土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2014年07月

日没
19:00まもなく香南市は日没を迎えます。
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日没前の青色の残る空を飛ぶのは、塒を探すオニヤンマコヤマトンボ
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でも空が緋色に替わった瞬間
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飛翔するトンボの種類も替わっているのです。昼と夜とのとばりの時は、蜻蜓たちの棲み分け時刻。時の境なのです。
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この限られた短時間に索餌飛翔をするのが黄昏蜻蜓なのです。
四万十市のトンボ自然公園では、7月中旬には既にみられる蜻蜓の黄昏飛翔黄昏飛翔するトンボの数と期間が長いほど、その地域にはトンボにとって豊かな自然環境が保全されていると言えるのです。
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今年も、蜻蜓の黄昏飛翔の季節が三宝山に訪れました。黄昏飛翔は8月いっぱい見られるのです。三宝山でもピーク期には黄昏蜻蜓の群飛が見られるんですよ。

斑猫
斑猫はハンミョウと読んで、普通なら斑(まだら)の猫。
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これが、本来の斑猫です。でも一般的にハンミョウといえば、多くの人が知っている昆虫になってしまうのです。
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そうです、この昆虫が斑猫。正式にはナミハンミョウです。この昆虫が斑猫と呼ばれる所以には諸説あるも、英名においてもTiger Beetleですから、国を越え誰が見ても猫科なんです。どういった仕草がネコなんでしょう。

先ず、上画像は炎天下を水も飲まずに徘徊するハンミョウの姿。暑さには非常に強いようで、一日中強烈な日差しの下、木陰で涼を取る事なくうろうろ歩き回っています。容赦なく照りつける真夏の日差しから身を守る機能が、鮮やかな模様の裏には隠されており、体温の上昇を回避する反射光が人の目には美しく見えるのです。

ご注意ください、人間はその行動をじっと見ているだけで熱中症になりますから

熱い日は猫も日陰で腹を出して伸びています。
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ちなみに、昆虫の猫は飛び上がるのではなく、翅で低く飛びます。ですから猫が獲物に飛びつく様に見えない事も無い

ハンミョウはしつこく追い回しても、物陰に隠れる事はなく、追跡できない位遠くへ逃げることもない。まるで道を譲るくらいの感覚で避けるイメージなのです。高く青い空が見渡せる、開けた場所が大好きなんですね。

真実は幼虫期に限られた環境下にしか生息できないため、生まれた場所を遠く離れることはないのです。
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こちらは猫が座ってる姿に見えない事も無い

熱い日の放熱行為のひとつという説もありますが、どうやら目線を高くして情報収集している仕草に見えます。
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さらに猫が立ち上がった姿に見えない事も無い

飼い主のかえりを首長くして待つ猫のようでもありますが、更に遠くにまで目を配り索餌情報を収集しているのでしょうか。斑猫はサングラスのような、真っ黒い眼が不気味な野生動物でハンターなのです。
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こちらは立ち上がることで有名な、ネコ目マングース科の愛らしい小動物ミーアキャットです。
斑猫は、人が掴まえると気に入らない事をされた飼い猫のように噛みつきますが、大顎に人の皮膚を傷つける強度は無く、勿論無毒です。その他、自らの天敵に対する防衛策として、ほのかな芳香を放ちます。一連の香りの働きは、癒し効果のひとつaromatherapy効果では無く、重大天敵クモに対する防衛機能。クモに対し仲間と錯覚させる成分効果を持っているそうです。

斑猫は獰猛な肉食昆虫で、狩りをする姿こそが最も猫らしいと思んですよ。でも、身体の比較的小さなビートル(甲虫)ですから、大顎で生きた餌を捕えても一撃必殺とはいかず、その格闘する様がこれまた獲物で遊ぶ猫を連想させるんでしょうかね。

南方系の大型揚羽
7月の林道を高速で飛ぶ黒い大型の蝶。後翅の大きな黄白色斑紋が目立つパワフルな揚羽です。実に開翅長 は14cmにも達するチョウ目アゲハチョウ科紋黄揚羽モンキアゲハPapilio helenus がその正体。
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キアゲハとモンキアゲハ
モンキアゲハは、何れも南方系のオオゴマダラナガサキアゲハと並ぶ日本に分布する三大大型蝶のひとつなのです。
オオゴマダラ (2)ナガサキアゲハ 雌









左:オオゴマダラ 右:ナガサキアゲハ(オス)
オオゴマダラは高知に分布していませんが、温暖化の指標種とされるナガサキアゲハは、分布域の似た、同属(アゲハチョウ属)に分類されるチョウ。
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左:ナガサキアゲハ(メス) 右:モンキアゲハ
同属の中では珍しく性的二形が顕著で、雌は後翅の中央部に白の細長い斑点が現れ、後翅に尾状突起が無い種であるにも拘らず尾状突起が現れる「有尾型」もあるという、飛んでいる時は一見紛らわしい種間関係なのです。

でも止まると一目瞭然。
翅のつけ根に赤の斑点があるのがナガサキアゲハの特徴です。総括すると、ナガサキアゲハはオスはクロアゲハ、メスはモンキアゲハにやや似ているんです

