2010年10月15日

10月14日、将棋界において名人戦と並ぶ大きなタイトル戦「竜王戦」が開催されました。
今回の対戦は「魔王」の異名を持ち竜王戦6連覇の実績を持つ渡辺竜王と、将棋界の大スター羽生3冠との対戦となっています。
その第1戦の模様を、将棋がわからない方でもその雰囲気がつかめるように紹介できるか、挑戦してみました。
さあいよいよ世紀の対決が開催されました。
渡辺VS羽生の竜王戦対局は2年ぶり、羽生の3連勝から渡辺が4連勝し、永世竜王を獲得した対戦した以来となります。
竜王戦は7番勝負。先に4勝した方の勝ちとなります。
第1戦は長崎県長崎市 「にっしょうかん別邸紅葉亭」という旅館で行われてます。
将棋のタイトル戦は、全国各地で行われるのが通常です。旅館やホテルの1室を借り、対戦を行います。
対戦者や関係者は前日から宿に泊まり、翌朝から対戦という運びとなります。
1局目は「振り駒」によって先手後手を決めます。サイコロを振るようなものです。
将棋は先手が有利とされているので、この振り駒が結果を左右したりもします。
先手は渡辺竜王となりました。
渡辺「よしっ幸先よく先手だ。得意の戦法で行くぞ!」
羽生「ふん、私もその戦法は得意なのさ。迎え撃つだけよ!」
渡辺「ん、なんだその手は。それは研究の結果よくないとされてる手だぞ!」
羽生「おっと、引っ掛かったな。私の研究ではこの手で良くなるはずなのだ!」
渡辺「・・・こ、これは新手か・・・。しかしそれも織り込み済みよー!」
羽生「・・・よし・・・1日目はここまでとするか・・・」
検討陣「これは先手が良いとされてるんですが・・・羽生さんだけに分かりません!!」
1日目をざっくり書くとこんな感じです。
竜王戦はビッグタイトルなので、1回の勝負を2日に分けて行います。
将棋は考える時間があるほど有利なので、1日目から2日目に移る際は、「明日これを指します」という「指し手」を紙に書き、翌朝これが2日目の1手目になります。
これを「封じ手」といいます。
そしてこの後は、泊まる旅館で楽しい夕食会となります(画像は竜王戦中継ブログより。以下同じです)。
この夕食会への対戦者の参加は自由ですが、だいたいは軽めに参加しするようです。
なお、対局前日には「前夜祭」なるものが行われます。
「前夜祭」では県副知事が挨拶したり、今回はなかったですが地元の郷土芸能(太鼓を叩いたり)など、華やかに行われます。
その模様はこちら。
なかなか豪勢です。
食い物画像ばかりですが、ちなみにこれらの最後はこうです。
無残に食べ尽くしてます。
ついでに食べる話を続けると、対局中の昼食以外にも10時のおやつ、3時のおやつも出されます。
タイトル戦は待遇がいいですね。
さていよいよ2日目が始まりました。
先ほど紹介した「封じ手」が開けられます。
羽生「封じ手はこれだーーっ!!」
渡辺「ふっ、やっぱりね、それならこうするだけよ!」
羽生「おっと、それは分かっていたのさ・・・・これならどうする!?」
渡辺「・・ぐっ、、、これは、意外と攻めが続かないぞ・・・・・ち、昼食だ」
検討陣「羽生さんが盛り返したでしょうか・・。しかし分かりません!!」
こんな感じで2日目の昼食に突入しました。
流れとしては渡辺竜王の攻めを羽生3冠がどう凌ぐか、という展開となっています。
ちなみに渡辺竜王の2日目の昼食は皿うどん、羽生3冠は天ぷらうどんだそうで、渡辺竜王は2日続いて皿うどんを注文した模様。
皿うどんが気に入ったようです。
そして昼食休憩後・・・。
渡辺「昼休み中考えていた手はこれじゃあ!!」
羽生「だから、それは読み筋さ・・・。」
渡辺「しかし、こうならどうするかね。」
羽生「ぐ、、、ふぐぅ・・・」
検討陣「渡辺さんが盛り返したでしょうか・・。しかし分かりません!!」
形勢が時間を追うごとにフラフラと傾いているようです。
今回の対局には「1億3手読む」と言われる佐藤九段や、「羽生キラー」として名を馳せた深浦九段、「永世十七世名人」の称号を持つ谷川九段など、超一流どころが検討をしていますが、なかなか形勢判断が付かないようです。
ここで、現地の中継のBlog管理人と思われる方から
「佐藤先生、現在の形勢判断をしていただけないでしょうか?」
などと鬼のような注文が入りました。
それに対し佐藤九段のコメントはこれ!
佐藤「正直形勢はわかりませんが、何かあってもおかしくない。54対46ですね」
なんという微妙な回答!
トッププロが寄って集って検討しても分からない、難解な局面ということでしょう。
羽生「しかし、この手があるっ!!」
渡辺「やるな、まだまだぁっ!!」
佐藤「こ、これはっ!!」
検討陣「どっちが勝っているのか、分かりません!!」
とんでもない大熱戦。
対局者以外、いや対局者も勝っているのかいないのか分からないかもしれない激戦に、いよいよ決着のときが来ました!
羽生「これでどうだあっ!!」
渡辺「く!こ、これはっ際どい!!」
羽生「あ、、、負けました。」
一同「えーーーーーっっ!!!」
羽生「えっ?」
なんと突然の羽生3冠の投了に一同驚きです。
正確に指せば渡辺竜王の勝ちなのかも知れませんが、まだまだ勝負の行方が検討サイドでは分からない状態だったため、突然の終了のように思えたのでした。
終局は午後6時1分。通常よりもだいぶ早い終了となりました。
これにより、渡辺竜王は竜王戦9連勝を達成。7連覇に向け幸先の良いスタートとなりました。
一方の羽生3冠はタイトル戦の連勝が10でストップ。次戦で巻き返し、タイに持ち込みたいところでしょう。
以上、竜王戦第1局を極めて簡潔に実況してみました。
実際のところ、渡辺竜王や羽生3冠がこのような漫画チックな考えをしてるのかどうか分かりませんが、将棋は思考のみが制するゲーム。「気合」は実は重要なファクターだったりするのです。
しかし渡辺竜王は2日制のタイトル戦は強いですね。今年絶好調の羽生3冠を見事投了に追い込みました。
渡辺竜王の強さは「割り切り」の良さ。
考えるところはじっくり考え、分からないところは「これで駄目なら」という潔い決断力のある将棋が魅力です。
一方の羽生3冠は、常にマイペースなところに強さがあります。
1手1手にこだわりを持ち、隙あらば序盤からも積極的に相手の手をとがめに行くところに、羽生将棋の醍醐味があります。
第2局は10月26・27日(火・水) 福島県福島市「摺上亭大鳥」で行われます。
竜王戦はBS放送もありますが、今回は国会中継の前に敗れ去りました。
渡辺−羽生の両対局者はもちろん相手に、将棋ファンは国会に勝つことが重要な一戦となりそうです!!