土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

カテゴリ:高知の食材 海産物(水産資源) > 高知の美味しいカニ

地蟹一の食材価値
市場で見かけることは多くても、自然の中で見かけることはめったにない蟹。強大なワタリガニ科ノコギリガザミ属のこのカニは、西日本の誇る高級蟹です。

マッチョな体型 盛り上がった背中
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見ての通り、この蟹は筋骨隆々。まるで蟹界のボディービルダーなのです。

身の甘さはガザミと同等の質の高さ。
ガザミ
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ところが蟹味噌といわれる中腸線や内子の濃厚なうま味は遍く蟹中で随一。
トゲノコギリガザミ
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しかも、身の量はガザミの比ではありません。

特筆すべきは、利き腕親爪の肉量と身の締まった肉質。
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硬い殻を豪快に金槌で砕くと、人の手ほどもある大きな爪には、どうだとばかりにぎっしりと甘い身が詰まっています。
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蟹味噌もさることながら、巨大な爪を食すだけでも、ノコギリガザミの食材価値は十分に理解できるのです。

現在では3種に分類されるノコギリガザミ属。3種の食材価値に差異は付けられず、大型を専門店で注文すれば一杯一万円は覚悟しなければならないノコギリガザミ。高知ではエガニという名で高級店を中心に流通します。

そんな超といっても過言ではない高級食材のノコギリガザミ。滅多に見ないような大型の一匹を四万十川干潟の葦原の中で見つけました。
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でも、決してそれを漁獲しようとは思いません。これは恐ろしい、超危険生物ですから。

家庭で食べたい時には、市場で活ノコギリガザミを購入します。購入活蟹は危険な場合、適宜に処理を施してくれています。この様に‼
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その手枷をそのままに処理すれば、ノコギリガザミは家庭でも割と手軽に美味しく食べられるのです。
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河川の生態系豊かな四万十川。その本流から血管の様に分かれる泥低床の小河川汽水域に驚くほどたくさんいます。

生息数の密度が高く小競り合いしているノコギリガザミ。
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ノコギリガザミもまた、それぞれに色が違います。青い個体もいれば、
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赤っぽい個体もいるのです。
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更にノコギリガザニの稚ガニも確認できました。
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3㎝ほどのコトヒキ幼魚にちょっかいを受けています。

よく見ると片方の鋏が欠損しています。このコトヒキ、実は物凄く獰猛で空腹になれば自身と同じ大きさのハゼ類等を食べてしまいます。

英名では
mud crabと言われるノコギリガザミ。それは生息環境を表すもので勿論、泥臭さはないのですが・・・
四万十川干潟
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それが沖縄など亜熱帯地域へ行くと
mangrove crabに変わるのです。
石垣島のマングローブ
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高知では干満の顕著な汽水域環境が葦原で亜熱帯ではマングローブの林に変わり、ノコギリガザミは熱帯・亜熱帯から一部の温帯海域の内湾や河口部まで生息域を持つのです。

ノコギリガザミ、ワタリガニの一種らしく垂直方向にに巣穴を掘って身を隠すのではなく、自らが泥の中に沈んで行くように潜って身体を隠します。
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自然の中でその生態行動を見て、ノコギリガザミの真実に少しだけ近づけたのは、10月の四万十川干潟の素敵な体験。この川の懐はどこまで奥深いのでしょう‼
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今日ご紹介したノコギリガザミは、生息する全ての地域で大変重要な食用カニ種として珍重されています。南国の浅海汽水域のカニの美味しさ、それはノコギリガザミの味わいで極まります。

ブログネタ
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秋の味覚、モクズカニ雑炊
10月17日、西日本では今秋初めて入った上空の寒気の影響で、北風が吹き肌寒さを感じました。
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そして10月に入り、鮎漁の終わった高知の清流では、この川漁一色‼

清流赤野川でのモクズガニ籠漁
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蟹籠で漁獲しているのはモクズガニです。モクズガニを多くの人は川蟹と認識し、それはある意味正解ともいえるのですが、モクズガニは一年の約半分、冬から初夏まで汽水域や海水域に移動します。

つまり親蟹の産卵、卵の孵化から幼生期の浮遊生活、稚蟹となって底生生活を始め、ある程度の体力を養って様々な河川、急流も遡って淡水域の生活を始めるのです。

そんなモクズガニの天然資源を管理するのは、アユ同様に内水面漁協。ですからモクズガニは川蟹、淡水蟹と考えるのが正統であり正当なのです。

これがモクズガニの幼カニ
モクズガニ幼蟹










雨の日の夜、田園水路脇の駐車場へ上がって来た幼蟹です。普段、それを見慣れている私たちも鋏脚の毛が未発生過程だと、何の蟹か戸惑ってしまうのです。

先日、モクズガニ漁の様子を見てそれが食べたくなり、川漁師さんに注文していました。

活モクズガニ
モクズガニ













すると数日後、雌雄それぞれの活モクズガニ2匹と、モクズガニを擦り下ろしたスープを500㏄持って来て下さったのです。

その鮮度を生かし、香南市でこの秋初めて肌寒く感じた季節感を大切に、今日は温かい高知の家庭料理を楽しみます。

この活蟹2匹、大きい方は甲幅8cmを越えているかのような、滅多に見る事のない大型。ここまで成長するのは成熟したオスです。旬に入った今、雌は総じて中型が主となり、それより小さな個体はまたオスが多くなるというモクズガニ。

