toshi_tomieのブログ

一般科学に関する独り言

    最表面原子の電子状態を見る
    EUPS(http://staff.aist.go.jp/t-tomie/EUPS/)で
    新規な材料評価法を開発しています。

    2012年06月

    エルピーダメモリの会社更生法適用、ルネサスエレクトロニクスの再建計画、シャープの液晶事業の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との 資本業務提携、ソニーのテレビ生産事業からの撤退、など、最近は、半導体産業に関する暗い記事に事欠きません。日本は、一体どうなるんだろう、という暗いムードが漂っています。


    一橋大学の中屋氏が半導体産業の収益性を分析しており、http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/file/WP11-03Nakaya.pdf 興味深かったので、その中の図をいくつかご紹介します。


    世界の半導体市場は、1955-19605年間に100倍に成長し、1995年までの35年間に、また100倍程度に大きくなり、そのあとは、極めて緩やかですが、伸びてはおり、GDPとの比較では、0.45%程度で推移しています。

    世界の半導体産業の市場規模
    半導体産業の対GDP比


    1970年から2000年すぎまで、半導体のパターンの最初寸法は、1/100に微細化されており、これにより、CPU1トランジスタあたり価格はわずか15年の間に1/1,000にもなっており、半導体産業の隆盛は、微細化とそのためのリソグラフフィー技術の進展で実現されていると言えます。

    微細化の進展
    1トランジスタあたりの価格


    順調に売上は伸びていますが、2001年のITバブルの崩壊と2008年のリーマンショックの時は赤字です。

    半導体企業の売上と営業利益


    世界の企業の売上高と営業利益を見ると、米国のインテルがダントツに儲けており、韓国のサムソン、米国TI, Qualcomが大きな営業利益を上げています。他の企業は、売上高を大きくすれば利益が上がる、という構造ではない様です。

    売上高と営業利益

    日本の総消費電力は、真夏のピーク時に0.2 TW(テラワット)=2kW程度で、1年が9,000弱時間ですから、一年の総消費電力「量」は、10,000kW時になります。


    その詳細な内訳が、20093月の富士経済の調査報告http://www.fed.or.jp/tech/2008/electricpower.pdf に記載されています。興味深いと思いましたので、ご紹介します。


    日本の総消費電力約
    10,000kWh60%がモータ、照明が14%、電熱が10%IT機器が5%、その他が15%、の様です。

    電力の用途内訳



    ーーーーーー

    尚、消費電力量の年次推移のデータは、内閣府のHPに載っています。

    http://www5.cao.go.jp/keizai3/2011/1221nk/pdf/11-1-3.pdf


    1970
    年から2009年にかけて、我が国のGDPは、200兆円から550兆円に2.8倍増えましたが、それに完全比例して、産業部門の使用電力量が増えています。使用電力を削減すれば、GDPが減り、税収が減り、国は貧しくなるでしょう。

    尚、79年から80年代半ばにかけて、産業部門のみが使用量が減っていますが、これは、オイルショックを受けて、産業部門での省エネ技術が進んだ為です。


    この間に家庭部門での使用量は、GDPの伸びの2倍以上の6倍に増えています。

    使用電力量の年次推移


    ちなみに、電気料金の世界比較をすると、我が国は、極めて高く、アメリカの2倍、韓国の3倍になっています。電力コストの比重が大きい産業の企業は、韓国企業との競争で極めて不利です。


    電力料金の内訳は、燃料費と電力購入費が合わせて40%程度、減価償却と修繕費を合わせて26%程度、人件費は10%程度、の様です。(原発停止後は、それぞれ60%弱、23%、6%の様です。)


    電気料金の世界比較

    本ブログが出くわした、3件の捏造データに共通するのは、恣意的なデータ選択でした。善意に取れば、思い込みで、意図せずに恣意的なデータ選択になったのかも知れません。自分の欲しい結果がでて、喜んでしまって、何か間違いはないかを注意深く検討することを怠ったためかも知れません。


    読者としては、自分の欲しい主張に出会ったときこそ、その主張には、何かうっかり間違いがないか、自分でデータを精査する必要があります。もしも、自分ではそれが難しい場合には、反対の意見を多く集めることが重要です。


    ーーーーー

    1.

