2009年10月18日
ひさびさ。
親切な人が送ってくれていたんをそのまま掲載。
久々ですね。
いやぁ、眠い。
久々ですね。
いやぁ、眠い。
幸多きこと。
『幸多き事』
夕焼は赤を伴って速やかに暗い夜への幕引きをする。
この季節において、唯でさえ静かな街の雑踏は、ここにまで届きはしない。本当に何の
音も無い、静かな――――――そういう形容詞すらおこがましい程の静寂がこの屋敷に
は漂っている、2月、夕方。
だが、中に居る者達はそんな静寂を気にした風も無く、紅茶とお喋りを楽しんでいた。
もっとも中に居る者からすればこの屋敷が静かなのはいつもの事で、最近増えた新しい
家族のおかげで幾分も騒がしく……、もとい。賑やかに感じるのであろうが。
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夕焼は赤を伴って速やかに暗い夜への幕引きをする。
この季節において、唯でさえ静かな街の雑踏は、ここにまで届きはしない。本当に何の
音も無い、静かな――――――そういう形容詞すらおこがましい程の静寂がこの屋敷に
は漂っている、2月、夕方。
だが、中に居る者達はそんな静寂を気にした風も無く、紅茶とお喋りを楽しんでいた。
もっとも中に居る者からすればこの屋敷が静かなのはいつもの事で、最近増えた新しい
家族のおかげで幾分も騒がしく……、もとい。賑やかに感じるのであろうが。
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きっと、彼女は泣く。
空は重い。
覆い被さるように敷き詰められたソレは、確かな質量をもってこちらを押しつぶそうとしている。見上げるだけで気が滅入りそうになる。焦る心は逃げ場を無くし、ぐるぐる同じところに渦巻いている。
早く――――――――
早く見つけなければ――――――――――――
落ちてきそうな程の重い雲に、不安はますます煽られてゆく。進む私を切りつけるように風は冷たい。雨は降り切ることなど出来まい。降るならば、雪だ。ならば降る前にと強張る足を暖めるように、走り始める。風は海に近づくに連れて強くなって来た。この身が人ではないとしても、この寒さは堪える。
だが、寒いなどと愚痴る余裕すら私にはない。
探さなくてはならない。
見つけなくてはならない。
早く、早く。
一人ではそう遠くには行けないだろう。主も一緒に探している。
だが、二人で見つけられる範囲などたかが知れている。無駄な場所になど行く暇はない。
だから真っ先にここに来た。何も考えずにここにと足を向けた。
だが、なぜ私はここに来た?
探し人はここに思い入れでもあっただろうか。僅かだが共に過ごした記憶を探ったが――――――――、やはり海を好きだなんて言っていた事など思い出せなかったし、海を見に行くところなど考えた事もなかった。
だがここに居る。
何故だか確信が持てる。離れたがっていた。何をするでもなく遠くを見ていた。まるで何かを探すように。ここにない何かを。いつも瞳は遠くを見つめていたから。
だから。
唯一、ここではない遥か遠くを見渡せるこの場所に。何かを探しに来てるのではないかと、そう思ったのだ。公園を抜けて、徐々に黒い大きな水平線が見えてくる。空の灰色と海の黒とが不吉なにコントラストを描く。
まるで異界のようだ。静かに狂気を運んでくる死界。
まさかもう……。
嫌な想像をして、走る足に一瞬力が抜けるが、
「何を考えている私は……縁起でもない!」
