グリフィン

怪物の群れが襲撃→民族全体が故国を捨てる

posted in 22:19 2006年02月27日 by toroia

ヘロドトスの『歴史』を見ていたら気になる伝説が。
第4巻105
彼ら[ネウロイ人]は蛇の襲撃にあい、全国土から退散せねばならぬという羽目に陥った。この国に多数の蛇が発生したのみならず、さらに多数の蛇が、北方の荒野から来襲したためで、遂には困窮の果て故国を捨ててブディノイ人とともに住むことになった。
 ご存知ネウロイ人は人狼種族で、ごく初期のスラヴ人か、原スラヴ-バルト人だろうといわれています。

 それにしてもこれ、アヴァール人を襲撃したグリフィンの話(ぺリュトンとの関連、原典英訳。cf. 船を襲撃するグリフィンの群れ)によく似てる……。

ビザンチンの百科事典がオンラインで見られるのご存知?

posted in 00:14 2006年01月26日 by toroia

昔はスイダスSuidasという人名だと勘違いされていた百科事典「スーダSuda」、いろんな本に「スーダにはこうある」とあるので(本じゃないけど、theoi projectに沢山)見たかったのだけど、和訳は当然存在しないし、英訳も手の届くところにおいてなくてあきらめていたところでしたが、最近、偶然、けっこう以前からスーダオンラインなるページがあることを発見しました。
しかも、注釈つきの原文対英訳です。スバラシイ。日本人も大正大蔵経を全文書き下しオンラインで公開せんか。

前に『幻想の国に棲む動物たち』から孫引きで紹介したグリフィンのことも書いてありました。

that these Avars drove out the Sabinorians, when they themselves had been expelled by peoples living near the shore of the Ocean, who left their own land when a mist formed in the flood of the Ocean and a crowd of griffins appeared; the story was that they would not stop until they had devoured the race of men. So the people driven away by these monsters invaded their neighbors.
この伝説の起源って、どこにあるんでしょうね? ついでにぺリュトンの起源も。脚注には「Priscus fr.30 FHG* (4.104).」(*Fragmenta Historicorum Graecorum)とあります。ギリシャ語歴史資料断片?の4.104にあるプリスコス断片30を参照・・・だそうです。

化石→グリフィン。マンモス

posted in 23:21 2005年05月12日 by toroia

 以前、プロトケラトプスなどの化石がグリフィン伝説の元になった、という説があることを書きました。

 最近南方熊楠の全集を借りてきて読んでみたら、すでに化石がグリフィンの元ネタである、という説を熊楠が紹介していることを発見。

 ここで要約しようとも思ったのですが、熊楠は41年没で著作権が切れているため、どうせならその論文をこっち側で打ち込んでみせたほうが早い、ということで

 南方熊楠『マンモスに関する旧説』

 タイトルから察せらるるように、グリフィンネタはあくまで導入で、本文はマンモスの化石を大きな鼠だと想像する漢籍の紹介になっています。

スキタイ美術のグリフィン

posted in 19:22 2005年03月29日 by toroia

 http://www.isidore-of-seville.com/griffins/1-3.html
 なぜか、今「サーバーが見つかりません」なので見られない。キャッシュによると、グリフィンは資料にはほとんど出てこないが美術品としては非常に多く出土するとの事。

 また、Scythian Bronze and Boneには多くの「griffin-head」つまりグリフィンの頭を意匠にした美術品が紹介されている。でも、頭だけだと単なる鳥じゃないの? 「耳」があればグリフィンになるの?

グリフィンの地理:アイスキュロス

posted in 00:52 2005年03月28日 by toroia

ゾンビ化した1000眼のアルゴスに追いかけられているイオがプロメテウスに出会い、これからのイオの苦難の旅を予言されるところにグリュプスが現れます。続きを読む

グリフィンには翼がない

posted in 20:17 2005年03月24日 by toroia

 クノッソスの玉座の間にあるグリュプスの壁画(前1300年ごろ)の写真が『世界神話大事典』p.269にあるのですが、翼がありません。耳もありません。
 ちなみに胴体はライオンです(尾から見ても犬ではないことがわかる)。
 ただし、頭から肩にかけて巻き毛のような装飾があります。これはなんなんだろ。

 探してみたらあったのでリンクします。
 Palace of Knossos(Crete)

 これは歴史時代のグリュプスと同一視されたのだろうか?

