高知の場合
先週、『オキアジ料理』の取材でマナガツオのご質問をいただいた時、
新鮮な鰹か食べられなかった地域で、マナガツオ(画像は西京焼き)が重宝され、地域独自の食文化が発達しマナガツオの食材価値も高まった話をしました。鮮度の高い本鰹を食べられる地理的条件に恵まれていた我が高知県でも、一所に留まらず南北に広い回遊を行う近海本鰹は、周年食べられる食材ではないのです。
そこで、登場するのがこの魚❢
当ブログでは、今まで何度も取材したことあるんですが改めて紹介します。
『ヒラソウダ』 Auxis thazardです。サバ科・ソウダガツオ属 で、以前ご紹介した『メジカ』 Auxis rocheiと混称してソウダガツオ(宗太鰹)と呼ぶ地域がたくさんあります。
産地の誇り
高知の場合はソウダガツオ属を種によって明確に区別し、マルソウダ A. rochei (Risso)はメジカ。ヒラソウダA. thazard (Lacepède) はスマなのです。ところが、高知以外ではスマはスマガツオEuthynnus affinisの事でサバ科スマ属のこと。
〖本須萬(スマガツオ)Euthynnus affinis〗
スマガツオを有用海産資源としてブランド魚構築されておられる産地では時々、当ブログもご指導コメントを頂戴するんですが、高知ではヒラソウダが紛れもないスマで、本須萬(スマガツオ)は紋須萬(モンズマ)と呼んで差別化しています。品質的には高知でも本須萬の方がヒラソウダよりずっと高い評価を受けているのは間違いなく、地域食文化での呼称ですから、本須萬(スマガツオ)産地の皆さんご容赦くださいね。高知の食文化が生み出した、海産資源の地方名なんですから。
代用品
ところで『ヒラソウダ』、高知では本鰹=鰹Katsuwonus pelamis (サバ科カツオ属)が獲れない時や漁が少なく価格の高い時の代用品として、刺身やタタキで食すんです。
ヒラソウダを料理する
とにかく高知県人の多くはタタキが大好き。勿論、鰹タタキのことなんですがヒラソウダでもOKなんです。
鰹タタキの代用品として。
高知ではそれ以外の白身磯魚なんかも、お構いなくタタキにしますが、それは鰹タタキの代用ではありまん。
更にホンマグロの若魚『ヨコ』・『ハガツオ』・前述の『モンズマ』もタタキにするんですが、それらは特別な価値が鰹同様に確立されている鮮魚なんで、代用という定義は似わない高級魚なのです。
ところが鰹の代用品であるはずの『ヒラソウダ』、主である本鰹より美味しいと感じる時もあるんですね。全て近海物で、土佐沖に接岸してくる時は腹がパンパンに膨れ上がり、摂餌状態が良く脂が乗っているんです。
美味しそうでしょう・・・
鰹の味を知り尽くした、高知県人が鰹の代用とする鮮魚ですから、こだわりが一杯詰まっているんです。
今日の一尾は、これでも脂の乗りが薄く刺身でいただきました。捌いている時、中落ちをいただくと、とっても甘かったもんで、急きょ刺身に変更したんです。
ヒラソウダはタタキにしても大変美味❢
ヒラソウダのタタキはこんな感じです。
高知では庶民の家庭料理ですから、以前撮ったものがありました。
こちらは『ヒラソウダの塩タタキ』。産地こだわりの逸品です。
ヒラソウダを美味しく食べるコツは、新鮮な鮮魚を選び抜くこと。鮮度はだれでも判ります、眼を見て、鰓をはぐれば。眼は黒く澄んで、鰓は赤いものが良いって言うのは誰でも知っていますが、この魚はそれが明確、そして簡単に判ります。
裏を返せば、それだけ劣化が急速に進む魚なのです。更に鮮度が落ちると金属光沢の皮目が剥がれ出します。ですから産地でないと鮮魚は味わえません。しかも鮮魚価格は本鰹の半分くらいか、それ以下です。
そして、調理後すぐ食べる事も必須条件。
最後に、本鰹は日本海深くに侵入しませんがソウダガツオは日本海にも棲息。しかし産地になり得る地理的条件が整っていても、日本海でヒラソウダを鮮魚として振る舞う食文化は耳にしません。ヒラソウダの真の美味しさ、機会があれば是非〃高知の港町でどうぞ。旬は今です
先週、『オキアジ料理』の取材でマナガツオのご質問をいただいた時、
