土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2015年09月

米どころ里山の秋
平地の早生米が刈取りを始めてから2ケ月、本山町の棚田の秋姿を見に行きました。
DSC09324








黄金色に色づいてきた吉延の棚田。朝は既に気温15℃を下回り、平地とは別世界の秋模様。無風とはいえ一枚余分に羽織らないといられない寒さでした。
DSC09297









延の棚田で栽培されるのは、早晩性において中性に属する『ヒノヒカリ』と『にこまる』。
ヒノヒカリは越南17号(コシヒカリ)と愛知40号(黄金晴)の交配種。にこまるはヒノヒカリの高温耐性米として「きぬむすめ」と「北陸174号」を交配育種し、高温による品質低下が少なく多収で品質も良好な暖地向きの中生種です。

如何に高地であっても、これから先もずっとずっと上質米を作り続けるためには、今の日本では高温に対する対策はきちんと講じる必要があるんです。美味しい米の産地であり続ける為には、産地の気候特性にあった品種を選び抜くだけでなく、
DSC09303DSC09287






朝晩の気温差の大きいこと、湿気が夜露となって籠り、朝には霧が立ち込めるような四方を山に囲まれる窪地で、水の便と水はけに優れた日当たりの良い南西斜面というのが作物栽培に一致する自然立地条件です。

更に地域一帯の生態系を熟知し生物の活きる力を重んじた作物生産は、産物に生きぬく力を芽生えさせ言葉では言い表せない深い旨味を蓄えさせる、そう思いたくなるようなロマンを感じる里山が、本山町吉延地区なんです。
DSC09313








ですから、吉延はいつ来ても生命の息吹、生き物の循環が感じられるんですね。
耳を澄ませば夏の間、楽しませてくれた『ミヤマクワガタ』は棚田脇に点在する雑木林の腐葉土の中へ、『オオムラサキ』は林縁のエノキの葉の上で世代交代し、来年の再開を確信できる息づかいが聞こえてきます。
DSC09293






さて、そんななかヒヨドリバナの白花にいたのが、この秋に羽化して新生成虫となったコアオハナムグリ Gametis jucunda 。この後、さらに気温が下がるとこの個体は春まで休眠するんですが、たぶん今年最後に出会えた甲虫になるんでしょうね。
ふと空を見上げると・・・
DSC09349









秋空にミヤマアカネSympetrum pedemontanum elatum今田圃の中にいるのは、夏からずっと稲を守り続けてきた『マユタテアカネ』。でもその役目もまもなく終わると、
DSC09369









次なる出番を田圃の脇を流れる小さな沢で待つナツアカネSympetrum darwinianum 、ナツアカネは稲穂が実り稲刈りが始まる前に田圃で産卵します。その頃になると、田圃脇に集まってくるのが『アキアカネ』。アキアカネは稲刈りの終わった田圃に残った水溜りへ産卵するのです。勿論、その田圃周りを固める脇役たちもアカネ属。ミヤマアカネや『リスアカネ』たちと、秋の棚田の守り神たちはタレント豊富なんですよ。

棚田の広がる里山で、
DSC09281DSC09312







熟した柿を美味しそうに頬張っているのはクロコノマチョウMelanitis phedima、平地では晩秋に見られる光景です。
DSC09326DSC09328






里山の林道を歩いていると、次から次へと大粒の栗が落ちてくるんですよ。

吉延ってステキな棚田でしょう。

里山の秋花たち
秋になっても山野草の花々の尽きる事の無い、香美市岩改への林道。
DSC09265







オミナエシの花が終わりオトコエシの花が繋いでいる間に開花するのが鵯花ヒヨドリバナ)。ヒヨドリHypsipetes amaurotisが鳴く頃に咲く花という伝承録によって名の付いた植物。ですがヒヨドリはこの辺りの木々高くを周年飛び交い、いつも甲高い声で鳴いています。

そのヒヨドリバナがこちら。
DSC09232








キク科ヒヨドリバナ属
の多年草。白色紫紅色の花なんですが、このあたりではほとんどが紫色の花。
DSC09291








白色ヒヨドリバナ
そして10月に入るとヒヨドリバナに変わって勢いを増す花が、秋の七草のひとつで同属の藤袴フジバカマEupatorium japonicum なんですが、両種は背丈ばかりか花形もそっくりな上、前述のようにこのあたりのヒヨドリバナの主力花色が紫紅色何で、両種の明確な識別法を知らないと、花の移り変わりが分からぬままに晩秋を迎えてしまいます。

