土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2016年07月

鰻を食べる日
近年、すっかり高級食材化した鰻。
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ひと昔前までは、特に夏にこだわらず食べたくなれば頻繁に食べていた感のあった鰻が、とっても遠い存在になってしまったような・・・
95d44d9a[1]原因は多くの方がご存知のように、昔のように天然資源の稚魚が漁獲できなくなったからなんです。

本来なら一時期稚魚の漁獲を控えるべきほど懸念される、ここ数年の鰻の天然資源量が昨年あたりは若干回復したとも聞きます。

でも専門店での鰻料理の価格はここ数年のまま。当時は年々上がる鰻の価格を販売価格にそのまま反映させることなく、一生懸命頑張ってこられた料理店さんでは、少し位仕入れ価格が下がっても、提供価格を下げる訳にはいかないんでしょうね。

鰻は今や何らかのかたちで供給を調整していかないと近い将来、真に幻の魚になってしまいかねないのです。 世界の科学者らで組織する国際自然保護連合(IUCN)によって、ニホンウナギをは2014年6月12日、絶滅危惧1B類に指定されているのですから。
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そんな2016年土用の丑の日、今年も高知県食品団地の皆さんと親睦を兼ねた昼食会に、とっても美味しい『うな重』を食べに行きました。
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高知の鰻料理は、身のふわふわ感よりも、あくまでも皮目の香ばしさを重視し、パリっと焼き上げるのが伝統。
鰻蒲焼の皮目













ですから焼き立ちでなければ、その食味食感の良さを余すことなく味わうことは出来ないのです。

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食品団地からも近い、南国市久礼田の『うなぎ処 福』さん。高知伝統の調理法を守る、専門店ならではの鰻料理は私たち食品工業団地の面々も満足の味です。

鰻の味にもまた、守っていきたい高知ならではの伝統がギュっと詰まっているんです。

旬は絶対に初夏
鯛といえば多くの人が春を旬に挙げるんですが、実は初夏が旬なんです。
チダイ









といっても、それはマダイではなくチダイなんです。

チダイのオスは成魚になると額が突出するので雌雄識別が容易です。
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わが家ではこの季節にはマダイを購入することはなく、刺身でも塩焼きでも姿煮でも初夏の鯛料理は全てチダイです。でも、市場での評価は周年を通じチダイはマダイより下。ですからチダイの美味しい季節を知っていれば、よりリーズナブル価格で赤いタイが購入できるんですよ。
チダイ









チダイの湯引き
初夏に旬を迎えるタイと名のつく魚と言えば、チダイよりずっと高級魚の石鯛イシダイがあるんですが、
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神経締めイシダイの薄造り

分類群では同一亜目で別科、イシダイはタイ科ではない魚種なんです。ちなみにマダイとチダイは同じタイ科でも別属なんですよ。
マダイ刺身










マダイの刺身
イシダイはしっかりとした身質で、新鮮な身色の透明感が生み出す清涼感に優れ、コク深い旨味は白身魚の中では夏を代表する脂の旨味が満喫できる魚種。
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マダイも鮮度の良さを生かし、優れた食感と透明感のある身色を心地よく味わうために薄めに、夏は薄めに切ってさっぱりと味わいます。

そうなると初夏が旬魚の白身魚のチダイ。身質と強さが奏でる食感ではイシダイに及ばないものの、
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身質の美しさと、脂ののったコク深い旨味は互角

チダイを食すには夏に限る といっても決して過言ではありませんね。
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今日、食材としたのは釣り漁、野締めのチダイ。ですから高級魚イシダイと違って高級魚ではなく大衆魚。高知では普通に量販店流通している大衆魚です。

今日購入したチダイは700g位で税込800円でした。
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初夏のチダイ、唯一の弱点とも言えるのが身質が若干弱いところ。

ですから3枚下ろしにした半身は皮を取らずに残し鯛お造りの常道、湯引きにするんですね。
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湯引きは、まな板の上で柵取りした身をさっと熱湯に潜らすんですが、タイ科の魚種は皮が硬くなく、表面の身がギュっと縮まって旨味を瞬時に閉じ込め、同時に適度な食感を作りだすのです。
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ですから、わが家では鯛のお造りには絶対、湯引きを欠かしません。タイ科の魚はウロコも容易に除去できますし。
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一尾の同一魚種で違った食味食感が味わえるのも、タイ科の魚種ならではのお値打ちです。
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ということで、季節らしい涼しげな硝子器に盛りこんでみました。

