2007年01月28日

城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』(光文社新書 2006.9)

新書1

 在学中の生徒たちは見ていても、卒業してからの彼らが社会のどのような構造のなかで暮らしているのかは、なかなかリアルに見えてきません。そういう意味で、とても刺激的な本でした。それと、これから社会に巣立っていく生徒たちに対する啓蒙の書としてもふさわしい本だと思いました。 
 内容を整理するために、とりあえず、線を引いたところを中心に書き出しておきます。

第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
 「社会の二極化が叫ばれるなか、より安定したレールを目指す風潮は強まっているように思う。そう、昭和的価値観の復権だ。」
 「企業内ではいま、若者たちの間にある異変が起きている。…わずか数年で途中下車してしまう人間が急増しているのだ。/…大卒入社3年以内で36.5%(2000年)、実に三人にひとりは辞めている計算になり、しかもその数字はまだまだ伸び続けている。」
 「さて、同氏(引用者注:都内中堅IT企業の人事部・池田氏)の話には“わがまま”“忍耐不足”という二つの単語が頻繁に登場する。/どうやらこの二語こそ、若者たちが企業から途中下車する理由を説明するキーワードになりそうだ。/実際のところ、彼らを受け入れる企業の現場が、この10年でそう大きく変わったとは思えない。にもかかわらず、現実の仕事に対してギャップを感じるのは、それだけ彼らが仕事というものに対して幻想を抱いてしまっているということだ。/なぜ、若者はかくも仕事にこだわるように(ベテラン社会人の言葉を借りれば、わがままに)なったのか。/実は、理由ははっきりしている。採る側である企業の、人材に対する考え方が一変したためだ。/かつて、日本企業の人材採用に関する考え方は、……『なんでもそつなくこなせるタイプの人材を、新卒で本社が一括採用する』ことが基本方針だ」った。「ところが、1990年代後半から、大企業を中心にこの状況に変化が起きる。……大量採用から厳選採用へ、本社一括方式から事業ごとのピンポイント採用にシフトする企業が相次いだのだ。」
 「では、そういった変化の洗礼をもろに受ける学生の意識はどう変わったか。……企業が欲しがっているのは、組織のコアとなれる能力と、一定の専門性をもった人材なのだ。/ここで、彼らは初めて考え込むことになる。自分のやりたい仕事は何か、どういう分野で成長していきたいか。」
 「ネットの普及による情報量の増大」によって、「採用活動をオープンにする企業が増え」、その結果、「特定の大学」の学生だけでなく、「全員が同じ土俵で、同じ基準で評価されることになった」。「その結果、学生は偏差値や性別などとは無関係に、明確に二つのグループに分けられるように」なったという。「一つは、明確なキャリアプランを持ち、そのために努力し、厳選採用に対応して正社員としての地位を獲得できるグループ。もう一つは、『ただなんとはなしに』有名な企業ばかりに応募し続け、なかなか内定の取れないグループだ。/前者は仕事というものに対してきわめて高い意識を持つが、後者は1990年代の学生と比べて大して変わっていない。/…彼ら(前者)が入社後、希望していた業務と実際に割り振られた業務にギャップがあった場合、強烈なフラストレーションを抱えこむことになる。」

第2章 やる気を失った30代社員たち
 「きっかけは、国による公的資金注入だった。不良債権の抜本処理と、公的資金の返済義務を課せられた銀行側は、死に物狂いでコストカットを始めた。目標が達成できなければ、待っているのは完全な国有化と解体だ。/だが、コストカットの矛先は意外なところに向けられた。『若手や中堅の主任クラスの人間をいっせいに課長に昇格させたんです。部下のいない、名刺上だけの役職に。それで年俸制にして残業代などの手当を全額カット。実質で二割近い年収ダウンですよ。』/管理職に昇格させれば一応は“経営側”だから、組合は脱退する。あとは会社のやりたい放題だ。…駒井氏(某メガバンクの銀行員・33歳)は三年間ボーナスを全額カットされた。」
 「年功序列制度が、若い頃の報酬を将来の出世(昇給、もしくはポスト昇格)で払うものだという話はすでに書いた。そして、それがちゃんと払われる保証なんてどこにもない時代になってしまった、という話も書いた。」
 「年功序列制度は、組織の方針を信頼し、将来を託すという意味で、一種の宗教に似ていなくもない。…/企業のなかでレールに乗って順調に先に進めるか、それとも完全にキャリアパスが止ってしまうのか。それが自分ではっきりとわかる年齢は、おおかたの企業において30代だ。/これが、企業内で30代が壊れていく最大の理由だろう。プレッシャーというよりは、閉塞感というほうが正しい。」

