土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

2020年10月

アキグミとコノシメトンボどちらが赤い
ミサゴ










抜けるような青空を心地よく旋回するのは4羽の大型猛禽類のミサゴ)。猛禽類には似つかわしくない柔らかな声で、何かを語り合っていました。
アキグミ










香南市のヤ・シィパーク、近くの夜須川の護岸。青空の下には赤く熟したアキグミの実
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香南市を越冬地として飛来したばかりの赤い実が大好きなジョウビタキが早速目をつけています。
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そのアキグミの赤にも負けない、これまた秋らしい性成熟した真っ赤な赤とんぼ
コノシメトンボ♂











小熨斗目蜻蛉コノシメトンボ)が多数集まって来ています。

コノシメトンボがいれば、熨斗目蜻蛉ノシメトンボ)という若干大きな赤とんぼも存在するのですが・・・
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これがノシメトンボです。本個体も♂なのですが、性成熟後であってもコノシメトンボ♂ほどは赤く染まりません。赤みはナツアカネの♀程度です。

熨斗目蜻蛉の和名由来は成虫の腹部の黒い斑紋が熨斗目模様を思わせるから。そして熨斗目模様の赤とんぼは、総じて小粒揃いのアカネ属の中では大型で、ノシメトンボはその最大種のひとつ。コノシメトンボとてその平均以上の大きさがあります。でも、赤とんぼですから、問題は大きさより赤さ重視ですよね。
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赤さでは、コノシメトンボはトップクラスに赤く染まります。

でもそれは♂だけで、♀には赤みは全くと言ってよい程に現れません。
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♀にはノシメトンボ、コノシメトンボ共に顔面の額上部に眉班ビハン)が出現します。

眉班の出現はアカネ属にとって珍しい特徴ではありません。
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コノシメトンボの産卵は、水を張った秋田圃や雨上がりの田圃の水溜まりの他、プールや小さな貯水池等の止水域で、この様に雌雄連結して打水産卵形式で行われます。
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今日の最後の一枚は、茜色に染まった初冬の夕暮れ。アカネ属の蜻蛉たちも、そろそろ冬仕舞いです。

秋の怪談話し皿屋敷はどこにあった
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白壁の塀を登る虫。なんか❝
いちま~い、にま~い・・・❞なんて聞こえてきそうな。多分、長女の影響です。彼女はご飯になると、キメツのなんとかいうアニメを再生して私の前で見だすのです。

この白壁を登る虫、一見タテハの幼虫に見えて実はアゲハの幼虫。幼虫終齢期までこの色と多くの突起を持って貫き通すアゲハの幼虫は他におらず、極めて特殊な存在なのです。食草はアルカロイド系の毒性物質を有し古は生薬として珍重されたウマノスズクサ。そうです、今日は怪談昔話なのです。
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因みに本種はジャコウアゲハの幼虫で、この武家屋敷の様な白壁を登る目的はここで蛹化するのです。
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前蛹
蛹化した姿がこちら。この蛹は江戸時代、播州赤穂で『お菊虫』と呼ばれていたことで知られているのです。
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蛹化
それはよく見ると、身体の最後部を糸で固定し皿にではなく更に肩も糸で縛って固定している。これはアゲハの蛹に見られる帯蛹といわれる蛹化の際にとる身体固定形式でこの蛹に限ったことでもありません。
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それより蛹の容姿が特殊で、まるでちょっと怪しげな着物柄の武家屋敷の奥女中が縄で後ろ手に縛られ身体を拘束されている様⁈
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寛政年間に播州で大発生したとされるこのジャコウアゲハの蛹を見て、晩秋ではなく播州の武士はお菊を想像したそうです。
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ところでこの皿屋敷の所在地、この播州だとか江戸の番町だでけでなく日本各地にある様で、わが土佐の国の幡多地方にもそんな話が残されているんだとか。
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でもわが家は全然大丈夫です。片手が不自由な私は食器を洗う際に落として割り回るので、妻が一生懸命パンを買って、割れ難い皿を収集してくれましたから
ジャコウアゲハ