    0619日のブログ記事「福島での流産や中絶の割合は、震災前後で変わらずーー福島県立医大によるアンケート調査」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52066159.html

    に対して、県立医大は、流産が増えている事実を隠蔽しているのでは、との暗黙の意を込めたコメントがありました。(文末に再掲)

    rootさんのコメントがあり、捏造したデータを書いているブログサイトの主張を鵜呑みにしたコメントであることが理解できました。


    (7/16補足:上記ブログサイトでのコメントとのやりとりを読んだところ、データの取り扱い方の間違いの指摘への回答がまともでなく、確信して捏造います。)

    2.

    「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表者の捏造データについては、sio_sioさんからのコメントで、状況が分かりました。(0527日「福島県の子供の病死者数が、減った!」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52062015.html )


    3.

    データ捏造に関しては、肥田舜太郎氏の件が、知名度が高いだけに罪が大きいです。0203日のブログ記事「チェルノブイリ原発事故で日本に降下したセシウムで乳癌死亡者が急増した?ーー悪質な肥田舜太郎」 http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52035702.html

    で批判していますが、伝聞では、改訂版では、そのデータが削除されているようですが、こっそり削除して済む問題ではありません。大々的謝罪広告をすべきです。


    ーーーーー

    上の三つの捏造とも、真実のデータの中から、恣意的に、何か一つのデータを省いて計算しています。


    最初の件の捏造データでは、比較すべき2010年の死産データの自然死産217と、人工死産270の内、後者を省いて計算して、原発事故以前は、死産率が低かった、と主張しました。 


    2件目の、原発事故以降に福島県のこどもの病死者数が増えているというデータでは、PKAnzugさんの分析に依れば、ゼロ歳児のデータが抜かれている様です。


    3件目の、チェルノブイリの10-12年後の1996-1998年に、青森、岩手、秋田、山形、茨城、新潟の6県で、乳がん死亡率が、それ迄の3倍になり、2000年には半分になった、と言う主張は、乳がん死亡率が1996-19983年間だけが高い、というのが間違いです。

    他県のデータを見れば、
    その他の年の東北6件の乳がん死亡率が低い、というデータが間違い、ということがわかります。肥田氏がどういう計算間違いをしたか、は分かりません。

    前の二件に比して、肥田氏の罪は深いです。うっかりとした計算間違いは有り得ますが、ガン死亡率が3年間だけ高い、というデータを見て、何の疑問も持たなかったのが信じられません。医学の知識に重大な欠陥がある人が医者という肩書きを持っていることで、どれだけの人が騙されていることでしょう。



    (間違ったブログサイトの情報を鵜呑みにしたコメント。原発事故前のデータが間違い。)
    ーーーーー

    > こちらは福島県で調査のアンケート。

    > 6月12日の会議資料によると、妊娠した母親に対するアンケートで

    >   無事出産 8,176人

    >   自然流産   122人

    >   死産      43人

    > 不幸にして生まれるまでに死んだ胎児の割合は2%。50人に1人です。

    >  

    > 福島第一原発ばら撒きまえの2011年は

    >   無事出産 16、126人

    >   死産・流産   217人

    > で、生まれなかった胎児の割合は1.3%です

    > およそ75人に1人と、大きな違いが出ています。

    平成206月4日に経済産業省商務情報政策局が発表した「経済産業省の情報政策について」http://home.jeita.or.jp/is/committee/infoterm/pdf/080604festival_meti.pdf

    に載っている図に、情報爆発時代の到来が謳われています。

    情報爆発時代



    そうかもね、と思って、より詳細なデータを探してプロットして見たところ、一寸誇張しすぎの感がしました。未来予測ですから、もっと勉強する必要はあります。

    総務省の情報通信政策研究所の調査研究部が平成23年8月に発表した「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果(平成21年度)http://www.soumu.go.jp/main_content/000124276.pdf

    に、詳しいデータが載っていましたので、グラフ化して、ご紹介します。


    インターネットで流通する情報は、8年間で二桁弱の伸びをしている様です。しかし、H17から、伸びが鈍化しています。
    また、他の流通情報は、大して増加していません。

