土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

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『のれそれ』の神秘
今年も香南市にとびっきり新鮮な早春の海産珍味が入荷してきました。
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その海産珍味がこちら、『のれそれ』と呼ばれています。

高知ではこの魚というか、これら魚の幼体の姿の成長段階をLeptocephalusといい、複数目の魚種がこういった形状を経て本来私たちが認識する魚の形になるのです。

中でも、ウナギ目のLeptocephalusが高知では春の珍味として有効活用され、『のれそれ』の親はアナゴ属マアナゴConger myriasterとされているんですね。高知ではマアナゴの成魚は関東や瀬戸内と比べ多く食べませんが、春の『のれそれ』の接岸は楽しみにしています。

実はニホンウナギ同様、マアナゴの産卵海域も長年謎とされ、その後一時期は東シナ海の大陸縁辺部と推測されていました。ところが2008年に水産庁の漁業調査船によって、沖ノ鳥島の南方の九州・パラオ海嶺付近であることが解明されたのです。

ということになると、このLeptocephalusは、その産卵期で昨年の夏に産卵され、今日高知にたどり着いた一群なのでしょうか。かたちも神秘的な『のれそれ』は、高知に至る旅路も神話的です。
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この『のれそれ』。基本的な食べ方、最も『のれそれ』の食材価値が際立つ食し方はあくまでも生食。ですから、鮮度にはこだわります。

のれそれ』は、鮮度が落ちてくると瞬時に白濁してきます。でも、香南市の天然色市場の『のれそれ』は、素晴らしい鮮度。本来『のれそれ』は、専用に漁獲される海産物ではなく、『どろめ』を漁獲するパッチ網漁に、2月の厳寒期に混入してくる季節限定の漁獲物なのです。
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その水揚げされた『どろめ』の中から少量の『のれそれ』を一匹づつ選り分けていくのですが、もともとが弱りやすい『どろめ』の水揚げが丁寧で迅速に行われる漁。
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ですから、この選り分けられている『のれそれ』は、吉川での選別時には生きている場合が多いのです。
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漁港で仕分けされている『のれそれ』は海水を張ったバケツに入れると泳ぎ出すんですよ。

これがまた実に神秘的‼

そんな『のれそれ』を生のまま酢で食します。もみじおろしを薬味に、ゆずポン酢という方法もあるんですが、折角の鮮度の高い『のれそれ』です。
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淡泊でほのかな甘みと、ツルツルの食感を極限まで味わい尽くすために、わが家では、粘性のある自家製の『土佐ぬた』で、『のれそれ』の特性を失わせないようにいただきます。

液体酢を加えると、ここまでこだわって入手した繊細な『のれそれ』の食味・食感はたちまち失われてしまうのです。
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この日、天然色市場で販売されていた『のれそれ』は僅かに4パックのみ。1パック200g程度でしょうか。販売価格は700円(税込み)でした。

早春の珍味
のどかな昼下がり、香南市の吉川漁港では漁師さんが何やら黙々と仕分けをしています。
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香南市の赤岡や吉川の名物といえば“どろめ”。
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赤岡ではゴールデンウイーク前に町を上げた大イベント『どろめ祭り』が開催されるほど、香南市のどろめは有名で重要な水産資源なんです。
340a9f1e4d1edf7e513d38c2a6066f9c[1]赤岡町のどろめ祭り
どろめは、鰯(イワシ)の稚魚。魚体に黒色色素が現われる前の発生から間もない鰯の総称であり高知の地方名です。複数種ある鰯の稚魚でも最も脂肪含量の少ないカタクチイワシの稚魚が最良とされています。

でも今、釜揚加工しているのはヒラゴ(マイワシ)の稚魚。腹部にほのかな脂を含んでおり、乾燥中にやや黄色になるんですが鮮度抜群のものは甘味があり、とっても美味しいんです。まさに産地ならでは、地産地消の逸品
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これを、鮮度を保って生で食べるどろめには程良い苦みがあり、お酒に良く合うんです。ですから、土佐人はどろめが大好き。

どろめは二艘曳パッチ網で漁獲されます。ただでさえ、あしの早い鰯のそれも稚魚ですから、近頃は昔と比べ物にならない位、多くの場所で食べられるようになりました。昔は水揚げされる漁師町へ自ら出向いて、持って帰ってすぐに食べないと食べられない海産物だったんですよ。

