March 30, 2007

ALEXANDER REVISITED The Final Cut

800cfb1e.jpgしばらく、置き去りにしてたここを、またちょろちょろ書いてかなきゃな〜春だし、の今日この頃です。

んで、ちょろちょろ再開第一弾は、話題の(?)ついにでたオリバー・ストーン「ALEXANDER」の最終版、The Final Cutレビュー。
この映画、劇場公開版のシアトリカルバージョンと、色々カットされたディレクターズカットバージョンと、すでに2本もDVDが出てるんだけど、ついにこれが最後。オリバー・ストーンがほんとに作りたかったバージョン。

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なにが今までとかわったかって?4,50分ちかく追加された未収録シーン&大きく変わったシーンの順番で、これ、再構築って言って良いですよね?きっと。ついでにUnratedだから、血しぶきと男同士のベットシーンの追加です。ふむふむ。

んで、このバージョンが発売当時、世界中のヘファスティオンファンから、石を投げられたわけです。アレクサンドロス/ヘファスティオンのシーンが増えてるのかと思いきやとんでもない、アレクと彼に仕えたペルシア人宦官の少年バゴアスとのラブシーンが追加されて、ヘファイスティオンがまるで置き去られた昔の恋人のように見える!と。

ついでにアレ/ヘファを理解し信奉してると思われていたオリバー自身が、自分はバゴアスが好きだー!と告白(笑)

そのインタビュー


なもんで、ヘファファンの私には、きっつい内容になってるんだろうなあ〜って敬遠してたのを、やっと見た。以下、その結果の感想



*注意!ーあくまでも想像力ありすぎの私個人の感想です。たぶん、見る人によってかわると思います。ついでに、私は、シアトリカルバージョンしか見てないし、今回も、両方をきっちり比べてこれが今まで違うとかやってないので、誤ってるとこもあると思います。

ずばり面白かった〜!特に前半のDisc1(これ、長すぎてDisc1と2に分かれてるんです)今までなかったシーンが加わったことによって、人間ドラマとして厚みがでて面白かった!

シーンの順番がかわってたり、ヤングプトレマイオス、彼の役割がちょっと増えたりしたおかげで、人間関係とか出来事の原因なんかがクリアーになってる、そんな印象です。

そして肝心の、アレ/ヘファは、私にはよりつよい絆に感じられました。バゴアスは確かにちょろちょろ顔出して邪魔で、アレクは彼に優しいし、バゴの純粋な献身ぶりはすごく伝わってくるけど、オリバー・ストーンが言うようなイコールの恋愛関係には決して見えませんでした。どこまでいってもやっぱり偉大な大王とそれに仕える宦官で、アレクはあくまでバゴの純粋な気持ちに報いてやってるって感じ。実際、そんな風な言葉しかかけてないし。

逆に、私の気のせいかもしれないけど、アレクがふっと視線をむけたその先にはいつもヘファ、みたいなシーンがいくつかあったりして、やっぱしヘファなんだなーって。ついでに、バビロンの宮殿で、ヘファの部屋は王の居室と庭はさんでおむかいさんだったし(確か)

それと、ヘファとプトの間にもある種の信頼関係があったんだろうなあって思わせる部分がちょこっとあって。アレクとそれを支えるヘファとプト、それに対する人たちっていう構図がはっきり見えて、またそこが面白かった!


以下、詳細(含むねたばれ)

まず、シーンの順番が替わって、最初の老プトレマイオスの語りが終わってすぐに、ガウガメラの合戦直前シーンからはじまる、これがいいです!展開がダイナミックになった感じ。この合戦シーン大好き。勇敢なるマケドニア兵士達、敬愛する王のもとに集った挑戦者達。見てるだけで血が踊ります!

そして合戦前夜のアレ/ヘファシーンがのっけからくることで、以前のオリンピアスとアレクのもったいぶった二人の会話での説明なしに、この二人が特別な関係なんだ、アキレスとパトロクロスなんだってのがわかって、great!

合戦シーンでは、敵の大将ダレイオスめがけて急襲をかけるアレクと、彼を体を張って守ろうと脇を固めるヘファとプト、この辺が幼い頃から共に育ったヘタイロイの絆が垣間みえてgood!
ついでに、ダレイオスを見つけて「自分の馬を見つけろ」ってアレクが声をかけるのがプトでなくてヘファなのがgood!(笑)
三人の脇で勇壮に敵の首を切り落として振り回すクレイタス、中央では、敵の戦車に攻め込まれながらもなんとか持ちこたえるクラテロス、いかにもマケドニア兵士って感じでgood!

