土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2017年08月

過ぎ行く夏
子供の頃、何を持って夏の終わりを感じたのかといえば、もちろん夏休みの終わり。私の場合はそうでした。
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清流の魚とも、雑木林の昆虫とも触れ合うのは今日で❝さよなら❞だったのです。子供の頃は、たった40日の触れ合いでそれが判った気になって満足していました。翌年また夏休みが来て、同じ場所へ行って去年と違うことがあれば、その理由を追求しだしたのは何歳の時からだったのでしょう。
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私が子供として育った時代は、身の回りの自然状態も生活様式も、そして物の価値までもが日々変わって当然の時代でした。自身の年齢や成長段階に関わらず、変わらないことが全て後退だと錯覚する時代に生きてきたのです。
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そんな人間を数多の生物たちはどのように感じ、去って行ったのでしょう。昔は群れで見られた海からの使者も、多くの川で見ることが難しくなりました。

過ぎ行く8月に子供の頃の思い出を抱いて、毎年8月の終わりには子供の頃行った環境と変わらない場所を訪れ、何かを感じようとするんですが、
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今年の鮎は数もここ数年より少なければ、型も全然小さいのです。お気に入りの淵へ行っても、25cmを越える鮎は見られず、眩しい黄金色に輝く鮎もいません。
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今年はこれぐらいの輝きしかないのです。川苔の状態が悪かったのでしょうね。この川の場合、河川流域の環境変化がない事は判っていますから、原因は鮎が遡上を始めて現在までの天候不良が、鮎の成長の節目・節目に影響を与えたものなのです。

魚へんに占うと書いて❝❞なのですが、来年は黄金の鮎が見られるのか私には占えません。でも、河川とその流域の自然環境を保全し、産卵場所となる底床が保全されていれば、黄金の鮎はいつの日かこの沢に姿を見せてくれるのです。
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そんな淵で泳ぐ、巨大なウグイの横にはこれから漁期を迎えるモクズガニツガニ)が姿を見せていました。

枕草子の教え

里山の雑木林、といっても自宅から車で10分程度の場所にある小高い山の雑木林です。学校の夏休みも終わりかけた8月末の日没直前、黄昏時にに訪れてみました。

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里山の黄昏時

未だ残暑厳しい西日本各地ですが生き物たちの営みは明らかに変化しています。住宅地の蝉相がお盆を境にクマゼミからアブラゼミに代わったように、雑木林のクヌギ樹の蜜場で見られるクワガタムシ相も明らかな変化が見られます。

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クヌギ樹を歩くコクワガタ

8月中旬までは、コナラ属の樹々を歩き回っていたコクワガタの姿が少なくなってきました。

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洞のヒラタクワガタ

コクワガタに代わって、夏の間に拡張した洞の中にすっぽりと納まり吸蜜するのは、小振りなヒラタクワガタ。体長は5cm程度でしょうか。

 

この洞は大人の身長よりも低い位置にありますが、これ以上近づくことはできません。樹皮から溢れる樹液には、日没以降も次から次へとオオスズメバチが入れ替わり立ち代わり。余りに激しい活動に、10m近く離れた場所からの観察でも恐怖を感じるほどです。

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さらに高所の洞を見上げると、大きなクワガタムシの一部が見えています。ヒラタクワガタは高知県において絶滅が危惧される昆虫種。その原因は生息環境のの激減だと言われています。

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これら里山のクワガタムシは、人間の営みの中で作られ整備されてきた環境の中で生きてきました。この小山には、その里山での人の営みが今も継続されています。クワガタムシの自然下での生態行動が分かれば、今でもお目当てのクワガタムシを見つける事は難しくないのです。

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クワガタムシを探すことは、クワガタムシに適した環境が維持されている里山を探せばいいのですから。コナラ属の樹皮から樹液が溢れ出ていれば、クワガタムシは短期的には郊外の公園でも見つけられる昆虫なのです。

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子供の頃、ヒラタクワガタの潜む大きな洞を見つけ出し、大きなヒラタクワガタを捕まえました。そして数日後その場所へ行くと、新しいヒラタクワガタが同じ洞にはいっており地祇から次へとその洞に新しいヒラタクワガタのオスが入っているのです。

 