    流通情報量



    さらには、次の図にしめす、ブログの記事を読むなどの、実際に「消費される」情報量は、インターネット情報でも、伸びは小さいです。
    人間の情報処理能力には限界がありますので、当然と言えます。

    消費情報量

    (補足)
    ーーーーーーー
    情報通信政策研究所:平成15年4月、日本郵政公社設立に伴い、「郵政研究所」の一部(電気通信部門)と「情報通信研修所」を統合して発足。総務部、調査研究部及び研修部の3部。

    「情報流通」

    •電話網(固定、IP、携帯、PHS)で音声を伝送する

    •インターネットでブログ記事を伝送し表示する

    •放送電波でテレビ番組を伝送し受像機で表示する

    •郵便ネットワークで郵便物を輸送し配達する

    •書籍を全国の書店で販売する

     

    「情報消費」

    •電話に出て話を聞く

    •ブログの記事を読む

    •テレビ番組を視聴する

    •郵便物を開封して読む

    •購入した書籍を読む

    電話網(固定、IP、携帯、PHS)、
    印刷・出版(新聞、雑誌、書籍、フリーペーパー、折込広告)、
    パッケージソフト(音楽
    CD、ビデオ、ゲーム)

    0602日のブログ記事「自然放射線の400倍の5週間の連続照射でネズミのDNAの損傷は検出されずーーMIT報告」

    http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52063076.html

    で、MITの研究グループの論文を紹介しました。


    放射線生物学の専門用語を理解するための勉強に時間がかかってしまいましたが、実験の内容の詳細をご紹介します。


    ーーーーーー

    被爆履歴のないマウスに、毎時100マイクロSv5週間に亘って照射した場合と、1.4分で照射した場合で、0.105 Gyの積分線量を照射後に、脾臓を取り出して、損傷を比較しています。


    染色体異常により、普通の核とは別に微小核ができることが知られています。図1に、マウスの赤血球の微小核の数の比較を示します。

    5週間に亘って100mSvを与えた時には、照射しない試料との差はなかったですが、1.4分の短時間で照射すると、顕著に、微小核の数が増えました。

    赤血球の微小球の被爆効果の急性慢性依存


    白血球は、放射線に特に弱いことが知られています。遺伝子表現の変化を見るため、いくつかのRNAの量を測った結果が図2に示されています。

    放射線への感受性が高いことが知られている(0617日「人体の被曝量を見積もるバイオマーカー; CDKN1A (白血球中のメッセンジャーRNA)」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52065770.htmlmRNA CDKN1Aは、急性照射の場合、極めて顕著に増加しましたが、慢性照射では、増大は明らかではありませんでした。

    遺伝子表現の被爆効果の急性慢性依存



    微小核 
    wikipdia

    ーーーーー

    細胞中に普通の核とは別に存在する小型の核。細胞分裂の際に一部の染色体が正常に分配されず、本来の核に取り込まれずに残ることで生じる。

    特に染色体異常が小核の原因となることが知られているため、小核の有無を調べる小核試験は遺伝毒性試験として利用されている。これにはマウスの幼若赤血球などを用いるインビボ法と、培養細胞を用いるインビトロ法(染色体異常試験の代用)がある。細胞標本を蛍光色素アクリジンオレンジなどで染色して観察し、小核を持つ細胞を数える。

    毎日新聞の今朝の朝刊の総合面に、

    「福島の女性調査:流産や中絶の割合、震災前後で変わらず」

    毎日新聞 20120618日 2257

    http://mainichi.jp/select/news/20120619k0000m040103000c.html

    という記事が出ました。


    福島県立医大の藤森敬也教授が、県内の産婦人科医院など78施設にアンケートを実施した。

    妊娠100件当たりの流産数は、震災前(昨年1月〜3月11日)の10.1件に対し、震災後(3月12日〜今年1月)は9.6〜11件で推移。

    中絶数も震災前の妊娠100件当たり17.8件に対し、震災後は17.3〜19.1件。どちらにも明確な変化はみられなかった。


    原発事故の影響やストレスで流産が増えたり、中絶を選ぶ人が増えたりしたという状況は確認できない。


    一方、30日当たりの妊娠数は震災後は震災前より2割近く少ない水準で推移していることが分かった。若い女性の県外避難が影響した可能性があるという。

    とのことです。


    ーーーーーー

    私の考察結果を、既に、0530日のブログ記事「放射線の影響が純粋&顕著に現れるのは死産率。福島県の20115月~20122月は、低かった!」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52062085.html