その逆で、左翼を任されたものの、敵に押されて息子を助けを呼びに行かせ、もし助けてもらえなかったら生き延びてアレクに復讐しろと言い聞かすパーメニオン。
ここですでに、マケドニア内での人間関係の構図、忠誠度がはっきりわかります。





バビロン入城シーン

ここでは、高貴なペルシア帝国の宮殿にやってきた、粗野なマケドニア人っていうのが、悪い意味じゃなくて際立って見えてよかったです。その高貴なる世界、大帝国の大王にアレクが第一歩を踏み出した瞬間ですよね。

それを表してるのが、バゴアスとの対面シーンかと。バゴアス自身はともかく、彼は言ってみればアレクが今まで知らなかった大帝国ペルシア文化の象徴ですよね。それに対面し、そのまま残すことを誓うアレク。
これ、アレクがその後、マケドニア人達の理解を超えた遠くへ行ってしまう、その前兆、第一歩を表してるんじゃないかと。マケドニアの仲間としての王から大王になっていく。
クレイタスその他がうわあーっとアレクを羽交い締めする、あれが今までのマケドニアの王のイメージですよね、臣下達とも距離が近くて。そりゃ、高貴なペルシャの姫はそんなのの下敷きになってる人が王とは思いませんよ。
それと、クレイタスにとってアレクは最後まで、My boyだったんだろうなあなんて。My kingじゃなくて。

ここでの、ヘファは多少はバゴのことで傷ついてたかもしれない。こっからは私のそうとう深読みですが、それと同時にアレクが遠くへ行ってしまうっていう不安を感じてたんじゃないでしょうか?ヘファって、いつまでも少年当時の純粋さを残した人だったんじゃないかと。その当時の純粋な思いそのままでアレクについてった。だから、アレクもヘファにとっては、いつまでも少年時代のアレクのままだったんじゃないか?だから、大王になろうとするアレクの姿に、不安を感じたのかも。一抹の寂しさっていうか。
大王ともなれば、このハーレムの女性宦官全員と寝ててもおかしなくない身分になるのだし。
バルコニーシーンで自分で語る通りね、アレクが征服しようとする世界、征服した世界に嫉妬するって。
アレクが大王になるってことは、自分も立場が変わってくるだろうし、たぶん、この辺りまでは彼はまだ将軍じゃなくて親衛隊だったんだっけかな?でも、偉くなったら、そう今まで通り、アレクのそばにしょっちゅうはいられなくなるだろうって。大人になる寂しさなんか味わってたのかもしれない。
でも、ヘファのとこだけ画面のアングルが斜めなのはどう見たって不自然だってば!(笑)
それと、他の人はちょっと遠慮気味なのに、しっかり女にまたがってるプトが面目躍如でサイコー





ロクサネとの結婚シーン

ここも、未収録シーンが追加されたのと、シーンの順番が替わって出来事の流れがわかりやすくなって、アレクの結婚を発端にガウガメラで垣間見えた人間関係の構図が、一気に表面化して面白いです。
特に、ロクサネの父から熊をプレゼントされた後のアレクとプトの会話がいいです。その熊を血祭りにあげてみせますっていうロクサネ父の言葉に、「あの熊は誰かな」というアレク。「パーメニオンだろ」とすかさずプト。二人から少し離れたところにたむろするパーメニオン一派。「息子のフィロタスを我々の手元においておけば、彼も忠誠を尽くすだろうよ」というアレク。フィロタスの謀反、処刑とパーメニオン殺害は、こういう流れがあってのことなんですね。
バクトリアの人たちに平伏されて戸惑うアレクとか、クレイタスvsヘファとか、最初のぶつかり合いではクレイタスの脇にはクラテロスがいて、ヘファの後ろからはネアルコスとかがついてきてて、何気に派閥できつつある?とか、なんだかもりだくさんでgood!

それで、ここでのヘファ。
また深読みで、彼は相変わらず忠誠を尽くしていたけど、ロクサネとの結婚には最初から100%賛成ではなかったんではないか?
アレクがロクサネを王妃に迎えると宣言した会議の場面で、パーメニオンが「マケドニア人の血を引く跡継ぎを!」「a Macedonian heir!」と連呼するところで、ヘファとプトがちらっと視線をかわすんですよね、それ見て思った。やっぱり、彼らもマケドニア人以外の血が入った跡継ぎを得ることを危惧してたんじゃないかなあ?アレクの決断にここでも少し不安を感じてたかも。
ついでにもおおおっと深読みしてしまうと、ひょっとしたら、あのバビロン入城(バゴの件)以来、忠誠心はかわらなかったかけど、少しアレ/ヘファの間にわだかまりがあったのかも。100%理解できないっていうか、理解をしめせないっていうか。アレクを遠くに感じてとまどってたのかも。
そんなこんなで、いらつくヘファ、アレクの決断への不満をヘファにぶつけて絡むクレイタス。彼のヘファへの捨て台詞が意味深でいいなあ〜「Should't you be bond to a king?」
そして、初夜だからか(ヘファからの理解が得られないせいか)なぜか居室でそわそわするアレク。

