土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2017年11月

香南市の冬景色
蜜柑の里、香南市山北では路地温州みかんの収穫が最盛期を迎えました。
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香南市のブランドみかん『山北みかん』は、水はけ良好な傾斜地を利用して適度に水分ストレスをかけ、丁寧に育て上げた薄皮の路地みかんです。

この好適地は西側に広く開放する傾斜地で、やや空気が滞留する窪地上の場所。同じ樹なら当然ながら最も日の当たる枝が良いのです。私たちは産地の民ですから、この季節になると『山北みかん』を毎日二・三個食べています。

近くの落葉樹豊かな雑木林へ行くと、赤とんぼとは別のトンボが飛んでいます。
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このトンボ、ここで春までこうしている『ホソミオツネントンボ』のオス。勿論、成虫個体ですが性成熟はしていません。このまま冬を越し桜の咲く頃、田植えの為に水を張った水田で産卵します。その頃にはこの茶色の部分が青色に輝いています。

冬場は枯れ葉に擬態するため、不要な輝きを潜めているのです。

ところが逆に、寒い季節になると青く輝く色彩が目立つ昆虫が、同じ場所で冬を越すのです。
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成虫越冬種の『ムラサキシジミ』でこれは光沢の強いメスです。年複数化の蝶で、一年中美しい表翅の色彩は変らないのですが、気温が下がると翅をいっぱいに広げて日射を浴び体温を上昇させようとするのです。

ですかえあムラサキシジミ属が最も輝く季節が冬なんですね。
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ムラサキシジミの翅色と同じ青の空をふと見上げると、
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みかん山の上空を白腹の鷹が旋回していました。
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ハイタカかオオタカか・・・成長でありながら風切羽の紋様がこれだけはっきりしていればハイタカなんでしょうね。
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秋と冬とのはざまで色変わりした樹々の茂る山の斜面を注意深く見ていると、複数の鷹が飛んでいる事に気付きました。
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今日の最後は
   モミジが終わり、
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槭樹や欅、榎などの広葉落葉樹が思い思いの色に色づき、見頃を迎えた三宝山の登り口です。

渡りと回遊
動物で渡りと言えばイメージは長距離の季節移動をする鳥類。人は自身の暮らす地域で様々な渡り鳥の移動を見て四季を感じます。
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日本には、季節環境の変化により繁殖(世代交代)を重ねながら、定期的に長い距離を移動する蝶『アサギマダラ』がいます。この蝶もまた渡り鳥に肖り渡りを行う蝶と言われます。

ところが、海の中を季節環境に応じて、最適な餌場や繁殖場所を求め、定期的に長距離を移動する海洋生物は魚類の場合『回遊魚』。クジラの季節移動も回遊と表現されます。

ところが蟹の場合は、海洋生物でありながえあ渡り鳥ならぬ渡り蟹と呼ばれる蟹たちがいるのは広く知られた事実でもあります。蟹の分類において甲殻類にはワタリガニ科に属する比較的大型の蟹たちが存在するのです。

海で生まれ、成長すると汽水域への侵入を積極的に行うワタリガニ科に属する蟹たち。発生初期の段階ではプランクトン生活を行い海流に任せて適度に放散するも、それは自主的な行動によるものではなく、成長してひとたび底生生活にはいると、大した移動は行わないのです。
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タイワンガザミ♀
そんな蟹たちが何故、渡り蟹と呼ばれるかというと、身体形状が特別なのです。菱形で扁平な体と、大型で挟む力の強い頑丈な鋏脚。第2脚から第4脚までは普通のカニとあまり変わらない脚をしているも、第5脚に渡り蟹の所以が現れます。
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脚の先が「遊泳脚」と呼ばれ平たく変形して櫂状を呈しているのです。海底を安定的に歩行するのには不向きでも渡り蟹たちは、この遊泳脚を使って海中をすばやく泳ぐことができるのです。
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シマイシガニ
砂地で波静かな内湾や入り江でボートを浮かべ釣りをしていると、船べりへ上等な渡り蟹たちが泳ぎあがってくることがあります。

その姿が、昔の陸上交通の延長として水面を短距離でつなぐ『渡し舟』ににているんですね。これが渡り蟹の名前由来といわれており、決して長距離間を季節移動、つまり回遊する蟹ではないのです。
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そして、ワタリガニ科の多くのカニは、日本でも西日本から南西諸島にかけての暖海では貴重な水産資源。非常に美味しい蟹揃いなのです。
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特に第5脚の「遊泳脚」を可動させる筋肉が非常に発達しているのがワタリガニ科の特徴。鮮度の良い活蟹を蒸していただくと、身の甘さも、ほくほくとした食感も最強かも!

