土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2016年01月

遅い渡り
12月下旬に渡りを確認したヨシガモ。その時、このあと見られる鴨の渡りは例年ならツクシガモだけとブログ記事にしたのです。ところが今年は異常な暖冬だったんで、今年はツクシガモに逢うのは諦めていたんですよ。

ところが・・・
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1月30日、今年は私の住む住宅団地のすぐ近くに、そのツクシガモが飛来していました。

香南市で見るツクシガモはいつも水を張った田圃にいるんです。
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ツクシガモが、高知へ渡ってくるのは、鴨たちの中では最も遅いんですね。
その理由はユーラシア大陸から朝鮮半島をつたって九州へ渡って来たツクシガモのその極一部が西日本の各地に再度移動して来ると言われているんです。

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ですから、その他の鴨と異なる移動経路が、高知でツクシガモに出会えたとしてもこの時期になるわけなんですね。
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先日の大寒波が九州のツクシガモを移動させる引き金になったんでしょうか
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ともあれカモ科鳥類のなか、カモと呼ばれるカモ類では最大級のゴージャスな渡り鳥(冬鳥)に今年も逢えたのです。

石垣鯛の鍋
本日は高知市弘化台で仕入れたイシガキダイちり鍋をします。
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これがイシガキダイOplegnathus punctatus。イシダイ科イシダイ属で、同属のイシダイOplegnathus fasciatusとともに、釣り師にイシモノと呼ばれる特別な存在の魚類なんです。
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その理由は比類なき強烈な引き味で、しかも歯が融合して、くちばし状になっているために、運よく釣り針に食いついても普通の釣り仕掛けでは糸切れを起し取り込めないのです。さらに食味が非常に優れ、個体数が多くないイシモノを一尾も釣れない覚悟で、数多の釣り人は活きたサザエやアカガイ、生ウニといった女性の大好きな高級寿司ネタのようなグルメ食材を餌に、イシモノ専用の大仕掛けで他の磯魚には目もくれず、頑ななまでに無謀な挑戦に明け暮れるのです。

でも悲しいかなイシモノは、とっても健かで上手に餌だけ食べて逃げるんですね。

私たちはこの魚に魅了されたそんな釣り人を石物師と呼び、同じ磯に渡っても水深があり潮通しの良い場所を彼らに譲るんですよ。
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画像は、そんなイシモノと呼ばれる高級魚たちなんですが、上がイシガキダイで、下がイシダイ。
養殖物もあるんですがこれは天然魚です。その分、鮮度には若干難のある野締めですが、迷わず購入しました。イシガキダイの方だけ。
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イシダイ 活き締め
天然イシダイは幻の魚と呼ばれることもある、季節によっては殆ど流通しない時もある魚。それより南方種のイシガキダイは、亜熱帯海域を主な産地とするため、高知あたりでは更に幻に近い魚種なんですよ。
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イシガキダイ 野締め
食感に優れた身質で旨味の強い食味。更には脂ののりも適度によく、一年を通じ三拍子そろった食材価値の高い数少ない魚がイシモノなんです。が、イシガキダイはイシダイより脂がのり、その具合は時にジャマに感じる場合もあるほど。
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互いの食材価値は上画像でも判るように両種隔てなく同評価されています。上の個体で1、5kg~2kgといったところでしょうか。1月でもあり活き締めではないためリーズナブルな価格だと思います。
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ですから、冬の最も寒さの厳しい季節に囲む『イシガキダイのちり鍋』は最高のご馳走なんですよ。

さて、そんなイシガキダイのちり鍋の味なんですが・・・
昔、クエちり鍋を喩えて、トラフグとマタイをたした中間という人がいましたが、
イシガキダイちり鍋を喩えると、マハタ属ハタとトラフグをたして2で割った感じ‼
っといっても食べた事ない人には、俄かには信じてもらえません。
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更に、鍋にしているところはメジナみたいに真っ黒い魚ですから。見た感じも悪いのです。
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ところが嘘だと思うんなら、絶対一度はたべてみてください。でも、イシガキダイは幻級ですから滅多にいません。産地へ行くか、市場へいかないと。
それと、
イシガキダイは亜熱帯海域を主として生息する魚類ですから、高知でも大型魚は食べない方が良いです。特に3kgちかくなると内臓は絶対食べてはダメ。温帯域で漁獲したとしてもシガテラ食中毒の危険性が高まります。イシガキダイは『禁断の魚』でもあるんです。
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今日のイシガキダイは2kg弱でしたから、私は肝をいただきました。本来は無毒なんですが、生息海域によっては、生長とともに海洋に生息する有毒渦鞭毛藻等のプランクトンが産生する、シガトキシンをはじめとする毒素を経口により蓄積し有毒化する魚種のひとつなんです。