さらに今日は、唐辛子をしっかりと効かせた高知伝統の調味料、柚子ぽんずでいただいてみたんですよ、どこまでも夏らしく。
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唐辛子柚子ぽん酢でいただくチダイの湯引き
わが家の夏定番、家庭料理のひとつなんですよ。

鎮守の杜の沢
香南市と香美市の境あたりにある祠。
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林縁に佇む小さな祠の裏には、沢があって澄み切った水が流れ、さらに岩盤がむき出した山肌の下からは湧き水が溢れ出してくるんです。
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そして頭上からは照葉樹林の枝々を縫うようにして差し込む僅かな木漏れ日。

この一角は、周りとは明らかに空気感の違う場所。
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この聖地のような神秘に満ち溢れた神の領域に、毎年夏が来ると鳥居をくぐって入っていく蜻蜓 (ヤンマ)がいるんです。
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その蜻蜓 (ヤンマ)がこのコシボソヤンマ。近年、高知ではめっきり少なくなって、環境省のレッドリストでのカテゴリーは
絶滅危惧II類(VU)絶滅の危険が増大している種 に指定される大型のトンボなんです。

そのコシボソヤンマを2016年もこの鎮守の杜で確認しました。7月27日のことです。飛んでいる時はよく分かりませんが・・・
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腹部の副性器の後部辺りが極端に細く絞れているのが特徴の蜻蜓なんですよ。
コシボソヤンマ











好天の昼間はこの暗い沢を飛んだり、山から沢を覆うように伸びる枝に止まって休んだり。
コシボソヤンマ羽化












朝早く来ると、ここで羽化したばかりの個体も見られます。
コシボソヤンマ羽化 (2)










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8月の中旬になると毎年のように交尾や産卵もこの場所で見られます。
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コシボソヤンマオス

たぶん、年に何度か増水する沢の濁流に流されもっと下流で羽化して、この場所に毎年戻ってくるんでしょう。日暮れ前になって回りの谷が暗くなると、コシボソヤンマは鎮守の杜を飛び出て、拓けた場所で摂餌行動を示します。
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コシボソヤンマメス

コシボソヤンマは黄昏蜻蜓の一種なんですよ。そしてコシボソヤンマと似た行動を取る蜻蜓たちは他にもいます。
ヤブヤンマ









ヤブヤンマ
先ずはヤブヤンマ。この鎮守の杜で昨年撮影したメスです。昼間は薮の中でじっとしています。
カトリヤンマ









カトリヤンマ
カトリヤンマも昼間はこの通り、カトリヤンマは高知県では絶滅危惧(NT)の指定を受けています。
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日の入り前後、黄昏飛翔するヤブヤンマの姿です

湧くが如くに
梅雨が上がり夏休みが始まると夏ゼミ。今日はその夏ゼミ参加者の声を聞いてみましょう。といっても、私のいう夏ゼミとは、ゼミナールが実施する夏休みの集中合宿ではなく、夏の蝉の事ですから青春の過程を一生懸命頑張っておられるの受験生の皆さまには大変ゴメンナサイなんです。
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これが7月下旬の庭や公園の木々の様子、高知に限らず、庭の昆虫が急に増えているんです。

そんななか、午後の夕立がさっと上がって庭先で寛いでいると、モミジの樹元から湧くように這い上がってくる怪しい影
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クマゼミの幼虫

雨で一時暗くなったんで、蝉の幼虫が羽化するために地上に現れたんですね。7月の中旬になると高知の住宅地で羽化のピークを迎えるのがクマゼミ。その後アブラゼミ・ツクツクボウシと続き、最も早く表れるニイニイゼミの羽化は6月初旬からだらだらと続きます。
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ニイニイゼミの羽化

そんな季節限定の住宅地の喧騒を離れ、涼を求め夕暮れの山へ行ったんですが山には山の蝉がいっぱい。でも山の夏セミはどことなく爽やかです。その代表種がこちら。
ヒグラシ











ヒグラシです。ヒグラシは辺りが暗くなると急に活性が高まり泣き出す高知では山の蝉。住宅地にはまず入ってきません。どこまでも澄み切った鳴き声は清涼感に富み、心に染み入ってきます。林道脇の木々に止まって鳴いては移動を繰り返すこの蝉はよく見よく聞いていると、野鳥のエナガの様に森林の中を漂うように移動していくのが分かります。
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ヒグラシ オス

