高知にも鮟鱇はいるんです
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今日は、この魚のお話。70㎝はあろうかというこの海水魚は一見で♀だとわかる魚種なのです。この魚は多くの人が知っている鮟鱇アンコウ)なのです。全体的な形状よりクツアンコウの様に思いますが・・・
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土佐の郷土料理専門店で勤務していたころ、巨大な魚の肝を簀巻きにして蒸して形を整えた鮟鱇の肝『鮟肝』が大人気。
鮟肝








まったりとして海のフォアグラとも称される珍味で、それを柚子ぽん酢でいただくのが土佐風だったのです。店舗のメニューに鮟肝はあって、それを仕込むところはいつも見ていたんですが、鮟鱇の原魚を店でみたことはありませんでした。つまり生の肝だけが仕入れされていたんです。

それは鮟鱇という魚が主たる産地の多くで地味に地産地消され、他の魚種のようにブランド化されてこなかった経緯があるようです。

鮟鱇という魚はよく見るんですがそれはグルメの雑誌やテレビでのこと。しかもその産地は寒い地域の冬食材として紹介されています。金具に吊るされて鶏のように捌かれているんですね。
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そんな鮟鱇なんですが、実は高知の海にもいるんです。数年前に極沿岸の刺し網に掛かっていたのを手結漁港で見ました。

食材として活用されている国産鮟鱇は、アンコウ科の2属2種。より大型で高級な大型は1mを超えるキアンコウと、最大でも70cm程度のクツアンコウです。勿論、旬は冬。珍味として珍重される鮟肝だけでなく、あらゆる場所が鍋具材に活用されます。

体型の若干違いますが2種の同定は簡単ではなく、見て識別する最も確かな方法はがま口用の形をした口腔内に口内炎のような斑点があるのがクツアンコウです。

高知の家庭で食べるアンコウのちり鍋
漁港では見る事の少ないアンコウなんですが、冬場ともなれば量販店で鍋具材としてアンコウは販売されています。
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アンコウのちり鍋
表示はアンコウ鳥取産とのみ、詳細な種には触れていません。部位は上身・アラ・消化器・肝・皮とバランスよく入っています。
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素材のうま味を存分に吟味できるちり鍋でいただきます。切り身から判断してやや小型のアンコウなんですが、その味わいはクセもなく上質。加熱で身が程よく縮まり、皮目よりも更に骨の間のゼラチン質が上質。身のうま味の濃さはトラフグ属に劣るものの、肝を和えていただくことでうま味は増し、ボリューム感は申し分ないのです。

全ての骨は非常に柔らかく、豪快に食しても誤って喉に刺さるような骨はないのです。食味・食感、そして価格的にもアンコウは非常に食べ易い魚なんですよ。

2月1日のこと、室戸の椎名漁港で漁協の職員さんとむろと廃校水族館のスタッフさんが仮設水槽の中を熱心に見ていたんでいたんで、私も一緒になって覗き込んでみると・・・
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大きな鮟鱇が入っていたのです。そして大きなガマグチの前に小魚を持っていき食べさせる真似。でもこの鮟鱇、通常は口の大きい魚種は食欲旺盛で飼育が容易な魚種が多い中、神経質で飼育は極端に難しいんだとか。特に食材活用される前述の2種は難しいのです。だから、敢えて挑戦している施設もあるんですが、スタッフさんがかかりっきりにはなってしまうんでしょうね。結局この鮟鱇はむろと廃校水族館にはいかなかったようです。
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アンコウ属は大型はすべてメスなんですよ。アンコウには顕著な雌雄差が現れるのです。アンコウ属とは違うアンコウ目の中には、奇妙な生態で雌雄関係が成立している種が多数種存在しています。その関係はどことなく、蜘蛛や蟷螂を思わせるものです。

そこにへばり付いているような体型ですが結構泳ぎ、水深500mほどの深海から大敷網へ入るほどの海域へも移動してくるんです。
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むろと廃校水族館に展示されているアンコウの骨格標本
そして名粘液質でヌルヌルという点では共通のこの魚。
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巨大なアナゴ科クロアナゴ属の一種です。江戸前の魚、瀬戸内海の宮島の名物として珍重されるマアナゴもクロアナゴ属。てもこちらは胴回りも長さも巨大で1mは優に超えているのです。クロアナゴかダイナンアナゴ(背鰭と胸鰭の位置関係で識別は可能)なんでしょうが、いずれも高知では水揚げ量も少なく味も大味とされ、食材流通し難い魚種です。

でもそれは成魚の話。
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高知の郷土料理店では春告げ魚のひとつ、高級珍味として振舞われる『ノレソレ』、葉状体Leptocephalusと呼ばれる複数魚種の幼体の主は、この巨大なアナゴ類だとも。
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葉状体Leptocephalus
そういえば、これらの魚種を取材した2月1日。椎名の海岸に迫る笹林の中で、早朝複数の個体による『2019年ウグイスの初鳴き』が聞こえてきました。室戸の春は早いのです。