そしてこちらが、未だ蕾を固く閉ざした状態のフジマカマ
DSC09253








両種は葉の斑点や葉脈等でも区別は出来るんですが、もっと簡単なのが
フジバカマの葉は3裂している点。ヒヨドリバナの葉は葉は対生し裂けないので区別できるんです。でも、室戸岬に自生しているサワヒヨドリは葉が3裂することもあるんですが、サワヒヨドリは葉柄がないことによってフジマカマと区別できるんですよ。

フジバカマは、いにしえには日本人に親しまれ、茎や葉を乾燥させてその芳香を楽しむ等、万葉の時代から貴族によって愛でられたものの、その風習が廃れるとともに絶滅が危ぶまれる植物に指定されるようになりました。

ですから、ここに生えるフジバカマは近年になって里山の民によって植草されたものなんですよ。その目的は、以前にも記事にしましたが渡りを行う蝶、秋のアサギマダラをこの地に誘引するための吸蜜花なんです。新たに発生した里山での価値創出によってか、フジバカマの保全評価は近年、環境省レッドデータブックで絶滅危惧II類 (VU)から準絶滅危惧(NT)に改善されたんですよ。

そんな里山の取組のなか、今日はそのアサギマダラに逢いたくて香美市岩改の林道へ来たんですが、
DSC09260








生憎9月初旬まで続いた秋雨前線が解消された後の夏日の継続で、この日ヒヨドリバナの咲き乱れるこの地でアサギマダラの姿を確認することはできませんでした。

咲き残るオトコエシの花を廻る秋のツリアブ、ハラボソツリアブニトベハラボソツリアブSystropus nitobei)が飛び交う姿。
DSC09233







花に行くのは全てメス、反対側で引っ張るのはオスという面白い行動は毎年見ても飽きません。このハラボソツリアブは、秋のモネの庭にもたくさんいるんですよ。

ブログネタ
あなたが思い浮かべるアニメの名作は? に参加中!

アニメか現実か、はたまた夢物語か
車の大好きな先輩から久々に送られてきた画像。
FullSizeRender (2)








先輩はお孫さんの影響を受けて、還暦を期に幼少期に立ち戻りアニメファンになったんでしょうか
ところがこの車、実在する車でAustin-Healeyオースチン・ヒーレー・スプライトマークⅠ)って言う名車なんですって、恥ずかしながら私は知りませんでしたけど。
FullSizeRender (3)
Austin-Healey は先輩の大好きなヨーロッパ車のひとつ。イギリスのスポーツカーブランドで、ブリティッシュ・モーター・コーポレーションの1部門と、自動車デザイナーとして有名なドナルド・ヒーリーによっ1952年から1972年までの20年の間だけ生産されたスポーツカーだと、先輩に教えていただきました。

この時代の自動車って、実に個性的ですね。機能性よりも個性を重視して我が道を進むって感じ・・・私の妻と同じ臭いがしてきます。今回、先輩は合計4車種の画像を送ってくださったんですが、
FullSizeRender (1)









こちらのカモメのような『ベンツ300SL』などは、わが家なんか車庫入れした後、車から出られませんね。広い駐車スペースが必要で、ドアを締めながら同時に車に乗り込むしかない創り。それに中に入るには風呂桶の高さぐらい跨がなければ入れません。でもその特別感がたまらないんでしょうね。私が妻に抱いている思いと一緒なので良く理解できます。

これらの自動車には機能性を向上させるために、自らの個性を削り取るなんて精神は微塵も感じません。業界全体によって消費者を誘導する試みではなく、圧倒的な個性・キャラクターによって市場に夢を与え続けるメーカーとしての強い意志を感じます。自らの顧客に対するパフォーマンスが今とは根本的に違うんですね。卓越した特別感で成り立っている、限られた市場でもあるんです。

それから比べると
FullSizeRender








こちら『ジャガーMk2』は大人しい自動車です。前車2台と比較すると、居住性にも優れている様ですし。でも価格が特別なんでしょうね。
IMG_0548そして、最後の一枚の画像は、私でも知っている一台『フェアレディーZ』、国産車です。
トヨタ自動車ヤマハ発動機が共同開発し、1967から約4年間だけ
トヨタブランドで生産された『トヨタ2000GT』ともに多くの方々が認める日本の代表的スポーツカー。
FullSizeRender (1)