中国四千年の歴史に、高知の家庭料理で勝負

何と言ってもこのモクズガニ、実は上海蟹と言われるチュウゴクモクズガニとは非常に近い関係にあり、専門家でなければ違いが分からない程に酷似しています。味は、上海の人は皆、上海ガニが旨いというはず。

私も、上海出張に行ったとき高知県事務所やJETROの方々と高層レストランで夜景を見ながらそれを食べたことがありますが・・・清流で漁獲した天然のモクズガニの方が安心して旨い・・・というのが本音。食材の氏素性はとても重要、そして勿論、歴史と伝統によって培われた地域の誇りたる郷土料理もまた。

上海のレストランでは上海蟹を油で揚げ、エビチリ風ソースでピリ辛仕立てでいただきました。勿論、それは上海やその一年前に同じく出張でシンガポールへ行った時も含め、種々食べ歩いた海鮮料理の中で最も記憶に残る美味しさではありました。

そんな上海ガニを陳列してある現地百貨店の生鮮コーナーの棚には、モクズガニより屈強そうな守衛さんが立っていて、それが買える雰囲気にはなれませんでした。その価格は活上海ガニ1匹、1,500~2,000円。
香北のモクズガニ










因みに、香南市の産直市場では昔、物部川水系のモクズガニを7~10匹合計300円で網に入れどっさり売っていました。

家庭料理としての体を残す高知のモクズガニ料理
コスパの王蟹












つまり高知でのモクズガニはある意味コスパの王蟹なのです。

それを塩と若干の味醂で蟹身の甘味を引き立たせ茹蟹にして・・・
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只ひたすらに黙々と食べ尽くす。カニ料理やエビ料理を味わいながら商談できる人はスゴイを通り越し恐ろしいです。

今は上海の高級料理として世界にその名を轟かす上海蟹。そして今尚、いにしえのままに家庭料理として楽しみ味わうことができる高知のモクズガニ。
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私も年齢を重ね、昔のようにそれを無茶食いすることはなくなり、今は一匹づつ丁寧に料理し秋の味覚家庭料理として堪能しています。

秋も深まりつつある今、我が家のお気に入りは・・・
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このモクズガニ蟹雑炊です。

モクズガニは高知ではツガニの呼ばれ、多くの県民に愛されています。

いままでも これからも

お土産もあるでよ
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ご近所さんにお誘いいただいて、カメラ片手に夜の湊へ繰り出しました。

秋の夜の港内の生物を見に行く目的で出掛けたのは、10月に入ったばかりの2日の事です。田舎暮らしならではの、大人の健全な夜遊びなんですね。
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そして秋の夜長をそんな楽しみ方で過ごしておられる方は結構多くいらっしゃいます。

思い思いの道具を手に。
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私は自分の手を汚さず写真を撮らせていただくだけ。それでも十分楽しいのです。
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夜行性のミナミハタンポの他、飼育にぴったりサイズのキントキダイ科のホウセキキントキの幼魚も釣れてきます。

お誘い下さったご近所さんが、
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海面に浮上して泳いでいた大きなカザミの♀を網で掬いました。
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しかも甲幅15cmはあろうかというガザミを私に下さったので、遠慮なく頂戴しました。
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シンプルに酒蒸しにして、その日の夜に半分いただいたんですよ。

ワタリガニ類の甲を開き下げる楽しみ
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それは、極上の松花堂弁当の蓋を開ける時の❝わくわく感❞に合致するものがあります。

今回頂戴したガザミはメスでしたから、秋から発達する内子。更には蟹味噌とも言われ、まったりとした芳醇な味わいの中腸線の状態。鉗脚とも呼ばれる発達した鋏肉同様かそれ以上にその身入りが気になるところ。

高知ではガザミの産卵期はもっぱら初夏。ですから本個体のコンデションは十分に回復しています。初秋ですから内子の入りはこの程度でしょう。しかし中腸線は十分に満足できる上質なものでした。

翌日の朝食はガザミと秋茸のトースト
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❝秋の夜更かしの疲労もなんのその❞なのです。

港湾の消波ブロックに棲みついたガザミ
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香南市 塩谷海岸
令和2年秋のシルバーウイーク。その3日目の月曜日、9月21日は香南市の里海各所も結構な人出でした。

夏の盛りなら、手前の浜に磯遊びの人々が日除けに建てる簡易テントが並ぶのですが、彼岸が来れば暑さは和らぐのです。
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海岸にはここで越冬する海鳥たちが渡って来始めています。

