2009年03月01日
「将棋界のピラミッド」で将棋界(将棋じゃなくてその世界)に興味が出られた方がいるみたいなので、3月3日の将棋界最大のイベントである「A級順位戦最終日」、いわゆる「将棋界の一番長い日」についてその楽しみ方を紹介したいと思います。
「A級順位戦最終日」が将棋界最大のイベントであるのは、この日の対局によって名人への挑戦者が決まるからです。
また同時に、「A級」から「B級」に落ちる降級者が決まる日でもあり、むしろこの降級者が決まることの方が「一番長い日」であることを示しているかもしれません。
名人戦というのは非常に歴史のあるタイトルで、そのシステムも独特です。
プロになった棋士はまずC級2組に属します。ここで上位3位までの成績を収めるとC級1組に昇級できます。
C級1組からB級2組、B級1組まで昇級はそれぞれ2名で、一方の降級は各級微妙に違うので今回は省略します。
肝心のA級は1名が名人への挑戦者となり、2名がB級へ落ちることとなります。
ここからがポイントですが、降級の2名については、成績が同じ場合順位が下位の者2名が落ちることになります。
これが順位戦の大きな特徴で、前年の成績、つまり順位が非常に重要な意味を持つのです。
今年のA級順位戦はまれにみる接戦といわれており、3月3日に一斉に行われる5局の対局全てが、名人への挑戦か降級が掛かった一戦となっています。
それでは順位戦上位の対戦から説明します。(以下棋士名については敬称略でお願いします)
前名人である森内は、名人復位に向け前半は3勝1敗と好調だったが、その後1勝3敗と負けが込み、現在4勝4敗の五分の星。
挑戦にも降級にも影響のない位置にいますが、森内本人には「順位戦連続勝ち越し記録」が掛かっています。
これまで順位戦で負け越した事がないのは、現役ではこの森内と後で紹介する木村のみ。木村はすでに勝ち越しを決めているので、森内も連続記録に向け気の抜けないところです。
一方三浦は、昨年名人挑戦を惜しくも逃したA級2位。ただ、今年は3勝5敗と負け越し、降級のピンチです。
先に説明したとおり、成績が同じ場合は順位の順に落ちますので三浦は非常に有利なところにおり、勝てばもちろんのこと、負けても下位の成績により残留することが出来ます。
ただ、A級順位戦の恐ろしいところは、このようにもっとも落ちる確率の低い棋士がえてして落ちることが多く、正確なデータは分かりませんが、そのインパクトのせいか将棋界ではよく言われるエピソードの一つとなっています。
こちらは挑戦者決定の最も重要な対戦。
6勝2敗とトップをいく郷田は、勝てばもちろんそのまま挑戦者決定。負けても挑戦者決定のプレーオフとなるで、2度チャンスがあります。一昨年の森内との名人戦に続き、今年も挑戦者を目指します。
対戦する木村は5勝3敗の成績で、勝てばプレーオフに持ち込むことが出来ます。
この挑戦者決定プレーオフですが、こちらも順位戦の特性を生かしたものとなっています。
もしも後で紹介する5勝3敗の佐藤が勝ち、3人の星が並ぶようになれば、次のような対戦が組まれることとなります。
プレーオフが2人ならば直接対決のみとなりですが、3人以上になると順位下位の者は順に勝ちあがっていく変則トーナメントとなります。これに、もし佐藤より下位の者がもう一人いたと仮定すれば、例えば佐藤はその者に勝って次は木村と、その次は郷田との対戦、という風に勝ち上がらなければならないのです。
ですので郷田はあと2戦のうち1勝をあげれば挑戦者となれます。逆に木村は佐藤の成績次第によっては、3連勝する必要が出てくることになります。

4勝4敗の丸山はここで勝ち越し、来年の順位を一つでも上げておきたいところ。
昨年の最終戦では、対戦相手の藤井が負けを認め投了をする際にカロリーメイトをもぐもぐと食べ始め、周囲を驚かせました。
一方の深浦は今年も3勝5敗で降級のピンチ。
先週行われた王将戦第5戦では羽生を倒し3勝2敗とし、初の王将獲得に向けあと1勝と迫っています。
深浦はこれまでA級に3度上がってきていますが、前2回とも4勝5敗の順位下位による降級、という憂き目にあっています(これは深浦のみの記録らしい)。
ここで初の残留を決め、万全の状態で翌週に控える王将戦に挑みたいところでしょう。
しかし深浦は例え勝つことが出来ても、A級2位の三浦が勝ってしまうと同じ4勝5敗となり、順位により落とされてしまうのです。また、負けてしまうとそのまま降級決定ですので、勝つことが絶対条件となっています。

藤井は4勝4敗で挑戦も降級もありません。ただ勝ち越せば来期最高3位まで上がる可能性があります。
藤井は最近得意戦法を変えたようです。戦法の紹介はここでは行いませんが、「ロックを唄ってたミュージシャンが突然演歌歌手になった」くらい(?)のインパクトが将棋界にはありました。