↑みたいに深読み思い込みしちゃうと、あの指輪シーンがより一層感動的に見えてきちゃうんですよね、ここ最近色々あって昔とは違ってきてて、でも、そんなわだかまり迷いをいっさい捨ててやっぱり君を愛してるよ、100%理解してサポートするよって、ヘファが告げに来たんだ〜って。そして二人は絆を確かめあったんだ〜って。
これ以降はもう、二人の間は完璧になったんだって。
だって、エジプトで買った指輪だったら、もっと前に、それこそ栄光のバビロンでのバルコニーシーンであげてもよかったわけじゃないか?でもあげれてなかったのは、なんかわだかまりがあったんじゃないか?なんて。
そう思うと、その後に出てくるバゴも、ただ水瓶持ってきた従者にしか見えないので、まったく気になりません(笑)
逆に、初夜に夫の男性の恋人とhis boyを見せられたロクサナが、なんだか気の毒に思えました。この人は男しか愛さないんだ、自分はただの子供産む機械かって思っちゃうよ。

ついでに、なんのかんのいっても、クレイタスともめてるヘファを心配そうに見やって、助けにいこうかとするアレクがgood!





クレイタス殺害シーン

ここでは、アレクの酔っぱらってるブリが強調されてます。
最初かららりらりだし、ここでも登場プト「君は昔、父親が酔っぱらうのを嫌っていたよね」(彼もろれつまわってないけど)「今なら理解できるよ」とアレク。それでも気をつけろというプトに、自分は大丈夫だと。
だから、バゴとキスするのを見つめるヘファも、私にはあんなに酔っぱらって大ジョブか?って心配してるように見えました。ま、もちろん多少はせつない思いさせられてたとは思いますけど。とにかくここではずうっと、心配げにアレクを見つめてる。クレイタスとかクラテロスとかがマケドニア人に囲まれて飲んでるのとは対照的に、インド人に囲まれて。
そして、アレクがそんだけヤバい状態だった。
でないと、あんな公衆の面前で(ヘファの前で)バゴとキスはしないよね〜?

それとここで初めて登場するタイス(だと思う)が、とてもきれいですてきな人でした。ちょこっとしか映らないけど、プトとラブラブでした。なんだかこのカップル好きなんだよな。

それにしても、バゴとロクサヌは一生懸命踊ってセクシャルアピールするけど、なんつーか、セカンドの争い、愛人同士の争いにしか見えないんだよね〜

んで、クレイトスを殺しちゃった後のテントでのシーンでは、アレクのだめっぷりが強調されてる分、よりいっそうヘファの男前っぷりがアップ。優しげに声を弱めて、でもつらい真実を告げるのがすてきでした〜
ヘファの台詞「もう君は(マケドニア兵にとって)strangerなんだ、君は遠くへ来てしまったんだよ」っていうのが全てのことを表してるのと、そこまで理解してるんだなヘファはっていうのがわかってgood!
でも、さすがのヘファも、クレイトスは友達だったんだあ〜って泣き出すアレクを見て、もう泣くなよ〜って顔をする(ように私には見えました)

ついでに、ここではアレクが父親のことを以前のMy fatherではなくPhilipって呼んでます。他のシーンでも呼んでたかもしれないけど(笑)ここでは目立ってて。あーそうか、彼はもう、とっくに父を名で呼べるほどに、父親を追い越していたんだなって。でも、本人はまだ気がついてなさそうだ。




それにしても、Disc1のあの熱さから比べると、Disc2の単調で、ひたすらドキュメンタリー的なこと。
まあ、後半はアレクの挫折と死までの下り坂だから、しょうがないのかもしれないけど。ここで、クレイタスとかクラテロスとかとヘファの確執とかがサブテーマで挿入されたら、もっと人間ドラマっぽくなったんだろうけど、それやると映画二本立て位の長さになっちゃうから、しょうがないか。

それと、ヘファの葬式シーン。ヘファって、アレクにとって自分の半身みたいなものだったから、言ってみれば自分で自分の葬式あげてるようなものになる訳で、その壮絶なシーンでのコリンの演技が見たかったです。