ジャコウアゲハ

故人との距離感
生前に母がよく通っていた料理店で、母を偲んな食事会をしました。お店には会合の目的を伝えただけで、その他の指定は全く行っていません。ですから普通はやり難い献立であったはずなのです。
ところが・・・
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母が愛した生まれ故郷の料理店
お店側としてもそれは一切なかった様で、生前母が愛した料理が次々に食卓へ並びました。
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私の知らない母の粋が随所にみられる料理に残された家族は感嘆し舌鼓を打ち、食通だった母を皆で偲びました。
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そんな母の影響か、私も息子も、旬と地物産品を大切にする飲食を自身の聖職に選びました。
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中でも母がこよなく愛したのがブランド鰻と黒毛和牛のサーロイン。母は後先考えない贅沢美食家、私たち夫婦と先に逝った父から見れば、食費には糸目をつけない人柄でしたが、それを自身で管理できる道楽の域から脱することは決してありませんでした。
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お店はそんな母の為に、地の蕎麦粉で作った蕎麦饅頭やイタドリの炒め物など素朴な郷土の逸品も揃えてくれました。
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蕎麦饅頭は、香美市奥物部のイベントには欠かせない自慢のソウルフードなのです。
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過行く季節とそれを引き継ぐ旬の食材。まさに人生もあっという間なのです。最後に香南市のブランドマスクメロンと新高梨をいただきました。

お値段、気になりますよね、実際一人5,000円で全て足りる金額だったんですよ。勿論、次回もこちらでお願いします。それが家族、親戚一同の総意ですから。

手結漁港に水揚げされていたマハタ属南方種
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妻の実家のある香南市手結漁港、活魚がまとまって水揚げされる日があります。義父が漁船を所有し、漁をしていた頃には、私も休日に時々それを手伝い、この市場で競りにかけていただきました。

その時は、早朝から昼過ぎまで二人で一生懸命漁をして、良い時で水揚げ額が二万円くらい。燃料費や漁船維持経費は自己負担です。更に大きな投資をしてどろめパッチ網漁やシイラ巻き網漁など、周年ではなくとも更なる収入を得るためには、資金と身体を資本に、地域で自然任せの漁業において様々な環境整備を整え、将来の不透明な地域漁業に取り組む・・・そんな時代でした。

その時、率直に思ったことは私はサラリーマンでよかったということ。勿論、宮仕えよりも自らの身体でより自由度を発揮して成果を収めているひとも少なくはないのです。さらに今では、漁協職員さんだけでなく様々な組合運営によって月給制の漁師さんも存在しています。
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ここ手結は古はイセエビ、アワビの産地として知られ、幕藩時代の立派な港がそのまま稼働している風情漂う港町。私が子供の頃は漁港近くに有名な料亭やお寿司屋さんがありました。
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そしてそれらは今も、この手結漁港で少なからず水揚げされていますが、それらを地で提供できなくなった今、ここはその産地として現代の人々からは忘れ去られようとしています。
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セミエビ
この日は、イセエビだけでなく高知ではモンパと呼ばれるセビエビやもう少し安価なゾウリエビの姿もありました。
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地エビを使った産地の家庭宴会料理
本州では幻の超高級海老と言われることの多いセビエビ、刺身で食すなら甘味と身質の食感はたしかにイセエビ以上。でも鍋にするなら出汁は遥かにイセエビの方が上質なのです。
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家庭で作るセミエビの刺身
義父は自らもこれらの漁をしていたので、私たちの年代なら、時にこれらが地場産市場で安価に販売されていれば購入し、家庭で調理します。因みにこの活セミエビ一匹300円で買いました。奇跡の様な価格ですよね。ですから田舎暮らしの物産市場通いはやめられないのです。
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タビエビと近海マグロの盛り合わせ高知の家庭版

そして地元から料亭は消えても、地産地消の灯は辛うじて家庭で守られているのです。
チャイロマルハタ








さて、この日の手結市場を覗いてみると、この辺では非常に珍しい魚を見つけました。しかもコレ、近頃人気が出ている高級魚なんですよ。

この活魚槽に入れられている斑点模様のハタがそれ。南方系マハタ属のチャイロマルハタで本個体は4.6kgと表示されています。このチャイロマルハタ、10年ほど前にはあまり知られておらず、市場関係者でも、和名を知らない人が少なからずいました。
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チャイロマルハタ
こちらは数年前、室戸の大敷網で水揚げされた個体で10㎏弱でしょうか。チャイロマルハタは成長すると1mを越え、15~20㎏に達する大型マハタ属です。
ヤイトハタ








足摺海洋館のヤイトハタ

更に大型になる南方種、ヤイトハタ同様に近頃は潮通しに優れる高知県の両岬周りだけでなく、中部地域の漁港でも見られる様になり、若魚は浦戸湾内にも生息していると聞きます。

以前はクエの代用品的存在で、これらは一括りに紋クエとも呼ばれていました。その時は活魚でクエがkg8,000円なら、それら紋クエは4,000円といったところでしょうか。それでも高級魚扱いではあったのです。

この南方種マハタ属は総じて温帯域のマハタ属より成長が早く、味も美味しいことから近頃は広く名を知られる様になった高級魚ならぬ高級魚。都市部の競りでは活魚や活き締めは㎏10,000円に達することもあると聞きます。