    でお知らせしているように、

    流産は、原発事故以降に増えていないだけでなく、むしろ減っているようにすら見えますが、中絶については、統計データからは分かりませんでした。

    アンケート調査で、中絶も増えていないと分かって、安心しました。


    近藤宗平氏の名著「人は放射線になぜ弱いか」には、”ギリシャでは、チェルノブイリ放射能の恐怖のために胎児をおろしたケースが数千あったという疫学的調査が報告されている。胎児をおろした母親は、全欧州では10万人以上だったと言われている”(p.215)と書かれています。


    福島原発事故で、私が一番恐れたのは、パニックになった母親による中絶でした。中絶が増えなかったようだ、と聞いて、ほっとしました。パニックになった母親しかニュースにならず、日本人は、パニックになりやすい国民だと心配してきましたが、報道とは全く異なって、欧州人よりはるかに冷静な国民のようです。日本人を見直しました。

    琴乃> 今月、千葉県と神奈川県三浦市の海岸にイワシ大量死が相次いでいます。

    > この現象は関東に大地震の前兆なのでしょうか?


    地震とは、全く関係ありません。

    ご安心ください。


    NHKが、「神奈川 海岸でイワシ大量死」615 026

    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120615/k10015839881000.html

    と報じましたが、ネットでは、「大地震の前触れか」と怯える声も

    J-CASTニュースニュース、http://www.j-cast.com/2012/06/15135859.html?p=all


    あるそうなので、琴乃さんが心配されるのも仕方がありません。


    ーーーーー

    ご心配するように、地震の前兆となる、地殻の微小な動きが発する、超微弱な電波か何かによって、関東近海のイワシが大量に死んだ、と仮定しましょう。


    すると、

     3/11の超巨大地震では、極めて強力な電波か何かが発生したハズです。それにより、日本の周りの海のイワシが全部死んでいなければなりません。


    3/11およびそれ以降の頻繁な余震で、何か、異変が起きたでしょうか?誰も気づかなかったのでしょうか?


    マグニチュードが2大きくなると、エネルギーが1,000倍になります。3/11地震はマグニチュード9ということでした。最近起きている大きめの地震のマグニチュードは5程度です。ですから、3/11地震のエネルギーは、100万倍も大きかったのです。


    イワシの大量死の原因が、マグニチュード5の余震が発した何かだったとすると、3/11には、その100万倍の影響がなければなりません。 

    どんなにボケっとしていても、100万倍もの影響があれば、決して見逃すことはありません。

    人体への放射線被爆の影響を見る方法の勉強をしていますが、白血球のメッセンジャーRNAの一つであるCDKN1Aが、被曝量の良い指標になるようです。かなり専門的で、私も良くは理解出来ていませんが、血液を採取して白血球の中のRNA量を測ると被曝量が見積もれるということの様で、とても重要な情報と考えますので、報告します。第二図だけでもご覧下さい。

    ーーーーー

    放射線によるDNA損傷を見る方法として、DNAから写し取られた遺伝情報に従ってタンパク質を合成する伝令RNAm-RNA:messenger RNA)を秤量するようです。mRNAは、寿命が短く直ぐに分解されるようです。その発生量を見ることで、DNAの遺伝子の働きが見えるようです。

    CDKN1ACyclin-dependenct kinase inhibitor 1A)は、細胞の分裂を抑制するタンパク質を作るmRNAということですが、放射線損傷にとても敏感で、被爆のバイオマーカーになるようです。

    M.Mitsuhashi et al.; "Radiation-induced leukocyte CDKN1A mRNA", Biomarker insights 4 (2009) pp. 201-209
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2805425/

    が、肺がん患者と健康者から採取して4℃で保存した血液に、Cs 1370.1, 1, 10Gyの被爆をさせたあと、37℃で2時間培養し、-80℃に保存した試料を測定して得た結果の一つを紹介します。

