2009年11月20日

倉敷と大原美術館


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江戸時代に幕府直轄地として、
周辺の年貢米を集めて、
海路で江戸に運ぶ役割を担うことで繁栄した街、倉敷。


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倉敷川周辺には、白壁の蔵屋敷が立ち並び、
萩が咲き乱れて、美しい街並みを今もとどめている。


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ここの美観地区は、わずか数百m
イメージするよりも狭い。
だが、川縁に蔵屋敷が立ち並ぶ風景は
あたかも時代劇のような風情を醸し出している。


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短い距離だが船頭の漕ぐ船が運行しており、
これに乗ると倉敷らしさを水上から楽しめる。



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船からは白壁の街並みを足元から見ることができて
それもまた新鮮な眺め。


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いろんな建物が並んでいて面白いが
(写真には収めていないが)興味深いのは
商家屋敷の姿で今だに営業する北田証券。


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倉敷を代表する名所ともいえる「大原美術館」。

紡績業で財を成した大原孫三郎氏によって設立された美術館だが
1920年代にヨーロッパにて収集されたゴーギャン、エル・グレコ、
モロー、マティス、ロートレック、モジリアニなど、
目をむくような名品が並ぶ美の殿堂である。


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ロダン「洗礼者ヨハネ」

特に心ひかれるのはグレコ「受胎告知」、モロー「雅歌」、
セガンティーニ「アルプスの真昼」など。


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セガンティーニ「アルプスの真昼」

だがそれら近代西洋美術の名品以上に
見どころとなっているのは、民芸作家を中心とした工芸館。


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濱田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉、河合寛次郎の陶芸、
版画の棟方志功、染色の芹沢�笘介、それぞれ代表作ともいえる数々の優品が
古い米蔵に展示されて、独自の美の空間を構成している。


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倉敷は米の集積地として昔、栄えたがゆえに、
江戸時代の米蔵が多数存在していたそうだが、
それらを移築して民芸運動の工芸とあわせるとは
なんというセンスだろうか。

工芸館は孫三郎氏の長男、総一郎氏によって建てられたものだが
孫三郎氏は日本民藝館(駒場)の設立に多額の寄付をしていたというから
民芸運動という日本美術のひとつの重要なムーブメントに
大原家は親子2代にわたって大きく関わっていることになる。


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門舞神人頌柵 (左から不詳、不詳、ヤマトタケル、コノハナサクヤ)

ヴィネチア国際版画大賞を受賞した代表作「釈迦十大弟子」に比べて
目にする機会の少ない「門舞神人頌板画柵」。

志功の言葉によれば16枚あるようだが、大原所蔵は10枚。
どの神を描いたかわかっているのは、うち4枚のみのようだ。

個性的な神々が大画面いっぱいに描かれており、
大胆で、鮮烈、ダイナミックな画面構成にただ圧倒される。

「釈迦十大弟子」は下絵なしで製作されたと聞くが
2年後に彫られたこの連作はどうだったのだろうか。

『題材は仏さまに類したものが多いので、神さまの形をかりてと思い、
大和武尊以前の化け物、歴史の上にまだ姿をあらわさない
混沌たる世界の人物を板画にしようと思いました。
木花咲爺姫、弟橘姫から段々に神代にさかのぼって
十六枚の板木に彫り、八曲一双 の屏風にしようと思ったのです。
門舞という意味は、日本の一番最初の者たち、いわゆる門の中ではなく
門の外までのところ、大和武尊を門に入る人として、
それ以前の超性の者を対象にしたところからきた名です。
そういう者が、手をあげ足をあげ踊りを踊っている。』

棟方の天才を感じさせる、圧倒的な作品。


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濱田庄司「白釉黒流描大皿」 1962年

富本憲吉が「ロクロのことなら濱田に聞け」とよく話したそうだが
大きく、見事に作られた皿に躍動的な絵付けがされている。

以前、濱田が作陶している映像を見たが、
柄杓で釉薬を汲み、それを一気に皿に掛け流して絵付けするのだが
その、迷いなく、豪快なさまに驚かされた。

「流掛け」と呼ばれるその作業から生み出される絵は、
現代書のようにも見え、知的で、パワフルな魅力を放つ。

大原に所蔵されている濱田庄司の作品は
逞しく、迫力があり、代表作といってもいいものばかり。

旅をすると、その地ならではの訪れるべき所がたくさんあり、
地方に旅してまで美術館を訪れる必要を感じることは多くはないが
MIHOや大原美術館は遠路はるばる行く価値のある場所である。


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大原美術館向かいの大原邸(重要文化財)

総一郎氏の長女は犬養毅の孫、
次女は美智子皇后の弟(正田家)にそれぞれ嫁がれているというから
大原家はまさに名門の筆頭。


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旅館くらしき

所有が変わって、以前のうっそうと野趣に富んだ庭が
刈込まれてしまったのがやや残念。


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古美術店軒の秋の彩り




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阿智神社より、倉敷の街並みを望む




torublo at 14:05│Comments(4)TrackBack(0) 旅 − 日本 

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この記事へのコメント

1. Posted by ogawama   2009年11月22日 23:53
倉敷川の写真、美しいですね〜。
大原美術館は行ったことなくて、
工芸館がそんなに充実しているとは知りませんでした。
濱田庄司の釉の流掛けは実際すごく早くて
「そんなに早くて満足のいくできばえになるのか」
と疑念をはさむ人もいたそうです。
作品みればわかるのでしょうに。
MIHOと大原美は是非訪れたいです。
2. Posted by とーる   2009年11月23日 01:42

最初の一枚は中国のように見えて不思議ですが
自分でもきれいに撮れすぎた気がしてます。

大原美術館は現代美術もいろいろあって興味深いのと、
児島虎次郎記念館も素晴らしいのですが、
倉敷という街のイメージに似合うという意味では
工芸館が一番かもしれません。

書きませんでしたが、
工芸館は芹沢げ陲内装担当しており
レンガ、瓦、木片などの床や、手摺、窓など
一貫した美学で纏められいて、とても落ち着きましたよ。

倉敷の美観地区自体は広くはないので物足りない気もしますが
大原美術館が倉敷の価値をさらに高めていると思います。
機会があったらぜひ。
3. Posted by えむち   2011年05月02日 02:51
5 とーるさんへ
僕は岡山出身で今茨城にいる大学院生です。
彫刻の勉強をしています。
ドイツの美術館の写真に魅せられて辿り着いたとーるさんのブログですが、どの写真を見てもその場にいるような心震えるリアリティが感じられます。しかも大変ご博識でいらっしゃるので驚きます。素敵なブログに出会えたことに感激しています。倉敷や吉備津神社の写真も、大変美しいですね。吉備津さんは僕の実家のすぐ裏です。なつかしいどころか、場の魅力を掬い取っているような気がします。今後もたのしみにしています。
4. Posted by とーる   2011年05月05日 03:34
えむちさん、

コメントありがとうございました。
ドイツの写真というとグリプトテークのことですね。
ミロのヴィーナスをミロス島で発掘したのはバイエルンだそうですが
バイエルン王家は古代彫刻収集に大変熱心だったということで
グリプトテークはびっくりするような名品が並んでいます。
素晴らしい美術館ですから機会がありましたらぜひ。

大原美術館、吉備津神社、後楽園も好きで何度か訪れていますが
岡山はいいところですね。行ってみたい温泉もいくつかあります。

あまり更新してないBlogですがお褒め頂くと大変励みになります。
今後もよろしくお願い致しますね。

とーる

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