今日もフェルマータ ~クラシック音楽 今日は何を聴こうかな?~

毎日クラシック音楽を楽しんでいます。 通った演奏会や、その日に聴いた音楽を書き綴っていきます。

今日は、読響第254回日曜マチネーシリーズを聴きに、東京芸術劇場へ。
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プログラムは、
 1. チャイコフスキーバレエ「眠りの森の美女」~ "ワルツ"
 2. ラフマニノフピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18
 3. チャイコフスキーマンフレッド交響曲 ロ短調Op.58 (スヴェトラーノフ版)
ピアノ:イーヴォ・ポゴレリッチ
指揮:山田和樹読売日本交響楽団/コンサートマスター:小森谷巧
山田和樹×ポゴレリッチのコンビを聴くのは3年ぶり。前回のシューマン/ピアノ協奏曲の奇抜な演奏が印象的でしたが、ラフマニノフはどうなんでしょう?気になります。

開場に入るとポゴレリッチはピアノに向かって練習中。同じフレーズを繰り返していました。

    
山田和樹の「明けましておめでとうございます」で始まった1曲目。ニューイヤーコンサートに相応しいチャイコフスキー(1840-1893)のバレエ音楽「眠りの森の美女」からワルツ。優雅で楽しいひと時でした。

    
2曲目は、今年生誕150年&没後80年のラフマニノフ(1873-1943)作曲ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18。当初の予定ではプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の予定でしたが、出演者の希望により変更になりました。

これまでCDでも実演でも繰り返し聞いてきた曲ですが、いざポゴレリッチの手にかかると、違った印象を抱かせる。開始冒頭の鐘を模した和音の連打でクレッシェンドの指示ああるにもかかわらず、5番目の和音で突然ピアノで演奏。その後猛烈なクレッシェンドで主部になだれ込む。まさに目から鱗の演奏。その後も、ポゴレリッチ主体の演奏スタイルで、オーケストラがピアノ独奏に合わせているかのようでした。

第2楽章は早めのさらっと流すようなテンポで、ロマンティックさとは無縁の印象でしたが、反対に第3楽章では重心重めで開始。テンポを自由自在に変化させ、最後はスケール大きく終わるという、ある種の奇抜さが目立った演奏だと思います。

次は是非プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を聴いてみたい。

    
後半は、チャイコフスキーマンフレッド交響曲Op.58。5年前の小林研一郎×読響の演奏では最後にオルガンが鳴り響き感動に包まれましたが、今回はスヴェトラーノフ版ということで、第4楽章の一部をカットし第1楽章の主題で締めくくるという、オルガンが入らないバージョン。4年前のスダーン×東響もこの改訂版だったかな。

第1楽章から山田和樹の気合の入り具合がハンパない。オーケストラもそれに応えるように分厚いサウンドを聞かせてくれました。美しい旋律が出てくる箇所とのバランスも良く、聴いていて飽きない。中間楽章も同様メリハリのある演奏で素晴らしい。

最終楽章では、これまでのエネルギーを全て発散するかのような爆演。最高潮に盛り上がったところで山田さんは興奮しすぎたのか、指揮台から下りて指揮するというパフォーマンス付き。ただでさえ冗長さのある第4楽章ですが、カットをしたせいで幾分スッキリとした印象。さらに第1楽章の旋律が戻ってくることで、大きなアーチが掛けられ、まとまった感じがしました。

個人的にはオルガンが鳴り、ディエスイレに似たコラールで静かに締めくくる方が好きですが。この改訂版もなかなか良いんじゃないですかね。色々発見できた演奏会でした。
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昨日の1月3日。今年の聴き始めは、東京文化会館「響の森」Vol.51『ニューイヤーコンサート2023』。東京文化会館のニューイヤーを聴くのは6年ぶりです。
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プログラムは、
 1. ドヴォルザークチェロ協奏曲ロ短調Op.104, B191
 2. チャイコフスキー交響曲第5番ホ短調Op.64
チェロ:上野通明
指揮:藤岡幸夫東京都交響楽団/コンサートマスター:山本友重
という、ほぼ同い年の二人の作曲家による新春に相応しい名曲が並んでます。

いつもは、開場前に現地到着してるんですが、この日は新幹線が雪の影響で遅れ、開演5分前に着席。何とか間に合いました。

    
階段を上ってきたため、汗を拭き拭きしながらの1曲目。ドヴォルザーク(1841-1904)のチェロ協奏曲ロ短調Op.104。彼のアメリカ時代の最後を飾る作品です。

チェロ独奏は上野通明さん。2021年ジュネーブ国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人初の優勝。更に併せて三つの特別賞を受賞し、国際舞台で次々と活躍しています。