    0.1Gy
    照射でCDKN1Aが何倍にふえたか、を、10Gy照射の時と比較した図です。その図から、CDKN1Aの増え方は、人によって数倍異なる様ですが、多重原発性がん患者(●)で、単一原発性がん患者(△)および健康な人(×)より、多くなっています。また、二日置いて測ると、被爆の影響が大きく減じるとのことです。

    CDKN1A量 個人差


     

    S, A. Amundson,et al; "Human In vivo Radiation-Induced Biomarkers: Gene Expression Changes in Radiotherapy Patients", CANCER RESEARCH 64, 6368–6371, (2004)

    http://cpmcnet.columbia.edu/dept/radoncology/crr/faculty/amundson/cr2.pdf

    には、5種類のRNAの誘導量の照射線量依存が報告されています。
    CDKN1Aが、最も放射線感受性が高いようです。

     

    RNA発生量の被曝量依存

     


    ーーーーーーー

    なお、遺伝情報はDNAmRNA→タンパク質という順に伝わりますが、

    wikipediaの説明では、次の順番で、タンパク質が合成されるとのことです。

    1.開始:リボソーム(細胞内の粗面小胞体(rER)に付着している構造で、mRNAの遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する翻訳が行われる場)にmRNAが捕まる。

    mRNA上の開始コドン(各アミノ酸に対応する3つの塩基{A(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン)、U(ウラシル)の4種類}配列のことで、特に、mRNAの塩基配列を指す。)に対応するtRNAがリボソーム上でmRNAと水素結合で対応する。


    2.伸長:mRNAのコドンに対応するアミノ酸が次々とペプチド結合(アミノ酸同士が脱水縮合して形成される結合)で結合される。

     

    3.終結:mRNAのストップコドンに至ると、開放因子と呼ばれるタンパク質がやってきて転写は終了し、ポリペプチド鎖がリボソームから開放される。

    合成されたポリペプチド鎖は、シャペロン分子などの助けを借りて折り畳まれた構造をとることや、切断・付加などの翻訳後修飾を受けることがタンパク質の正常な機能には必要となる。


    (注:シャペロンは、他のタンパク質分子が正しい折りたたみ(フォールディング)をして機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称。


     多くのシャペロンは温度が上昇したときに発現されるタンパク質。これは、タンパク質のフォールディングが熱によって重大な影響(変性)を受けた場合に、そのタンパク質の折りたたみを制御する。ほとんどのタンパク質はシャペロンなしでも折りたたまれるが、一部にはシャペロンを必須とするものもある。

    タンパク質は正常な状態では分子の外側に露出しているアミノ酸残基のほとんどが親水性であるが、フォールディングのほどけた、あるいは異常なフォールディングをしたタンパク質では疎水性アミノ酸残基が露出している。このようなタンパク質は凝集する傾向があり、凝集したタンパク質は細胞にとって非常に有害である(例としてはアルツハイマー病の原因となるβアミロイドタンパク質や、プリオンタンパク質など)が、シャペロンはこのような凝集も防ぎ、細胞を守る働きがある。)

    近藤宗平氏の「ヒトは放射線になぜ弱いかーー少しの放射線は心配無用」(ブルーバックス)に多くの放射線生物学の知見が紹介されており、それを、本ブログで少しづつ紹介しています。(「放射線と健康」カテゴリ)
    今回は、紫外線による
    DNA損傷の修復機能が、サルなどに比べて現代人は格段に向上している、というデータを紹介します。


    ーーーーー

    森林を捨てサバンナに進出した類人猿は、紫外線の損傷に酷い目に遭い、DNAの損傷を除去する機能が遺伝的に向上した集団が、現代人の祖先と考えられています。それを証明するデータを紹介します。


    培養細胞に、殺菌灯の紫外線を照射し、DNAに、ピリミジン二量体と呼ばれる損傷を作り、24時間後に、二量体の何%が除去されたかを調べたところ、図に示す結果が得られたとのこと。サル、マウス、カメでは5%だったが、ヒトでは10倍の60%だった、とのこと。です。



    DNA損傷の修復率

     

    一方、森林の生活でも変わりない、DNAの酸化損傷に対しては、除去修復効率は、ヒトとマウスで同程度。とのことです。


    (背景説明)