この、作用は熱帯・亜熱帯、またはその地域から回遊してくる多種多様な魚種に見られ、その多くの魚種は食材価値の高い有用海産資源でもあるんですよ。ですから、魚類は種類だけでなく、その種類ごとの可食サイズも知っておく必要があるんですね。

めんどくさいと思うのか、より美味しい魚を安全に食べたいと思うのかは貴方次第。命を賭けて食べる価値があっても、実際に命を失っては旨いものは二度と食べられませんから。

冬のご馳走寿司
寒い季節に食べたくなるのが温かい料理。そんな訳で急に寒くなったこの2週間程は、鍋料理が多かったんですが、今日は寿司です。といっても蒸し寿司ではなく、近頃はあまり見なくなった土佐の家庭寿司なんですよ。ですから、お寿司屋さんでは先ず無い種類。地域の家庭料理を色濃く反映させた『仕出し屋』さんには残っている棒寿司の一種なんです。

そのお寿司がこちら。
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ナイラゲの棒寿司』です。昔は家庭で普通につくられていた季節の地魚を用いた棒寿司の数々が食卓を賑わしていました。

今はその位置づけにある家庭の寿司といえば、全国区代表は“ちらしずし”でしょうか。
それが高知の場合、私たちが子供の頃に家庭で最も一般的に供されていたのは“棒寿司”だったのです。

棒寿司への特別なこだわり
冬の棒寿司をつくる時は、もちろん冬にとびっきり旨くなる魚を使います。家庭でつくる棒寿司の場合、何種も同時にはつくれないので、特に一種の魚に全てを託さなければ棒寿司に込めた気持ちは、食べていただける人に伝わらないのです。

そんな作り手の設定する高いハードルに応え切れる魚種はそんなに多くはないのです。5f6c3b50-s[1]








そして多くの人がその一番手にあげるのが『鯖の棒寿司』。高知では脂の乗り切った地の肉厚ゴマサバを使います。
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一魚種で数多の人を魅了させる棒寿司の食材は、そうは無いのです。“にぎり寿司”とちがい、複数の魚介食材を生かした様々な、仕込みを施し食味食感の強弱と余韻を演出してリズムで食べ手の心を魅了する“にぎり寿司”とちがい、同じ波長で食べ手の心と身体に満腹感を抱かせることは並大抵ではないのです。

そんな棒寿司のなか、わが家でサバに勝るとも劣らない棒寿司食材がこちら。
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クロカワです。標準和名はクロカジキMakaira mazara 、マカジキ科クロカジキ属の大型カジキ種。一般的に身色が淡く脂も薄く、加工食品とされることも多く、今では冷凍品や輸入品も多く流通して市場価格も安価な魚類なんです。

そんなクロカワの高知での別名がナイラゲ。古くより高知の家庭では生食の刺身以外にも、沢山の料理で食材活用されてきた大衆魚、庶民の味方みたいな存在の魚だったんですよ。ところが冬になると、ご覧の様に身にきめ細かなサシが入り脂が適度に乗ってくるんですね。
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ですから、その脂ののったクロカジキの刺身柵を惜しげもなく使って、棒寿司にするんです、『ナイラゲの棒寿司』に。わが家では木枠の型にはめて押すのではなく、巻きすで巻いて形を整えます。

ナイラゲはクセのない上品な魚ですから、シャリにも一工夫します。
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シャリを合わせる時に、ナイラゲの柵を漬け込んでいた柚子酢も一緒に混ぜ込み、シャリにも旨味をしっかりと染み込ませるんですよ。
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では、『鯖の棒寿司』と『ナイラゲの棒寿司』でちらか旨いかですって。
それぞれ比べようのない値打ちがありますし共通点も数多くあります。

とちらも冬旬魚で、どちらも昔は極一般的な大衆魚で高知では昭和の食卓を賑わし続けた大衆魚なのです。出来れば一緒に食べれば更に美味しい高知の伝統食材なんですよ。
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どうです、きめ細かなサシが入り、身全体に適度な脂が乗っている様子。どちらかを選べなんてことが無理な話なんです。

甘い南国の香り
昨日までの記事と打って変わって、今日は南国の便り。私の地元、香南市山北の柑農家、近森さんが今年も『温室金柑』を持って来てくださいました。この山北の温室金柑は、母が大学の同窓に毎年、南国高知らしい季節の便りとして送っているんです。でも、母は大正の女傑ですから、私にとっては毎年金柑の箱の数が減って行く、悲しい現実を目の当たりにする季節でもあるんです。

