このこだわりでこの価格は間違いなくお値打ち
IMG_5144








旬の海の幸を味わいに、室戸市室津の料亭花月』さんへ息子と行って来ました。

ここ花月さんの創業は大正14年。私の母の生まれた時とほぼ同じ大正時代末期。日本の良き時代も大変だった時代も知っている、伝統ある店舗なのです。

私が生まれた昭和中期からは、マグロの遠洋漁業の基地として栄えた室戸。館内へ入るとそんな様々な時代の記録から、現在のスーパーアイドルと言われる若者なら誰もが知っている有名人(だそうです。息子が言っていました)人々の色紙まで、室戸の歴史を感じる資料が所せましと並び、同じ土佐の地で代々生きてきたものとしても感慨にふける館内の造りになっています。

更に日本に留まらず海外の大洋に分布する、美しく彩色された標本額は世界の海の食材を知る室戸の民の証なのでしょうか。室戸の町では鮮魚店を始め、様々な場所で目にする多種多様な魚介類の標本額なのです。

多分、古民家といわれる多くのお家にもそれは飾られているのでしょう。
IMG_5199








私たちが利用させていただいたのは、夏休みが終わったばかりの月曜日。ですから室戸へ行ってから当日の一時間前に予約を入れて入ることができたんですが、土・日なら季節に関係なく前もって予約を入れておくべきだと思います。
IMG_5203










そうしておくと、歴史ある室津内港の落ち着いた漁師町の佇まいをのんびりと眺めながら・・・

2階の部屋から広がるその眺望。この日は好天で、お昼近くになると未明に降ったスコールの様な激しい雨と残暑の影響で、陽光下ではすぐに汗ばむ陽気。ところが広々とした開放的な部屋の中は別世界の快適さなのです。

その館外との差に違和感が生まれるのは、眺望の優れる部屋が広く硝子窓によって遮断されているのに、それを感じさせない程にガラスが磨き清められているのです。施設の掃除が心を込めて行き届き、古きよきものを輝かせているのです。

自身が見てもらいたいものの全てを言葉にするのではなく、私たち来店者の感性にもさりげなく訴え、心地よく記憶に包み込まれる得も言われぬ温かさを演出する素晴らしい施設です。
これは地域に根付いて、時代の流行では廃れることのない銘店の共通点でもあります。

今風に言えばバリアフリーではない館内ですが、初めて利用させていただいても人と人との心が通じ合えるストレスフリーの非日常が感じられる不思議な空間が創り出されているのです。

そして料理もまた・・・
トコブシの刺身









産地で長年培ってこられた調理法を駆使した季節の魚介類が、こころゆくまで存分に味わえるのです。

先ずはこの『トコブシの刺身』‼ 高知では流れ子と呼ばれるトコブシは、浅海の岩礁地帯で岩にへばり付いて海藻や海苔を食すアワビに近似の巻貝。
流れ子IMG_5209






鮮度は活状態で、生食での食感は特に絶妙で過度に硬くなく、決して柔らかくもないすばらしい物。しかも甘みも強いのです。室戸へ来ると活トコブシを年に何度かは購入し、刺身海鮮バーベキューで楽しみますが、この料亭の味わいには到底到達しません。

この日は9月2日でしたから、8月末で禁漁となったトコブシを生け簀で生かしておいたものなんです。わが家で料る場合と、包丁の入れ方が違うのか、季節が微妙に異なっていたのか、トコブシ用に特別に構えた大アワビの殻を模した実に素敵な器が余韻を増幅させるのか、窓からの産地の風景が余計にそう思わせるのか。とにかく別次元に美味しく、この一皿だけで既に大満足です。

しかも、草食性で本来はもっと苦みのあるワタが実にクリーミー。ここにも包丁を入れ本来の形状を崩しているので何らかの細工をしているのは間違いないところです、参りました。

このトコブシの刺身に大満足した後、
室戸料亭 花月 キンメ丼









息子が注文したのは『室戸キンメ丼』。

確か、通常の1,5倍増量したメニューだった様な。香ばしい9貫のキンメ照り焼きと、皮目のうま味を味わえる表面だけ加熱した3貫。
IMG_5231










更にクロマグロの若魚ヨコワと、天然のカンパチ、ハガツオが2切れづつ刺身で盛られているのです。

これを先ず海鮮丼式にタレで味わった後、
IMG_5242








適度に残したキンメとご飯に、キンメを知り尽くした産地の料亭仕込み、特性だし汁を掛け、山葵を利かした出汁茶漬けで〆るのです。

様々な鮮魚や魚種に合わせ特別な調理を施した丼物を茶漬けで楽しむ風習は数多くありますが、キンメのそれも素晴らしいものでした。なんと豪勢でしかも洗練された、料亭仕込みの室戸キンメ丼なんでしょう。
IMG_5247









出汁が十分な量、提供されているので私も椀に振り分けて食べさせてもらいました。素材の旨さを前面に生かした、実に料亭らしい奥深い出し汁の味わいでした。照り焼きの風味が実によく引き立ちます。

一方、私の注文した品は
IMG_5219









海鮮丼、キンメダイの他、ホッコクアカエビ、鰹塩たたき、天然カンパチ、ヨコワ、本ムツが所狭しと配せられています。
IMG_5226









海の幸に口の肥えた高知県人が食しても間違いなく満足する海の幸の組み合わせ。わざわざお昼ご飯だけを頂きに来る価値が見つけられるはずです。
IMG_5238










吸い椀の具は何れの丼もキンメダイのアラ。上品で透明な地が実に味わい深く美味しいのです。しっかりとした下拵えの賜物です。

なかなか独りでは立ち寄り難い感じもするのですが、室戸へ誰かと来たときには一度と言わず立ち寄るべき場所です。

冬にはぜひここで鍋を食べてみたくなった、初夏の花月さんのお料理でした。

AM11:00開店時間とともに来店。12:30分に席を立ったのですが、店舗の通りにでは花月さんに来る多くのお客さんとすれ違いました。予約して早めに入って正解でした。

取材日9月2日