2010年03月13日

紅白梅図屏風と尾形光琳屋敷



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ここ数年、梅の時期になると
MOA美術館「所蔵名品展」を訪れている。

仁清「色絵藤花文茶壷」(国宝)、「色絵金銀菱茶碗」(重文)、手鑑「翰墨城」(国宝)
を初めとした国宝3点、重要文化財数十点というコレクションは驚異的だが
中でもこの絵の購入こそが岡田茂吉氏の悲願だったとされるのが
美術館の至宝、尾形光琳「紅白梅図屏風」(昭和31年 国宝指定)。

琳派を代表する作品であるのみならず、日本美術史に輝く光琳の傑作は
梅開く2月になると、この屏風の展示用に作られた第三展示室に飾られる。
(写真は全て光琳屋敷内の複製)


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そして、MOA美術館の庭園「茶苑」には
光琳が晩年を過ごした二条新町屋敷が復元されている。


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これは光琳のパトロンであり、息子の養子先にもなった小西家に残る
小西家古文書(重文)に含まれる自筆建築図面、大工仕様帖に基づき
光琳が晩年を過ごした町家を復元したもの。
復元監修は茶室「如庵」(国宝)移築にも携わった堀口捨己による。


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尾形光琳は、本阿弥光悦の姉を曽祖母に持ち、
西陣の名門呉服商「雁金屋」に生まれたが、
次第に家業が傾き、30代後半から絵師の道を歩んだ。


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経済的に困窮した光琳は、47歳のときに江戸に赴き、
大名家に出入りして、京都と行き来しながら5年間を江戸で過ごし
再び京都に戻り、54歳で屋敷の新築を始めた。


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59歳で没した光琳がここに住んだのはわずか5年。
江戸滞在中に複数の大名家とつながりを持った光琳は
彼らから屏風注文を受けて「八ツ橋図屏風」(メトロポリタン美術館)
「紅白梅図屏風」などの代表作を、この屋敷の絵所で製作したとされる。


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見学することはできなかったが、
2階には八畳二間の絵所(画室)があるが
出入り口は急階段をのみ、
台所などの家族の生活の場からは孤立した印象。


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じっくり落ち着いて製作に取り組めるこの屋敷があってこそ
数々の琳派の代表作が生まれたと思うと感慨深い。


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1982年に開館したMOA美術館が
開館3周年を記念して復元した光琳屋敷は
延床面積311mとかなり大きい。

玄関を入ってすぐ、床の間を備えた書院があり、
「紅白梅図」と、屋敷間取絵(共に複製)が飾られている。


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壁紙は四百年の歴史を持つ京老舗「唐長」によるもの。
復元にあたり、書院には光琳波の模様が選ばれ、
屏風の金箔と、唐紙が行灯にぼんやりと浮かんで美しい。

MOA学芸員のご説明によると
光琳自筆の屋敷間取絵には、部屋の配置だけではなく、
床柱に「吉野サレ丸太」を使う、などの指定があるという。


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屋敷は、江戸中期の京町家の形を伝えるもの。
表から裏口までは「通り庭」とよばれる長い土間があり、
上部は太い梁がある壮麗な吹き抜けになっている。


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「紅白梅図屏風」は光琳が江戸で出入りしていた津軽家に
昭和初期まで伝来したもの。
つまり今まで所有者は津軽家と岡田氏しかいないということか。
川と、梅の古木、というなにげない題材を用いながらも
高度に様式化され、デザイン化された金地屏風はこの上ない壮麗さ。


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2003年に行なわれた科学調査では
「背景は金箔ではなく金泥、水面は銀ではなく藍」
という信じられないような報告がなされたものの
先月MOAにて発表された近年の再調査では
「川全体は銀、金地はやはり金箔、白梅は牡蠣胡粉、紅梅は辰砂」
という結果が改めて示されたばかり。


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水面が渦巻く川は、屏風を上下に大胆に横切り、
リアルな梅の古木と並ぶと、デザイン的な川には写実味がない。
鋭く直線的な枝の梅に対し、川と渦は曲線から成るが
それでも紅白梅、川、金地が違和感なくシンフォニーを奏でているのが素晴らしい。
樹幹に描かれた緑青、白、墨のたらし込みの美しさも圧巻。

どういう描き方がされたにしろ、この屏風の美しさに変わりはない。
日本美術を代表する名作である。


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熱海桜



torublo at 17:14│Comments(2)TrackBack(0)美術 - 日本・東洋美術 | 各地の美術館

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この記事へのコメント

1. Posted by Taka   2010年03月27日 01:43
5 3年くらいブログを拝見させて頂いております。
違う世界の人のように思ってましたが、
近所のMOA美術館が出てきて嬉しくなりました。
夏の薪能も良いですよ。
2. Posted by とーる   2010年03月27日 07:48
TAKAさん、はじめまして。

メッセージありがとうございます。
友達以外でそんな長年ご覧いただいている方が
いらっしゃるだろうとは思いませんでした。
どうもありがとうございます〜

MOAは好きで、箱根や伊豆の温泉に行くときには
だいたいのぞきにいきますが、素晴らしい美術館だと思います。
薪能もきっとステキでしょうね。ぜひ見たいものです。

熱海では、壱番ではときどきランチしてます。
起雲閣にも立ち寄りたいとずっと思っていますので
またそちら方面にお邪魔しますね

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