
出口のない海
今回は戦争モノと、新たなジャンルに挑戦…ではなく、著者が1996年にノベルズとして出した旧著を全面改稿したもの。
終戦真近、万が一にも生き残る可能性もない人間魚雷<回天>、何の為に死ぬのか…理由付けをしたい。そしてまだ夢を追いかけたい。当時、つい一年前には野球をやっていたのだ…。戦艦さえ見たことがないのに戦争をしてきた気分になる、「これは己の心の中の戦争なんだ」戦争に青春時代を翻弄させられる。死のみしか進む道を選べない主人公の葛藤が描かれている。
この本を読んで思い出すのが、同時期に出された『僕たちの戦争』荻原浩。同じ回天を扱った、軍事教育がそれほどされてないウチに戦場へ赴く若者達。
「己の心の中の戦争」は両作品に共通する。
タイトル『出口のない海』の意味がとても切なく感じた。
>8点
出口のない海―人間魚雷回天特攻作戦の悲劇(ノベルズ)