フェアレディーZ』は、日産自動車が製造し、ダットサンブランドで販売したスポーツカー、オープンボディのダットサン・フェアレディに代わって1969年から、現代(第6代フェアレディーZ)に至るまで販売され続けています。
7109bec1-s[2]更に『フェアレディーZ』は、同時代に販売された『トヨタ2000GT』(左画像)が238万円と、販売価格が当時一般的乗用車の6倍だったのに対し、スポーティーでスタイリッシュ、特別感あふれる造りでありながら、販売価格は84万円から最高モデルの182万円と、様々な創意工夫を行い当時から世界で最も売れるスポーツカーとして爆発的にヒット。絶大な人気を誇ったんですって。

そんな中、ご紹介の画像は日産・フェアレディーZとして初代となる『S30フェアレディーZ』。
FullSizeRender (1)






今まで特別な存在であったスポーツカーへの夢を、より多くの人の手の届く所まで近づけた草分け的存在が『フェアレディーZ』。普通の車に興味のない先輩なんですが、その先輩が絶賛する一台でもあるんですね。昭和の良き時代が忘れられない、戦後生まれで今年還暦を迎えた先輩なんですが、未だに手先はこんなに器用なんですよ。多分今夜も、古くて新しい夢多き自動車のプラモデルを制作しているんでしょうね、ご自身の青春と重ね合わせながら、秋の夜長を楽しんでおられるのです。

ブログネタ
あなたが思い浮かべるアニメの名作は? に参加中!

不思議の山のタヌキ
アニメではなく実際に経験した、不思議な実話の物語です 
DSC09653









アニメでもなければ、童話の 『かちかち山のたぬき』でも『不思議の国のアリス』でもないんです。


記録的な大雨が降った後の室戸。迷蝶たちのその後が気がかりで再び室戸へと足を延ばしたのですが・・・

最御崎寺へ向かう山の県道の室戸スカイラインで、迷蝶リュウキュウムラサキのいるであろう場所へ行ってみると、
DSC09482









さっそく見つけました。高知では毎年出会えるとは限らない迷蝶、リュウキュウムラサキです。
リュウキュウムラサキ 室戸








ここは普段人の来ない、拓けた場所。以前、アサギマダラの室戸観察会に参加させていただいた時に覚えた場所のひとつ。リュウキュウムラサキが多数飛来しているなら、間違いなく居ると絞り込んでいた場所なんです。

リュウキュウムラサキの名に恥じない、美しい発色をした個体です。今日はそれより沢山見られたのがコチラの
DSC09469








サツマシジミなんですが、こちらは毎年見られるシジミチョウ。何れも地名のつく昆虫なんですが段々と高知に近づいて来るんで、次にご紹介できる生き物は珍しくもない平凡なものになる予感。

ということで、少し休憩を取ろうと、室戸スカイラインの駐車場へ行きました。ここは以前もご紹介しましたが、多くの観光地でも見られる野良猫が沢山いる場所。誰かが去勢しているのか、ここには子猫はいないんですが、以前はいなかった明らかに新顔がいます。ご紹介していいものか少し悩む動物ですが・・・
DSC09495








面長で精悍な面構えですが
多分成獣ではないタヌキです。顔だけ見るとクマかイヌみたいですが、前足の付け根辺りの紋様はタヌキのそれ。4本指と鋭い爪もタヌキの特徴です。
ちなみにタヌキは、ネコ目イヌ科タヌキ属です。

よく見ると左目の上を少々負傷しています。
DSC09494








人を見ても全く逃げません。目線を合わせても私には全く興味が無いようで、タヌキが見ている視線の先にいるのはネコ。
DSC09498









このタヌキは、このネコが大好きのようで、私の存在はジャマ者以外の何物でもないみたい。それでも両者の組み合わせが珍しいんで暫し見ていると、タヌキに促されてネコが起き上がり、
DSC09499








両者というか両種で仲良く草むらの中へ入って行きました。恐る恐る後を追ってみると、タヌキがこちらを見て、“ついて来るな”って感じで目配せされてしまいました。やっぱり私はお邪魔だったんです。

