円の為替レートの正常化(文献1)には成功したものの、靖国参拝で不要な摩擦を増やすだけ(文献2)で外交的にもロシアとの関係改善以外の目立った成果はなく、成長戦略の策定が最重要課題である安倍政権にとって、「特定国立研究開発法人」(文献3)の選定は、政権の行方を左右する重要な政策です。

「特定」には、理研と産総研が選定されることになっていること、関連法案が今国会中に提出されることになっていたこと、ご紹介しました(文献3)。

stap
細胞騒動で、理研が外れることになったことは当然ですが、理研を外すと、法案提出を断念する、とは、産総研の地盤沈下も酷いものだ、というのが、私の、感想です。

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stap細胞発見の記者会見をしたとき、「リケジョ」の既成概念を打ち破るいでたちで登場した小保方さんを見て、ブログ記事(文献4)で、“科学振興にとって、小保方さんの登場は大きな贈り物”と書きました。


安倍政権も、最大限に利用しようと考えたようです(文献5)。「特定国立研究開発法人」構想は、何年も前から検討され、昨年末には閣議決定もされています。年明けに突然登場したstap細胞発見は、その構想を強く後押しする大きなニュースでした。

Nature
誌掲載写真の「捏造」騒ぎで、理研が、「特定」の選定から外れるのは、当然ですが、関連法案の提出そのものを断念するというニュースは、「特定」に選定される予定のもう一つの研究所である産総研の人間である私には、とても悲しいです。

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「実用化につながらない基礎研究ばかりしている」との批判(文献5。全くその通り、と私も理解)がある文科省傘下の「理研」とは違って、計量標準や、活断層の調査などなど、「役立つ」研究しかやらない、論文は評価されず、産業に役立つことだけが評価される、経産省傘下の産総研こそが、次世代の産業創成の中心であるはずです。

理研を抜きにした新
成長戦略は、組み立てがより難しくなると政府に言われてしまっているのは、論文引用ランキングなど二の次で、産業界に役立つことだけを追い求めてきた産総研の、面目丸つぶれ、です。

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(参考文献)

1)

20130206日「円ドルレートの適正レベルは100~120円だろうーー「どうしても1ドル50円時代が来る」の浜矩子氏の主張通りになる日が来るか?購買力平価説は正しいか?」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52100125.html


2)

2014022008:00 「日本のナショナリズムを、米国は叱責せよ(ブルームバーグの社説2/17)」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52140771.html

3)

20140309日「世界的な研究機関を目指す特定国立研究開発法人(仮称)人に理研と産総研ーー今国会で関連法案の提出」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52142211.html

4)

2014020813:03 ”巻き髪の美しすぎるリケジョ”小保方晴子さんの快挙。細胞が弱酸の刺激で初期化され万能細胞に。STAPと命名

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52139457.html



5)

STAP、成長戦略に影 政権―柱に期待、あて外れ 理研―新法人へ弾み、一転

朝日新聞デジタル 20144110500

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11078790.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11078790

安倍政権は理研を世界最高水準の研究機関にしようと「特定国立研究開発法人」(新法人)に指定する法案の今国会成立を断念する方向で調整に入り、政権幹部は冷ややかに語った。

 安倍政権にとって、STAP細胞と小保方氏は、当初は「渡りに船」だった。先端技術を新成長戦略の柱にすえ、小保方氏を「女性活用」の象徴ともアピールできたからだ。

 1月末、小保方氏の研究結果が発表されると、政権幹部は最大級の賛辞を贈った。菅義偉官房長官は記者会見で「学会の常識を打ち破る画期的なものだ」。下村博文文部科学相も記者会見で「第二、第三の小保方氏や画期的な研究成果が生み出されるように応援する」と語った。

 さらに政権は2月14日に、安倍晋三首相が議長を務める総合科学技術会議に小保方氏をゲストとして招く準備を水面下で進めた。ところが、不正疑惑が大々的に報道される前に、政府関係者がインターネット上で、小保方さんの論文に疑問を呈する書き込みを発見。計画を白紙にしたという。

 政権は6月の新成長戦略のたたき台で、研究開発法人の改革を進め、世界に通用する研究者を増やす方針を盛り込んでいる。

「その核として活動する機関が理研」(文部科学省幹部)のはずだった。だからこそ、理研を新法人に指定する法案の今国会成立を断念するのは、政権にとっても苦しい選択だ。

 安倍政権にとって、新成長戦略が評価されるかどうかは、政権の行方を左右する重要課題だ。政権は「理研は客観的に日本を代表する研究開発法人」(下村氏)と考えるだけに、理研を抜きにした新成長戦略は、組み立てがより難しくなる。

理研はーーー予算は、もんじゅを開発する日本原子力研究開発機構やロケットに多額の費用がかかる宇宙航空研究開発機構に次ぐが、対象とする研究分野は広く総合病院のような存在。将来の技術革新につながるかも知れないが、すぐには応用には結びつかず企業が手がけにくい基礎研究を担う。

現行の独立行政法人制度では厳しいコスト削減が求められ、予算はここ数年、低下傾向にある。研究者に出せる給与にも制限があり、世界トップクラスの人材獲得競争では不利な状況が続いている。

 理研に対しては「実用化につながらない基礎研究ばかりしている」との批判があり、iPS細胞のように次世代の産業創成につながる象徴としてSTAP細胞は看板となるはずだった。