何度も繰り返し聞いてきている曲ですが、上野さんの演奏は、終始肩の力の抜けたリラックスしたような優しく柔らかい音が響き渡っていました。特に第2楽章において、オーケストラをバックに歌っているように演奏しているのが心に残りました。

アンコールは、J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009ジーグ

    
後半は、チャイコフスキー(1840-1893)の交響曲第5番ホ短調Op.64

演奏前に藤岡さんによるトークあり。藤岡さん曰く、この作品は幸せ一杯の交響曲と違い、第1楽章は絶対的な運命の服従、戦い。第2楽章の自筆譜には「絶望」と書いてあり、長調でも寂しく寂しく聞こえる。第1楽章冒頭の運命の旋律が金管楽器によって嵐のように演奏される。第3楽章はフレンチぽくエレガントなワルツ。最後に静かに運命の動機が現れる。第4楽章は力強く運命の動機が現れるが、勝利をつかみ切れずに終わる、半狂乱的で異様な楽章、とのこと。

この作品も何度も繰り返し聴いてきましたが、この話を参考にして聴いてみると、さらに全体的に暗く寂しい曲に聞こえてしまうのが不思議。

第1楽章は暗く始まり、次第に荒々しくなり、まるでチャイコフスキーの自分の運命をつかみ取ろうともがく感情を表しているかのようでした。第2楽章も暗く寂しい。ホルンソロが希望の光にも聞こえる。

唯一優雅で美しい第3楽章。最後に現れる運命の動機は、陰からのぞきこんでいるような異様さが感じられる。そして半狂乱的な演奏を期待した第4楽章は、ゴージャスで整然とした演奏で、やっぱり最後は勝利を手に入れてしまった。

でも藤岡さんの解釈は、なかなか面白いので、参考にして様々な演奏を聴いていきたいと思います。

素晴らしい演奏を聴けて、今年も良いスタートを切れたんじゃないでしょうか
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昨日の12月29日木曜日。今年もノット監督の「第九」で聞き納めです。
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プログラムは、1曲のみ。
ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」
隠岐彩夏 (S), 秋本悠希 (Ms), 小堀勇介 (T), 与那城敬 (Br)
東響コーラス (合唱指揮:冨平恭平)
ジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団/コンサートマスター:小林壱成

    
オーケストラは14型の2管編成。コンサートマスターは小林さんでしたが、隣に水谷さん、2列目にニキティンさんと、珍しく3人のコンサートマスターが舞台に登場していました。合唱団はP席に間隔を空けて着席。

第1楽章冒頭の弦のトレモロとホルンの響きに乗った、ヴィヴラートを控え目にしたヴァイオリンによる断片的な動機の響きが印象的。古楽器奏法を意識してなのか、一瞬にして異次元の世界に入っていくようで不思議な気分にさせられます。嵐のように凄まじい風が吹き荒れているようで、当時のベートーヴェンの感情を表したんじゃないでしょうか。

続く第2楽章も力の入った主部と、軽やかな中間部の対比が心地よい。それにしても東響の管楽器群は安定して素晴らしい。特にオーボエの荒木さん良かった。

第2楽章が終わってからソリスト入場。

第3楽章は、美しく穏やかで牧歌的な感じ。ソプラノの隠岐さんが良い笑顔で聞き入っていたのが印象的でした。

アタッカで第4楽章へ。再び嵐のような力強い不協和音。次第に穏やかになり、合唱が入ると行進曲が現れたり、教会音楽が現れたりと目まぐるしく変わる楽章ですが、ノット監督はテンポや強弱のメリハリがあるので、とてもわかりやすい。

3年ぶりに「第九」に復帰した東響コーラスは、束縛から解放されたような明るい歌声で歌っていて感動的でした。歌い終わった後の笑顔もなかなか良い。ソリストでは、インバルに続いての隠岐さん。今回の歌声も透き通っていて素晴らしい。与那城さんの圧巻の歌声も聞き応え満点。初めてのテノール小堀さんの突き刺さるような遠くまで通る歌声も耳に残りました。

    
アンコール。恒例の「蛍の光」で締めくくり。合唱指揮の冨平さんも歌ってました。

過去3回このコンビの「第九」聞いてきましたが、これまでのノット監督の気迫に押しつぶされそうな演奏から一点、今回はだいぶ慣れてきたのか、ノット監督の要求を飲み込み、余裕のある演奏だったんじゃないでしょうか。

小林さんと水谷さんの前のめりの熱の入った演奏、ノリノリのチェロ奏者、ノット監督のオーケストラを煽る指揮といい、見ても聞いても楽しめる演奏会でした。これで安心して年を越せます。
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