私のお友達に高知のぽんちゃん(ステキな人です)はいるんですが、室戸のぽんちゃんはお友達になってくれませんでした。

以前、このスカイラインのひとつ西側の駐車場では、
ヤマドリ








山から出てきた普通は警戒心の強いヤマドリに、桃太郎のようにすごく歓迎され(桃太郎の場合キジなんですがヤマドリも一応キジ科なんです)、山の中に誘われたんですよ。勿論ついては行きませんでしたけどね。言っときますがヤマドリがオスだったからという理由では無いんですよ、念のため。

そういえば今日は“きびだんご”持ってくるの忘れていました。

室戸って、時々不思議な場所なんです。

ブログネタ
「わたし的には」「みたいな…」使いますか? に参加中!
河川を代表する秋の味覚 門外不出の郷土料理
今日ご紹介するのは土佐の国(高知)が誇る、伝統的郷土料理の秋食材。
“わたし的には”これを食べないと冬は来ないんですですから我が家では積極的に家庭料理食材として使っています。
そんな旬食材を使った高知の郷土料理に隠された秘密、一子相伝・門外不出の家庭料理の真実に迫るレポートです。
DSC08741










内水面漁協の管理する河川において、8月以降に漁が開くのが、清流上流部のアユ漁と下流部のモクズガニ(高知ではツガニと呼ばれています)。河川では第二の解禁といわれるこれらの漁期を、特別な想いで毎年楽しみに待つ人々はたくさんいます。今では川漁をしなくなった私も、河川最上流部の天然鮎やモクズガニを知人からいただいて、調理し食べるのを毎年楽しみにしています。
DSC08864







橋に括られた縄の先にモクズガニ漁の籠があります

理にかなった漁獲具を駆使して食材資源を手に入れる私たち人間には、皆で決めた資源保護のルールがあります。でも、私たち同様に川の産物に目がないアオサギには人間の解禁日など関係なく、今日もアユ漁に勤しんでいます。それでいて地域の食物連鎖を構成する一員としての使命は忘れず、豊かな生態系の番人として多くの事に目配りしているんですよ。
DSC08878DSC08877








そんな豊かな河川の恵みも9月に入ると、主役はアユからモクズガニに移るんですね。モクズガニも重要な水産資源ですから、前述のように河川を管理する漁協によって漁期が細かく定められ資源維持管理が成されています。その漁期は高知の場合、河川毎に設定されており、例えば私の暮らす香南市物部川では9月1日から11月30日まで。
DSC08908














モクズガニは世界の食通に知られるチュウゴクモクズガニ Eriocheir sinensis通称 上海蟹)の同属近似異種なんですが、高知では食文化が確立されていても、世界的には無名。更に高知県人であっても、モクズガニ料理の評価は、大好きか大嫌いかのどちらか。ですから大好きな人だけが楽しむ特別な郷土料理なんですが、それ以外の人は絶対食べないのがこのモクズガニ料理。ですから高知の食品量販店では、“わたし的には”モクズガニより食べ難く旨味でも劣り、味にクセのある地取れ海産蟹は売られていても、モクズガニが売られているのは見た事ありません。
b0c3d10e[1]








秋になると高知の日曜市で売られているモクズガニ
でも高知の日曜市など、ずっと地域の伝統食材の流通を担ってきた、地域の生産者さんと消費者の皆さんを直結する民の市場では、秋になるとモクズガニの姿を見ることが出来ます。

実はとっても美味しいモクズガニを、多くの人が食べない理由はとっても簡単なんです
1f1ca9a3[1]













モクズガニを食べたくない理由は先ず、淡水蟹であること。正確にはモクズガニは淡水域で漁獲され食材活用される、産卵を海水域で行う降河型で、一生の間に海と河川の間を回遊する通し回遊生物。成体は主に晩夏から秋に河川の淡水域(小規模な水路にも)に出現し、多くの個体は秋から冬にかけて繁殖のために海へ下るという、はたから見ると重労働を延々と繰り返しているんです。

本来は淡水域に棲みたいモクズガニなんですが、変態に至る以前の幼生期においては、進化の過程で淡水に対する順応性を持てず、反面モクズガニ成体は開放血管系の節足動物でありながら、画期的な生理的調節機能によって浸透圧変化を克服しているんです。

