを、今回政府は世論対策のために「テロ等準備罪」と呼称して、初めて「テロ対策」との側面を打ち出しています。
その戦略は一定成功しており、テロ対策のためならOKという世論を生み出しています。
ただ、テロというのは修飾語にすぎず、この条文の「別表4」には
著作権法違反や税法違反などを含む277(数え方によっては316)もの罪が記載されているというわけです。

したがって、テロ対策という側面を強調すればするほど、
実際の法案の中身とのギャップが生じるという矛盾があります。この組織犯罪処罰法改正案(テロ等準備罪、共謀罪)についての問題点については、
これまで書いた記事をぜひご参照ください。

 共謀罪(テロ等準備罪)の3つの問題
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1064440837.html
それでもやっぱり「共謀罪は必要」と思うあなたへ
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1064973585.html
共謀罪(組織的犯罪処罰法改正)で処罰されるようになる具体的事例
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1065046269.html
違法捜査・不当逮捕の実態~捜査機関にフリーハンドを与える共謀罪の危険性~
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1065476573.html

↑このページのトップヘ