見かけに翻弄されるのは人の常なれど・・・
二匹の魚の話です。

どっちが綺麗かという単純な話ではなく、どちらがお値打ちかという話。登場してもらったのは室戸獲れ2種の魚。7月13日に室戸の浦戸屋さんで購入しました。
先ずは外見より❝赤もの❞と言える室戸で赤平次と呼ばれる標準和名『ハチビキ』。以前、ご紹介したことのある魚で水深100〜300mに生息する魚らしく大きな目をしています。

ところが、今日出会ったハチビキはよく肥えていて50~70cmと大型、身質もしっかりと締まっています。
ちなみに大型ハチビキは、沖縄で三大高級魚のひとつとされるアカマチ(ハマダイ)と見紛いそうですがハマダイはフエダイ科ハマダイ属、ハチビキはハチビキ科ハチビキ属で全くの別物。尾鰭を見たら一目瞭然で両端が長く伸びているのがオナガとも呼ばれるハマダイなのです。

迷わず買ってしまいました。ハチビキの価格は35円/kgですからこのボリュームで1匹750円ほどなのです、しかもハチビキは今が旬。
ムツ(ホンムツ)とクロムツ

【ムツとアカヤガラ】
一方、こちらは西日本でもクロムツと呼ばれ流通している魚。でもこれは、ムツよりも北に偏った分布を示し北海道南部から本州中部までの分布に留まるクロムツとは違うムツ(本ムツ)なのです。ムツも北海道以南で見られるのですが、その分布はクロムツの様に限定的ではなく、インド沖の太平洋やアフリカ南部沿岸の大西洋にも分布しているのです。

【ムツの釣り漁】
またムツとクロムツの違いは、和名の如くクロムツが成長に伴いより黒っぽく(特に鰭が全体的に黒い)、クロムツはムツより上顎の歯の数が少ない、鱗が小さい等で識別できる他、概してクロムツの方が流通個体が大型傾向にあります。

しかしいずれもが、一見して一目瞭然という違いではありません。ですから、東日本では両種混同で流通する場合も多々あり、流通価格は種の違いよりも大きさの違いで、大型魚がより高値なのです。
![078c295f[1]](https://livedoor.blogimg.jp/tosakatsuo/imgs/f/3/f3fb42e8-s.jpg)
【中小型のムツは開き干物にして身を適度に締めると美味】
ムツ属は身質も元々柔らかく、腹部は腐敗を思わせるほどブヨブヨ。さらに大きな目も白濁しやすいんで、刺身で食べて大丈夫か⁉ と疑ってしまうような魚。ムツは水深200〜700mの岩礁域に潜む深海魚なんです。
1尾買いした産地のムツの家庭料理

【室戸どれの見事なムツ】
しかも価格が1,800円/kgですからこれで1匹3,000円弱。多くの人が高いと感じて買わないようですが、私が購入の意志を現すとお店の人が驚いていました。50cmを越えるムツは、いつも手に入る代物ではありませんから。
さて、この室戸どれムツを自宅で調理するのですが、

ムツは深海から上がって来るので、浮袋が吐き出され口を開けて絶命しており、鋭い犬歯が突出。気を付けなければ、触れただけで怪我をします。
深海魚の目利きは、見ても触れても沿岸の魚種とは違うものがあります。

これが柵に落としたムツの身。寒い季節が旬とされるムツなのに、夏でもこんなに脂がのっています。
この柵取り、ぱっと見は寒の沖鰡にも見えます。が、寒ボラというか数多の魚類の脂はこれほど融点が高くはないのです。ムツの脂は常温でも溶けているように見え、これが口に入れた瞬間に濃厚で芳醇な旨みを呈する源と考えます。

しかも、切り揃えてみるとあんなにブヨブヨしていた身が、不思議と綺麗に切り揃えられるのです。

半身のシモ半分は昆布締めにして熟成。翌日食べることにしました。食味の変化が楽しみですね。

一方の半身は全て湯引きに。

50cmを越える大型のムツですから皮も厚く、硬そうに思えるのに以外に柔らかく良い食感を演出するのです。
血合いへの脂の浸透具合は、先日ご紹介したハマフエフキ(タマン)に通じるものがあります。

