シマシマしっぽ

活字中毒な猫バカ。日々の読書の感想を残しています。最近は映画日記化ともなっていますが、楽しみがあるのはいいことです。今日一日、楽しいことを考えて,何とか日々を乗り越えたいです。This is my Lifelog.

久世光彦

2

「桃」 久世光彦 中公文庫

  桃をテーマにした8つの短編。後味が悪く、上品な岩井志麻子、といった内容のものが多い。こういう悪趣味な感覚を<官能的>とひとくくりに言ってしまうのは嫌いだ。口直ししなきゃ。


蝶とヒットラー4

「蝶とヒットラー」 久世光彦 ハルキ文庫

 「鳥獣剥製店」「義眼工房」「黒色パイプ店」・・・もうタイトルだけで嬉しさで震えがきてしまう。想像通りお耽美で幻想的な一品。さすが久世さん!しかし作中のイラストは要らない気がする。だって頭の中で想像する絵のほうがずっと美しい。
 もうこの本を読んだ後では、ヘルムート・バーガーを、テレンス・スタンプを見たくて仕方がない。やはり久世さんはその手の映画が好きだったんだなぁ。「コレクター」借りてこなくちゃ。

蝶とヒットラー

陛下3

「陛下」 久世光彦 新潮文庫

 題名と妖しげな表紙のイラストにたじろいで、古本屋で二度手にとって購入せず、先日やっと思い切ってハズレを覚悟で買ってみた。背表紙の内容紹介には<陛下、金木犀の香りに包まれて、あなたに愛されたい・・・>だって・・・ひいちゃうってばよ・・・。
 ニ・ニ六事件の外伝ともいう内容だとか紹介にあったけれど、そっちの方はあまり重点が置かれていなくて、夢と現実を行き来している陸軍将校と女郎の恋愛物語でもある。内容的にはあまり面白くなかったけれど、いつもながら久世さんの文章に感心する。匂いや情景がくっきり浮かんでくる。しかし世が世なら発禁ものの内容だろう。陛下をそんな想いの対象にしちゃっていいの・・・。

陛下

怖い絵3

「怖い絵」 久世光彦 文春文庫

 すっかり久世さんの虜である。今回読んだのはエッセイ。高島野十郎の印象的な蝋燭の絵が表紙の、絵と女にまつわる思い出話。エッセイという軽い単語では不似合いな、妖しい雰囲気の一冊だった。ただ二浪して入った大学が東大でなければ、ここまでカッコつけられなかっただろうなぁ、という気はする。

怖い絵

蕭々館日録5

「蕭々館日録」 久世光彦 中公文庫

 大正から昭和に移り変わる頃、「蕭々館(しょうしょうかん)」と名付けられた貸家で日々繰り広げられる文学談義。小説家小島政次郎(初めて知った・・)の5歳の娘麗子を語り部にして、小島と仲の良かった文豪達の姿を描く。
 5歳の麗子ちゃんが恋している九鬼さんこと芥川龍之介がむちゃくちゃ素敵。私も5歳になって九鬼さんの膝に乗せられて、細くて長い指で頭を撫でられたい・・・。低く通る優しい声で「氷いちご食べにいきましょうか」と手をひかれたい!本気で笑った時にだけでる片えくぼを見てみたい!!・・と久しぶりに小説の登場人物に恋してしまった気分。それ位魅力的に芥川龍之介を描いている。
 5歳の麗子ちゃん同様、近所の6歳の天才少年(後の有名作家)の文学の知識のすごいこと。麗子ちゃんは<坂道から手毬が転がってくる>、これだけのことを小島風・芥川風・谷崎風にと長々と文章を連ねて遊ぶ。久世さんの文学に対する深い造詣と愛情がそこいら中にほとばしって、大満足の一冊だった。

蕭々館日録

一九三四年冬−乱歩4

「一九三四年冬−乱歩」 久世光彦 新潮文庫

 昭和九年の冬、スランプ中の江戸川乱歩が、麻布の外国人向きホテルに身を隠して短編を書き上げるというストーリー。作中作の「梔子姫(くちなしひめ)」がまるで本物の乱歩の筆のような、グロテスクでエロティックな一作。
 ホテルの美貌の中国人ボーイや滞在客の探偵小説マニアの美しいアメリカ婦人が華を添えて、昭和初期のムードがプンプン。作者は乱歩のことを調べ尽くし、自信を持って書いたと思われる。「梔子姫」に出てくる狂女の<しーちゃん>のことが気になった。これは以前読みかけて止めた久世さんの他の本にも同じ人物が出てきたような・・。乱歩ファンが読んだらこの作品は乱歩の再来のようで嬉しいだろうか?かなり風采の上がらない情けない中年男に描かれているので、悲しいかも。しかしファンなら「梔子姫」だけでも読む価値はあるだろう。


一九三四年冬―乱歩
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トラ猫にゃ

読書と映画、どちらの感想も記録に残しておきたい備忘録です。

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