私は、体が元気な時にこのドロメ船に乗船させていただいて網揚したばかりのどろめを食べましたが塩水の付着した洗浄していないどろめは甘味がありました。

このように今でも限られた地域でしか食せないどろめですが、日本伝統の加工品として多くの人が食べています。勿論それが
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釜揚ちりめん(ちりめんじゃこ)です。

ちりめんじゃこを天日干しにできるのは寒い季節だけ。でも今では機械干しにできるので年中ちりめんじゃこを食べることができます。それでも天日干しと機械干しの差がわかる方がおられるようですから、ちりめんじゃこの旬はまさに今の季節なんです。
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ちなみに私は、干物の天日干しはわかりますが、ちりめんじゃこはわかりません。
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で、すごい長くどろめで引っ張ってきましたが、今日の話はどろめでは無いんです。
恐ろしいでしょう

今日の主役はこれ
悠久の時を旅する神秘の魚達なんです。
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のれそれ
、高知の人には有名な早春の海産物。もうそんな季節になったんですね。
桶の中でのれそれが泳いでいます、活のれそれ生きているのれそれ初めて見ました。

のれそれという名称、実は高知で生まれた地方名なんです。
鮮度の良いものの美味さは、なかなか他に求めようのないもの。その個性が昨今、全国に高く評価されのれそれという全国名になって流通しています。
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のれそれの正体知っていますか?

知らない人が見たら、魚の形したクラゲです。

のれそれの正体、実は葉状体(Leptocephalus)と言われる、、
ウナギ目、カライワシ目、ソコギス目など、カライワシ上目の魚類に見られる平たく細長く透明な幼生。身近な資源、ウナギも含まれるこれらの魚は真骨類に所属する硬骨魚類の中では、古代魚と呼ばれるアロワナ上目に次いで早期に出現した一群と考えられている、つまり古いタイプの魚。ある意味生きた化石なんですね。わが家でいえば私のようなものです。

厄介なのは、この(Leptocephalus)過程を経る魚は、ウナギのような非常に重要な水産資源であてっも人によって卵採取から、成長させることが近年まで不可能だったんです。

Leptocephalusの餌料の解明ができたのはつい最近。Leptocephalusの胃内容物から、オタマボヤ類が植物プランクトンを採食するために分泌する、ゼラチン質の消耗式フィルターである包巣の残骸が見付かり、これをきっかけに、オタマボヤ由来のマリンスノーを摂食していることが判明したんです。

そして、これを代用した人工飼料で飼育できることも明らかになり、資源量枯渇によるウナギ養殖衰退にも明るい光が射し込んできました。(ウナギのレプトケファルスでは
サメ卵黄を原料とした人工飼料による餌付けが成功)但し未だ実用化には至っていません。
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幼生から稚魚に至る変態時に、ゼラチン質の体が脱水収縮して体組織の濃縮が起こるため、変態の前後で体は小さくなります。この辺に幼生期を経る意味があるんでしょう。つまり他種に捕食される発生初期の種としての歩留を高めるために成長速度を高め、遊泳能力の低い時期に潮流に乗り遠くに移動できる形。そして何より食べ物みたいに無い。
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こののれそれ、日本ではこんな8センチ位の幼生(主はウナギ目幼生、穴子の稚魚と言われています)ですが、南大西洋では1.8メートルもあるのれそれ(ソコギス目幼生がいるんです。

そして昔、高知でものれそれどろめ漁の異物として長く廃棄されていました。その理由は定かではありませんが、釜揚のような加熱加工の食文化はなく、味はほのかな甘みと、つるっとした独特の食感が土佐人にとって酒には合わなかったんでしょうか。
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でももみじおろし辛めのぽん酢でいただくと、結構お酒にも合う味ですよ。特に女性には大受けです。

ですからのれそれは近年港町の珍味として急速に商品価値を高め、今では重要な水産資源であると同時に、その資源量も危惧され調査が始まっています。

それに、のれそれの漁獲は早春の一時期。とびっきりの旬鮮魚で珍味なんです。

高知ではもう少しすれば、漁獲も価格も安定し量販店でも購入できます。

最後に、
今日ご紹介の“どろめ”や“のれそれ”をお召し上がりになられる時
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ぽん酢や酢味噌は別皿にして、刺身のように食べる直前に浸して味わうと、本来の食感が心地好い喉ごしを演出します。デリケートな食材で長く浸けると酢に負けてしまいますから。

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