    P.184)(耐紫外線遺伝子uvrA

    大腸菌のuvrA修復遺伝子が作るタンパク分子と似た働きをする分子を生産する遺伝子がヒトにも見つかっている。現在の数千倍の紫外線強度の太古で生き残るため、大腸菌とヒトの共通の祖先は、太古の時代にuvrA遺伝子を獲得した。現在に至るまで、紫外線は生物の生存を脅かす環境毒性であったので、この遺伝子は30数億年のあいだ絶えることなく子孫に継承され、休むことなく働き続けて来た。


    p.190500万年前に、サバンナに進出した類人猿がヒトになった。

    恐竜の中生代が6,500万年前に終わって新生代が始まり、ほ乳類がいっせいに進行。人類の先祖になる小動物が、被子植物茂る熱帯の森林に進出


    樹上生活に適応した原猿が誕生。3,000万年前にアフリカの旧世界猿から分かれて類人猿が誕生。地球の寒冷化が始まり、熱帯雨林が退行、1,000万年前に寒冷化が加速し、多くの類人猿が絶滅。500万年前の中新世の末に寒冷化がさらに進み、森林が退行し、アフリカで、ついに、類人猿の中の二足歩行の上手な連中が、森を捨ててサバンナに進出して人類の祖先に。森に残った類人猿が、ゴリラとチンパンジーに進化。地球の寒冷化がなかったら、ヒトは誕生しなかっただろう。

    直前のブログ記事(「被曝が気になるがCT検査を受けるべきか?ーー日本人の3040歳の死亡率一人/千人よりもリスクは小さい」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52063304.html

    で、

    14歳以下の子供の死亡率は、それがずっと維持できれば1万年も生きれる位に、とても低いことを紹介しました。(その図を、記事の最後に再掲します。)

    本記事では、より詳しく、死因別の死亡者数を紹介します。(各年齢で異なる人口で除していないので、死亡「率」にはなっていません)

    35歳から54歳の中年では、死因は多い方から、がん、循環器系疾患、事故、消化器系疾患ですが、14歳以下の子供では、事故は、中年と似たような死亡数ですが、病死は、中年の1-2桁も少ないです。

    0-4歳の子供では、出産時の障害による死亡数が最大であり、出産が、如何に過酷な事業であるかがわかります。事故、傷害、突然死が多いです。そして、病疾患も、5歳~14歳と比べるとかなり多く、4歳くらいまでは、自然淘汰の時期であることがわかります。

    死因別死亡数 子供対中年

    4歳を過ぎれば、事故、傷害死以外はとても少なく、15歳までの子供は、地球上で最も丈夫な動物であることがわかります。

    次に、中年と老年の死因別死亡者数の比較図を紹介します。

    老年になると、老衰が増えるとともに、呼吸器系疾患が急増しています。

    死因別死亡数 中年対老年



    (全死因の死亡率の年齢依存の図の再掲)

    年齢別死亡率

    5/31に読者のみずほさんから質問があり、CT検査を受けることをお薦めする返事を書きました。本記事で、補足として、より詳しく定量的に説明します。


    みずほ> 健康診断で、腎盂の軽度拡張が認められ(異常と正常の微妙な部分らしいです)、精密検査を薦められています(それ以外の症状はないので、癌というのも確率が低い状況です)。

    > CT検査らしいのですが。CT検査での発ガン率は1万人に5人程度。比べて尿管癌の罹患数は30代で10万人に0.1人以下です。

    > CTを受けるメリットがあるのか考えてしまいます。


    ーーーーーーー

    先ず、普通の日本人の死亡率を知っておきます。


    総務省、統計局の日本統計年鑑の人口動態 2-26 年齢別死亡数および死亡率 http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0226000.xls

    のデータを図示しました。

    年齢別死亡率


    14歳以下の子供は殆ど死にません。もしも死亡率がそのまま変化しないならば、1万年程度も生きる計算になりますが、残念ながら、年齢とともに死亡率が上昇するので、そんなに長生きはできません。30歳台には余命千年程度相当の死亡率になり、60歳台に余命50年程度相当の死亡率になります。