その年はひと夏で6頭のヒラタクワガタのオスを、その洞で見ました。しかも全てが6cm以上。洞の条件が良ければそこに入るヒラタクワガタも大型になるのです。そんな秘密の洞がある夏突然亡くなることがあったんですね。こっぽり樹ごとなくなってしまうんです。
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昨年もこの雑木林で…この樹は春伐採されました

それが『萌芽更新』、里山の健全な営みのひとつです。森林を未来に向けて少しづつ計画的に若返らす目的で樹を伐採し、それを人の営みに利用するのです。すると翌年はその近くのクヌギ樹にクワガタムシが来て、そのうち新しい洞が出来ています。
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自分だけの洞を見つければ、長く大型ヒラタクワガタと自然の中で触れ合う時間が持てるのです。
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里山に咲くオミナエシ

里山には、そろそろ夏の終わりを知らせる花が咲き出しました。
最も美しいアカネ属とも呼ばれるミヤマアカネが、高知でも赤く色づき始める季節。
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赤く色づきだしたミヤマアカネ

あと一カ月もすれば、この山にも多くのアサギマダラが乱舞するのです。

その時でも、まだこの山にはヒラタクワガタが樹液を求め活動しているんですよ。


漁港でシンクロ
稚魚・幼魚・成魚で全く紋様の異なる魚種は多々います。今日はそんな海水魚の話です。
波静かな漁港の奥の方で見つけた、
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2匹の魚が、千切れたふたつの昆布が海面近くを漂う様に水流に同調して、付かず離れずフワフワ泳いでいます。
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まるでシンクロしているように息を合わせて。この魚たち、何をしているかというと、浮遊物に擬態して天敵の目を眩まそうとしているんですね。
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人は厳しい先生に指導を受け、長い時間訓練しないとマスターできないシンクロが、魚たちの場合には持って生まれた行動生態として、誰に教わることもなく幼い時に実戦出来ているのです。

というか、これが出来ないとこの魚たちの場合は生きていけないのです。今日は2匹ですがもっと大勢でシンクロしている事も多いのです。一匹ではなく大勢で息を合わせシンクロるることで、潮目に沿って流される浮遊物のように擬態力を高めているのですね。

この魚はツバメウオの稚魚、(正確にはナンヨウツバメウオの幼魚)。
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むろと廃校水族館に生体展示されているナンヨウツバメウオの幼魚

世界の温帯から熱帯海域まで広く分布するスズキ目ニザダイ亜目マンジュウダイ科ユバメウオ属の魚種で、日本では北海道釧路以南から
琉球列島沿岸へと広く分布しています。
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ツバメウオ成魚
ちなみにこちらも、むろと廃校水族館に生体展示されているツバメウオ成魚です。

以前、沖釣りで同僚がこのツバメウオを釣りました。成魚は特に何かに擬態している訳でもないのですが、まるでお化けエンゼルフィッシュみたいでいたね。
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むろと廃校水族館に生体展示されているツバメウオ
後で聞いた話では食べたそうです。
ツバメウオの味は、ん~とか言っていました。
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今は5cmほどですが、成魚になると100cm近くに成長。やがてシンクロして泳ぐことはなくなり、ヒラヒラフリフリした鰭も徐々に短くはなって、中層部を泳ぎだすんですが、群れでの遊泳は続くんですよ。
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高知では滅多に食べないツバメウオでも、熱帯地域では食材にされるとか。もし熱帯へ行って、料理として提供されれば食べてみます。それが熱帯地域の食文化で、そんな風情を味わいたくてそこを訪れたのですから。

きっと感じ学ぶことはあるのです。

そうそう、漁港の出口近くでは、
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別のチームがキンクロしていました。初夏に沿岸部の浅瀬で孵化したアオリイカの幼体なんですよ。
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アオリイカも、体長数cmの幼体が夏には浅い海で落ち葉のように擬態し漂うことで天敵から身を守り、小魚や甲殻類を捕食して成長。このようにして、体長15cm-20cmほどまで成長し、海水温の低下とともに深場へ落ちていきます。