人食いグリフィン

posted in 00:27 2005年01月15日 by toroia

 以前、『スーダ』(10世紀ビザンツの辞典)に、グリフィンの一群が海霧とともに現れ、人々を残らず食い尽くす、と書いてるのを紹介したことがあるのですが、『聖ブランダン航海譚』を読んでいたら、似たようなところを発見。
 その前に、聖ブレンダンというのはアイルランド初期の聖人の一人で、とにかく船に乗って長旅をしたことで知られています。アイスランドはもちろん、うわさによれば北米にまで達していたかもしれないらしい(証拠はない)人で、中世を通じて聖ブレンダンの航海譚は民衆に広まっていて、島のように大きな魚など定番アイテムも登場する物語だったりします。
 そこで私が読んでいるのは、中世ドイツの民衆本版。なので、表記もブレンダンではなくブランダンになっています。
 このブランダンという爺さんは結構元気な人です。島のように巨大な魚などの数々の驚異が書かれている本を見つけた彼は、それを読んで
 「ありえねー」
 と一蹴、炎の中に投じてしまいます。しかし、神様は、「私は何でもできるのだ。ありえないことなどない」と天使を遣わし、9年にわたって航海することになると預言します。こういわれては仕方ないので、ブレンダンは箱舟のように巨大な船を作って、手下の僧侶たちも引き連れて(いい迷惑)旅に出ることにしました。
 そんなこんなで色々あって(たとえば、風で飛んだブレンダンの帽子を拾うために、急いでるにもかかわらず「拾うのじゃ!」と命令して船を戻したり)、「魔の海」にたどり着きます。いわゆるバミューダ・トライアングル(違)。この海は粘着性があり、何隻もの船がその場から動けずに、乗員たちは財宝などを残したままそのまま死んでいたのです。そこでこういう説明
無数の怪獣グリフィンが船内に舞い降り、人々を捕らえ、連れ去っては食らってしまったのです。それまで千四百の人が亡くなりました。
 『スーダ』にある説明とかなり似ています。中世ヨーロッパでは、グリフィンが集団で現れて人々を貪り食う、という伝承が知られていたらしい。知らなかった……。
 ちなみに原本(ラテン語らしい)の『聖ブレンダン航海譚』にもこのグリフィンの逸話があるのか、ないとすればそれがどの時点で挟み込まれたのか、非常に興味のあるところですが、現在のところ、消息不明です。

ドイツのグリフィン

posted in 19:34 2004年12月14日 by toroia

 あれから全然進んでない。

 某所にドイツ叙事詩のグリフィンだかドラゴンだかの話題があったので、メモ程度にアドレスを載せときます。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~moonover/bbs/log/log58.htm#861

↑なんか、時々見かける名前が・・・

 ガンピルーン、ガビルーン←もとは何語だ!?!?


 ドイツ語つながりで、古いドイツ語のウムラウトの祖先である「上にeがついた母音」をユニコードで書いてみるとこうなる

aͤ oͤ uͤ

『ニーベルンゲンの歌』写本mのニーベルンゲ(ネービュルンゲ)はNebuͤlunge
(対応フォント Code2000とかTITUS Cyberbit Basicがなければ表示されません)

グリフィンはどこに棲んでるのか、翼はあるのか

posted in 07:21 2004年11月23日 by toroia

 私がさっきざっと自分の手持ちの幻獣本を見た限りでは見つからなかったのですが、グリフィンがコーカサスにいる(リンク先Wikipedia)というのは何がソースなんでしょ? インドという話は聞きますけど(これは、アイリアノスあたりらしい・・・)。続きを読む

グリフィンの最古・・・

posted in 22:31 2004年11月19日 by toroia

 図像としてのグリフィンを除くと、グリフィンという名前が現れる最古はアイスキュロスの『縛られたプロメテウス』803-4で、それに引き続き、ほぼ同時代(前450年ごろ)のヘロドトスの『歴史』によく知られた記述が現れるようです。