平成25年6月6日 最高裁判所第一小法廷判決
判示事項:労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日と労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定の方法
裁判要旨:無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれる。
事案の概要:解雇により2年余にわたり就労を拒まれたXが、解雇が無効であると主張してYを相手に労働契約上の権利を有することの確認等を求める訴えを提起し、その勝訴判決が確定して復職した後に、合計5日間の労働日につき年次有給休暇の時季に係る請求(以下単に「請求」ともいう。)をして就労しなかったところ、労働基準法(以下「法」という。)39条2項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして上記5日分の賃金を支払われなかったため、Yを相手に、年次有給休暇権を有することの確認並びに上記未払賃金及びその遅延損害金の支払を求めた。
判決文:「法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。」
「これを本件についてみると、前記事実関係によれば、被上告人は上告人から無効な解雇によって正当な理由なく就労を拒まれたために本件係争期間中就労することができなかったものであるから、本件係争期間は、法39条2項における出勤率の算定に当たっては、請求の前年度における出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。したがって、被上告人は、請求の前年度において同項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たしているものということができる。」
解説:労働基準法39条1項では、「全労働日の八割以上出勤」したことを有給休暇の発生要件の一つに規定しています。本判決は、これまで「全労働日」には含まれないと開始されてきた解雇期間を「全労働日」に含まれると判示したものです。