もう何年も前からの話になるが、日曜の夜にやっている飲み屋は少なくなった。お客が少なくって、あまり商売にならないからだ（ゆったりとした雰囲気で飲みたいから、僕的には割りと歓迎なのだけれど）だから、引越したりするとやっている店を見付けるのに苦労して結局馴染みの店に顔を出す事が多くなる。案外、不況の風は厳しくって何年もやってくれている店も少なくなってきたが。
実際、顔を出さないお客の気持ちも解る。日曜の夜は程好い気抜けの状態なのだ。同時に、明日からまた始まる労働に日々に対して気持ちと体の準備を品ければならない。要は、家でゆっくりしたいのだ。だから、一時TVドラマの新たな視聴率の稼ぎ時が日曜の夜だと言われた。間違いじゃ、ない。パチンコ屋だって日曜は稼ぎ時だが、夜になるとガランとしている。最近考えているのは、家で飲む事を自分に対して解禁しても良いのではないかって事だ。家に帰り、シャワーで汗と垢と一緒に気持ちの張りを緩め、弛緩した筋肉と一緒にこりを解してリラックスする。そのまま、インターネットの画像でも検索しながら音楽を聴き、ぐびっとアルコールを口にする。飲むのは面倒だからストレートで飲めるウイスキーやワイン、ラム酒辺りが良いだろうか。中には特別な時に飲む酒も用意しておく。そんな事を考え始める程、この間飲んだスコッチウイスキー「グレンスタッグ」は極上の美味さだった。
では、それを今日から解禁するかは別の話として（都合良く家から100Mも歩かない所に酒屋があるが）その酒の肴を。阪神ジュべナイル・フィリーズのレース回顧です。
初対戦のメンバー、しかも2歳戦。距離経験のない馬も多い。こういう不確定要素がいつも以上に多いレースの展開をズバリと予想するのは困難だ。おおよその察しがつくって以上の部分で展開をピタリと予想出来る人間が居たら、マグレだろう。
スタートが切られる。出遅れたのはやはり一番人気のシンメイフジ。一方、良いスタートを切ったのは内のジュエルオブナイルとパリスドール。二頭が先頭を伺う中、三浦皇成はこういう時にズバッと先手を主張する。言い替えれば、先輩に対して怖気づかない。だから、僅か2年目にして将来の競馬界を担う逸材として期待されているだけの勝ち星を早くも上げる事が出来る。競馬に限らず人生の大抵の場合に於いて、チャンスはもたもたしている間に通り過ぎて行ってしまうのだから。
先頭はジュエルオブナイル。次いでパリスドールと隊列が決まって行く。内からメイショウデイム、モトヒメ、サリエルと続く。内枠に並んだ馬達がスタートを失敗せずに出てきた為に、そのまま先団を形成する形になった。直後に京王杯の2着馬アニメイトバイオ。内田博幸に乗り代わった事で後方ではなく中団辺りからの競馬になるのではって気はしていたが、出遅れ癖のあった馬を上手く導き、絶好のポジションから追走する事になった。この辺は武豊に猛追されているとはいえ現在リーディングのトップを張るジョッキー。
その後ろ、内枠の馬が揃って先行した為にぽっかりと空いた内ラチ側のスペースを有効に使い、のびのびと走っているのがラナンキュルス。前走こそ先行策を取ったが、やや下げた中団辺りからの差す競馬が連勝中のこの馬のスタイル。その外に良いスタートから内側各馬の動向を観ながらポジションを取りにきた大外枠のアパパネ蛯名正義。この辺りにデムーロの乗るステラリードも居る。その後ろ、外側から虎視眈々と狙っているのが安藤勝巳のベストクルーズ。
ペースはやはり遅い。前半3ハロン35秒1で先頭が通過する。距離に不安があるだけに先団のどの馬も直線のスパート地点まで仕掛ける様子はない。そのペースを把握したのか、後方待機のシンメイフジは3,4コーナー中間から序々に進出、ベストクルーズの後ろに付けてくる。人気を二分する追い込み馬のもう1頭タガノエリザベート川田は、まだ悠然と最後方追走。気性がネックで乗り方がはっきりしている馬だけに他がどうであろうとこの馬は自分の競馬に徹するしかない。