でもこのヒグラシはとても素速しっこいので接写は非常に難しいです。
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その点、同じ場所でなくミンミンゼミは夕方暗くなると著しく活性が落ちているんで接写もOK。東京に住んでいた時、ミンミンゼミは木の茂る公園や街路樹で普通にないていたのに高知でのそこはクマゼミの場所。
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ミンミンゼミ オス

ですからミンミンゼミは完全に山の蝉なんです。
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ミンミンゼミ メス

この2種の蝉、全く体幅が異なり大きさは違う様に見えても実際には、ミンミンゼミとヒグラシのオス体長はさほど変わらないのです。ヒグラシには雌雄で体長に大きな差があり、オス間でもその差は顕著で大きい個体は体長が4㎝近く。今日見た個体も相当巨大でした。
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もう少し高峰に行くと既に成虫活動を始めているツクツクボウシ。

ツクツクボウシは晩夏になると、住宅地でも目立つ存在になり暖冬の年には10月中旬まで鳴いている体長3cm位のセミ。
ところが沖縄へいくと、この近似種のオオシマゼミが、山でも住宅地でも沢山いて12月頃まで鳴いているそうです。
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オオシマゼミ

沖縄本島で見たオオシマゼミは軒並み体長4cmくらいある、高知の民が見慣れたツクツクボウシと比べると巨大なセミ。

でも今日山で見たヒグラシもそのオオシマゼミを彷彿させる立派な個体でしたよ。

これぞ旬の天然魚 姫鯛  
今日は先日室戸でみつけ記事にした姫鯛ヒメダイPristipomoides sieboldii を料理してみました。
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先ずはステキなシズル感に自画自賛の家庭料理画像。

職場の近くの弘化台市場で見つけた鮮度抜群のヒメダイ。体長40cmを越える見事な成魚を食材にしました。

白身魚の食材特長
ヒメダイの主たる流通個体は30~40㎝。このくらいが多分一番美味しいと思います。ヒメダイは時々60とか70cmになる巨大な個体も水揚げされると聞いたことがあります。でも白身系の中でも移動性の高い魚種は、概して成熟した若い個体が美味で巨大化した老成魚は、旨み的にも大味で筋肉繊維も厚くなり食感も悪くなるのです。

フエダイ科ハマダイ亜科ヒメダイ属のこの魚、分類上の同亜科別属ハマダイの若魚に似るも、背鰭形状や体色の差異によって容易に識別できます。
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足摺産のヒメダイ
本産のヒメダイ属に含まれる8種魚類の代表種たるヒメダイの学名は日本の動植物に大きな功績を成すドイツの学者シーボルトに対する献名を現しています。シーボルトに関連する学名を持つ生物は、今までにも複数が当ブログに登場してきたんですよ。

だからという訳では無いんですが・・・
日本料理食材としてだくでなく、カルパッチョやソティーにも最適な魚種なんです。
ヒメダイ










初夏のヒメダイにおいて腹部が膨満しているのは抱卵しているからで、この個体はメスで未成熟な卵を持ってました。春から初夏が旬とされるヒメダイは、今まさに旬のピークを迎えています。

梅雨が明け、日々厳しい暑さの続く高知県ですが海の中ではいつも通リの季節の循環が行われていることが、地域の天然魚から分かるんですよ。

青魚は抱卵とともに身質が落ちるんですが、白身魚は抱卵初期が旬のピークになるんですね。マダイが春の産卵期を前に『桜鯛』と呼ばれるように。
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ですから何れもの個体がこの厚み。料理するのが楽しみな旬鮮魚なのです。

そしてヒメダイはハマダイ同様、白身魚の中では仄かな桃色を帯びる身色、血合いはヒメダイの方が暗く濃い色です。同じ大陸棚のやや深海に生息するこの2種、食材価値はハマダイが超高級魚、ヒメダイは高級魚という位置づけ。
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ヒメダイは弘化台や足摺・室戸の市場で探せば、旬とされる季節には手に入ります。
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刺身への適性も高く、しっかりとした身質と適度なクセのない旨味があり、より甘味を感じたければ美しい皮目を残し湯引きにして盛り付けします。
ヒメダイ刺身









どうです、ヒメダイのお造り。美しい光沢を持つ魚種ですから、姿に盛り付けると更に豪華に見えます。
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ヒメダイの姿造り
カブトやカマは汁に焚くと上質な出汁が浸み出して、これまた美味・・・というよりハマダイの汁物は絶品の域に達している、私はそう思っています。

