旬食材の表裏クロダイ属編
2025年、最初の釣りと料理ブログはこの厳選旬のクロダイ。
行当岬の冬クロダイ(冬チヌ)

日本に分布するタイ科クロダイ属は複数種存在します。
例えば、
沖縄諸島固有種ミナミクロダイ

本種を見たのは沖縄県、長男のが長期有給休暇を取得した2017年の夏、宮古島に長期滞在した時のこと。マングローブ汽水域の浅瀬を悠然と泳いでいました。
沖縄宮古島の島尻マングローブ林

その時、ミナミクロダイの味を確かめた訳ではありませんが、押並べて人の生活圏の傍らで暮らす魚として広く知られるのがクロダイ属の面々です。
人の視線が注がれる場所で錦鯉の様に悠然と泳ぐクロダイ属。二百年前、高知市の中心街はりまや橋の下を鯛が泳いでいたというのは史実で、その鯛の大半もこのクロダイ。
クロダイ

海城と言われる四国の今治城や、玉藻城とも呼ばれる高松城などの平城の掘りに引き込んだ海水を泳ぐのも大半がクロダイです。
クロダイは関西ではチヌと呼ぶのが普通
関西でのクロダイの呼び名はチヌ。チヌとは茅渟(ちぬ)という和泉の国(大阪南部の湾岸地帯)葦の生い茂る広大な汽水域を占めるとある湿地帯の地名。そこは茅渟の海と呼ばれ、そこを漁場とするクロダイを大阪人はチヌと呼んだのです。
高松城堀を泳ぐクロダイ

四国高知県で暮らす私は、四国の汽水から海水域に暮らすクロダイ属、冒頭画像のクロダイとこのキチヌは何度も食したことがあります。

奈半利町の漁港で釣った夏キチヌ

色合いの美しい白身魚 夏キチヌの刺身

でもそれは、いつも購入したものではなく、自ら漁したクロダイやキチヌ。つまり、クロダイ属を鮮魚店で購入したことは一度もなく、海鮮料理店で注文したことも一度もないのです。
それでも、このクロダイやキチヌが美味しい魚であることは身を持って体験しています、旬や鮮度、そして生息環境を吟味すれば。
今回仕留めた冬クロダイは外洋に面した行当岬の地磯が産したもの。

前述の様に総じてクロダイ属は人の生活圏の傍らで暮らす魚種。多くの人が昔からフナやコイ、ボラの様にその暮し振りをずっと目の当たりに見て来た魚なのです。ですから、ボラ同様に本種たちの美しくない生態も見た経験があるのです、水質悪化に強く悪食であることも。
紛れもない鯛一族でありながら、イメージ的にはボラ寄りなのです。最も、大自然で逞しく生き、過酷な生存競争に生き残る、まさに生き様とは遍くそういうもの、逞しい生命力の原点は間違いなくそこにあるのです。
現代は商品売れ筋を誘導して創造する時代でもあります。食材においてもそれは例外ではなく、クロダイ属は決してイメージに優れた魚食材ではありません。
裏を返せば、現代人の多くは地域固有の食材とともに自らが成長した認識が弱く、地域食材を愛でる気持ちはどんどん希薄になる社会生活を送っているのです。
事実、人の傍らで暮らし、人の暮らす環境の指標ともなり得て来たクロダイ属の需要は激しい減少傾向ににあり、手間暇を要して食材として優れたクロダイやキチヌを見つけ出そうとする仕入れ担当者も皆無、現代人にとってクロダイ属はどんどん遠くなる存在なのです。
でも私達昭和中期生まれの、高度経済成長期に芽生えた主要なレジャー産業のひとつ、国民の10人にひとりが釣り愛好者と言われた時代の今は化石の様な釣り人にとって、自らのスキルを極めた好敵手は、淡水の鮎、海水のチヌだったのです。
そしてそのクロダイ属2種にはそれぞれ表裏の様に異なる旬があり、ふたつあわせて1年を網羅する魚食材であったのです。

物凄い厚みの冬クロダイ
成長過程の中で複数回の性転換を行うクロダイ属、天命として授かった本来の性が安定する成長段階、つまりクロダイにとっては40センチ大の大型個体が最も安定した体質期。クロダイはこの大きさのものが上質とされ50センチを超える老成期に達すると、味わいは著しく劣えると私は感じています。

魚食材の旬は、押並べてその産卵期と連動し、クロダイの産卵期は春3・4月、キチヌの産卵期は初冬11月。それぞれの旬は、クロダイが冬から春、キチヌが夏から秋なのです。

ただならぬ冬クロダイ腹腔内の脂

そして今が旬のクロダイ、まさに最も脂ののる季節が今で、捌いた身に触れると見た目以上に脂で満たされ、肝もこの様に肥え太り豊潤な脂を蓄えています。
鮮度勝負の活〆寒チヌ極上肝と真子

驚くのはタイの仲間としては規格外の肝の大きさ、更に寒チヌならではのまったりとした肝に蓄積される、天然魚ならではの上質な脂。

柵に取って尚、この身の厚み。そしてぷりぷりとしたシズル感は、鮮度と品質ににこだわった天然活き締めの冬クロダイならでは。

冬のクロダイは豊潤な味わいの肝を楽しみ、

しゃぶしゃぶでギュッとうま味を閉じ込め、土佐の家庭の自家製冬調味料、土佐ぬた(にんにくぬた)で肝和えにして楽しむのがわが家流‼
生殖巣を発達させた春のクロダイは白子を愛でるのです。

