土佐料理 旬の鰹がゆく!

自然豊かな高知の気候が育む産物を食材とした伝統郷土料理のご紹介です。 自然に触れ、それらを見守りながら地方の環境問題を考え、豊かな自然環境の中で収穫される食材を自身の主観でレポートしながら、旬とは何かを考えます。

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地理的変異
高知の低地では、6月になると草むらから鳴き声ご聞こえてくる日本伝統の『鳴く虫』といえば・・・
キリギリス (2)












そう、『キリギリス』です。先日NHKの里山番組で、江戸時代に鳴く虫を集め「虫売り」を行商とする人々がいたとの紹介の中で、コオロギ科カンタン属の邯鄲カンタンOecanthus longicauda の人気が高かったと紹介されていました。でも高知では、鳴く虫の夏代表がキリギリスで秋の代表がスズムシ・・・私の中に残っている子供心では、そういった印象が残っています。

それを飼育していたのは、各家庭のお爺ちゃんやお婆ちゃん。当時、高度経済成長期の真っ只中にあった日本では、お父さんやお母さんは、そんな虫には見向きもせず、働き蟻の如くに寸暇を惜しんで仕事に明け暮れたんですね。これが、日本版『アリとキリギリス』なんです・・・ちょっとちがう
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お年寄りは虫の声で季節を感じる目的が半分、あとの半分は虫を通じ孫との親睦を深める、そんな立ち位置の昆虫だったんですよ。
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ところが高知の鳴く虫、キリギリスとスズムシの飼育方法には大きな違いがあるんですよ。スズムシは土壌飼育によって交配・産卵させ翌年は孵化した幼虫から育て上げるのですが、キリギリスは毎年草むらから鳴く能力のあるオス成虫だけを採取してきて夏だけ飼育するんですね。
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春のキリギリス幼虫)】
4月になると高知では河川敷の草むらに、どっさり出現するキリギリスの幼虫。
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キリギリスも年1化のバッタなんですが、産卵された卵は必ず翌年孵化するとは限らず、複数年かかることも珍しくなく、時には4年後に孵化したなんて場合もあるんです。卵に孵化スイッチが入る為には、休眠中に相当差の温度変化が必要で、更に相当数の回数加算されないと孵化に至ることがないとか。
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そんな鳴く虫たちを飼育する場合、それらには植物性の餌料と動物性の鰹節などを混合して与えていたと記憶しています。コオロギ科は概ね雑食ですから、今考えてみても正解だったんですね。
上画像のように、前脚や中脚に生える棘は、一見草むら生活には邪魔そうに思えても、獲物とする動物に抱きついて逃がさないための適応進化なんですよ。
良く見ると肉食性が強い種はこの棘が発達し、草食の鳴く虫は発達していないんです。
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ツユムシの仲間アシグロツユムシ
上画像のキリギリス科ツユムシ亜科のアシグロツユムシPhaneroptera nigroantennataを含むツユムシはキリギリス科でありながら、自らの脱皮殻以外の動物質は口にしない、限りなく草食性に近いバッタなのです。
ですから各脚の棘は発達していないんですね。
キリギリスの終齢幼虫 (2)










キリギリス終齢幼虫
春暖かくなる3月には孵化し地上生活を始めるキリギリスが成虫になるまでの脱皮回数は6回から8回とされ、同種でも環境条件によって異なってきます。
キリギリスの終齢幼虫











脱皮を重ねるたび、成虫形状に近づいてくるのですが、終齢幼虫では前後翅の形状以外は大きさ、色彩とも殆ど成虫と同じになっています。そして幼虫最後の脱皮、つまり羽化によって4翅が伸び揃い成虫と化すのです。
キリギリス羽化










キリギリスの羽化
そんな高知のキリギリス達は今、草むらで次から次へと羽化し成虫化しています。羽化後しばらくじっとしているキリギリスは自らの外皮が固まって、最初の行動はこの脱皮殻を食べてしまいます。

成虫化したキリギリスは、鈴虫(スズムシ)Homoeogryllus japonicus などの鳴く虫と異なり、脚で後翅を自ら脱落させる習性はありません。オスは前翅をこすり合わせて鳴くのですが、多くの鳴く虫との相違点は、活発に鳴く時間帯。その活性が高まるのは好天の日中、曇天や日没以降は著しく活性が落ちます。でも夜でも何らかの刺激があると鳴いているんですよ。
キリギリス










さて、今日の鳴く虫の主役、バッタ目キリギリス科キリギリス属Gampsocleis
の螽蟖(キリギリス)にも、バッタ目コオロギ科の鳴く虫の一部に現れる長翅型と短翅型があるんですよ。以前キリギリスは東北地方から九州地方まで分布するキリギリス属の単1種Gampsocleis buergeri とされていたのですが、現在はニシキリギリスGampsocleis buergeri とヒガシキリギリスGampsocleis mikado の2種であるとされる説が浮上しています。
2195f80e[1]その目立った違いは、胴体に対する前翅長が短いのがヒガシキリギリスで、前翅に黒斑が多く中央部がやや広く翅先が尖るといった特徴を兼ね備えています。
一方、前翅長が腹端より長く側面の幅は平行なのがニシキリギリス、更に緑色個体が多く前翅は側面に黒斑は無いか、あっても一列、腹部腹側が黄色味がかっているとされています。