再び、今日の主役のモンキアゲハ。森林の周辺では普通種ですが住宅地ではあまり見かけません
モンキアゲハ 吸水













夏期には、吸水する姿が頻繁に見られるも、光沢の強いカラスアゲハ等とは異なり、やや暗い木陰の水場を好みます。

モンキアゲハ本日の吸蜜花、
DSC04785リョウブ










先ずは、長い枝先に総状花序に多数の花をつけよく目立つ落葉小高木のリョウブ
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令法リョウブClethra barbinervis 
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若葉は山菜とされ
、名前の由来は食料不足時に際して、それをしのぐために食料(救荒植物)として育蓄することを法で決められた植物と言われています。

一方で、こちらのモンキアゲハは、種類がわからないほど花粉に塗れています。
オニユリ













吸蜜花は鬼百合オニユリLilium lancifolium 一説には中国からの渡来種とも言われています。
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子は成さず、葉の付け根に栄養繁殖器官である暗紫色の珠芽(ムカゴ)を作ります。
ムカゴとは、離脱後に新たな植物体となる繁殖器官で、主として地上部に生じるものをいいます。
オニユリの球根も鱗茎で食用となります。食材として単に「むかご」と呼ぶのは、茎が肥大化して形成された肉芽のムカゴであるヤマノイモのムカゴ。それと比較すると、働きは似るも形態的には大きく異なり、オニユリは小さな球根のような形、ヤマイモは芋の形なんです


最後にこちらもモンキアゲハ。
モンキアゲハ (2)モンキアゲハ









つまり幼虫でユズの木にいました。
モンキアゲハは春から秋にかけて3回ほど成虫発生します。

美種赤蜻蛉の出現
香南市と香美市の境に位置する里山の田んぼでは、日が昇るとともに無数の蜻蛉が飛び始めます。
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無数に飛び交う蜻蛉の種類は『ウスバキトンボ』。夏から秋にかけては、里山の開けた場所では最も目立つトンボ。

ウスバキトンボは、春に遥か南方の島より九州・四国へ辿りつき、その子孫が繁殖を繰り返しながら北日本まで勢力を拡大するんです。
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しかし、晩秋を迎えると如何なる態様でも越冬できず全て死滅してしまう。そして翌春になると、第一陣が再び上陸し同じ経緯を辿り続けるのです。
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真の勢力拡大といえる、飛来地域での恒久的繁殖を目指し無謀とも思える挑戦を延々と繰り返し、その過程で日本各地の夏の生態系を確立する昆虫として、長年人の傍らで生命を燃やしているのです。
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無数に飛んでいたウスバキトンボが、ある時間になると消えてなくなるんです。
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田んぼの稲に奥深く入り込んで、しばし休憩しているんですね。

小虫を捕食する農業益虫として長年にわたり人との信頼関係を築いて来た、主に田んぼの回りを生活域とする複数のトンボ種。
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こちらは春早くに休耕田となった湿地で主に発生し、稲に付く害虫を求め田んぼに来た『ハラビロトンボ』です。
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これから晩秋にかけて、田んぼの生態系を保つ重要な蜻蛉たちが、秋のアカトンボと言われるアカネ属なのです。秋の蜻蛉といわれるアカネ属ですが、成虫発生は7月初旬。つまり羽化期は7月なのです。嘗ては最も個体数の多かった『アキアカネ』はこの地域の田んぼでは成虫発生していません。
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水田でありながら、稲の成長期に水抜きを行う農法が主流となる地域では、田んぼで産卵し、田んぼで幼虫期を過ごし、田んぼで羽化するアキアカネは成虫になることなく死滅するんです。
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同地域でのアキアカネの産卵 10月
この辺りでも晩秋、稲刈り後の田んぼに多数のアキアカネが産卵していますが、それらは別の地域で発生(主に近隣にある深山の里山田んぼ)した個体群が、山を沢沿いに下って来て産卵しているんです。
つまり、日本伝統の赤トンボ、アキアカネは本来彼らが棲みかとしてきた多くの地域で『ウスバキトンボ化』しているんです。

でも、別のアカネ属は複数種、この里山の棚田で成虫発生しているんですよ。
マユタテアカネ オス










先ずはこちらの種。
マユタテアカネ』です。
本種は水田でも発生しますが、水田近くの止水域でも発生するのです。

田んぼ近隣の止水域で羽化した個体が数頭、稲の林へ隠れていました。

この地域で最も成虫発生が多いのが、日本で最も美しい赤蜻蛉といわれる・・・
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ミヤマアカネ』。
深山茜と書くアカネ属なのに、平地近くの里で普通に発生します。現代の自然環境ではアキアカネの方がずっと深山のアカネなんです。
ミヤマアカネ メスミヤマアカネ オス





これが羽化したばかりのミヤマアカネ。(左メスで右オス)こちらも稲に飛んできて体が固まるのを待っています。

将来、自分たちの活躍の場所を確かめるように。
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同地域でのミヤマアカネの産卵 10月

