土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2016年08月

大河の鮎
四国一の大河、四国三郎『吉野川』といえばその河口部がある徳島県と、高知県の自然豊かな山々の間を流勢豊かに流れる河川。
吉野川











本山町の吉野川

年間降水量3,000mm越の高知山中を水源とし、河川の長さでは延長194キロメートルと四万十川より少し短いのですが、四万十川に勝る流域面積3750平方キロメートルの規模によって『四国一の大河』の称号を得ているのです。

そんな吉野川の自然によって育まれた極上の天然鮎をいただきました。
吉野川の鮎













吉野川上流域の鮎

こちらが吉野川の鮎、もちろん天然鮎で特徴はまず大きさ。天然鮎の成長度は河川の規模と流域の豊かな自然度の指標でもあります、もちろん食味も。概ね吉野川上流部の天然鮎は体長20cm以上、今日いただいた鮎も最長寸は26cmほどありました。その漁獲域は長岡郡本山町付近の鮎だと伺いました。漁法は
友釣りです。

でも、これで驚いてはいけません。
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吉野川上流部にはこんな巨大鮎が結構いるそうですから。

体長だけでなく、体形によっても鮎の暮らす河川相は判るんですよ。例えば・・・
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物部川上流域の鮎


こちらは物部川の長瀬ダムより上流域の天然鮎。香美市物部町
大栃付近のものです。体長は立派な20cm前後、それでも吉野川の個体よりも二回りも小型なのです。体形的には頗る尾鰭が発達し、頭部も大きいのです。物部川上流部は山を激しく浸食して形成されるⅤ字谷を流れる急流・激流の連続、そんな上流域の落ち込みや巨岩に身を寄せる鮎を玉じゃくり漁で仕留めたものです。

さて吉野川の友釣り鮎、この鮎ならではの料理を作ってみましょう。
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吉野川の天然鮎は頭が小さく背中が盛り上がり肉厚、外見からも想像できるように天然鮎としては断トツに脂がのっています。

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それは背割りにしたときに即座にわかります。しかも釣り人のこだわりが伝わる抜群の鮮度。さらに食材として最高品質と認識されている、友釣りの背掛かり個体です。
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ですから、身質が丈夫で調理も手際よくできます。本来、川魚はおしなべて身が弱く、細かな調理は結構大変なんですが今日は違っていました。
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これが皮をひいた後の鮎の身。初めて見る人も多いのではないでしょうか。何に料理するのか、もうおわかりですよね。

魚介類 生食の危険性
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ところで・・・
アユの生食を規制する、食品に関する法令はありません。
しかし・・・
魚介類には
吸虫綱顎口虫などの寄生虫がいる可能性か高いと考えなければなりません。その中には人体に重大な健康被害を及ぼす種 も含まれています。その危害は鮎などの回遊魚を含めた淡水魚の方が高いとされ、魚種によっても危険度は大きく異なります。日本伝統の生食文化といえど、専門知識をもって様々な処理をする必要があります。

さらに食材だけでなく、まな板や包丁などの調理器具の煮沸、もちろん調理ごの手洗いも厳重に行わなければなりません。

専門の料理提供者としての考え方は、食品衛生法第6条による、健康を害するおそれのある食品の販売は禁止されており、その解釈は様々な環境が激減する今日、消費者保護の観点から高い専門知識を持つべき製造者により厳格な対応を求める傾向にあります。

さらにPL法により、引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害した時は、これによって生じた損害を賠償する責任があると定められているのです。

アユの生食、家庭料理といえど・・・
この後、柵取りした鮎の身は業務用の高性能冷凍庫で中心部まで完全に冷凍させました。食材を一定時間中心部まで冷凍することで寄生虫の危害は大きく軽減されます。家庭用の冷凍庫でも大丈夫ですが、解凍後の品質が違います。
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食べないものには食べない理由が、長い伝統調理法の中で学習され応用されているのです。
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綺麗で美味しい料理を作るより大切なことはあるんです、家庭料理でも。

天然鮎のお造り













吉野川天然鮎のお造り
鮎のお造り、我が家では初めて作ってみました。
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その出来栄えは期待をはるかにしのぐもの。
鮎の刺身は吉野川の上流域天然ものに限る というか、他の河川の鮎を刺身にしようと思った事自体ありませんでしたから。

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どうです、このシズル感のある身質。今まで数多の海産鮮魚をお造りで食べてきましたが、吉野川天然鮎のお造りは・・・この個性と、もちろん品質も最高です。川魚らしくない皮下の脂は天然魚ならではのさっぱりしたもの。身質は鮮度の良いアジにも匹敵するもの。今までなぜ巡り合えなかったのか・・・気づくのが遅きに失しったことを強く後悔する味です。