更に更に以前から、分類されていた日本種では北海道のハネナガキリギリス Gampsocleis ussuriensisと、日本最大種の沖縄のオキナワキリギリスGampsocleis ryukyuensis Yamasaki, 1982も種として別分類化されています。
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今日、ご紹介したキリギリス画像は全て高知で撮影したもの。でもニシキリギリスの特徴にはあてはまりませんよね。
これらは、キリギリス属のキリギリス種をニシキリギリスGampsocleis buergeri とヒガシキリギリスGampsocleis mikado の2種に分類した場合の地理的変異による特徴を現したシコクキリギリスとされる個体たち。未だ日本のキリギリス種群の分類には未解明の部分も多いのです。

さて、このように学術的には細かく分類が進むキリギリス科なんですが、一方では童話にまで登場し、子供の時代には人生観の教訓ともされる、ある意味可愛そうで誤解の多い昆虫でもあるんですね。その一般性を重視してか、キリギリスは種名としてだけでなくキリギリス属、さらに広義にはキリギリス科の総称として広く認識されているんですね。
ヒメギスヤブキリ





上画像の左、ヒメギスEobiana engelhardti subtropicaは、キリギリス科ヒメギス属。
右画像は、キリギリス科ヤブキリ属のヤブキリTettigonia orientalis
ヒメギス 幼虫









ヒメギス幼虫)】
キリギリスによく似たこれらも又、キリギリスと言って間違いではない それ以上に昔、日本ではキリギリスはバッタ目キリギリス亜目コオロギ上科の総称だったんですから。

キリギリスにとって名前や分類を再編されるのには、もう慣れているんです、たぶん。

香南市の蝶たち
今日は、香南市の植田先生にご招待いただいて、飼育下の蝶たちをじっくり観察してきました。
オオムラサキ 雄 羽化









オオムラサキ雄の羽化
自然下で、お目当ての蝶の特別なシーンを観察するには、細部にわたる生態研究をし、それらの条件を備えた自然環境を探し出し、何度もその場所を訪れ、偶然を必然に近づける努力を行こない、運が良ければそのうち目的を達成できるのです。
自然下のオオムラサキ








樹液へ訪れたオオムラサキ雌
更に長時間密着取材をしない限り、一度見逃すと今度は何時見られるか分からないシーン、そんな見逃せない生体変化がたくさんあり、それら全てを自身の目で見、感じ取るのは、相当な準備と綿密な計画を立てなければ先ず無理なんです。
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沖縄の観光蝶園
ですから文献で画像を見て専門家の論文を読むことで、多くの人々は折り合いを付け、自身の知識として習得するのですが、それではどうしても満足できない人もいるんでしょうね。
ミカドアゲハ 幼虫ジャコウアゲハ 吸密






飼育下のミカドアゲハ幼虫・ジャコウアゲハ成虫
そうなると自身の管理する土地に、お目当ての蝶が繁殖できる自然環境に似た空間を作り出し、成虫発生率を高めるために天敵を遮断する工夫をするのです。つまり蝶飼育ハウスの中に、幼虫食草を定植し、羽化後は成虫吸蜜花を定植させ、更にそれらを補充し続ける。

膨大な時間と労力が必要ですが、自然下で蝶の生活史を観察する密着取材よりは計画性を持った時間配分ができ、仕事と究極の趣味を併用することも不可能ではないのです。
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飼育下のメスグロヒョウモン雌雄
実際、蝶にそれほど興味が無い人々も南国の観光蝶園を訪れ、普段見ない蝶たちの生命の営みに触れ輝きを感じ、それなりに満足するといったサービスが事業として成り立つ訳ですから、更に蝶に魅了された人々が生の生態観察を通し感じ得る、その価値の大きさは私のような凡人には計り知れないものがあります。

そんな中、ブリーダーが最も見たいシーンは羽化、蛹が蝶になる瞬間です。
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オオムラサキ蛹
そして、こちらの巨大な蛹(4㎝)はオオムラサキ。翅紋様が透けて見えてますから一両日内に羽化します。昨年11月に見せていただいた時の小さい越冬前幼虫から、見事に成長していました。
オオムラサキ 幼虫









オオムラサキ越冬前の幼虫

オオムラサキ幼虫の餌(食樹)は、エノキの葉。夏産卵、孵化した幼虫は、秋にかけてエノキの葉を食べて成長します。紅葉が始まり落葉後は地面に降りて、食樹の根際や空洞内に溜まった落ち葉の中で越冬。春、新葉が芽吹くと再び樹に登って柔らかい葉を食べ、急速に成長をして、5月中旬にはになります。
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植田先生に頂いたオオムラサキ雄標本(飼育個体)

他の多くの昆虫がそうであるようにオオムラサキも又、地理的変異はやや顕著。温暖な地域のオオムラサキ個体は一般に大型で、翅表明色斑が白色傾向、かつ裏面が淡い緑色をしています。

高知産オオムラサキ北国オオムラサキ








高知のオオムラサキと北国のオオムラサキ

ところで、前述のオオムラサキ蛹。他の蝶を見ている5分位の間に、
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完全に羽化し終えていました。たった5分の間に完全に羽化、翅も伸びているんです。右画像は羽化後、体内の余分な水分をしきりに排泄しています。

私にとっては千載一遇のチャンスを逃してしまいました。でも、植田先生が仰るには、羽化直後の瑞々しい姿を見れただけでも運が良いんですって。
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オオムラサキ最後の一頭の蛹ですから、又来年の楽しみとしましょう。今日のシーンだって自然下で見るのは奇跡的幸運なんですから。更に羽化個体は雄、美しいブルーの発色です。

植田先生、とびっきりの感動を分けていただいて有難うございました。

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