多くの動物たちが残り少なくなった夏に、次のステージを目指し成長しています。今が、その伸び盛りの季節なんですね。

8月のアオアシシギ
8月27日の朝、三か月半ぶりに南国市の水田で渡り鳥シギと再会しました。海沿いの水田ではなく、8月初めに稲刈りを行った後水を張っているやや内陸部の水田に複数種のシギが飛来していました。
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まず一種はセイタカシギ。もう一種は遠くて定かではありませんがアオアシシギに見えます。
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朱色の長い美脚が魅力的なシギ、かつては迷鳥として稀に記録される程度だったセイタカシギは、近年渡りの季節になると高知に限らず日本各地で数多く見られ、本州中部以北の埋立地では繁殖も確認されています。
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一方、やや上部に反った嘴よりアオアシシギだと判断しましたが、広くユーラシア大陸北部で繁殖し早くも単独日本に帰ってきているのです。この個体が当歳かどうかは私にはわかりません。
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アオアシシギは春も単独で他のシギ種たちと混群して北へ渡っていきました。

いつもの年なら、渡り鳥シギたちの一番手はキアシシギを確認することが多いのですが、今年は順番が変わってしまいました。

水田や干潟を見て歩くのが楽しみな季節になりました。

魚の昆布締め、昔は保存食でも・・・
わが家の家庭料理、今年から一寸はまっているのが『鮮魚の昆布締め』
アマダイとアジの昆布締め














もともと刺身を昆布締めにする調理法は富山が発祥の地なのです。それには歴史的背景が深く関わっており、
江戸時代の主要な海上交通『北前船』で北海道からもたらされた昆布を、富山県では大量に消費しており、その利用方法の一つとして考え出された郷土料理がこの昆布締め。
白甘鯛の昆布締め













昆布締め魚の最高峰といえるシロアマダイ
刺身として食する筈の切り身を昆布に挟むと、適度に水分が吸われ身が締まり、それにより保存性が高まるのです。更には出汁として重宝される昆布のうま味が刺身に沁み込み本来の魚の食味食感に対して、保存性と食感、さらにはうま味までもが追加されるといった優れものなのです。
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マアジの昆布締め
そんな昆布締めの料理特長を最大限生かす魚種としてイメージされるのは、白身で淡泊な魚。しかし実際の昆布締めには、アジブリといった青物と呼ばれる魚種等あらゆる魚が利用され、さらには魚に限らす、イカやエビといった海産資源まで、昆布によって締められています。


昆布締め食文化の広がり
ですからその広がりは昆布締めを施す食材に限らず、それを活用する地域にも及んでいるのです。そして、冷蔵や冷凍による保存が充実した現在でも昆布締め刺身は人気の高い調理法なのです。

私が以前勤めていた高知の郷土料理店でも、柵どりされた天然の活ヒラメが昆布締めにされて供されているのを見た覚えがあります。その時は、なぜ身質もしっかりしてうま味豊かなヒラメを昆布締めにするのかと正直驚き、そして昆布締めに対しての自身の検証が始まったのです。
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現在では、保存性を高めるためのこだわりを昆布締めに過剰に求める必要のない分、私は食材鮮度にはこだわっています。活魚で手に入る魚種は、活魚を使う。
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そこに、歴史ある地域との食材優位性に働く要素はないものかを探っても見ました。
マアジの昆布締め












活締めマアジを昆布で締める
これら活締め魚を昆布締めする時は、その前に刺身で極上の鮮度を楽しみます。
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活締めクエも昆布締めに
動物の死後分解作用によって生まれるうま味成分と、昆布のうま味成分の愛称は抜群。互いの相乗効果で生まれる熟成過程ならではのうま味の妙は、使用する魚種や昆布締め時間によって作り手の好み次第。更には昆布の産地によっても変化を生むとまで言われます。

しかもそれらのうま味は、出汁食文化で慣れ親しんだ日本人の感性に染み入り、やがて心の奥底から懐かしさとなって再び染み出してくる。日本人の感性が創り出した調理手法昆布締めは、妙ではなく絶妙の領域に達することも可能な日本料理のひとつなのです。

そして、昆布締め発祥の地、富山ではマグロやカジキの仲間も昆布締めにして楽しんでいるとか。
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ですから、今日は早起きして河岸でメバチクロカワカジキを買ってきました。夏場のことですから、マグロやカジキはあっさりとしていて昆布締めには誂え向きだと思えるのです。
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このかたちで圧をかけ一日冷蔵庫で寝かせてみました。
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翌日の状態がこちら。
早速、盛り付けてみました。
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メバチとクロカワカジキの昆布締め
発祥の地で推奨する食材だけあって、マグロ類の昆布締めは流石の味に仕上がっていました。
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