    各年齢での死亡率の和を計算した図を示します。図から、平均寿命(死亡率が0.5を超える年齢)は、男で80歳弱、女で86-87歳、と言う事になります。

    積算死亡率

    と言う事から、30歳台の場合に、千人に一人程度のリスクならば、大したリスクでない、と言えます。勿論、無意味にリスクを増やす必要はありません。


    以下の放医研のHPには、CT一回のリスクは1万人に5人の発がん確率、と書かれています。発がんして確実に死ぬ、と言う場合であっても、確率的に2,000年生きられる、と言う数字です。寿命が縮まった、と考えるような数字ではありません。


    みずほさんには、腎盂(じんう:腎臓と尿管の接続部)の軽度拡張が認められた、と言う事ですから、何らかの病気の可能性があります。本当に病気だった場合の死亡率は、どれくらいでしょう?余命10年はあるでしょうが、余命50年はないように思います。余命50年で、死亡率は1万人で100人、と言う事になります。正常と異常の境界と言う事なので、さらに確率が低くなりますが、1万人で5人よりは、かなり大きいでしょう。

    これらのことから、早期発見による発病のリスク低減効果が、CT検査によるリスク増大効果より遙かに大きいと考えられるので、CT検査を受けた方が良いと思います。


    ーーーーーーーーーーーーー

    放医研のHPで、「CT検査など医療被ばくの疑問に答える」

    http://www.nirs.go.jp/news/etc/etc_11_qa.shtml

    に、以下の説明が書かれています。


    CTの頭部撮影の参考レベルが50 mGy、腹部が25 mGyで、実際の被曝線量は5~30mSv、乳房撮影の場合は、参考レベル3mGy、実際の被曝線量2mSv程度、だそうです。

    また、10mSvの被曝で、1万人に5人が発がんと推計されます。

    「被爆2世」の白血病で新研究

    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120603/k10015570261000.html (NHK NEWSweb 6/3 183分)

    というニュースが出ました。


    被曝二世の追跡調査に関しては、

    20110909日のブログ記事「放射線は少し浴びたほうが健康によい(3)ーー被曝二世の調査。遺伝子異常は遺伝しない」http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51998142.html で、

    原爆傷害調査委員会(放射線影響研究所の前身)が、J . V. Neel ミシガン大学人類遺伝学教授の指導のもとに、周到な計画で、1985年まで約40年にも亘って、忍耐強く行った、歴史上最大規模の、被曝二世の追跡調査の結果を報告しています。


    文末にその結果を再掲しますが、遺伝子異常は遺伝しない、という結論が得られています。


    今回の研究結果では、両親とも被曝した例では、14,000人中に26人が、35歳までに白血病になっており、片親だけ被曝の場合より明らかに高い割合だった、とのことでした。


    1990年に最終報告書が出されたニール調査では、被曝二世31,156人中16人が20歳までに白血病になっていた(その割合は、被曝しなかった人と変わらない)という事でしたが、今回の調査では、二世の数が2倍になっており、また、35歳までと、時間が延びたとは言え、白血病患者の数も、増えています。


    対象になった方々の親は、原爆で一瞬に430 mSvも被曝しており、親の被害は、長期間に亘り微量の被曝の福島原発事故の場合とは全く異なっており、発症率の頻度自体は参考にはなりませんが、

    遺伝子異常は遺伝しない、というこれまでの結論が、両親ともが被曝した場合には当て嵌まらない、と言う事を示唆しており、極めて興味深い結果です。

    より詳細なデータが公表されること、さらに研究が続けられることを期待します。


    (ニュースの概要)

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    およそ12万人の広島県内の被爆2世について広島大学の研究グループが病院の診断記録などから調査し、3日、長崎市で開かれた研究会で発表しました。

    被爆後10年以内に生まれたおよそ6万3000人のうち両親とも被爆していた人は、1万4000人余りと4分の1以下だったのに対し、この中で35歳までに白血病になった49人のうち、両親が被爆した人は26人と半数を超えていました。

    父親か母親だけが被爆した人と比べ、明らかに高い割合で白血病を発症していることが初めて確認されたということです。

    研究グループの鎌田七男名誉教授は「遺伝的影響があるかどうかすぐに結論は出せないが、影響の解明に必要なデータの提供はできたと思う。」

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    1990年に最終報告書が出されたニール調査の結果の再掲)