その母の特別な思いをいっぱいに箱詰めされた温室金柑がこちら。
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立派でしょう これでも私が見る限りではいつもの年より少し小振りにも思える大きさなんですよ、こだわりの温室金柑ですから。
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金柑といえば昔は全て露地栽培。ですから普通は冬の気温が底をついて霜が降りる前に収穫し、シロップ漬けにして加工保存していました。

ですから、金柑の場合は毎年温室物より露地物を先にいただくことになるんですよ。
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もちろん露地金柑は、小振りで糖度も低いんですが甘く煮付けて、金柑独特の丸ごとペロリ。ツルっとした食感を楽しむのです。

片や温室金柑は大きくても、皮は適度に軟らかく香りも豊か。そして香南市山北の近森さんの温室で生産される金柑のなかで最高峰のおひさまのしずくは、実に糖度18~20度に達っする大玉金柑なんです。
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ですからこちらは生でペロリとやってもシロップ漬けのような甘さ。しかも生成熟成ですからとっても瑞々しいんですよ。

南国高知ではこの後、本格的な春が来る前に、早生種の温室小夏の出荷が始まるのです。

けあらし蒸気霧
西日本全体をすっぽりと覆う大寒波が襲来した3日目。今日は早朝にだけ水面に現れる幻想的な冬景色を見に行きました。
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南国高知でも厳寒期の極限られた期間の早朝にだけ見られる
蒸気霧  Steam fog』です。

今回の寒波が猛烈だったから特別に見られた訳ではなく、元旦に初日の出が見られる時には、高知の海でも普通に見られる気象現象なんです。

ところが今年の元旦は特別暖冬だったんで見られなかったんですね。

そんな厳寒期だけに見られる気象現象、蒸気霧を香南市の海岸へ見に行って来ました。
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日の出前、手結の湾口から沖へ向いて伸びる白い帯。この正体が蒸気霧なんです。蒸気霧が見られることは多々あっても、これほどくっきりとその境目が見える事は珍しいんですよ。
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手結漁港内の蒸気霧の様子。漁船が、お鍋のなかんも具材のようです。
この蒸気霧、『けあらし』と表現することが一般的なんですが、正確な気象用語では蒸気霧なんですね。
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大気中の水分が飽和状態に達すると現れる現象で、、水蒸気を含む空気が冷却され、凝結が始まる露点温度に達すると発生するのが霧。

そんな霧のなかで蒸気霧は、冷たい空気が暖かい海面の他、川や湖の水面上に移動した際にみられる現象。つまり、黒潮が流れる暖かい水面上に冷たい空気が入り、水面から発生した蒸気が冷たい空気に冷やされて発生するものをいうんです。

この蒸気霧、この冬突然襲来した大寒波により、普段見られない地域でも観測されTV報道されていますが、その表現は大体が『けあらし』。でも『けあらし』の語源を辿ると本来は北海道に限られた方言だったんです。ですから北海道では、蒸気霧を『けあらし』と言い一般的には毛嵐と書くことが多いみたい。水面から白髪がどんどん立ち上がって消える。毛嵐とはまさに言い当て妙ところが、前述の通り、北海道以外の地域でも、蒸気霧よりずっと寒さが伝わる気のする『けあらし』と表現するんですが、私たちはそれを気嵐と書くんですね。

雲と霧
今日は最後に雲と霧について少し・・・
霧と靄(もや)の違いは視程程度の違いで区別され、気象観測において視程が1 km未満のものを霧、1~10km未満のものは靄(もや)というのは、よく知られていますが、雲と霧の違いとなると??正解率は低下するのでは。
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上昇霧
画像は、山で谷に沿って湿った空気が上昇し、露点に達したところで発生する霧『上昇霧』。遠くから見ると山に雲がかかっているように見えます。

実は雲と霧の違い、その定義は以外に単純で地面に接していないものを雲、地面に接していれば霧なんですね。

じゃあ、この上画像の場合はどっち

この様に山に雲がかかっている時、地上にいる人から見れば雲。なのに、雲がかかっている部分の中にいる人から見れば霧なんですね、同じ物であっても。

ですから雲と霧の正体は、享保年間に活躍したとされる盗賊『雲霧仁左衛門』みたいな話。実際に存在したかどうかも謎なら、捕まったかどうかも謎なんですね。幻想的でしょう。

太陽色した香南市の朝の海。明日はこの海と同じ色彩の、とっておき季節の柑橘おひさまのしずくの話題、ご紹介しますネ。

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