少し前の話になりますが、アメリカの有名女優が遺伝子の検査結果から乳房を一部摘出するというニュースがあった。確かに体質をつきつめれば遺伝子にたどりつく。特別な疾患の場合、遺伝子治療は必要なのかもしれない。私はあえてそれを否定するつもりもないし、その立場にもない。それはそれとして、もっと身近な日常の店頭での話をしましょう。
漢方薬局へ来店されるお客様は大きく分けて三つのタイプがある。一つ目は病気の初期、病院に行くまでもないが、早めに治療したい。このタイプは最近大型量販店で種類も多く安価な為自分で選べるのであまり来店しなくなってきた。また妊婦や授乳期、その他アレルギーのある人や新薬が恐いと思う人は来店する。
二つ目は、市販の薬では効果がなく病院や診療所で処方してもらったが、かえって悪化したか、又はなかなか治らない人である。例えば今年も多くあったが風邪の後期の空咳である。市販薬でも病院の処方薬でも咳の薬のほとんど100%と言っていい程咽が渇く。痰が多い咳には良いが、肺や咽頭が乾く咳は、一時的に止まるがその後ますます乾燥して特に夜間や水分の少ない老人には厳しい。漢方では小青竜湯や二陳湯の様に肺や気管支がむくみなかなか痰が排出しにくい為の処方と、麦門冬湯や滋陰降火湯の様な肺や気管支を潤して咳を止める処方である。
三つ目は西洋医学では対処療法と根本療法と言うが、手術以外そのほとんどが対処療法である。漢方ではそれぞれ標治療法と本治療法と言う。標治療法は西洋医学で言う対処療法と同じであるが、本治療法は疾患を起こすもともとの原因を治すこと、つまり体質改善である。漢方の価値はこの本治療法にある。一般的に漢方は時間がかかるのと化学薬品でない為、多少価値が高いと言われるが、病気にならない事を考えるとかえって一生の間では医療費が安くなると思いますが・・・。