こちらも、簡単に美しく切り揃えられます。間違いなくムツの身が上質なのは、調理している時から確信が持てるのです。

盛り付けた時、結構硬そうに見える筋も、実際に食べてみると、全く食感を損ねるものではありません。

【大型ムツの刺身】
購入時は心配した身崩れも全くなく綺麗に盛り付けられました。

接写したムツの刺身。高知でホタと呼ぶアラとはまた異なった美味しさは、軟らかい和牛の食味食感に通じるものがあります。
ムツは紛れもない旨い魚、高級魚なのです。価格も納得で決して高いとも思えませんね、この品質ならば。

【ムツあら炊き】
産地まで出向いて一尾買いした新鮮なムツ。あらまで美味しく食べ尽くしたいものです。
さて、もう一方のハチビキ。こちらは白身魚ではありません。

【大型ハチビキの切り身】
勿論、調理したことのある私はそれを知っていました。ハチビキも刺身でいただける魚なんですが、

今日は極上の『ムツ刺身』がありますから、ソテーでいただきました。
岬まわりの大型ムツ、素晴らしい食材です。見栄えで騙されてはいけませんね。ムツは刺身に切り揃えると見違えるように栄え、驚くほどに美味しいのです。値段の高い物には、高い理由が偽り無くあるのです、産地の誇りにかけて。
翌日は、

【ムツの昆布締め】
昆布締めにしたムツをいただきました。
今日の最後はムツの生体画像です。

【ムツの幼魚】
2018年4月26日、高知県室戸市室戸岬町533番地2(旧椎名小跡地)にオープンした『むろと廃校水族館』で生体展示されていました。
むろと廃校水族館では、室戸の漁港で漁獲される重要な海産資源も数多く生体展示しています。
二匹の魚の話です。

どっちが綺麗かという単純な話ではなく、どちらがお値打ちかという話。登場してもらったのは室戸獲れ2種の魚。7月13日に室戸の浦戸屋さんで購入しました。
先ずは外見より❝赤もの❞と言える室戸で赤平次と呼ばれる標準和名『ハチビキ』。以前、ご紹介したことのある魚で水深100〜300mに生息する魚らしく大きな目をしています。

ところが、今日出会ったハチビキはよく肥えていて50~70cmと大型、身質もしっかりと締まっています。
ちなみに大型ハチビキは、沖縄で三大高級魚のひとつとされるアカマチ(ハマダイ)と見紛いそうですがハマダイはフエダイ科ハマダイ属、ハチビキはハチビキ科ハチビキ属で全くの別物。尾鰭を見たら一目瞭然で両端が長く伸びているのがオナガとも呼ばれるハマダイなのです。

迷わず買ってしまいました。ハチビキの価格は35円/kgですからこのボリュームで1匹750円ほどなのです、しかもハチビキは今が旬。
ムツ(ホンムツ)とクロムツ

【ムツとアカヤガラ】
一方、こちらは西日本でもクロムツと呼ばれ流通している魚。でもこれは、ムツよりも北に偏った分布を示し北海道南部から本州中部までの分布に留まるクロムツとは違うムツ(本ムツ)なのです。ムツも北海道以南で見られるのですが、その分布はクロムツの様に限定的ではなく、インド沖の太平洋やアフリカ南部沿岸の大西洋にも分布しているのです。

【ムツの釣り漁】
またムツとクロムツの違いは、和名の如くクロムツが成長に伴いより黒っぽく(特に鰭が全体的に黒い)、クロムツはムツより上顎の歯の数が少ない、鱗が小さい等で識別できる他、概してクロムツの方が流通個体が大型傾向にあります。