さて、そんな旬の冬クロダイを今回はいつ以来かの、しゃぶしゃぶとちり鍋で楽しむんですよ。

続く
2025年、最初の釣りと料理ブログはこの厳選旬のクロダイ。
行当岬の冬クロダイ(冬チヌ)

日本に分布するタイ科クロダイ属は複数種存在します。
例えば、
沖縄諸島固有種ミナミクロダイ

本種を見たのは沖縄県、長男のが長期有給休暇を取得した2017年の夏、宮古島に長期滞在した時のこと。マングローブ汽水域の浅瀬を悠然と泳いでいました。
沖縄宮古島の島尻マングローブ林

その時、ミナミクロダイの味を確かめた訳ではありませんが、押並べて人の生活圏の傍らで暮らす魚として広く知られるのがクロダイ属の面々です。
人の視線が注がれる場所で錦鯉の様に悠然と泳ぐクロダイ属。二百年前、高知市の中心街はりまや橋の下を鯛が泳いでいたというのは史実で、その鯛の大半もこのクロダイ。
クロダイ

海城と言われる四国の今治城や、玉藻城とも呼ばれる高松城などの平城の掘りに引き込んだ海水を泳ぐのも大半がクロダイです。
クロダイは関西ではチヌと呼ぶのが普通
関西でのクロダイの呼び名はチヌ。チヌとは茅渟(ちぬ)という和泉の国(大阪南部の湾岸地帯)葦の生い茂る広大な汽水域を占めるとある湿地帯の地名。そこは茅渟の海と呼ばれ、そこを漁場とするクロダイを大阪人はチヌと呼んだのです。
高松城堀を泳ぐクロダイ

四国高知県で暮らす私は、四国の汽水から海水域に暮らすクロダイ属、冒頭画像のクロダイとこのキチヌは何度も食したことがあります。

奈半利町の漁港で釣った夏キチヌ

色合いの美しい白身魚 夏キチヌの刺身

でもそれは、いつも購入したものではなく、自ら漁したクロダイやキチヌ。つまり、クロダイ属を鮮魚店で購入したことは一度もなく、海鮮料理店で注文したことも一度もないのです。
それでも、このクロダイやキチヌが美味しい魚であることは身を持って体験しています、旬や鮮度、そして生息環境を吟味すれば。
今回仕留めた冬クロダイは外洋に面した行当岬の地磯が産したもの。

前述の様に総じてクロダイ属は人の生活圏の傍らで暮らす魚種。多くの人が昔からフナやコイ、ボラの様にその暮し振りをずっと目の当たりに見て来た魚なのです。ですから、ボラ同様に本種たちの美しくない生態も見た経験があるのです、水質悪化に強く悪食であることも。
紛れもない鯛一族でありながら、イメージ的にはボラ寄りなのです。最も、大自然で逞しく生き、過酷な生存競争に生き残る、まさに生き様とは遍くそういうもの、逞しい生命力の原点は間違いなくそこにあるのです。
現代は商品売れ筋を誘導して創造する時代でもあります。食材においてもそれは例外ではなく、クロダイ属は決してイメージに優れた魚食材ではありません。
裏を返せば、現代人の多くは地域固有の食材とともに自らが成長した認識が弱く、地域食材を愛でる気持ちはどんどん希薄になる社会生活を送っているのです。
事実、人の傍らで暮らし、人の暮らす環境の指標ともなり得て来たクロダイ属の需要は激しい減少傾向ににあり、手間暇を要して食材として優れたクロダイやキチヌを見つけ出そうとする仕入れ担当者も皆無、現代人にとってクロダイ属はどんどん遠くなる存在なのです。
でも私達昭和中期生まれの、高度経済成長期に芽生えた主要なレジャー産業のひとつ、国民の10人にひとりが釣り愛好者と言われた時代の今は化石の様な釣り人にとって、自らのスキルを極めた好敵手は、淡水の鮎、海水のチヌだったのです。
そしてそのクロダイ属2種にはそれぞれ表裏の様に異なる旬があり、ふたつあわせて1年を網羅する魚食材であったのです。

物凄い厚みの冬クロダイ
成長過程の中で複数回の性転換を行うクロダイ属、天命として授かった本来の性が安定する成長段階、つまりクロダイにとっては40センチ大の大型個体が最も安定した体質期。クロダイはこの大きさのものが上質とされ50センチを超える老成期に達すると、味わいは著しく劣えると私は感じています。

魚食材の旬は、押並べてその産卵期と連動し、クロダイの産卵期は春3・4月、キチヌの産卵期は初冬11月。それぞれの旬は、クロダイが冬から春、キチヌが夏から秋なのです。

ただならぬ冬クロダイ腹腔内の脂

そして今が旬のクロダイ、まさに最も脂ののる季節が今で、捌いた身に触れると見た目以上に脂で満たされ、肝もこの様に肥え太り豊潤な脂を蓄えています。
鮮度勝負の活〆寒チヌ極上肝と真子

驚くのはタイの仲間としては規格外の肝の大きさ、更に寒チヌならではのまったりとした肝に蓄積される、天然魚ならではの上質な脂。

柵に取って尚、この身の厚み。そしてぷりぷりとしたシズル感は、鮮度と品質ににこだわった天然活き締めの冬クロダイならでは。

冬のクロダイは豊潤な味わいの肝を楽しみ、

しゃぶしゃぶでギュッとうま味を閉じ込め、土佐の家庭の自家製冬調味料、土佐ぬた(にんにくぬた)で肝和えにして楽しむのがわが家流‼
生殖巣を発達させた春のクロダイは白子を愛でるのです。

さて、そんな旬の冬クロダイを今回はいつ以来かの、しゃぶしゃぶとちり鍋で楽しむんですよ。

続く
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