自分に言い聞かせるように、肺の息を絞るように吐き出して、走る足を速めた。風はもう頬を叩くくらい、強い。膝に力を入れなければ押し戻されそうになる。目がまともに開けれない。
だが、そんなこちらとは対照的に――――――――――――静かに、少年は海を見ていた。
このな風の強い日に海を見るものなど、他には居ない。
だから少年は一人。
風に乗って、強い潮の匂いが舞い上がってくる。目の前には黒い海。灰色の雲だけが在った。
その白銀を除けば。
少年は、その若さで白髪だった。
白髪というより銀髪。あの頃より伸びた髪は緩やかに、風に遊ばれるように揺ら揺らと。
「ここに、居たのですね」
ゆっくり、決して刺激せぬようにと少年の後ろから、そっと声をかける。
少年は振り向きもしなければ、返事をする事もない。
私はゆっくりと少年の顔の見える位置まで移動する。そこには灰色の空と黒い大地。何も見てはいなかった。ただ、海と空の境界が。陽炎のように、淡く映っているだけだった。
いや、それすら少年には理解できない。いったい何を求めているというのか。
風はやむ事もなく、絶えず吹き付けてくる。全てを自分と同じにものへ、
冷たく凍えるものに変えようとしているかの様に。
風邪を引くといけない……。
「さぁ、帰りましょう。こんなところに居ては風邪を引いてしまいます。
立てますか?」
すぐ横にまで来て、ようやく彼は私に気づく。ノロノロと顔を上げて焦点が合わない瞳でこちらを見ている。
「う……あぁ?」
「はい。迎えに来ましたよ。っと、立てますか? もう、こんなに体を冷やしてしまって」
まるで背骨がない海月のように――――――――軽い。トスッ、とその身を私に預けてきた。私のことを最後まで騎士としてではなく、一人の少女として扱った少年。
いつも無茶を通して、いつも私の前に無謀に出る、だけど大きな背中。私のもと主であった少年はこのように軽かったか? 頼りなく私の腕を支えに立っているこの少年がふと別人ではないのかと。ひょっとして本当の少年はもう……
「う……あ……」
気がつけば、ゆっくりと一人でもと来た道を戻ろうとしている背中が目に入る。その背中は、いつかの少年のものとは思えないほど小さかった。
「シ……ロウ」
そっと呼んでみた声は、知らず知らずのうちに震えていた。呼びかけにも、自分の事ではない様にトボトボと進んでいく少年にはきっと声は届かない。
『きっと、彼女は泣く』続きを読む
覆い被さるように敷き詰められたソレは、確かな質量をもってこちらを押しつぶそうとしている。見上げるだけで気が滅入りそうになる。焦る心は逃げ場を無くし、ぐるぐる同じところに渦巻いている。
早く――――――――
早く見つけなければ――――――――――――
落ちてきそうな程の重い雲に、不安はますます煽られてゆく。進む私を切りつけるように風は冷たい。雨は降り切ることなど出来まい。降るならば、雪だ。ならば降る前にと強張る足を暖めるように、走り始める。風は海に近づくに連れて強くなって来た。この身が人ではないとしても、この寒さは堪える。
だが、寒いなどと愚痴る余裕すら私にはない。
探さなくてはならない。
見つけなくてはならない。
早く、早く。
一人ではそう遠くには行けないだろう。主も一緒に探している。
だが、二人で見つけられる範囲などたかが知れている。無駄な場所になど行く暇はない。
だから真っ先にここに来た。何も考えずにここにと足を向けた。
だが、なぜ私はここに来た?