この日の最低気温は、気象庁発表によると高知市で17.6℃。急に秋らしく感じた一日でした。
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私はいつでもここへ来れるのでこの中へお邪魔するのは遠慮し、すぐ近くの手結漁港へ。
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でも、当然の事ながら手結漁港の岸壁も大勢のご家族で埋まっています。

そこで、どこか自然を感じる私好みの場所がないかと探していると・・・
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この漁港奥の消波ブロックに食材発見。海ですから当然、食材はいっぱい見つけられるのですが・・・
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わたし的にはとても好きな食材の仲間ですから、今日の主役にしようと写真を撮りました。

これは渡り蟹 ワタリガニと呼ばれる身が甘く、まったりとした蟹味噌も同時に味わえるカニの一種。甲幅も10cmはありそうな見事な成蟹です。これらワタリガニともガザミとも呼ばれるカニの仲間は腕脚が大きく発達、前述の様に餌料の豊かな場所では甘い身がそこにぎっしりと詰まっているのです。
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エガニの鍋雑炊
高知でワタリガニの最高峰と言われるのが、エガニと呼ばれるノコギリガザミ属の仲間たち。

発達した腕脚の鋏が巨大すぎて土鍋に収まりきりません。

でもこの日見つけたのはワタリガニ科でも、イシガニ属の赤石蟹 アカイシガニ。カニを食すのは美味しいとは言え結構せわしないのですが、イシガニの仲間は外骨格が石の様に硬く、実入りはワタリガニの仲間としては貧相ではあるのです。
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ですから、手っ取り早く砕いて味噌仕立てにして食すのです。

渡り蟹は、野鳥の様に渡りを行う蟹⁉と思われがち。確かに季節移動は行いますが、決して長距離ではありません。水温が低下すると、このような浅場から深場へ落ちるのです。
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渡りの名は、むしろ遊泳に特化して変形した第五脚(遊泳脚)を和船の櫓の様に動かし起用に泳ぐことからその名がついているのです。

土鍋を使ったカニ料理の季節がまもなくやってきます。

ご祝儀価格
先日のblogで高知産の高級魚を紹介。実際に購入して家庭料理として家族で食べたんですが・・・
そういえば、11月7日には一杯500万円の値が付いた蟹の話題で日本中が驚いたものです。もちろんこれは史上最高値。今までの最高値も2018年の200万円と驚きなのですが、それも解禁直後の初競りでの出来事なのです。
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その蟹の種類はズワイガニ。まるで赤い宝石です。といっても、鳥取県で水揚げされるズワイガニの最高級ブランド五輝星(いつきぼし)という厳しい条件に合格した中で、卓越した仲買人が目利きしたこの日、最高の蟹だったのです。普通なら、№2を求めれば二桁違う価格で買えたであろう代物。

ここにも二番ではダメな理由が存在するのですが、それは殆どの人にとって経費対効果が見込めないもの。極めて一部の人に見出される価値で、多くの人はそれにとてつもない夢を感じるのです。

でもそれに見合うお金を出してまでは食べられないというか、この先多くのものを犠牲にしてまで食べる必要を感じないのです。そんな私には500万円のズワイガニと、
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このズワイガニの味(それでも一杯25,000円)の違いは、多分判らないことでしょう。
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私も蟹は大好き‼ 清水の舞台から飛び降りる一世一代の覚悟で大盤振る舞いして一泊3万円の日本海の見える温泉旅館のズワイガニフルコースで超大満足なのです。それも家族全員では無理ですから、黙ってお忍びで行きます。が、いつもブログ記事にしてしまうのでバレバレです。そして妻の恐ろしい大逆襲が始まるのです。

今回500万円で落札されたズワイガニ。どうやら銀座の割烹が顧客の希望に応じて注しておいた逸品なんだとか。何と粋なお店なんでしょう。

そういえば1本3億円(278㎏)の値がついた大間のクロマグロも新年5日の初競り。ブランド産地で水揚げされ、東京豊洲市場へ送られ競り落とされたその日、最高のクロマグロの価格だったのです。

それなら毎日初競りなんて訳にはいかないのです。扱っているのは食材ですから、旬の間は流通を停滞させられません、地域のためにも。

因みに、高知でも1本2,000万円くらいの値が付く水産資源はあるんですよ。その競りは香南市の某漁港の建物で行われています。色は蟹みたいなんですが、それは食材ではなく装飾品の宝石サンゴなんですよ。こちらの競りは数ケ月に一度の様ですから毎回初競りみたいなものです。
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晩秋のエガニは鍋で楽しむ
ちなみに高知の海産蟹といえばエガニ三種類のノコギリガザミ)です。
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ところが歳の瀬になると高知の量販店鮮魚コーナーでも、高級蟹エガニよりもさらに高価な蟹も並ぶようになります。
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高知の正月は地蟹よりも今はタラバガニ(これはロシア産)なんですね。
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蟹という名でも本種はヤドカリに近い仲間ですから、蟹味噌ではなくひたすら蟹身を食べるんですよね。

どことなく蟹が珊瑚に見えてきました。

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