そしてこれらハタ系の大型魚、総じて1・2㎏の扱いやすい幼魚・未成魚より10㎏以上の個体やそれ以上の成魚が旨いのです。但し、成長とともに深海水域に落ちる種はその限りではありません。

美味しいと噂の魚には目の無い私。一度は大型のチャイロマルハタやヤイトハタを自宅で調理してみたいとは思っているのですが、原魚ならば大きさ自体が家庭食材には不向きなのです。運よく小分けの切り身ででもない限り・・・
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でも、粘り強く色んな場所へ通っていれば巡り合えるのかも。
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そうやって大型スジアラ(ハタ科スジアラ属)も10年越しに夢かない料理できたのですから。

豊かな里海暮らし、この趣味もまたやめられません‼

秋を彩るタデ科の花々
水辺環境が好きな私ですからタデ科の花は今まで何度か記事にしたことがあります。
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イタドリの花
昨日記事にしたイタドリもタデ科の植物。野を渡る秋風が、心地よいから肌寒く感じる季節になると、あらゆる環境でタデ科の小花が急に目立ち始めてきます。

ヤナギタデ








水田脇の水路や畔に咲く柳蓼の花
蓼(タデ)といえば、料理の引き立て役に用いられることでよく知られる植物。といってもそれは新芽や葉であって花であることは少ないのです。

紅蓼














刺身の付け合わせに紅蓼
これは京都の割烹でいただいた刺身の盛り合わせ。

付け合わせにヤナギタデの変種『紅蓼』、本葉が出る前の幼芽が、つまとしてワサビとともに添えられています。 その目的は、ピリッとした辛味を添える目にも鮮やかな薬味なのです。
高知 家庭の刺身










高知の家庭で作る刺身の付け合わせ
もちろん高知でも紅蓼を刺身の付け合わせに使うことは少なくないのですが、それは料理店やスーパーで購入する刺身の盛り合わせなどの場合の事。家庭での刺身料理には先ず使いません。少なくてもわが家では。
鮎塩焼きと蓼酢












鮎の塩焼きと蓼酢
一方こちらは鮎の塩焼きをやはり京都の割烹でいただいた時のもの。ヤナギタデの葉をすりおろした、鮎料理には欠かせないとまで言われている『蓼酢』が添えられています。
家庭の鮎塩焼き








高知の家庭の鮎塩焼き
これまたわが家では、年に何度か鮎を塩焼きするのですが蓼酢を添えたことは一度もありません。

そこに同じ食材を使っても異なる味わいを楽しむ地域食文化の価値があるのですが、自宅で使わない蓼酢が高知の料理屋さんで鮎に添えられてくると、それはまた新鮮な気持ちで食材の季節を味わえるものなのです。

何故アユの塩焼きに蓼酢がこのまれるかというと、葉の辛味と爽やかな香りが清流魚の鮎の風味を引き立たせるのです。
ニンニク葉土佐ぬた






家庭で蓼酢を作るのが煩わしい訳では決してなく、逆に霜が降りる頃に出荷が始まるニンニク葉が出回ると、もっと手間暇をかけた『土佐ぬた』なら仕込むのです。

さて、蓼科の植物は似た様な環境に複数存していて、風味豊かな蓼はヤナギタデに勝るものはなく、昔はそれを手に入れる際には自身で摘んできたのです。その場で噛んで味を確かめて。
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秋田圃を端で紅く染めるイヌタデ
さて、秋になって稲刈りの終わった田圃をしばらく放置しておくとこのように秋らしく紅紫色に染まる場所が出てきます。
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これは一見ヤナギタデよりも辛そうで、実際には辛くないといわれている蓼、つまり人に活用されることのないイヌタデ属の犬蓼イヌタデ。

愛玩動物は胃内に溜まった自身の体毛や、食物で消化不良を起こした時に道草を食べ一度吐いて体調を整えることが知られていますが、辛くない蓼はそういった雑草としての評価なのです。
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イタドリの葉を食む野生のニホンジカ
複雑な構造の反芻胃を持つ草食性の偶蹄類の一種、ニホンジカがタデ科のイタドリの葉を食べていますが、こちらは主食のひとつなのでしょう。

そして・・・
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ミズヒキの鮮やかな赤花
蓼類にお似合いの動物と言えば虫。よく見ると口器を蕾に突き立てようとしています。
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一方、こちらはミズヒキの赤い花穂に止まる赤くならない♀の赤とんぼマユタテアカネ。

赤くなれない赤とんぼが鮮やかな赤花に魅かれているようです。

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