4コーナー手前、安藤勝巳とベストクルーズが序々に外から捲る、ポジションを押し上げ。4角で先頭を射程圏に捕らえる心算。その流れで、手応えの良い蛯名正義アパパネの外から被せて行く形になる。各馬がゴールまでの距離を逆算してスパート体勢に移りペースは上がる。アパパネに外の進路がなくなる。4コーナーを回りきり、最後の直線走路へ舵が切られる。
白いシャドーロールにきびきびしたフットワークのアパパネは、一瞬瞬間移動したような気がした。大外枠から中団の外に付けていた。手応えがあり、序々に普通ならば外から進出する時に、安藤勝巳に外から被せられた。ベストクルーズの後手を踏むしか、外へ開ける進路はなかった。だが、カメラが切り替わり直線の映像へ変わった瞬間、アパパネはコーナーワークを利して思い切り内へ切れ込んでいた。アニメイトバイオ内田博幸の更に内まで。先行集団を形成した内枠の馬達のお陰で確かにそこにぽっかりとスペースは出来ていた。手応えが各々なくなり、ぽつんぽつんと障害物が出来上がるようにその先行馬達が内に点在する。だが、スペースと一緒に、広くはないが舵取りに自信があれば易々と抜け出せる進路が開けている。そこへ、白いシャドーロールを揺らし、アパパネは突っ込んで行った。
歓声を煽るように騎手のアクションが大きくなる直線、その動きに応えて各馬が懸命の走りを見せる。ゴールというラストシーンを前にして、観客の声に祈りが加わる。栗色の体はともかくとして、アパパネは父キングカメハメハに似ている。直線を真っ直ぐに力強く駆けていくところ。きびきびとしたフットワークはそのバネと体の強さを感じさせ、少しもブレないその真っ直ぐさは走りにどっしりした重みを与える。恐らく蛯名正義は4コーナーを前にして直線はこのコースが空く事を見抜いていた。集中力を研ぎ澄ました時、そういうコースを見付ける嗅覚に優れたジョッキーだ。そして、その時視野は狭窄し、自分の馬に最高の走りをさせる事以外は考えない。ひょっとしたら安藤勝巳が外を締めた事にすら、気付いていなかった可能性すらある（そんな訳ないと思うでしょうが、それは逆に凄い集中力の賜物。実際のところは本人にしか解らない）
アパパネが内を割って伸びる。実に、力強い。内からアパパネと同じような進路を取り、ラナンキュルスとアニメイトバイオも伸びてくる。枠と位置取りを活かしきった見事な戦法。更に外からベストクルーズもこの争いに加わる。その更に大外、ようやく伸びてきたのが人気を二分した追い込み馬2頭、シンメイフジとタガノエリザベート。
大外2頭はとても届かないような感じ。だが、伸びてくる。どんどん他馬を交わしてポジションを上げてくる直線。過去の勝ちっぷりが、その姿にオーバーラップし、歓声に熱が加わる。先頭はアパパネ。そこを目掛けてラナンキュルス、それを上回る勢いでアニメイトバイオが急追。外からその争いに加わったベストクルーズにも脚はある。だが、アパパネの勢いに全く陰りはない。、真一文字に坂を駆け上がり、そのまま厩舎にとっては2年越しの栗東留学によるこのレース制覇という栄冠をもぎ取って行った。2着にアニメイトバイオ、3着にベストクルーズ、4着ラナンキュルス。外から激しい追い比べを併せ馬の形で演じたシンメイフジとタガノエリザベートはそれぞれ5,6着に沈んだ。