余談ですが、生活環の全てを淡水で過ごす純淡水性の蟹が『サワガニ』(日本固有種)です。サワガニは幼生期を経ないことで降海移動を行う必要がないんですね。でもその生態の弊害で、種として地域閉鎖が進み分化が顕著に現れ、それらの多くが絶滅を懸念されています。降海してプランクトン生活をしながら広域へ放散する幼生期を経る意味は、それなりに種としての利点も兼ね合わせているんですね。
1f5d1102[1]














もうひとつの食べたくないショッキングな理由は、高知のモクズガニ料理は各家庭でも一子相伝、門外不出の秘密の家庭料理、密室で行われる儀式なんです。その秘密を垣間見た時、何人かの人がモクズガニ料理の信者から改宗し、以後口にすることを躊躇うんですね。そのショッキングな秘密とは鮮度を極限まで重視するモクズガニ料理ですから、生きたまま調理するんですが・・・
0579ed36[1]













食材を生きたまま調理する料理法は他にも沢山ありそれ自体は珍しくありません。しかし、モクズガニ料理の場合はあまりにもショッキング

高知伝統の郷土料理モクズガニ汁
ツガニ汁)は、活蟹を擂鉢(すりばち)に入れ逃げる蟹を擂粉木(すりこぎ)で片っ端から砕くようにすり潰し、殻ごと汁にするんですから恐ろしいです(勿論その後、しっかり加熱処理します)。

でも今では、それも大きく様変わり。活蟹をそのままミキサーに入れてスイッチを押すだけって・・・透明なミキサーの器ごしに見るショッキングな光景は、全く変わらず継続されているんです、伝統の郷土料理ですから。ちなみにその調理画像はありません。あまりにもショッキングなもんで。
184161e4[1]














さてそんなモクズガニ達の中で、チュウゴクモクズガニの自然下での生態特徴はモクズガニ Eriocheir japonica 、つまり日本産モクズガニより遥かに侵略性が強く、今や日本各地でチュウゴクモクズガニの発見、報告例があるんですよ。両種は同属近似異種ですが、コツが分かれば容易に識別できます、味でなく外見で。

ところで、前述のように上海蟹(チュウゴクモクズガニ)は世界を席巻する高級食材のひとつ。ところが、モクズガニ Eriocheir japonica の存在を知っている人が、上海蟹の正体を知らずその名前に魅かれわざわざ上海へいって、上海蟹を注文し、チュウゴクモクズガニ Eriocheir sinensis が出てくると多分ギョッとします。日本で食べる事を避けていたモクズガニの一種が酒蒸し(老酒浸け)とかにされ、そのままの姿で提供されるんですから。
4f33fcce[1]








でも、これを克服できて食べてしまうと、多分多くの人がそのままずっとモクズガニ Eriocheir japonicaの 信者になってしまうのです。それだけモクズガニは美味で、更に高知のそれは上海のモクズガニより概して大きく成長し蟹味噌も多く、食べ易くボリューム感にも優れるんです。私は元々モクズガニ信者ですから一生の思い出にと、以前上海の専門店まで食べに生きました。(実は仕事のついでです。)

それに、上海蟹は養殖でけっこう濁りのある水質で飼育されていますが、自身や又は信頼できる川漁師さんに頼んで獲ってもらうと、漁獲水域もより清浄性の高い水域で漁獲できるんです。が、それがどのように食味に影響するかは不明です。
DSC08905












元来、自然下のモクズガニ Eriocheir japonica は、その漁獲法たるカゴ漁に魚の頭部などのアラを入れ蟹を籠内に誘導することからも、強い肉食性だと考えられているんですが、実際は植物が水中で分解される過程である植物由来のデタトリスが河川における主要餌料だと分析されています。

そして両者の味を経験して以降も旬のモクズガニの蟹味噌たる内子(卵巣)の、キレのある、それでいて濃厚な旨みは、高知の郷土料理食材であるツガニモクズガニ Eriocheir japonicaならではだと“わたし的には”信じています。信者とはそういうものなんです。
それに、清流のイメージも高知産モクズガニならではの食材価値なんですね。

それでも上海蟹は歴史と伝統を持った世界に誇る中華料理食材の逸品で、高知のツガニと呼ばれるモクズガニ Eriocheir japonica は、地元の信者的愛好者によって守り継かれる地元民の一部がイチオシの郷土料理。この差は結構大きいのです。ま、ツガニ信者の私達にとっては全く関係ない“みたいな”評価なんですけどね。

このページのトップヘ