本来、鮎は地の川を遡る鮎を愛し特別な思いを持って食すのですが、これからも鮎のお造りだけは吉野川本山産に決めました。

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この背開き画像でも、吉野川の天然鮎がどれほど脂がのっているのかよくわかりますよね。
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そして盛夏の天然鮎といえば、我が家には毎年の定番料理があります。
開きを酢に浸して馴染ましている間に
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寿司飯を合わせるのです。そろそろ空腹を感じる時間帯にシャリの香りはたまらない食への誘惑。
そのシャリが冷める頃には、丁度良い按排に鮎に酢が浸潤しているのです。
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写真撮るのをやめて一刻も早く食したい気持ちがだんだん強くなってきます。
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ですから次の画像はいきなりの完成料理になってしまいました。料理名は『天然鮎の姿寿司』なんですが・・・
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吉野川の天然鮎料理


一本は焼き鮎姿寿司にしてみました。
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川魚が苦手な方は多いようですが私は川魚、特に鮎は大好きで、毎年8月に家庭で調理しています。今年も鮎をギリギリ8月にいただくことができました。

最後に昨日いただいたコメントを反映させて、皆さまの昔懐かしい、そして大好きな鮎料理をちょっと追加してみました。
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先ずは、カブ子さんとお爺さんの思い出の鮎料理『うるか』。一般的料理というより、限られた方々にバカ受けする嗜好品、つまり珍味です。しかも日本伝統の珍味で、昭和の40年代くらいまで鮎遡る清流沿いに暮らしていた子供さんは、お父さんやお爺さん手作りの『うるか』を半ば強制的に食べさされ、その後過去にない流通革命の発達によって、地域の食材事情、提供料理が変貌し一般家庭からは伝承が潰えた、私たちの年代にはとっても思い出深い清流の鮎料理のひとつです。

この『うるか』は奈半利川畔に住まわれている私の友達、田所さんのお父さんに作っていただいたものです。子供心には苦くて塩辛い保存食的な印象しか残ってないであろう『うるか』も、大人になって食べると格別。さらに晩夏以降になると、雄鮎の腹にそろそろ精巣が発達してきてそれを適度に混ぜるとまろやかでコク深い味になるのです。
奈半利川 火振り量











田所さんちは、奈半利川の鮎を火振り漁で獲まえます

季節と河川の特長によって最も変化する川魚鮎のはらわたを使って、家庭独特の味をカブ子さんに伝承したかったお爺さんのお気持ちが暖かく伝わってくるような気がします。

さて干物が大好きなアユさん。天然鮎の値打ちは新鮮な内蔵の香りといっても過言ではありません。そこで・・・
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はらわたの無い天然鮎の開きに、『うるか』をお好みで乗せて、香ばしく焼き上げると、酒の肴にはこの上ない逸品になるんですよ。

立派な鮎、たくさんの素敵なコメントをいただきありがとうございました。
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この魚の名前は・・・
盛夏の旬鮮魚、画像から名前を楽しく想像してくださいネ。皆さん良く知っている魚種で冒頭文のように旬は夏。そして間違いなく天然魚です、でも今日までにある一時期だけ人に捕まった経験があります。(大ヒント) つまりこの個体の場合、生息域から判断して一度捕まったあと、再び放されているんですね。なんでそんなことをするんでしょう。
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ご覧のように品質は極上です。脂がのってとっても美味しそうです。さらにこの脂は皮下だけでなく、深層部まで達しているんですよ。
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内臓の様子がこれ。その内臓は日本料理の伝統珍味として使用され、大人好みの味です。(大ヒント)
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白濁したように見えるのが脂です。脂ののりがよい様に見えて、魚種的には特に脂肪含量が多い魚でもありません。ある水域というより水系の魚がこうなんです。(超サービスヒント)
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体高のある魚ではありません。非常に重要な水産資源て、普通晩春から晩秋以外には食べません。特に初夏が食材価値が高いのですが、私がもっぱら食すのは盛夏になってから。

一般的料理法は・・・
春は佃煮、夏は塩焼き、秋は干物なんかにします。

答えは明日、料理とともに掲載します、みてくださいね。

調理の際の注意点(生食の危険性)も必ず見てくださいね。

田園の寄生植物
昨年9月、北川村モネの庭マルモッタンを訪れたたとき学芸員さんに紹介していただいた寄生植物『ナンバンギセル』。古来より思草(おもいぐさ)の名で文学にも登場してくるこの植物は、モネの庭において特に種付けしたものではなく、自然にススキの原に生えてきたものだと教えていただき、以来ススキの原へいくとナンバンギセルの存在にも注意を払っていました。
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それから一ケ月もたたない10月初旬、芸西村の田園の高台で『モズの高鳴き』を聞いていたとき、ここにそのナンバンギセルがたくさん自生しているのは知っていました。
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ですから今日は赤野川で鮎や野鳥の観察をしたあと、寄ってみたんですよ。