そして、ヘファの指輪がアレクの臨終で共に砕けちって、アキレスとパトロクロスを夢見た、夢より遠くに来てしまった少年達の旅も終わったんですね(涙)


その他、文句つけどころはいっぱいあるけど、とにかく、同じく少年の頃からの情熱そのままに、こんな映画を作ってしまったオリバー・ストーンはやっぱし、すごいです。


tombo9 at 17:25│Comments(9)TrackBack(0) Jared Leto | 映画

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この記事へのコメント

1. Posted by ぴよ   April 07, 2007 10:06
素敵な感想をたっぷりと、ありがとうございます〜
指輪のシーンの感想が素敵ですわー♪
どのシーンの感想も激しく納得してしまいました(嬉)
アレクはヘファをおかずに、ご飯(バゴ&ロクサネ)を食べてたのですねー(。_゚)☆O=(--#)q パーンチ
2. Posted by とんぼ   April 07, 2007 13:47
>ぴよさん

ひゃーさっそく読んでいただいてありがとうございます!!
なにせ、実際の映画ではアレ/ヘファ要素が酸欠気味なので、ついつい、勝手に想像しちゅあうんですよね〜

ヘファがおかずですか〜つねには手の届かないちょっと高めのおかずですね!(爆)
3. Posted by リリー   April 07, 2007 16:28
私もお礼を申し上げたいですわ。こんなふうに書いて下さると、ヘファはアレクにとって唯一無二の人だったのだと改めて再認識できる気が致します〜
ヘファの立場も補足されているようで、より人間っぽく描かれているのかな。私もヘファ葬儀のシーンは是非撮ってほしかったです、オリバーも撮りたかったそうですけど。
4. Posted by ゆみりん   April 07, 2007 18:08
(。・ω・ノノ゙パチパチパチパチパチ ぶらぼです〜

細かいところまで良く見ていらっしゃるのね。
私は この解釈がすべて正解だと思いたいです。

素晴らしい感想ありがとうです。
気が晴れました〜°゚°。。ヾ( ~▽~)ツ ワーイ♪
5. Posted by とんぼ   April 07, 2007 19:31
>りりーさん

コメントありがとうございます!
でも、相当、ヘファが一番っていう、偏った思い込みで見てますからね、わざわざそう言う所を拾ってみてるっていうか。これ、バゴファンが見たら、もしくはオリバー・ストーンのインタビュー通りに見たら、ぜんぜん違ってくるんじゃないか??

でも、あえてしつこく引っ掻き回すと、アレクが実際I love youって告げてるのもアレクをMy Alexanderって呼んでるのもヘファだけじゃん、みたいな

>ゆみりんさん

よろこんでいただけて良かったです〜
とにかくヘファが見たくて、しつこく細かく見た結果で〜す。でも、ほんとDisc1の方は面白かったですよ〜
6. Posted by sana   April 08, 2007 03:07
映画の感想ありがとうございました。
英語が苦手でとんぼさんの他での書き込みを読んでからやっと見ることができました。

アレクの視線の先にはいつもヘファ。本当にそうですね。結婚初夜に指輪をアレクにあげた理由もおっしゃるとおりだと思いました。
ファイナルカット版字幕付きが欲しいです。そうしたら、私ももっとよく理解できるんだろうな、なんて自分の語学力の無さが情けないです。
私もしつこく見ていきたいと思います。
7. Posted by とんぼ   April 08, 2007 08:15
>sanaさん

そうですよね、字幕版ほしい〜
英語字幕にして、なんとか目で見てるけど、そうすると今度、字幕ばっかみちゃうことになるんですよね、それも困る〜

指輪シーンは、ああみえてしょうがないんだけど、でも作ったオリバー・ストーンは違うこというかもしれないですよね、バルコニーシーンでの「今晩一緒にいてくれ」には、セクシャルな意味合いはなくて、話したいことがいっぱいあるんだっていう意味だっていう位だから
8. Posted by はな   April 08, 2007 15:53
映画の感想有り難う御座いました。
深いですねぇ。なるほどぉとなりながら読みました。指輪の感想もなるほどーとなりました。
そう考えると、ロクサネが気の毒な感じします。
「バゴとロクサネは一生懸命踊ってセクシャルアピールするけど、なんつーか、セカンドの争い、愛人同士の争いにしか見えないんだよね〜」
↑に笑ってしまいました。
なかなか鋭い感想で、とっても楽しく読めました。有り難う御座いました♪
9. Posted by とんぼ   April 09, 2007 21:16
>はなさん

こちらこそ、ありがとうございます〜
オリバー・ストーンは、女優の演出が下手だと言われてますけど、単に女性キャラが嫌いなのでは

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