2011年11月30日

現在、将棋界では名人戦と並ぶ大きなタイトル「竜王戦」が行われています。
7連覇中の絶対王者・渡辺明竜王に対し、挑戦者は丸山忠久九段。
丸山九段は、これまで名人位を2期持つなどいわゆる「羽生世代」の一翼を担う実力者ですが、棋力のみならず、それ以上にすさまじかったのはその食欲だったということで、11月24〜25日に行われた竜王戦第4局での丸山九段の尋常ではない食欲ぶりを紹介させていただきます。
当サイトでも何度か紹介させていただきましたが、現在の竜王は渡辺明竜王・王座であります。
そして、挑戦者がこちら、丸山九段です。
飄々とした表情と裏腹に、完璧なまでの合理主義者で勝利に徹底的にこだわるところから「激辛流」とも呼ばれます。
ここまで3局が行われ、結果は渡辺竜王の2勝、丸山九段の1勝となっており、4勝した方がタイトル獲得となることから、渡辺竜王がタイトルに王手をかけるか、丸山九段が星を5分とするか注目の一番となっています。
注目の第4局は福島県福島市で行われました。
その前夜祭で、早速丸山九段の食欲についてのインタビューがされています。
主催者である読売新聞社からの質問、
―――丸山九段は二日目の夕方に軽食を食べるという珍しい挑戦者なのですが、やはりヒレカツサンドは重要だということでしょうか。
との問いに対し、
「まあヒレカツサンドでなくてもよいのですが(笑)。ただ今までの人たちが食べなかったのが不思議ですね。」
と、さも当然のように答えます。
通常、対局中の棋士は食欲が落ちます。
考え続けているから当然のことなんでしょうが、丸山九段はそこが違っているようです。さらに
―――第2局では17時に出したら残念な結果になってしまいましたが、前局(第3局)は16時30分に出したらお勝ちになられました。時間の違いは何か理由があるのでしょうか。
の質問に関しても
「17時のときは、お腹がグーグーなっていたというのがあって(笑)。もう少し早い方がいいかなと。」
と答えています。
基本的には対局中は飲み物だけというのが棋士が多いのですが、丸山九段は違うのです。
さて、いよいよ対局の開始です。
竜王戦は2日制となっており、1つの勝負を2日かけて指します。
その初日、早速丸山九段の対局と食欲との戦いが始まりました。
まずは手始めにこちら。
ミネラルウォーター3本にキットカット、あと和菓子が見えています。
9時から対局が開始され、10時におやつが出ますがそれまでのとりあえずのつなぎでしょうか。
そして10時のおやつです。
パパイヤとアイスティーです。
こちらは量そのものはたいしたことありませんが、注目はパパイヤです。
前局の第3局では、初日の10時おやつにパパイヤを注文し・・・
昼食は、食事とマンゴーをはさんだのち・・・
15時のおやつはパパイヤ・・・・
と、パパイヤが相当気にったようです。
そして、その第3局の2日目の10時のおやつは、やはりパパイヤ・・・
そして昼食には、メインとマンゴーを追加。
15時のおやつは、やはりパパイヤでしめてます。
ちなみに、その前の第2局では、パパイヤがよっぽど気に入ったのか、おやつに「パパイヤ3倍盛」というのを注文されました。
そして今回の第4局の1日目の昼食は、うな重にマンゴー。
パパイヤ→マンゴー→パパイヤのラインは今日も守られているようです。
翌2日目には「朝食」にふぐちりを希望。
それ夕食ですからっ!!
しっかりパパイヤも添えられているのにも注目です。
そして10時のおやつはやっぱりパパイヤ。
ちなみに丸山九段から
「量が少ないです」
との要望があったそうで、通常より量多めで出されているそうです。
昼食は大盛りのうな重とフルーツ。
うな重に対しても
「うなぎも多めで」
の要望により、ごはんが見えないどころか、溢れんばかりに重ねられています。
フルーツはパパイヤの模様。
店側が「パパイヤ→マンゴー→パパイヤ」の定番コンボへの配慮が足らなかった模様。
その為か、15時のおやつでは・・・
昼食で食べられなかったかマンゴーを加えた、パパイヤ・マンゴーセットを希望された様子。
ここで事件発生!