しかしいずれもが、一見して一目瞭然という違いではありません。ですから、東日本では両種混同で流通する場合も多々あり、流通価格は種の違いよりも大きさの違いで、大型魚がより高値なのです。
![078c295f[1]](https://livedoor.blogimg.jp/tosakatsuo/imgs/f/3/f3fb42e8-s.jpg)
【中小型のムツは開き干物にして身を適度に締めると美味】
ムツ属は身質も元々柔らかく、腹部は腐敗を思わせるほどブヨブヨ。さらに大きな目も白濁しやすいんで、刺身で食べて大丈夫か⁉ と疑ってしまうような魚。ムツは水深200〜700mの岩礁域に潜む深海魚なんです。
1尾買いした産地のムツの家庭料理

【室戸どれの見事なムツ】
しかも価格が1,800円/kgですからこれで1匹3,000円弱。多くの人が高いと感じて買わないようですが、私が購入の意志を現すとお店の人が驚いていました。50cmを越えるムツは、いつも手に入る代物ではありませんから。
さて、この室戸どれムツを自宅で調理するのですが、

ムツは深海から上がって来るので、浮袋が吐き出され口を開けて絶命しており、鋭い犬歯が突出。気を付けなければ、触れただけで怪我をします。
深海魚の目利きは、見ても触れても沿岸の魚種とは違うものがあります。

これが柵に落としたムツの身。寒い季節が旬とされるムツなのに、夏でもこんなに脂がのっています。
この柵取り、ぱっと見は寒の沖鰡にも見えます。が、寒ボラというか数多の魚類の脂はこれほど融点が高くはないのです。ムツの脂は常温でも溶けているように見え、これが口に入れた瞬間に濃厚で芳醇な旨みを呈する源と考えます。

しかも、切り揃えてみるとあんなにブヨブヨしていた身が、不思議と綺麗に切り揃えられるのです。

半身のシモ半分は昆布締めにして熟成。翌日食べることにしました。食味の変化が楽しみですね。

一方の半身は全て湯引きに。

50cmを越える大型のムツですから皮も厚く、硬そうに思えるのに以外に柔らかく良い食感を演出するのです。
血合いへの脂の浸透具合は、先日ご紹介したハマフエフキ(タマン)に通じるものがあります。

こちらも、簡単に美しく切り揃えられます。間違いなくムツの身が上質なのは、調理している時から確信が持てるのです。

盛り付けた時、結構硬そうに見える筋も、実際に食べてみると、全く食感を損ねるものではありません。

【大型ムツの刺身】
購入時は心配した身崩れも全くなく綺麗に盛り付けられました。

接写したムツの刺身。高知でホタと呼ぶアラとはまた異なった美味しさは、軟らかい和牛の食味食感に通じるものがあります。
ムツは紛れもない旨い魚、高級魚なのです。価格も納得で決して高いとも思えませんね、この品質ならば。

【ムツあら炊き】
産地まで出向いて一尾買いした新鮮なムツ。あらまで美味しく食べ尽くしたいものです。
さて、もう一方のハチビキ。こちらは白身魚ではありません。

【大型ハチビキの切り身】
勿論、調理したことのある私はそれを知っていました。ハチビキも刺身でいただける魚なんですが、

今日は極上の『ムツ刺身』がありますから、ソテーでいただきました。
岬まわりの大型ムツ、素晴らしい食材です。見栄えで騙されてはいけませんね。ムツは刺身に切り揃えると見違えるように栄え、驚くほどに美味しいのです。値段の高い物には、高い理由が偽り無くあるのです、産地の誇りにかけて。
翌日は、