新鮮な鰹か食べられなかった地域で、マナガツオ(画像は西京焼き)が重宝され、地域独自の食文化が発達しマナガツオの食材価値も高まった話をしました。鮮度の高い本鰹を食べられる地理的条件に恵まれていた我が高知県でも、一所に留まらず南北に広い回遊を行う近海本鰹は、周年食べられる食材ではないのです。
そこで、登場するのがこの魚❢
当ブログでは、今まで何度も取材したことあるんですが改めて紹介します。
『ヒラソウダ』 Auxis thazardです。サバ科・ソウダガツオ属 で、以前ご紹介した『メジカ』 Auxis rocheiと混称してソウダガツオ(宗太鰹)と呼ぶ地域がたくさんあります。
産地の誇り
高知の場合はソウダガツオ属を種によって明確に区別し、マルソウダ A. rochei (Risso)はメジカ。ヒラソウダA. thazard (Lacepède) はスマなのです。ところが、高知以外ではスマはスマガツオEuthynnus affinisの事でサバ科スマ属のこと。
〖本須萬(スマガツオ)Euthynnus affinis〗
スマガツオを有用海産資源としてブランド魚構築されておられる産地では時々、当ブログもご指導コメントを頂戴するんですが、高知ではヒラソウダが紛れもないスマで、本須萬(スマガツオ)は紋須萬(モンズマ)と呼んで差別化しています。品質的には高知でも本須萬の方がヒラソウダよりずっと高い評価を受けているのは間違いなく、地域食文化での呼称ですから、本須萬(スマガツオ)産地の皆さんご容赦くださいね。高知の食文化が生み出した、海産資源の地方名なんですから。
代用品
ところで『ヒラソウダ』、高知では本鰹=鰹Katsuwonus pelamis (サバ科カツオ属)が獲れない時や漁が少なく価格の高い時の代用品として、刺身やタタキで食すんです。
ヒラソウダを料理する
とにかく高知県人の多くはタタキが大好き。勿論、鰹タタキのことなんですがヒラソウダでもOKなんです。
鰹タタキの代用品として。
高知ではそれ以外の白身磯魚なんかも、お構いなくタタキにしますが、それは鰹タタキの代用ではありまん。
更にホンマグロの若魚『ヨコ』・『ハガツオ』・前述の『モンズマ』もタタキにするんですが、それらは特別な価値が鰹同様に確立されている鮮魚なんで、代用という定義は似わない高級魚なのです。
ところが鰹の代用品であるはずの『ヒラソウダ』、主である本鰹より美味しいと感じる時もあるんですね。全て近海物で、土佐沖に接岸してくる時は腹がパンパンに膨れ上がり、摂餌状態が良く脂が乗っているんです。
美味しそうでしょう・・・
鰹の味を知り尽くした、高知県人が鰹の代用とする鮮魚ですから、こだわりが一杯詰まっているんです。
今日の一尾は、これでも脂の乗りが薄く刺身でいただきました。捌いている時、中落ちをいただくと、とっても甘かったもんで、急きょ刺身に変更したんです。
ヒラソウダはタタキにしても大変美味❢
ヒラソウダのタタキはこんな感じです。
高知では庶民の家庭料理ですから、以前撮ったものがありました。
こちらは『ヒラソウダの塩タタキ』。産地こだわりの逸品です。
ヒラソウダを美味しく食べるコツは、新鮮な鮮魚を選び抜くこと。鮮度はだれでも判ります、眼を見て、鰓をはぐれば。眼は黒く澄んで、鰓は赤いものが良いって言うのは誰でも知っていますが、この魚はそれが明確、そして簡単に判ります。
裏を返せば、それだけ劣化が急速に進む魚なのです。更に鮮度が落ちると金属光沢の皮目が剥がれ出します。ですから産地でないと鮮魚は味わえません。しかも鮮魚価格は本鰹の半分くらいか、それ以下です。
そして、調理後すぐ食べる事も必須条件。
最後に、本鰹は日本海深くに侵入しませんがソウダガツオは日本海にも棲息。しかし産地になり得る地理的条件が整っていても、日本海でヒラソウダを鮮魚として振る舞う食文化は耳にしません。ヒラソウダの真の美味しさ、機会があれば是非〃高知の港町でどうぞ。旬は今です
コメント
コメント一覧 (2)
カツオの産地と、産地でない地域の比較。非常に興味深い説でした。
『擬き』的発想で創り出された地域の料理が、時に伝統となり、条件によっては生鮮品であっても主を超える存在となる可能性に着目しました。全てがそうで無くても、そういった事はどの世界にもあり、だから面白いんですものね。