ミヤマアカネはこういった、用水路の流水域で成虫発生(羽化)するんですよ。
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用水路がコンクリート補強されていない場所に集中して、成虫が見られました。
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明日は早起きして羽化の様子を見にいきましょう。

取材日7月20日
ということで翌日、予定どおりAM5:00再来。
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アカネトンボたちは、私を待っているでしょうか。
しかし、見つかるのはオオシオカラばかり。
オオシオカラ 羽化DSC04911






畦土手斜面の草むらで羽化しているのは、オオシオカラばかりなのです。
そんな中、一頭のアカネトンボが水面に繁茂する草むらから弱々しく 飛び立ちました。
ミヤマアカネ 羽化









よく見るとアカネトンボたちは、この水面にびっしりと生える背の低い抽水植物の奥に隠れて羽化しているんです。このように上から視認できるのは一部の羽化個体で、他に抽水植物の奥では、多くの個体が羽化しているんです。
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これが、この水域でのミヤマアカネとマユタテアカネの羽化パターンなんです。この地域の両種は全く同条件で同時期に羽化していました。
マユタテアカネ 羽化









マユタテアカネの羽化

ミヤマアカネ 羽化









ミヤマアカネの羽化〗でした。
それにしても、高湿度でトンボの身体はどれも結露しています。こういった気象条件下で両種は羽化していくんですね。

初夏の代表種
ウチワヤンマ
Sinictinogomphus clavatus は、当ブログでもよくご紹介させていただくサナエトンボ科の蜻蛉(トンボ)ですから、こんなに立派で力強くても蜻蜓‎(ヤンマ)ではありません
ウチワヤンマ (3)










ウチワヤンマ
日本固有のサナエトンボでは無く、本州、四国、九に分布するも高知では準絶滅危惧。減少原因の一つに生息域が競合する南方系近似種タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax の分布拡大があると言われています。

そのウチワヤンマを『四万十市トンボ自然公園』では今尚、たくさん見ることができます。
ウチワヤンマ (2)










ウチワヤンマ
高知では成虫発生においては、ウチワヤンマがタイワンウチワヤンマより一か月程早生で、体型もウチワヤンマが一回り大きい。さらに清浄性に劣る水質でもある程度は繁殖可能と言われています。

ウチワヤンマはチョウトンボのように水生植物が繁茂していない環境でも発生し、むしろ抽水性植物が少ない水深のある場所を好む傾向があるのです。又、コシアキトンボのように小さな止水池を繁殖場所と選ぶ柔軟性は無く、環境の激変を受けにくい水量豊かな池を好むみたいです。
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ウチワヤンマと棲み分けをしている多種トンボたち
画像でもおわかりの様に縄張りを張っているのは、地下茎から茎を伸ばし水面に葉と花を1つ浮かべる浮葉性の水生多年草『スイレン』の繁茂する池ではなく、泥濁し底床まで光が届きそうにない止水池に集中しているのです。
ウチワヤンマ 飛翔DSC04713





ウチワヤンマ
でも私の暮らす周辺ではウチワヤンマを見ることは無く、池を飛んでいるのは全てタイワンウチワヤンマなのです。
タイワンウチワヤンマ










タイワンウチワヤンマ
比べてみてください。ウチワヤンマとタイワンウチワヤンマ。
タイワンウチワヤンマタイワンウチワヤンマ





タイワンウチワヤンマ
雌雄ともに腹部第8節に、黄色を黒色で縁取った団扇状の拡盤を有し、タイワンウチワヤンマにも同様な広がりがあるものの黄色の横斑紋は無く、大きさも少し小さいのです。
ウチワヤンマ (4)











ウチワヤンマ
さて、ウチワヤンマの特徴的な団扇。その役割を良く尋ねられますが・・・
サナエトンボの幼体(ヤゴ)には扁平な種が多く、幼虫期底床の落ち葉に潜り込むのに有利な体型となっています。その名残が成体活動に支障ない形で残っている・・・?概してサナエトンボの多くは少なからず同所が膨らんでいます。実は幼生期、最も扁平なのがコオニヤンマなのです。

そのなかでウチワヤンマだけが団扇に例えられる位、腹部第8節拡盤が特異に発達しているんですね。生物は天敵の攻撃から急所を守る為、支障の少ない部位に目立つマークを施すのですが同部位の付近は繁殖に必要な部位でそれも考えられず、同種間の認識法としても中途半端なのです。

でも昆虫の複眼と人間の目の機能はまったく異なる能力があり、昆虫の視力は概ね人間の1/100、逆に動体視力は人間の100倍、広い視野を持ち紫外線を視認できる。ですから同じ物を見ても、人間とは全く異なる見え方をするんですね。団扇の役割、一度ウチワヤンマに聞いてみたいものです。

ちなみに、ウチワヤンマとタイワンウチワヤンマの交雑報告は聞いたことはありません。

ウチワヤンマ撮影場所四万十市トンボ自然公園
タイワンウチワヤンマ撮影場所北川村「モネの庭」マルモッタン

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