【ムツの昆布締め】
昆布締めにしたムツをいただきました。
今日の最後はムツの生体画像です。

【ムツの幼魚】
2018年4月26日、高知県室戸市室戸岬町533番地2(旧椎名小跡地)にオープンした『むろと廃校水族館』で生体展示されていました。
むろと廃校水族館では、室戸の漁港で漁獲される重要な海産資源も数多く生体展示しています。
コメント
コメント一覧 (9)
そう考えると敵に見つからない工夫をしているもの、つまり周囲に溶け込むために見た目が地味だったり汚かったりするものは身を不味くする必要がない分、美味しいのかもしれませんね。
ところが人間相手となると断然「不味い」「利用価値がない」の生存戦略の方に軍配が上がるわけですが。
私も、室戸では40cmを越えるムツの鮮魚を見るのですが、店先に並ぶ前に大概売り先が決まっています。大型ムツは料理店の食材なのです。多分一般家庭ではこの魚の素材を生かしきれないのでしょう。
そんな美味しいムツは、焼き物が最高ですね。勿論、刺身でいただいてもとても美味しいのですが、以前ご紹介した『アラ』は同じような海域にいてムツよりも優れています。
西京味噌に漬け寝かせた、大型ムツやクロムツもうま味や食感は、他に美味しい魚がいるとしても、比べようのない特徴があります。そんなムツ料理の原点、ムツの刺身を味わえたのは、とっても幸運でした。
天敵から身を守る方法は多々あり、擬態したり天敵の棲む場所に棲まないこともそれらのひとつ。ところが自然は過酷で、一生を通じ擬態効力が発揮できなかったり、生活環の一部で天敵と出くわす条件が組み込まれていたりします。
そこに、自然の自然たる仕組みがあり、一生守られた環境では暮らせないのです。そんな中で、最大の防御策は自らを、摂餌により有毒化して、それを天敵に知らしめること。熱帯・亜熱帯の魚種はこれを広く採用し人間を始め多くの天敵から身を守っています。
成長とともに、強毒化するこのシステムは世帯交代にも非常に有効に働き、優れた種の保全法ですね。
大変興味があります。
昔は、たまり醤油に過剰な甘味を感じていました。食品団地の研修旅行へ行った時、地方の名物といわれる醤油は工場見学や購入をしましたし、店舗同様にぽん酢や醤油も鰹節を挽いて試しに作ってもみました。
ぽん酢は地ものにこだわっていますが、醤油は必ず地物というより県外のメーカーも広く使います。メーカー名はご勘弁ください。魚の味は種によっても季節によっても一定でないので、調味料を定型にすることは全くないというのが結論で、時には素麺汁に卵黄を落とし鮮魚丼にしていただく時もあります。
水銀含入の問題は昔から言われていましたね。深海魚を週に何度も食べなければ健康被害は無いとされているはずです。例えば、100g程度を週2回(そんなに食べる機会もないはずですが)程度では問題ないとか言える量だと。特に妊婦さんは深海魚を避けるべきとかも言われています。
逆に深海魚ならではの高い栄養価を持つ物質もCMなどて良く公開されています。
さてこれら深海魚といわれる魚種は概ね、一生を深海で過ごす訳でもなく、産卵は一般魚類もいるような比較的浅い場所(水深100ⅿ程度)で行われ、ムツの稚魚などは潮だまりでも見られ、20㎝程度の若魚は鯛やイサキの外道として釣れる季節もあります。
若魚は概して身質が弱いのですが、ムツの若魚も深海で上がる成魚以上に柔らかく、マハタの稚魚はキスのいるような浅い湾内にも入り、成長とともに深場へ落ちていきます。10㎏程度の魚体は100ⅿ以浅にも生息しており、しっかりした身質とうま味の両立した魚で脂も適度。カンナギとも言われる老成魚は同じマハタでも深海魚で、食材価値も確立されていません。
ところが、同じマハタ属でもクエは深海と呼ばれる水域までは落ちにくく、30㎏を超える魚体でも高い食材価値があります。うま味もさることながら、熱を加えると絶妙に締まる身質の食感が上質なのです。
眼球が白濁しやすく色もくすんだ暗色で、鮮度判断が外見上難しいのですが、50cm程度に成長していると、見た目や触診以上に身もしっかりしています。ムツは鮮度保持が出来ていれば、どのように調理しても旨いさかなですね。
価格は高めですが、間違いなくお値打ち魚です。