味噌仕立てではなく、吸物で非常に美味しい。そんな上品でしっかり旨味を感じる出汁なのです。

さて今日は夏にぴったりの、涼しげな食味食感が味わえるヒメダイのお造でした。
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ヒメダイは和洋何れもで調理の仕甲斐ある夏旬魚。高知の市場価格ではイサキより少し安い位です。

天然魚の価値
さて、今日ご紹介したヒメダイ。同じ季節が旬とされる白身魚のイサキと比べて、身色も旨みの種類も全く異なる個性豊かな天然魚です。

そしてヒメダイには非常によく似た兄弟魚オオヒメという魚が存在します。
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室戸市三津漁港で水揚げされていたオオヒメ
ヒメダイとオオヒメは共にフエダイ科ヒメダイ属。両種の見分け方は、より大型に成長するのがオオヒメ。ヒメダイは50cmで見事な成魚なのに対し、オオヒメは80cmほどにまで成長するヒメダイ属。40~50cmといった1㎏の両種を識別するのは結構難解です。

側線上の鱗数が少ない、つまり鱗がより大きく目の色がミカン色っぽい(ヒメダイは柿色)のがオオヒメなんですが微妙な違いに過ぎません。

私は、吻形状で見分けます。唇の基部が幅広く丸いのがオオヒメ。同部の幅がより狭いのがヒメダイなのだと。より大きく成長するためには、より貪欲に生きねばならずその影響は少なからず吻に現れても何の不思議もないのです。

自然の生き物は、限られた自然環境下で棲み分けを行い、少しでも離れた場所で違う食物を摂取し成長します。イサキは沿岸の浅海岩礁地帯、ヒメダイは全く太陽光の届かないような大陸棚の深場。ですから同じ白身魚でも身質も味も全く違う個性豊かな魚種となってそれぞれ特徴ある食味、食感が味わえます。

ところが同じ魚種の天然魚であっても、漁獲地域によって味が明確に異なる場合は多くの産地で実証されています。それには、水温や水深、潮流速度など多くの自然環境要因が働いています。魚に限らず食材利用する動物の味を決定するものが、成長段階で摂取している餌料に大きく左右されることは現在広く知られるようになってきました。

今、話題になっているウナギの味のするナマズ、かんきつ類の香りのする青魚もそうですね。養殖魚の価値は、今や活きの良い大きさの同じ魚種を揃えられるという利点だけではなく、飼育技術の進歩により、その魚種において本来デメリットとなる要因を上手に覆い隠すことも可能としています。

養殖事業も今や普通に有用魚を育て出荷するだけではやっていけない時代に突入し、ブランド天然魚と同じく、ブランド養殖魚が存在し養殖魚を料理食材のウリにできる段階に日々近づいているのです。

でも、それは一方で自然環境が作り出す食物の旬を濁らせ、種本来の食材特長を弱めるものでもあるんですね。青魚のブリやカンパチと白身魚のタイやイサキを同じ場所で養殖し、同じ配合飼料を与えて養殖した場合、それぞれの味は魚種本来の食味食感ではなく、すべての種が同じ傾向の味になってくるのです。ですから、養殖活魚料理店で鮮魚の三点盛を頼んでも、どの歯ごたえも味も良くても、それぞれの魚種が全く違う特長を持って五感に訴えかけてくるかは甚だ疑問ではあります。

つまり極端な言い方をすると、それは自然を人間の嗜好でプロデュースすることで、人が自然と折り合いをつけ積極的に歩み寄る姿勢を弱める行為でもあると思うんですよ。真の個性、真の価値を重んじそれを大切にする気持ちを将来に向けて養い、それを守る意義を生み出す人の営みにはつながらないような気がします。

食物をもって、季節を想い、産地を愛で、漁獲法に感謝し、来年も同じ感動が得られることを普通とは思わず心から願う。養殖魚の価値を知りつつも、決してそれを忘れない覚悟が他の命を奪って成長する動物の責務なのです。

天然魚には天然魚にしかない、五感に訴えてくる自然の物語がどこまでも豊かに包み込まれているんですよ。それを感じ、多くの方と語り合ってくださいね。それが天然魚の真の値打ち、全てをバランスよく組み立てて、養殖と天然によって上手く維持コントロールしていくことが肝要なのです。

さて、次回は初夏に脂がのってコク深い旨さが満喫できる特別な天然白身魚をご紹介しますね。近日中に・・・

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