そもそも序盤に趣向を凝らすタイプですので、色々考慮されての決断だったことでしょう。とりあえずこの段階で降級の危機はないわけですから、その成果は一定実っているといえるのかもしれません。
対する佐藤はここまで5勝3敗、挑戦のチャンスがあります。
昨年の佐藤の順位戦は本当に大変でした。出足からまさかの6連敗で、だれもが佐藤の降級を予想したものです。
しかしそこから執念の3連勝で、順位がよかったこともあり残留を決めました。テレビ中継での佐藤は、まさに鬼のような形相であり、相手の木村が詰みを逃してしまう佐藤の気迫が勝った、そんな一戦でした。
今年はA級常連者の貫禄か挑戦者争いに絡む成績で、勝てばプレーオフに進める可能性があります。少なくとも佐藤は、ここから3連勝が挑戦への条件ですが、宿敵・羽生名人の打倒、2度目の名人復位の道は残されています。
ともに3勝5敗の成績で、降級争いの焦点となる一戦。両者ともに勝てば残留、負ければ降級が決定します。
谷川は最年少名人、7つのタイトル全てを獲得したことがある大棋士。しかし今年は降級のピンチにあります。
ただ、今回は谷川の先手番。将棋は先手が有利とされますので、若干でも有利な条件にあるといえるでしょう。
一方、鈴木は下位の深浦が同じ成績のため、勝てば自力残留となります。
A級在位4期目ですが、強豪ひしめくこのクラスでは目立った成績を残せていません。
基本的に早指し将棋が得意とされ、順位戦のような持ち時間の長い対戦で成績を残したいところでしょうか。
以上簡単に各対戦について説明しました。
この「将棋界の一番長い日」はBS2で放送されます。
順位戦は持ち時間がそれぞれ6時間もあり、午前10時から始めて、終わりは深夜0時を回ることが通常です。途中には、昼食や夕食の食事時間もあります。
ですから始めて観戦される方は「なかなか手を指さないなあ」と思うでしょう。
BS中継の一番の見所は、やはり午後11時からの放送で、例年は各対局ごとに「こっちが有利」「こっちが負けそう」などとボードで解説されますので見易いとは思います。
また、羽生名人も会場に訪れるかもしれません。
なにしろ深夜2時までの長丁場の放送ですので、見られる方はのんびりとお楽しみ下さい。
それでは最後に、個人的な予想で終わりたいと思います。
○森内俊之 九段 VS 三浦弘行 八段●
やはりここまで順位戦で負け越したことの無い、森内が勝つのではないでしょうか。
三浦は、最後に前名人との対戦を後手で挑まなければいけないのが辛いところでしょうか。
○郷田真隆 九段 VS 木村一基 八段●
郷田が最終戦に勝ち、すんなり挑戦を決めると予想。個人的にはプレーオフを見てみたいですが、長考派である郷田にとって持ち時間の長い順位戦はやりやすいのではないでしょうか。
木村としては意地でも勝ちプレーオフを制することで、連敗しているタイトル戦での初白星を揚げたいところでしょう。
●丸山忠久 九段 VS 深浦康市 王位○
羽生キラーとして、最も油の乗っている深浦が初のA級残留を決めると予想。王将戦へ弾みをつけるでしょう。
マイペースな丸山が、挑戦・残留に関係ないことによる影響は受けないでしょうが、なんとしても初残留を決めたい深浦の気迫に押されるのではないかと考えます。
●藤井 猛 九段 VS 佐藤康光 棋王○
今期6割近い成績を残している佐藤に対し、藤井は5割を若干上回る程度。また、直接対決でも佐藤の20勝9敗と大きく勝ち越していることもあり、佐藤が6勝目をあげると予想します。
○谷川浩司 九段 VS 鈴木大介 八段●
これは予想というより希望になるかもしれません。
関西の星、谷川にはなんとかA級にとどまって欲しいところ。
鈴木も簡単な相手ではありませんが、時代を作った強さをこの大舞台で発揮してもらいたいものです。
というわけで、結果として
名人挑戦者 郷田真隆 九段
B級降級者 三浦弘行 八段
鈴木大介 八段
となりました。
さて、どうなるでしょうか・・・。
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コメント一覧
明日(というか結果がでるのは明後日か)が楽しみになってきました。
途中デスノートやらラルグラドやら挟んでも書かないので、もうないんでしょうかねえ。
「バクマン」がこけてたらひょっとして・・・と思うのは、膨らませすぎでしょうか。
全然知らない棋士なのに対局者の情報のおかげでなんとなく肩入れする方が決まって解説で有利不利の情報が出るたびに一喜一憂しておりました、解説内容自体は全然わからないのに。
将棋界に少しでも興味がわいてもらえるよう、また当日の中継が少しでも分かりやすいよう書いたつもりです。
私も将棋の内容については分かりませんが、「こっちが優勢」とか言われるたびに「そうなのかー」と感心してました。
夜中遅かったので辛いですが・・・
あと1時間早くしてもらえると助かりますね。

