2017年02月05日

小池博史ブリッジプロジェクト『世界会議』

2017.02.05(日)13:30〜14:50 吉祥寺シアター 前売一般: 4,900円(徳久ウィリアム扱い)

「―さらばあの世か この世かあの世―小池博史ブリッジプロジェクトによる初の完全オリジナル作品であり、 世界シリーズ第1弾がついに始動。 多彩なアーティストが境界を越えて集い、 「平和とはなにか」を問います。」吉祥寺シアターの「世界会議」紹介コピーです。
主宰の小池博史はスペシャルコメントを「古の東西の偉人、奇人、狂人の亡霊たちが自然界の王「熊」に呼び出され、混沌とした現代をどうするか、と会議の場に着くところから始まる『世界会議』。最初から奇天烈ニヤニヤ。意味世界をぶっ飛ばし、『今』を探りだす世界シリーズの第一弾!音楽好きにも!」と寄せている。

[演出・脚本・振付・構成]小池博史
[出演・振付]毛沢東/清水寛二(能楽師・銕仙会)、マハトマ・ガンジー/松島 誠、マザー・テレサ/白井さち子、ジャンヌ・ダルク/ 荒木亜矢子、南方熊楠/谷口 界、空海/立本夏山、アドルフ・ヒトラー/吉澤慎吾
[演奏]下町兄弟(ジャンベ・パーカッション)、太田 豊(横笛・サックス)、 徳久ウィリアム(ボイス・口琴)
[舞台美術]栗林 隆 [作曲]太田 豊、下町兄弟、徳久ウィリアム [衣装]浜井弘治 [映像]飯名尚人 [照明]上川真由美

 黒尽くめの舞台には、枯れて頭を垂れた巨大なひまわりが4輪、ぶら下がっている。ときどき、誰かの喘ぐような声が聞こえる。客が入りきって、恐らく予定より5分遅い時間に、上手壁際の徳久ウイリアムの口琴で亡霊たちは「世界会議」のために呼び出されてくる――。 
 7人の演者が見せる肉体の競演ののち、舞台中央奥で陰をつくっていた球体(地球?)に映しだされる、飯名尚人の映像が圧巻で、ぐるぐると吸いつけられていった。と同時に、亡霊どもが姿を現し始める。
 7人の群舞は、エネルギッシュでスピード感やキレがあるのだが、顔を手で半分覆ったり、足の上げ下ろしがぎこちなかったり、何かに日常や自由を押さえつけられているような、奇妙だが観ていて飽きないものだった。物語の末尾で、彼らは同様の群舞を行う。そういう様式美もあった。
 巨大な熊=自然界の王が映像で登場し、清水と谷口が熊の巨大な頭(かしら)をかぶって、あの世にいた人びとに説明する。彼らは、彼らのアイデンティティーとも言えるセリフを断片的に吐いていく。
 場面は具体の対になる人物の対決を描く。まず、ヒットラーと毛沢東。ふたりの虐殺者の悪行が挙げられ、虐殺のダンスを総出でする。口琴とパーカスで激する徳久と下町以外の・・・つまり、雅楽の太田が一緒になって虐殺のダンスの振りをし始めたのに度肝を抜かれてしまった!
 場面毎に、7人の亡者は白いマスクをかぶった。それはいかにも気色が悪かった。しかし、プログラムを見ると、彼らは全員が市民の役でもあった。それならば、マスクをかぶって、招待を曖昧にされた7人は、市民だったのだろうか。それにしても、彼らは醜かった・・・市民・大衆は醜いものなのか!?
 次は、ジャンヌダルクとマザーテレサ。女の闘いである。これも激しかった。
 さて、残るは南方熊楠と空海とガンジー。空海とガンジーの民衆への平和的な浸透は、闘い続きで疲弊しきった現代未来への希望を産むかと思われたが、南方が性器がいちばん、男と女を強調したところで、終末の大団円に向かっていった。
 最後は7人があの世に帰っていった。最後の1人か、演出上1人にしたのかわからぬが、最後の1人(男)は暗い光のなかで唯一素っ裸になって退場した。

 小池が震災前まで主宰していた“パパ・タラフマラ”は、知っていたが観る機会がなかった。なぜ、この舞台を観る気になったのか。
 線を辿っていけば長い。数年前に参加するようになった水城ゆうのイベントで同席したことのある、徳久ウイリアムのメールマガジンで、このイベントを知った。それで調べてみると、かなり面白そうだった。まず、まだライブで観たことのない徳久のヴォイスを聴けるということ。流暢な口琴ばかりでなく、低音のヴォイス、高音のヴォイス、呟き、ラップ、どれをとっても引きつけられっぱなしであった。
 もうひとかた、清水寛二という能役者。この人の舞台は昨年9月に初めて観た。能舞台でではない。茅ヶ崎で開かれた、高橋アキのエリック・サティの音楽劇でである。西洋の異端的なサティの音楽に、清水の能の動きと発声が見事に馴染んでいた。今回も、わずかしかしない能の発声の場面が異様にどしんと輝いていた。60歳も半ばの清水が、若い人たちとまったく同じに動いて大丈夫なのかと思って観たりもしていたが、ときどき熊になったりして、お身体を少し休ませながら動かれていた。しかし、そのお歳でもかなり激しいパフォーマンスを魅せてくださった。
 
 客に女の子供が何人かいて、不思議に思っていた。終演後、後方から「先生云々」という声が聞こえた。出演者がダンスの教室を開いたりしているのかなと感じた。それ以外でも、若い客が多かった。
 


tomtom_poem at 23:40│Comments(0)TrackBack(0) mixiチェック 演劇 

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