探し人はここに思い入れでもあっただろうか。僅かだが共に過ごした記憶を探ったが――――――――、やはり海を好きだなんて言っていた事など思い出せなかったし、海を見に行くところなど考えた事もなかった。
だがここに居る。
何故だか確信が持てる。離れたがっていた。何をするでもなく遠くを見ていた。まるで何かを探すように。ここにない何かを。いつも瞳は遠くを見つめていたから。
だから。
唯一、ここではない遥か遠くを見渡せるこの場所に。何かを探しに来てるのではないかと、そう思ったのだ。公園を抜けて、徐々に黒い大きな水平線が見えてくる。空の灰色と海の黒とが不吉なにコントラストを描く。
まるで異界のようだ。静かに狂気を運んでくる死界。
まさかもう……。
嫌な想像をして、走る足に一瞬力が抜けるが、
「何を考えている私は……縁起でもない!」
自分に言い聞かせるように、肺の息を絞るように吐き出して、走る足を速めた。風はもう頬を叩くくらい、強い。膝に力を入れなければ押し戻されそうになる。目がまともに開けれない。
だが、そんなこちらとは対照的に――――――――――――静かに、少年は海を見ていた。
このな風の強い日に海を見るものなど、他には居ない。
だから少年は一人。
風に乗って、強い潮の匂いが舞い上がってくる。目の前には黒い海。灰色の雲だけが在った。
その白銀を除けば。
少年は、その若さで白髪だった。
白髪というより銀髪。あの頃より伸びた髪は緩やかに、風に遊ばれるように揺ら揺らと。
「ここに、居たのですね」
ゆっくり、決して刺激せぬようにと少年の後ろから、そっと声をかける。
少年は振り向きもしなければ、返事をする事もない。
私はゆっくりと少年の顔の見える位置まで移動する。そこには灰色の空と黒い大地。何も見てはいなかった。ただ、海と空の境界が。陽炎のように、淡く映っているだけだった。
いや、それすら少年には理解できない。いったい何を求めているというのか。
風はやむ事もなく、絶えず吹き付けてくる。全てを自分と同じにものへ、
冷たく凍えるものに変えようとしているかの様に。
風邪を引くといけない……。
「さぁ、帰りましょう。こんなところに居ては風邪を引いてしまいます。
立てますか?」
すぐ横にまで来て、ようやく彼は私に気づく。ノロノロと顔を上げて焦点が合わない瞳でこちらを見ている。
「う……あぁ?」
「はい。迎えに来ましたよ。っと、立てますか? もう、こんなに体を冷やしてしまって」
まるで背骨がない海月のように――――――――軽い。トスッ、とその身を私に預けてきた。私のことを最後まで騎士としてではなく、一人の少女として扱った少年。
いつも無茶を通して、いつも私の前に無謀に出る、だけど大きな背中。私のもと主であった少年はこのように軽かったか? 頼りなく私の腕を支えに立っているこの少年がふと別人ではないのかと。ひょっとして本当の少年はもう……
「う……あ……」
気がつけば、ゆっくりと一人でもと来た道を戻ろうとしている背中が目に入る。その背中は、いつかの少年のものとは思えないほど小さかった。
「シ……ロウ」
そっと呼んでみた声は、知らず知らずのうちに震えていた。呼びかけにも、自分の事ではない様にトボトボと進んでいく少年にはきっと声は届かない。
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赤い瞳が映したセカイ
兎の瞳が赤いのは、色素の無い瞳が血の色をそのまま映しているからだ。
それを知ったのはいつの事だっただろうか。思い出せないが、小さい頃だったと思う。
そして、鏡に写るこの瞳も、同じく兎の様に赤かった。兎の瞳の赤が血の色だとしたら、この瞳の赤もやはり血の赤だろうか。
血の赤――-
それだけでは形容しがたい色を、瞳は映している。
燃える様に赤く、だが激しくはない。
ただ、静かに光を返してくる、高貴な宝石のように。
白い肌、白銀の髪。それ等を裏切るかの様にそれは在った。
いや、だからこそ、だろう。
この容姿だからこそ、この眼の赤は飛びきりに、映える、似合っていたのだ。
ふ、と瞳を細めて笑ってみる。赤の宝石が白い瞼で隠されて、僅かに開いた隙から輝きをもらす。
少し違う……。
今度は口も少し嬉しそうに。
それで少しイメージに近づいてきた気がした。
「ちょっとー! どこ行ったのよ、あいつ! ねぇ桜、貴方知らない?」
「いえ……。さっきは居間で見かけたのですが」
洗面所まで姉妹の声が聞こえてくる。