しかも産地たる香南市の物産市場では甲幅15cm位の渡り蟹の活蟹たちが、一杯200円で売られています。まさに最強‼
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エガニとタイワンガザミ
この辺りで最も高価なワタリガニ科のエガニ(ノコギリガザミの各種)もここでは、700~1,000gの大型で1,000円ほど。

でも、残念なのは価格が特別でも食べ放題とはいかないのです。入荷量が安定していませんから。安い物にはそれ相応の理由があるのですが、品質の問題ではなく足繁く通って掘り出し物を見つける楽しみは、いくらでも膨れ上がるのです。

毎冬の園冬風景
今年も香南市の田園で、冬恒例の戦いが始まりました。この戦いはある意味で命をかけた自然界の闘いと言えても、直接命のやりとりをする戦いではありません。ですから、桜の咲く季節まで何度も何度も見られ、多分同じ場所で同じ個体同士で繰り返しやっています。
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今日、先ず登場するのはノスリ。香南市の住宅に接した田園で狩りをしています。
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電柱の天辺で周りの田んぼや畑、河原の土手を見回し、前のめりの姿勢を取れば、獲物を見つけています。するとふわっと降下し、脚で獲物を掴み取ると元の場所へ戻り、
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電柱の上で獲物を平らげるのです。
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今日の獲物は大型のカマキリ。自らの命を全うするために、天からの恵みを大切に味わう姿。昭和に育った私たちも、食事の時は産物に対する感謝の気持ちを持つことを祖母に教わり、日々の食を大切にしていました。

当時、残ることを前提に準備される食べ物は皆無。むしろ足らないものをやりくりしながらそれに臨むご飯でしたから、今とは全く違う多くのことへの感謝の気持ちが当然の如く芽生えていました。

それが現在の人間社会では、生産者を消費者が争奪するのではなく、消費者を生産者が囲い込んで取り込むのですから、完全に自然界の生態系とは逆転しています。

もともと人間界の消費者は大多数ですから、生態系ピラミッドは端から反転し、例え高次消費者であっても長くそうあり続けるためには自らが卓越した生産者でなければならないのです。複雑な世界ですね。
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このノスリ、今の季節はカマキリが主たる獲物のようで、50m程先の地上にいるカマキリを次から次へと見つけ出し、
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百発百中で狩って戻ってきます。カマキリは様々な昆虫にとって恐るべき捕食者。
小昆虫の天敵たるカマキリの狩りは待ち伏せの捕食法。小昆虫が飛んでくる場所で辛抱強く待っていて仕留めるのです。そんなカマキリの天敵がノスリ等猛禽類を始めとする肉食や雑食の野鳥。
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時にはそんな野鳥すらも捕食するノスリは高次消費者。成鳥となった現在、ノスリ自らが捕食されることは先ず無い鳥類です。
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ところがこの田園においては、自身より小型の鳥類の攻撃を受けることはしばしば。今日もそんな戦闘が始まったのです。
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名乗りを上げるのは複数の鳥。しかし必ず一対一の勝負を挑むのはチョウゲンボウなのです。
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この勝負、ノスリは十回中十回つまり全てその場を去ります。それをチョウゲンボウは判っているのです。

この勝負は縄張り争いですから、チョウゲンボウが目障りとする場所から出れば、それでその場は収まるのです。
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その後、チョウゲンボウもそこで昆虫を捕食するかと思っていたら、
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田園の上の電線に群れ止まるニュウナイスズメを執拗に襲っていました。
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でも、こちらは結構ハードルが高かった様です。チョウゲンボウも田園のビニールハウスを壁に見立て、巧みに追い詰めてはいたんですよ。
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野締め魚を選び抜く楽しさ
元々、安価な魚たちは扱いも雑。
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ある日の事、香南市の地魚として販売されていた全て野締めの中型魚です。

小魚なら雑魚扱い、中型魚なら下魚扱いといわれる身質は白身魚。種類は右からチダイ4尾(300~500g)、タカノハダイ1尾(500g)、ヒゲソリダイ3尾(1から1.3kg)、コショウダイ4尾(0.8~1.3kg)です。

どの魚を選んでも軽量する訳でなく、価格は300円か500円(税込)。和名は全てが〇〇ダイなんですが、正真正銘のタイ科魚種は1種のみ。お店の人に伺うと、全て一律に加熱調理で食す魚たちですという説明。
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チダイの煮付け
これらは、様々な網漁具で水揚げされた魚種。水揚げ時には絶命している個体を含まれているんです。

そこで今日の記事は、これらの魚をどう選ぶかなんです、加熱可食という条件で。つまり魚種で選ぶか、鮮度を見極めて選ぶか、さらに買わないという選択もあります。

買わない選択としては、価格的には安価でも今日は刺身が食べたいと思う事も。私もそう思ってこの魚たちを注意深く見ていました。雑多に陳列された魚種でも、それぞれの魚体にはいろんなサインが残されていますから。

