タイプの違いも魅力のコガネムシ科の甲虫た
梅雨明け直後の奥物部で見た、美しいコガネムシ科の甲虫を紹介させてください。
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先ずは長瀬ダムの堰堤端で早朝みつけたコガネムシ科の甲虫。多分、夜間にダム事務所の室内光に誘われ飛来してきたのでしょう。
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な~んだコガネムシか、なんて思っている人も少なくないはず。

ところが日本原産のコガネムシの中には、この様に実に美しい種も結構多いんですよ。
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昆虫の美しさをどのように受け止めるかは人それぞれ。美しさの要素たる、色素による色彩の豊かさ、光沢、形、大きさといったものの中から、昆虫好きにも個性豊かな選択要因による好みのタイプがあるのです。
奥物部オオムラサキ♂









こちらは奥物部のオオムラサキ♂。表翅の広範囲に現れる紫色が最大のポイントではありますが、大きさも相当なもので最大で♀前翅長は7cm近く、開張寸は10cmに及ぶ色彩の美しさだけでは語り尽くせない大型タテハチョウです。
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一方、オオムラサキと同じ樹にいるクワガタムシ。黒一色のこの甲虫を見てj心魅かれる人もごく限られた少数派・・・とは限らないのです。

ちなみにクワガタムシを美しいと感じる決め手は種それぞれの個性を現わす形と大きさでしょうか。昆虫好きにも、この様に好みのタイプがあるのでしょうが・・・
サクラコガネ








このたった2cmほどのコガネムシを見て目を奪われない人は少ないと思うんですよ。

翅鞘は暗赤紫、胸部と頭部は緑、肢や腹部は橙黄色。そして各肢先は翅鞘と同じ暗赤紫と、お洒落で色彩も豊かですが光沢も卓越した実に美しいコガネムシなのです。

息をのむほどの美しさと喩えるべきでしょうか。昆虫には、時に擬態対象となるモデルが存在するんですが、このコガネムシなら化粧品会社のモデルさんにも抜擢できそうな艶やかさです。

何に擬態することもなく、何に隠れようとする紋様や色彩配列でもない。ただ輝くことが生存戦略の好天日に高活性を示す昆虫類の一種です。

種名は最初サクラコガネであると思ったんですが、大きさ等によってヒメサクラコガネやチビサクラコガネといった種が存在します。また何れにしてもこれほど光沢の強烈な艶やかなタイプの個体は今まで見たこともありません。
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それより翅鞘に現れる縦筋はスジコガネの形状に適合しています。ところがスジコガネ類にも、スジコガネの他にオオスジコガネヒメスジコガネといった別種が存在する様なんですよ。

これだけ美しく輝いでも、スジコガネ類も人間にとっては害虫。幼虫・成虫と一貫してスギ・ヒノキやマツ類を寄生樹として食害する営林業界では知られた害虫なのです。成虫体長2cmほどのコウチュウながら、そうは思えないスローライフを貫き、幼虫期の土壌生活に三年を費やすのです。つまり土の中のも3年というポリシーの持ち主、幼虫で三度越冬するのです。

ですから、たった二ケ月程度の成虫生活でこれほどまでに輝けるのかも。

半面で林業においては、重要な樹木の苗木の根を3年間も食害し続けられる訳で、苗木の樹勢衰退には計り知れない悪影響があるのです。そして生活環リズムが素数であることから、その発生率は変調し、当たり年が生じやすいことが予想されます。

スジコガネ類が生活環の全てを森林に固執した理由は、長い幼虫生活を要する生活環境が田畑よりも森林の方が環境変化を受けにくいからだと思います。

世界一美しいコガネムシ、それがプラチナコガネであると紹介されているのをよく見聞きしますし、実際の生体個体をそれを育む環境下で見たことはありませんが、私としての好みのタイプは高価に思えるキンキラキンより多分こちら。この種というよりこの個体に限っては、プラチナコガネよりこっちの方が美しいと思うのです。

つまり、オオムラサキの様に種の中でもフレッシュな♂であれば例外なく美しいのではなく、ゴガネムシ科の甲虫には、種と言う括りを越え卓越して美しい個体が存在します。それはある程度確率された地域変異ではなくタイプの違いを基にして、とんでもなく美しい個体が稀に出現するように思えます。

この様に多様な色彩や光沢形状の違いが多様なタイプとなって日常的に現れることの多いコガネムシ科の昆虫種。

例えば、
セマダラコガネ










同じ日に奥物部で見た、このセマダラコガネ。1cmほどの小さなコガネムシ科の甲虫なんですが、本種の場合は同じ場所でお誂え向きに別タイプの同種がいたので、いい機会だと思って比較してみてください。
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コレがそのセマダラコガネの黒色タイプです。特徴的な紋様が体表に残り、地色が違うタイプなら同種であろうとも推測できますが、これほど違うと俄かには同種とは思えないのです。コガネムシ類の場合には現れる変化を前もって把握していないと。

ところが、タイプ変化のパターンをある程度把握していると、
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最初から種としての特徴を目敏く探そうとするんで、普通なら見え難いものが見えてくるのです。
このセマダラコガネの場合は、黒一色に見える色合いの中から、見る角度を変える事で運よく翅鞘の紋様が透かし彫りのように薄っすらと見えてくるのです。
黒色型ジュウシチホシハナムグリ








さて、栗の花が咲くころ香美市の低山でよく見るコガネムシ科ジュウシチホシハナムグリ。これにも劇的変化といえる複数のタイプがあり、この個体は黒色型のジュウシチホシハナムグリ
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本種には暗赤色型というよりこの様に鮮やかな色彩のタイプが存在します。
私の見る範囲では、年によって黒色の年や赤色に集中する年があるのです。因みに令和元年は黒色の当たり年でした。

この様に多くの昆虫には同種でありながら、様々なタイプが現れる種が少なくないのです。そこに種としての生き残り戦略があるのです。天敵から免れる確率の高かった種が、やがてその特徴を遺伝情報として伝達し、固定化を図っていくのです。地域によって天敵が異なる場合は、生き残るタイプが変化することもあり、それが地域変異個体として固定化されることもあり、それはやがて亜種として発展することも。

多様なタイプがあるということは、今までの天敵に対しては特に優劣なくどれもが有効であったのでしょうね。多様なタイプが存在することは、将来に向けて生き残る術をより多く残しているとも言えるはずです。
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画像はオオムラサキの♀。先の画像の♂とは大きく色合いが異なり、一般的には大きさも♀が大型です。この様に雌雄による明らかに色彩や色合いが異なるものは性的な雌雄二形と表現されます。

コガネムシたちのそれは性的二形とは異質な多様性なのです。