しまった、自分はどれ位の間鏡を見ていたのだろうか。急いで戻ろう。鏡を見て一人笑っているところなんか見せるわけには行かない。慌てているのを気取られぬようにと、ゆっくり歩いて今にも暴れ出しそうな声の主がいる所へ向かったのだった。
「ったく! 自分で言い出しておいて待たせるなんていい度胸ね、あいつ!!」
『赤い瞳が映したセカイ』
続きを読む
それを知ったのはいつの事だっただろうか。思い出せないが、小さい頃だったと思う。
そして、鏡に写るこの瞳も、同じく兎の様に赤かった。兎の瞳の赤が血の色だとしたら、この瞳の赤もやはり血の赤だろうか。
血の赤――-
それだけでは形容しがたい色を、瞳は映している。
燃える様に赤く、だが激しくはない。
ただ、静かに光を返してくる、高貴な宝石のように。
白い肌、白銀の髪。それ等を裏切るかの様にそれは在った。
いや、だからこそ、だろう。
この容姿だからこそ、この眼の赤は飛びきりに、映える、似合っていたのだ。
ふ、と瞳を細めて笑ってみる。赤の宝石が白い瞼で隠されて、僅かに開いた隙から輝きをもらす。
少し違う……。
今度は口も少し嬉しそうに。
それで少しイメージに近づいてきた気がした。
「ちょっとー! どこ行ったのよ、あいつ! ねぇ桜、貴方知らない?」
「いえ……。さっきは居間で見かけたのですが」
洗面所まで姉妹の声が聞こえてくる。
しまった、自分はどれ位の間鏡を見ていたのだろうか。急いで戻ろう。鏡を見て一人笑っているところなんか見せるわけには行かない。慌てているのを気取られぬようにと、ゆっくり歩いて今にも暴れ出しそうな声の主がいる所へ向かったのだった。
「ったく! 自分で言い出しておいて待たせるなんていい度胸ね、あいつ!!」
『赤い瞳が映したセカイ』
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2008年08月14日
King in yellow 16 <改訂版>
16/
「――――――やはり殺せぬか。だが、それでこそ君らしい」
「え?」
そして次の瞬間、あり得ない声を聞いた。
気が付けば目の前にはさっき俺が投影した物とそっくりの、いやこちらの方が本物だ。夫婦剣の片刃が迫っていた。
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「――――――やはり殺せぬか。だが、それでこそ君らしい」
「え?」
そして次の瞬間、あり得ない声を聞いた。
気が付けば目の前にはさっき俺が投影した物とそっくりの、いやこちらの方が本物だ。夫婦剣の片刃が迫っていた。
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King in yellow 15 <改訂版>
15/
ズ――――、ン。
痛みで空白が無くなる。痛みで意識が蘇る。
頭を強かに打った所為か、目の前がチカチカとなり、耳鳴りが止まなかった。
「グッ、ツ、ああ」
身体を起こして真っ先に来た物は吐き気。そして目に飛び込んだ物はその吐き気すら消し飛ばした。
そこは戦場だった。さっきまで周りを覆っていた白い壁は無く、木版は焼けて煤けていたし、何よりそれを覆う天井が、ない。続きを読む
ズ――――、ン。
痛みで空白が無くなる。痛みで意識が蘇る。
頭を強かに打った所為か、目の前がチカチカとなり、耳鳴りが止まなかった。
「グッ、ツ、ああ」
身体を起こして真っ先に来た物は吐き気。そして目に飛び込んだ物はその吐き気すら消し飛ばした。
そこは戦場だった。さっきまで周りを覆っていた白い壁は無く、木版は焼けて煤けていたし、何よりそれを覆う天井が、ない。続きを読む
King in yellow 14 <改訂版>
King in yellow 13 <改訂版>
13/
「泣かせるな、大層主思いなことだ。……が、少々油断が過ぎないか――――――セイバー?」
「アーチャー、貴様まだ現界できる力が――――――」
俺が振り向いた瞬間。
弓兵は皮肉気な笑いを張り付かせたまま。壁に寄りかかるように、だが手元は狂いなくこちらを狙った正確な射撃。――――――剣を放っていた。それは剣の丘にあった螺旋――――カラドボルグ。続きを読む
「泣かせるな、大層主思いなことだ。……が、少々油断が過ぎないか――――――セイバー?」
「アーチャー、貴様まだ現界できる力が――――――」
俺が振り向いた瞬間。
弓兵は皮肉気な笑いを張り付かせたまま。壁に寄りかかるように、だが手元は狂いなくこちらを狙った正確な射撃。――――――剣を放っていた。それは剣の丘にあった螺旋――――カラドボルグ。続きを読む