ナンバンギセルは夏から秋に開花する花。でもこのあたりで開花がピークを迎えるのは9月中旬以降だと私は認識しています。
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そんなこともあって、今日8月下旬に確認できたナンバンギセルの花茎はこの2つだけ。ひとつは完全に蕾です。芸西ではまだまだ先のことになりそうな、ナンバンキセルたちの開花なんですが・・・
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その存在を去年私に教えてくれたモズたちもまた、この地で高鳴きの準備に入っていたんですよ。

牡丹蔓
山野の日当たりのよい林縁で、晩夏に咲く白い花『牡丹蔓』を見つけました。
ボタンヅル
















牡丹蔓ボタンヅルClematis apiifolia は、本州、四国、九州に分布するキンポウゲ科センニンソウ属の基部が木質化する蔓性樹木。冬には落葉します。

牡丹蔓の和名由来は葉っぱがボタン似でのツル性植物だからです。
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画像のように、
4枚の花弁に見える十字の部分は萼片で、実はボタンヅルに花弁はありません。
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ボタンヅルは同じ季節に花期を迎える
キンポウゲ科センニンソウ属仙人草センニンソウ)によく似ているんですが、葉っぱが違うんですよ。

これらの植物は、皮膚に汁液がつくと引赤、発疱をおこし水膨れになります。
注意してくださいね。
                                                        

住宅地の殿群
季節の終わりとなる標、種々ありんですが今日は蝉の成虫活動記です。
春蝉
高知の平地や低山の里山、更には庭を設けた住宅地などにおいて蝉が出現するのは、概ね春四月。まずは
ハルゼミ(右画像)が登場するんです。ハルゼミは松蝉ともいわれ松林の群生場所にしか出現しないので住宅地にはいません。ですから都市型住宅地に住む人はハルゼミによって季節感を感じる事は少ないのです。

では、住宅地で暮らす人が蝉の鳴き声で季節を感じるのはいつかというと、6月の中旬から下旬で声の主は
ニイニイゼミなのです。住宅地の人はこのニイニイゼミの鳴き声を聞くことによって、夏の到来を予感するのです。
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ニイニイゼミ

この時期、里山で暮らす人は同時に
ヒメハルゼミの鳴き声も耳にします。ニイニイゼミは人が手をかけて開いた場所を好み、ヒメハルゼミは自然の力で樹木が世代交代を果たし、人がその手助けをする程度の事前活性化している森や林に棲みます。
ヒメハルゼミ












ヒメハルゼミ

そして7月中旬、満を持したように一斉に現れるのが
クマゼミ。この蝉の出現を知った時、人はこれから始まる猛暑を覚悟します。高知の住宅地でそれから二週間、朝からハイテンションでお祭り騒ぎのように泣き続けるクマゼミは午前十時前にはぴったりと泣き止み木々に止まって満足したようにその後の時間を寛いでいます。
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クマゼミ

里山やそこから奥の森林では、西日本でクマゼミと場所の棲み分けをしている
ミンミンゼミが出現。
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ヒグラシ

そのミンミンゼミたちと時間帯別に棲み分けをする
ヒグラシとともに西日本各地の蝉たちは成虫活動のピークを迎えるのです。
ミンミンゼミ











ミンミンゼミ

8月になると住宅地ではクマゼミの活動も佳境を迎え、その間隙を突くようにいつの間にか出現している
アブラゼミ
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アブラゼミ

決して物静かではないアブラゼミの鳴き声でも、クマゼミの後で聞くそれは、まだましかと少し安堵感すら覚えるのです。
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そんな暑苦しさを吹き飛ばす、爽やかさのある鳴き声が住宅地に広がりだす8月下旬。

声の主は
ツクツクボウシです。でも、ツクツクボウシは低山の里山では8月に入ると既に鳴いており、この蝉が里山で鳴くころには、ヒグラシの声も段々少なくなってくるのです。
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ツクツクボウシ羽化殻

そんなツクツクボウシは、西日本では蝉たちの一年を締めくくる最後の蝉。この蝉の鳴き声が住宅地に消えた後で鳴いている蝉はいないのです。
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ツクツクボウシ

蝉の一年を締めくくるツクツクボウシは、長い翅が特徴の飛翔運動力に長けた俊敏な蝉。ミンミンゼミも翅が長いように見えても体形が寸胴で、ツクツクボウシは昔懐かしい
ゼリービーンズを思わせる体形で尚且つ翅が長く出ているんで相当に長いんです。
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温暖な年には10月中旬に鳴き声を聞くこともあるツクツクボウシなんですが、幼虫は寒さに弱い本当は暖地系の蝉、東北では局所的な発生をする蝉なんですよ。さあ今年はこの後、いつまでツクツクボウシの鳴き声で楽しむことができるのでしょう。

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