何を思ったのか、渡辺竜王がおやつの部門で挑戦者に挑戦を挑み、ケーキ3個セットを注文!!
これ何の戦いよ!?
しかし渡辺竜王、注文したものの厳しい対局中にこれだけのケーキは食べられないと、ケーキには一切手を出さず!
だから、そっちの分野で張り合っちゃだめだって!!!!
しかし、これで満足するような丸山九段ではない。
前夜祭でも注目された軽食が16時30分に登場。
レーズンパンに水セットだ!
ちゃっかりとお菓子の補充もしているぞっ!!
ちなみに16時からはBSプレミアムで中継がはじまったため、丸山九段による軽食会が全国に生中継されました。
幸せそうですね。
必死に考える渡辺竜王を前に、よどみなくパンを完食。
あまりの食べっぷりの良さに、グルメ系レポートが殺到しそうです。
―――
さて、肝心の勝負の行方ですが、ケーキ3個の放棄にはじまり、軽食一気食いを見せられ、将棋の方でも苦しい戦局となった渡辺竜王ではありますが、軽食が終わったのを境に、一気の反撃を見せ見事な逆転勝利。
「食勝負」を早めに諦めたのが功を奏したようでした。
―――
あと、丸山九段の名誉のために書き加えたいのですが、考えている相手を前に食事をする、というのは嫌がらせる、よくいう盤外戦ではありません。
丸山九段なりの全力で勝負するための必要なエネルギーがそれだった訳です。
昨年の3月の「順位戦」という大勝負では、頭頂部に冷えピタを貼って盤面へ向かう丸山九段の姿が、BSプレミアムで全国放送されました。
決してふざけているわけではありません。
真面目にやっているところに、丸山九段の勝負に向けたなりふり構わない全力の姿があるわけです。
この姿勢があるからこそ、超一級の成績を残している丸山9段があるといえるでしょう。
以上、丸山九段の旺盛なる食事と、その源となる勝負への執念といったところを紹介させていただきましたが、もうひとつ面白かったのは渡辺竜王のケーキ3個オーダーでしょう。
現代的な勝負への姿勢を見せる渡辺竜王もまた、合理的な手法を取る棋士です。
個性あふれる棋士の中で、(失礼ですが)その風貌の割には、目立った行動をとることは少なく、無駄を嫌います。
そんな渡辺竜王が、丸山九段に対抗するかのようにケーキ3個の注文ですから、それは大変興味深かったわけです。
しかし、実際に食べるまでしなかったのはさすがは現代っ子であります(ちなみに渡辺竜王は27歳です)。
将棋界で最も人気を誇る羽生2冠を徹底的に倒し、ややヒール感のある渡辺竜王ではありますが、今回のことや、本人のブログでの将棋の内容より大好きな競馬の方に記事に力が入っていたり、人間っぽさ溢れるところが渡辺竜王の魅力でしょう。
ケーキ3個は愛する妻と、一人息子へのお土産だったかもしれませんね。などと終いを綺麗に書いたつもりで、今回の記事を終わりとさせていただきます。
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コメント一覧
脳の消費エネルギーは未だ不明な点が多いらしいですがやはり棋士となると相当なもんでしょう。
私は最近太り気味なので脳を使いまくってチャラにできればいいのにと思います。
将棋雑誌ってないの?
凄くお腹が空くよ
あるいは小説とかを1日に5〜6冊集中して読んだときなんかも空く
多分(普段は体に入るエネルギーの3割ぐらいが
頭で消費されているのが)集中して頭を使うと、もっと使われて足りなくなるんだろうね。