第3章 若者にツケを回す国
 「企業のリストラといっても、せいぜい不採算部門の職種転換、事業売却くらいで、多少強気な企業で早期退職募集くらいだ。原則賃下げや解雇なんてできないから、ほとんどの経営者はまず「新規採用の抑制」で人件費を抑えようと考える。//…人件費は抑えないといけないものの、別に企業が『若い働き手を必要としなくなった』わけではないということだ。/…年功序列型の組織なら、基本的に年齢を重ねた人間は…頭を使うポジションに上がっていき、それを下支えする若い人間が新たに必要になる。つまり、第一線で大して面白くもない作業を黙々とこなしてくれる若い兵隊は、絶対に必要なのだ。…/いままでよりずっと安い賃金で、ずっと下っ端のままこき使える存在――そんな便利な存在が、はたして存在するだろうか。//その便利な存在の代表格は、派遣社員と呼ばれる新しい形態の労働者集団だ。」
 「企業にとって、彼らは実に便利な存在だ。彼ら非正規労働者には、賞与も社会保険の企業負担分も、退職金の積み立ても必要ない。有給休暇に関する規定はあっても、額面どおりに支給している有徳の経営者はめったにいない。/だが、なんといっても経営者を魅了してやまないメリットは、その多くが組合すら加入していない彼ら非正規労働者は、不要になったらいつでも切れるという点にある。」
 「その結果、非正規雇用の約八割が、30歳以下の世代に集中している。いまや若年層(24歳以下)の二人にひとりは、これら非正規労働者だ。/彼らを安月給でこき使うことで浮いた分は企業の利益となり、最終的には上の世代に彼らのレールを進ませる燃料となる。」
 「定期昇給もない、かといって成果主義による大抜擢もないでは、若年層としては『やってられない』ということだ。」

第4章 年功序列の光と影
 「つまり、『新卒→正社員』というレールに一度でも乗り遅れてしまった人間は、二度と正社員のレールには乗れなくなってしまう可能性が高いと言える。」
 「派遣・フリーターが急増しているという話はすでに述べた。その数、10年で2倍以上だ。彼らの年齢を見ると、20代後半から30代前半にかけての層が非常に厚いことに気づく。…/企業が年功序列に固執する限り、彼らが正社員になれる可能性は今後も低いだろう。//…一度レールからはずれてしまった人間に機会を与えるシステムを作ることも重要だろう。」
 「35歳を超えて、一度でも年功序列というレールを降りてしまうと、多くの人はもう二度と列車に乗ることは許されない。それでいて、リストラの際にターゲットにされるのは彼ら中高年だ。」
 「…(年功序列という)レールが存在し続けているも事実だ。それは世代間の歪んだ格差という形で若年層にのしかかり、彼らのモチベーションを奪っている。増え続ける新卒離職率の最大の原因は、まさにここにある。」
 「…“格差否定論者”には、えてしてこれらの格差の原因を『企業が年功序列を捨て、成果主義に走った』点に求める向きが強いのだ。//企業が成果主義を入れざるをえなかったのは、年功序列システムが崩壊したためであり、そのフォローのためだ。…」
 
第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
  
第6章 「働く理由」を取り戻す





tomtom_poem at 18:40│Comments(0)TrackBack(0) mixiチェック 教育 

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