慣れている消費者は目や鰓の色、体色でそこそこの鮮度選別をします。
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さらには、販売者側が明らかなサインを刻んでくれている事もあります。同じように陳列されていても、上画像には野締めと活き締め、鮮度価値の全く異なる魚が並んでいるんです。

尻鰭付け根や頭部に切れ込みを入れ、血抜きをしている魚種は間違いなく活き締め魚です。この店の場合は、こういうサインの残る魚の多くは神経締めも施しています。

ということで下魚扱いの魚の中から、私が今日選んだ魚はこちら。
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野締めのヒゲソリダイ、価格は500円です。お店のひとにこっそり伺ったんですが、実はこの個体、30分前に入荷した時はまだ動いていたのです。

それでも、これは活魚でもなければ活き締めでもない野締め魚。下魚ではなく上等鮮魚として料理は出来ても、野締めの魚には変わりなく家庭で熟成を楽しむ個体ではないのです。

この日のヒゲソリダイ3尾の内で、問題なく生食できる個体は2尾あると見ました。しかも双方肥えていたので、敢えて腹部が膨満していない個体を選択。ヒゲソリダイの食物残渣は臭みがあり、鮮度が落ちると腹腔へと臭みが移行していきます。

ですから、いずれにしても購入後は即座に下処理しなければなりません。
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このイゲソリダイは空胃で臭みは全く残っていませんでした。
産卵期は初夏とされるヒゲソリダイですが、未発達の精巣が見られました。
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これがヒゲソリダイの身色。下魚として処理されるにはもったいない品質です。見た目で類似している白身魚コショウダイとは異質のうま味が味わえる魚種なんですよ。
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500円とは思わない出来。でも加熱魚として販売されている下魚を生食するには、それを払拭する正確な知識と手順が必要なことはいうまでもありません。

でもその基準は、元々販売者が食品衛生に批准して設定するもので、販売者との信頼関係を礎に成り立っているんです。

ここに入荷して来る鮮魚は、地物ですから生産者と販売者、消費者の顔が全て見える形で存続され成り立っているのです。
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ですから、お互いが地域の一員としての信頼関係で消費が成り立っていて、品質に関しても詳細な会話ができるのです。

11月の地物絶品活魚イシガキダイ
イシダイ属の二種の魚。
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イシダイ
春から夏が旬のイシダイは、白身魚の中では最高級のうま味を有し、身質もしっかりした魚種。
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イシガキダイ
一方のイシガキダイは、同属でありながらイシダイが旬から外れる秋から春までが旬の魚種です。

イシダイとイシガキダイ料理 旬の使い分け
この旬の使い分けができるのは、イシダイとイシガキダイの生息域が異なっているから。その互いの生息域が重なり合う高知県のような限られた地域が、イシダイとイシガキダイの互いの旬に、地物魚種としてそれらが卓越した鮮度で味わえるのです。

夏場の高水温期には、黒潮洗う浅い岩礁域で共に暮らすイシダイとイシガキダイですが、海水温が低下する季節になると、イシダイは深場へと季節移動を始め、それにより定置網でまとまって漁獲され流通します。その季節のイシガキダイは、イシダイには見られないほど脂がのってきています。

石物(イシモノ)とも呼ばれるイシダイとイシガキダイの両種は、本来は臭みのない身質ですが、磯魚であるが故に鮮度を保ったままで下処理を行わないと臭みが身にまわってしまい、折角の品質が台無しになってしまいます。
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活魚の神経締め
ですからイシモノを刺身でいただくなら、活魚を神経締めにする。それが産地のこだわりで、それができる事が産地の特権なのです。

それを最大限生かして調理すると、
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薄造り
透明感のある薄造りで、食感と清涼感を楽しむ事ができ、
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刺身とタタキ
適度に熟成させて、よりうま味を高め味わうことも出来るのです。
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活き締めイシガキダイ
今までイシガキダイは何度か料理したことがあるんですが、活魚のイシガキダイを調理したのは今回が初めて。
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今回は原魚サイズで850gの若魚でしたから、一日冷蔵庫に寝かせて捌いてみました。
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寝かすと、うま味は増すんですが、身は白濁し切れの良い繊維質の食感も薄れます。それをバランスよく両立させるには魚種毎に経験が必要ですが、そこそこは上手くできたみたい。
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若魚ですから脂ののり具合は、思ったほどではありませんでしたが、イシモノならではのうま味と張りのある食感が満喫できました。
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旬極まったイシガキダイ。11月の季節移動を始めたイシガキダイを、わが家ではこう盛り付けてみました。

イシモノは絶対、活魚活き締めに限るのです。その味わいは野締めとは別物ですから。
産地には、必ず優れた地場産品の調達先があるのです。

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