2024年04月16日

新井高子詩集『おしらさま綺聞』〜源流の声が聞こえる新詩集〜

2024.03.11 第1刷 幻戯書房発行。
2024.04.15 読了。
新井高子詩集

 『唐十郎のせりふ――二〇〇〇年代戯曲をひらく』で第32回吉田秀和賞を受賞し、演劇・芸能面でも活躍し、2011年の震災以降は、東北のおんばたちとの交流でも大きな成果を上げている新井高子さんの第4詩集です。
 新井さんの詩語は独特で、今回も、「気仙弁とも桐生弁とも津軽弁とも言えない、それらの雑種、クレオールであるような地べたを這う響きの文体」によって書かれています。
 最初の数編を黙読していきましたが、なかなか私の脳に入ってきませんでした。
 そこで、音読を試みることにしました。
 濁音の多い方言の話し言葉は、音にして私の肉体と一緒にすることで、身体全体に響き渡りました。
 そして、とてもとても心地良かったのです。
 この、日本語の源流のようで、未来語であるような、ことばによって語られることは、
 東北の伝承であったり、また、ご出身である桐生の亡くなった家族やこどものことです。
 よ〜く耳をすませば、人々の魂の源流が聞こえてくるようでもあります。

 さらに、唐十郎や土方巽のような、土着の演技や舞踏の世界と重なるところも垣間見えました。

 たとえば、「P・P・パゾリーニ監督によるイタリア映画『豚小屋』、アイヌ祭礼のイヨマンテを踏まえた。」作品「神の子」、
「仲良しだった男の子の死」の体験と「島尾ミホや長田須磨が記述した奄美群島の仙骨儀礼などから飛躍した。」作品「川あそび」、
 何となしに唐十郎の芝居のせりふのようにも聞こえる「電球」、
 土方巽の舞踏譜とも繋がる」「薄光童子」、
「唐十郎戯曲の怪優たちとも通じ合う」「実存」など。

「織子瓜子祭文――おりこうりこさいもん」は「東北地方の昔話「瓜子姫」、津軽の巫女、桜庭スエの語り口、山本ひろ子や坂口昌明によるそれらの研究に霊感を得た。」(「おぼえ書き」)詩で、全文すばらしい。

「化野」も全編凄すぎる。大船渡のおんば、今は亡き地域の芸能者の影響を詩人は記しています。

 表現について言えば、鼻濁音の多い方言詩(「  乳首バ入れるがよ、/  女の獣(ずー)姦(かん)は/ちゅうちゅうちゅうちゅう、慰めてもおるがですよ」(「神の子」)で、
「ひらひらひらひら、振袖のたもとをお振りよ、花嫁さん」「ぐらぐらぐらぐら、     煮え立てて/とわとわとわとわ、」(糸引き女のうた)など、擬態語のリフレインが強烈に印象的でした。
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 この詩集の朗読をぜひ聴きたいものです。新井さんご自身の声や、東北おんばによる声などで聴いたら、さらに深い声が聞こえてくるのではないかと思われます。

 深い大切な詩集を、ありがとうございました。



tomtom_poem at 00:31│Comments(0) mixiチェック 詩歌 

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