勝ったアパパネ。勝負服はディープインパクトやカネヒキリで御馴染みの金子正人HD。この馬主さんはハワイが好きなようでそのての名前を時々使う。因みにアパパネはハワイに生息する赤い鳥の名前らしい。イコピコは違う馬主だけど、ハワイ語って独特の響きあるよね。あまり距離が伸びていくと良くないという評価はこのチーム全体の一致した考えらしいので、春は桜花賞を最大目標に狙う事になるだろう。因みに勝ち時計は同日に行われた古馬1000万下のマイル戦を上回るもの。ラップ的にも互角。今後の成長次第で勢力図は変わるが、やはり現時点ではこの馬が一番強いと言えるだろう。完勝だったと思う。
2着アニメイトバイオに関しては分析よりも先に「何してくれとんじゃ」という気持ちが先に立つ。この馬が前2走のように出遅れてくれていれば、やはりあんな風に内は付けなっただろうし、そうなればタガノエリザベートやシンメイフジと同じような競馬になった可能性は高い。そうすれば、馬連だけでなく3連単がゲットだった。自力で難しいレース当てて、ボーナス作れたのにぃと、いう気持ちだ。（未だに捨てきれない）
但し、それを克服した内田博幸のスタート技術と馬のレース慣れは認めなければならない。スタートで出遅れる癖のある若駒は、ゲートに慣れる事で簡単に克服してしまう可能性がある。かつてエルコンドルパサーがそうだったように。そしてもう一つがこの馬の実力。京王杯のレベルを疑っていたけれど、こうなると来週の朝日杯に向けてもう一度見直す必要がある。そしてあの長い末脚を、あの位置からでも繰り出せるという事も大きな収穫だったろう。ゼンノロブロイ産駒初年度の活躍馬、良いサンプルとして、今後の活躍が楽しみ。
3着ベストクルーズは、結果として外枠がこたえた。終始外々を回る形になっての距離損は大きい。だが、それでもきっちり3着。いつもよりも後ろからの競馬になったが、動きたい時に動けるという事もあり、非常にレースがし易い自在性を備えた馬。もう一つ化けてくると面白いが。4着ラナンキュラスは現時点での力は出し切った。。初体験のマイル戦、内から差してくる形の競馬。こういう経験値を一つ一つ蓄えていくと同時に馬体に身が入って腰がパンとしてくれば、この馬こそ桜花賞の第一候補に浮上するかもしれない。春の成長と走りが楽しみな馬だ。
負けて強しのシンメイフジ。追い比べでタガノエリザベートに競り勝っている事実には胸を張って良いだろう。追い込み馬は自分でレースを作れないのでどんなに強くても展開に左右される。本番までにレーススタイルを改善するのか？このまま行くのか、早めに動き出した事を見てもゲートさえ出遅れなければもっと前に付ける競馬にシフトしてくるかもしれない。その時に今のような末脚を損なわなければ、戦力は確実にアップするが。
一方、タガノエリザベート。ファンタジーで負かした馬達に先着されたが、これは頭数が増えてこの馬の位置取りが後ろになり尚且つ前に位置し内を通った馬に有利なレース展開になった結果。また、坂のある阪神でもきっちり伸びる事を確認出来た事は収穫。予想通りにメンバー最速の上がりを記録。だたらといって勝てないのが競馬。気性的にレーススタイルに変更の余地はない。今のまま末脚に磨きをかけ、後は本番、展開が向いてくれる事を祈るしかないだろう。こういうレースを続けながらあれだけ勝っている厩舎の先輩ブエナビスタの能力の高さを、改めて思い知ったのではないだろうか。
と、いうようなレース回顧です。寒くなってくると鍋が恋しくなってきますが、僕の最近のお気に入りは洋風の雑炊とも言えるリゾット。作る人の好みによってアレンジは様々ですが、お米を美味しく食べる方法としてもっと大々的に扱っても良いのでは。っていう話をしてたら食べたくなってきた。今日はワインにしとこうかな。お米と合わないって？リゾットには合うのです。では、この辺で。
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