凪のあすから 作品紹介 (14)
毎回恒例になった『モノクロのアニメ』の書きこぼし版です。



凪のあすから 作品紹介 (63)
『モノクロのアニメ』でも書いたのだけど、あの説明はやっぱりわかりにくいと思うので(サムネイル小さいしね)、ここで補足。
多分、「錆」は後でデジタル貼り込みしたものだろう……と思う。錆に、雨の跡。それから海風でかすれた看板。それから、光源。お店の右側に夕日の光が当たっている。お店の上部と、その手前の自動販売機。影は撮影で作られたものだろうか、手書きで作られたものだろうか……ちょっと区別ができない。
お店の左手、奥に森がちらっとうつっているが、この奥行きはデジタルで作ったものじゃないかな、といいう気がする。手書きで作れないこともないけど、フォトショップっぽい感触もある。
前面に出ているお店は立体的に強調して、奥の風景は淡くする……。デジタルとの連携が生きた場面。

凪のあすから 作品紹介 (33)
光源は奥の建物の少し背後に回ったところから。光が漏れ入ってきて、影が斜めに落ちている。
光が地上に落ちて、路上にちらちらと当たっている。これが第2の光源になっている。
一方、その背後、左手側は暗く影を落としている。このコントラストで画面にメリハリを作っている。

凪のあすから 作品紹介 (23)
もう一つ錆だらけの風景。風車が錆まみれ。影はやっぱり撮影で作ったものじゃないかな?
波がわずかに動き、奥の白い雲がかすかに輝いている。撮影は大変だな……としみじみ。


凪のあすから 作品紹介 (13)
海世界の風景。白を基調に、青、茶色の煉瓦が見えている。さらに植物の緑と、非常に美しい色彩。
遠景で見ると、異国情緒溢れる風景だ。


凪のあすから 作品紹介 (17)
階段を駆け上がったところ。白い壁が鮮やか。異国情緒があるけど、看板は日本語、植物は日本のもの、日本にいそうなおばちゃんと、細部で“日本化“している。

ここで作家さんの紹介。この素晴らしい背景設定を描き上げたのは塩澤良憲さんという方。検索してみると、この人のサイトを見つけた。
塩澤良憲:アニメやゲームの背景デザイン
数は多くないけど、素晴らしい背景画、コンセプト画掲載されています。興味のある方はぜひご覧になってください。

塩澤良憲さんはエロゲーの背景もやっていたんだね……。私はエロゲーというのをよく知らないけど、以前は「なんだこの背景は……」という感じで見ていた。「消失点どこだよ」って。
エロゲーの歴史とかまったく知らないけど、ある時から明らかに背景のクオリティ上がったのだけど(要するにキャラを全く見ていない)、なるほど、背景美術の本職の人がやっていたのか。道理で……。
ただし、色の使い方は相変わらず原色ばかりで奥行きがなく、いまいちなんだけど。


凪のあすから 作品紹介 (50)
脚本上のテクニックというか、計算で作られたものというか。この子たちの本格的な出番はまだまだ先なんだけど、この段階で顔見せ。後でいきなり出てくるより、この段階で印象づけておこう……というわけ。この子たちが出てくることで、ストーリーの中だるみも防げるしで、一石二鳥。


凪のあすから 作品紹介 (32)
向井戸まなかが髪をかきあげる。先島光の視点で。まなかは普段、こんなことはしないけど……。光のまなかに対する性的な視点を描いている。


凪のあすから 作品紹介 (30)
第1話のうろこ様を訪問した後。画面一杯に出てくる魚の死骸。
何の意味もなく死骸を浮かべる訳はないだろう。しかもこれみよがしに大きく出てくる。何かしらの暗喩なのは間違いないのだけど、今のところ、何を象徴しているのかわからない。嫌な予兆のような気がするけど……。


凪のあすから 作品紹介 (49)
クローズアップの多い向井戸まなか。この子だけ動画枚数が多い。作り手側からも愛されているんだなぁという印象。


凪のあすから 作品紹介 (51)
ノースリーブのワンピーススタイルの制服。すごく可愛いけど腋! 中学生にもなったら女の子でも脇毛は生えるの! ……まあフィクションだから気にしなくてもいいんだけど。


凪のあすから 作品紹介 (38)
向井戸まなかによる木原紡への感情が決定的になった瞬間。画面全体に波紋が描かれ、いかにもなロマンスの瞬間を描いてみせる。実写でやったらギャグにしかならない。アニメならでは。

ただ気になっているのは視聴者側が追いつけていない感じがするということ。ニコニコ動画では「NTR」という単語が乱舞している。NTRは「寝取られる」という意味。
今の若い人達は恋愛に関しては異常なほどナイーブになっていて、例えフィクションであっても思ったとおりにならない展開を忌避しようという感覚がある。最初から思った通りに展開して、思った通りの男女がくっつかないと、心理的に耐えられないという……。ある意味、結末を知ってからじゃないと見る気にならない……という心理に近いかも。
どうしてそこまで弱くなってしまったんだろう? という気がするけど、それが今時な感覚だから仕方がない。『凪のあすから』はどう展開していくのだろう。視聴者側の不安感が強くなりすぎて、作品から離れなければいいけど……。
そういう不安感や緊張を持ちたくないから、女の子ばかりのストーリーが好まれたりするんだけど。

凪のあすから 作品紹介 (39)凪のあすから 作品紹介 (40)
第1話のラスト。秀逸なカットだ。
先島光の視点で、まず向井戸まなかが現れる。
一つカットを挟んで、今度は木原紡が街灯の中に入ってきて浮かび上がる。この見せ方がうまい。