    被曝二世のニール調査

    マサチューセッツ工科大学(MIT)が、これまでの放射線生物学の常識を確認する報告書「Integrated Molecular Analysis Indicates Undetectable DNA Damage in Mice after Continuous Irradiation at ~400-fold Natural Background Radiationhttp://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104294 (Online 26 April 2012

    を出した、ということを、アゴラが紹介しました。


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    低線量被ばくに健康への影響はあるのか?---MITレポートと放影研LSS14報の解説

    アゴラ編集部530()2213分配信 http://agora-web.jp/archives/1460406.html


    (記事の内容)

    最近、放射線の生体影響に関する2つの重要なリポートが発表された。一つは、MITの専門家チームが発表した研究成果(「放射能に対する生物学的解析の統合研究~ネズミへの自然放射線比400倍の連続照射でDNAの損傷は検出されず」である。


    MITの研究ではネズミを自然放射線の400倍程度の放射線量に5週間さらしたが、DNAの損傷は観察されなかった。過度の放射線は、DNAを損傷させることにより、発がんなどの健康への影響をもたらす。この研究では年1Sv(シーベルト=1000mSv:ミリシーベルト)程度の放射線を浴びせても、ネズミの細胞への影響はなかった。


    原子爆弾の爆発の結果生じるような短期(1回)被ばくと、何年にもわたる長期被ばくでは、「累積」放射線量が同じでも、生体への影響は全くちがう、つまり長期被ばくの方が影響は小さいことは、この分野の専門家では常識だ。一般にはまだこの両者の区別をせずに議論や報道が多くなされている。

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    尚、

    本ブログの「放射線と健康」カテゴリの多くの記事で、放射線生物学研究の情報を紹介しています。


    再掲する図(
    20110710日「放射線ホルミシスの領域(電中研報告)ーーオタワ大データベースの追加でより確実に」  http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51977982.html で紹介した図)で分かるように、

    放射線は、年に3シーベルト以上の被曝で健康に影響が出ること、500ミリシーベルトまでは、健康に良い影響(ヘルミシス効果)があること、それ以下では、殆ど何の影響がないことが分かっています。


    線量ー線量率マップ

    橋下徹大阪市長は、原発は再稼働しなくても電力は足りるとする趣旨の発言を繰り返して来ましたが、31日に「(電力が)足りるというのは個人の意見だ」と言い放ったそうです。

    あれほど強く原発反対と言い続けてきたので、電気代23割値上げ、電力不足23割は覚悟の上で、市民の生活はどうでも良いんだ、と理解していました。それはそれで、一つの見識です。


    電力の50%が原発であるの関西電力で原発が全部止まれば、電力が足りなくなるのは、子供でも想像できることです。潔いと言えなくもないですが、彼の発言の全てが、簡単なことすら想像できないで、単なる感情的発言であろうことを示唆します。無責任極まりません。芸能人に止まっているべきで、政治家になってはいけません。ポピュリストは去るべきです。


    彼は、私の高校の後輩の様です。1年前にあった高校の同窓会で、恩師が、あんな下品なやつは教えていない、と仰いました。府知事選に立候補した時、支持したことを。私は、反省しなくてはなりません。

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    http://mainichi.jp/select/news/20120531k0000e010167000c.html

    (毎日新聞 20120531日)


    大阪市の橋下徹市長は31日、関西電力大飯20+件原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働について、「基本的には認めない」としていた前日の発言を翻し、「事実上、容認する」と明言した。


    橋下市長は市役所で記者団に、「うわべばかり言っていても仕方ない。事実上の容認です」と語った。これまで大阪府・市のエネルギー戦略会議などでは、再稼働しなくても電力は足りるとする趣旨の議論が展開されてきたが、「足りるというのは個人の意見だ。きちんとしたプロセスで確定した数字は前提にしなければならない」とも発言。

    政府が今夏、関西で15%の電力不足が生じると試算していることを踏まえ、「この夏をどうしても乗り切る必要があるなら、再稼働を容認する」と述べた。また従来、「安全が不十分な状態での再稼働はあり得ない」と繰り返していたが、「机上の論だけではいかないのが現実の政治だ。最後は有権者に判断してもらったらいい」と説明した。

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