凪のあすから 作品紹介 (54)
先島あかりと陸の男がキスをするこの場面。2人の真ん中にちょうど夕日の光が射し込むようになっている。実写なら、夕日が来るタイミングを待って撮影……といったところ。美しく、印象的なカットになっている。
凪のあすから 作品紹介 (55)
それを目撃視している少年たち。順光になっているのでやや明るい。平面的な構図になりがちなカットだけど、ちゃんとそれぞれの立ち位置に距離感が示せている。


凪のあすから 作品紹介 (57)
海の中へ飛び込む。これがなかなかいいフォームだが、そこに海がなかったらどうするんだ……とか思うけど(海は夜になると潮が引くから)
海と陸、と行き来するけど、いろいろ不思議なポイントがある。例えば教科書とか、水に濡れるとふやけるでしょ……とか。水中の重力はどうなっているの、とか。そういうのはあえて無視する、話題に上げない、そうすることでファンタジーの世界を守ろうとする。リアルに作りながら、いかにそういうところから話題を逸らすか、というのもテクニックの一つ。ちゃんとそういうところに理屈を作っておく、というのも大事だけど。


以下、素晴らしい背景画をどうぞ。
凪のあすから 作品紹介 (15)
凪のあすから 作品紹介 (16)
凪のあすから 作品紹介 (18)
凪のあすから 作品紹介 (19)
凪のあすから 作品紹介 (20)
凪のあすから 作品紹介 (21)
第1話冒頭の場面。先島光に青いトーンがかけられている。妙に印象深い絵になっている。
凪のあすから 作品紹介 (22)
この柱は一応、建設途中で放置された高速道路、という設定だけど、どう見てもクロード・ロラン的なオブジェにしか見えない。作り手も、そういう雰囲気を狙ったのだと思うけど。高速道路だったら、あまりにも柱が細いので。
凪のあすから 作品紹介 (24)
更衣室。部屋の両端がレンズの影響を受けてわずかに歪んでいる。
凪のあすから 作品紹介 (25)
凪のあすから 作品紹介 (64)
いかついおっちゃんたちが顔を並べて……でもテーブルのデザインが意外と可愛い。ただ、このデザインだと真ん中あたりに手が届かないねぇ。
凪のあすから 作品紹介 (26)
錆だらけの地上に対して、水中は藻が一杯……。
凪のあすから 作品紹介 (27)
凪のあすから 作品紹介 (28)
うろこ様の住居全景。鳥居のようなものが描かれているが、水中だからか少し変わったデザインが使われている。
凪のあすから 作品紹介 (29)
うろこ様の住む部屋の中から。障子の向こうから射し込んでくる光がいい感じ。
凪のあすから 作品紹介 (34)
奥の背景にピントがぼやけたような処理を当てられている。
凪のあすから 作品紹介 (35)
凪のあすから 作品紹介 (36)
凪のあすから 作品紹介 (37)
雲の向きで、どちらを向いているのかわかる(嘘もありそうだけど)。夕日のコントラストが美しい。
凪のあすから 作品紹介 (41)
凪のあすから 作品紹介 (42)
凪のあすから 作品紹介 (44)
うろこ様の入れ墨はデジタル貼り込みで作られている。もちろん1コマ1コマ形を合わせて。日本ではもうだいぶ当たり前になった描写だけど、海外のアニメーターに教えると「正気じゃない」と言われてしまうそうだ。国内にいて、こうやってアニメを見ていると「当たり前」のように思えてしまうが、世界的見るととんでもなく高度なことをしているんだな……。
凪のあすから 作品紹介 (45)
凪のあすから 作品紹介 (46)
じゃがいもを投げる向井戸まなか。投げ方がいい。肘から先だけで投げようとする“女投げ”。投げ方で個性を出すのは難しいのだけど、この描き方もずいぶん浸透した。
凪のあすから 作品紹介 (47)
背後の火災報知器が青! 実際に青の火災報知器なんてあるのだろうか、と思うがこの配色がいい。
凪のあすから 作品紹介 (48)
トイレにノブがない。ガラスの窓と連続性ができて、なかなかいいデザイン。
凪のあすから 作品紹介 (52)
海の上から眺めた海村の様子。異世界雰囲気が出ていて美しい。この風景の中に住んでいる人達をデザインしたかったんだろうな……。
凪のあすから 作品紹介 (53)
凪のあすから 作品紹介 (56)
凪のあすから 作品紹介 (58)
凪のあすから 作品紹介 (59)
自転車を漕ぐ動き。かなり難しい動画。全身の動き、さらにフォロースルーも描く。見るからに大変。レイアウトも奥行きをしっかり捉えていて、大変そうなカットという気がする。
凪のあすから 作品紹介 (60)
木原家。障子に魚の模様が貼り付けてある。リアルな漁村の風景に見えて、可愛らしいモチーフが使われている。暗い照明がいい感じ。
凪のあすから 作品紹介 (61)
これは先島家。
凪のあすから 作品紹介 (62)
うろこ様の家を出たところ。丸い石畳に光が当たっている。柳のようなものが描かれているが、どうやら柳ではないらしい。海草っぽくも見えるので、海の世界特有の植物なのだろう。奥の町が、ピントがぼやけたような処理になっている。
他のカットでは、波形が波の影響を受けてゆらゆらと揺れているように描かれている。中遠景あたりの背景は揺れるように描かれるようだ。


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