山本敏晴のブログ

1965年生、仙台出身。医師・写真家・NPO法人宇宙船地球号理事長。元国境なき医師団日本理事。 峭餾欟力師」という概念を提唱。企業の社会的責任(CSR)を推進。世界中で大切なものの「お絵描きイベント」を実施。著書に『世界で一番いのちの短い国』『アフガニスタンに住む彼女からあなたへ』 『国際協力師になるために』、『あなたのたいせつなものはなんですか?』『世界と恋するおしごと』『地球温暖化 しずみゆく楽園ツバル』『「国際協力」をやってみませんか?』など

2008年01月

たいせつなもの、それは、「お早う Good Day!」

.
そのラジオのキャスターは、山手線の電車の椅子に、そっと座った。
目立たないように、そっと。

薄い白髪頭で、痩せた体格の彼は、両側に座っている
サラリーマン風の大男二人にはさまれ、
なんだか本当に小さく見えた。


私は、時計を見た。
午後5時半、だった。

今は、
2008年、1月17日、午後5時半

そうか。あれから、もう、3年8か月が経ったのか。
あの本が出版されてから・・・。


私は、彼を見つめた。
じっと、見つめた。

「私が彼を見つめている」と、彼が気づいてくれるように、
あえて、じっと見つめた。

しかし、彼は、斜め下45度の視線で、電車の床を見続けたまま、
ついに、私のほうに、視線を向けてくれなかった。

・・・

さて、時は、遡る(さかのぼる)。

3年8か月前だ。


2004年、5月17日、午前8時半。
ラジオ、ニッポン放送の「上柳昌彦さん」の番組に
私は出演した。

その頃、私はマガジンハウスから
「彼女の夢みたアフガニスタン」という写真絵本を出した。

アフガン難民で、隣の国に逃げていた「ザグネ」という少女が
自分の国に戻り、医師となって祖国を救おうとする、話だった。

これは、実際にあったドキュメンタリーで
初期のころの私の、代表作となっている。

(この話は、長くなるので、また後日・・)

この「彼女の夢みたアフガニスタン」は、
新宿ニコンサロンで写真展を行い、
テレビ朝日「徹子の部屋」に出演させて頂き、
この
ニッポン放送からも、お声がかかった。


そして出会ったのが、
ニッポン放送のエース・キャスターと言われる上柳昌彦さんだ。

小柄なのに、存在感のある人だった。
なんでもない話かたのようで、「伝える」能力の高い人だった。

この生出演のラジオで
いったい何を話したのか、ほとんど覚えていない。

上記のストーリーを、短い時間の中で、かいつまんで話すのに
必死だったに違いない、と思う。

唯一おぼえているのは、上柳さんが、私に向かって
「えらいっ!」
と言ってくれた言葉だ。

何に対して偉いと言われたのか、全く覚えていないが、
それだけが、私の脳みそに、深く、刷り込まれていた・・。

・・・

しかし、3年8か月の後、山手線の電車の中で、
(当たり前だが)
彼は、私を覚えていては、くれなかった。

毎日、ゲストとして、違う人が呼ばれる。
しかも数分間で帰ってゆく。
365日もあるのに、いちいち、覚えているわけがない。

私は、自分を納得させようとした。
が、やっぱり、ちょっと悲しかった。

・・・

そんな気持ちを持ったまま、
2008年1月29日、運命の日、を迎えた。

ニッポン放送、二度目の生出演となる。
「上柳昌彦の、お早う Good Day!」だ。

基本的に、この日は、
出版したばかりの新刊

「地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル
 あなたのたいせつなものはなんですか?」

を宣伝してもらい、
ついでに、映画ツバルの情報を告知してもらうのが
目的だった。


私は、朝早く起きて、有楽町のニッポン放送へ行き
(10分前と言われたのに)
1時間前には、待合室に入った。


することもなく、ボーっと待合室で、まっていると
5分前ぐらいに、上柳さんは、事前の挨拶に来てくれた。

薄い白髪頭で、痩せた体格の彼が、眼の前に立っている。

今度は、彼は斜め下45度を見つめたりはせず、
まっすぐ、私のほうに目を向けた。


そして、私を見るなり、こう言った。


「お久しぶりー。ご無沙汰していますー。」


そ、そうか、覚えていてくれたんだ。


じゃ、こないだの電車の中は、
ほんとに、床をじっとみていただけだったんだ。


ま、ま、ともかく、
私は、彼にとって、日々の「通りすがり」では
なかったんだ。

私は、嬉しくなり、また、ちょっと照れて、
その後、上柳さんを、まともに見ることができなくなった。


しかし、それでも、よかった。
番組で、何を話すかも、まあ、「そこそこ」でいいや、と思った。


本の宣伝をすることよりも、映画の宣伝をするよりも
もっと「大切なこと」を、私は、ふと、思い出した。



  一人の人間に、覚えていてもらえること。



もしかすると、それにまさる喜びは、ないのかもしれない。



「私にとっての、たいせつなもの」の答えが
この日、一つ、見つかった気がした・・

と、思う間もなく、時間が来て、生放送の番組が始まり、

ちょっと、ボーっとした、幸せな気持ちのまま、


私の


「お早う Good Day!」 が、始まった。






追伸:

ぼけていた私は、映画ツバルの宣伝をしてもらうのを、
本当に忘れた・・・(汗)

ま、いいか。


温度計が突き刺さった地球の絵

.
「この絵、すごいね。すごいデザインだね。これ、地球?」

「うん」

「これは、何?」

「温度計」

「なんで、地球に温度計が、突き刺さってるの?」

「それは・・、地球の温度が、どんどん上がっていくから・・」

「なるほど。こっちの、煙は、何?」

「先進国の、工場から出る、二酸化炭素」

「そっか・・(やっぱり)。じゃ、この、沈んでゆく船みたいなのは?」

「それは・・・」

・・・

2007年、ツバルに行った。
ツバルで、子どもたちに、大切なものの絵を描いてもらった。

たくさんの子どもたちに描いてもらったところ、
10枚前後、印象に残った絵があった。
その中で、最も心に焼きついたのが、この絵だった。


「地球に温度計が突き刺さった絵」


地球の片側では、
私たちの欲しい商品を作るために、工場から煙が出ており、
反対側では、
突き刺さった温度計の温度が、上昇してゆく。

そして、
そして沈んでゆく船が、画用紙の下に、描かれている。


「この船は、何?」

「僕たちの国、ツバルが、沈んじゃうかもしれないから・・」

「その象徴?」

「あと、僕の家とか、学校とか、遊ぶ場所、砂浜とか、ぜんぶ・・」

「そっか・・」


この絵を見て、本を作ろうと、思った。
少なくとも、この子が描いた、この絵を、紹介しなければ・・。

日本の人に、先進国の人に、
地球温暖化による、海面上昇によって、沈んでしまう国、
ツバルがあることを。


最後に、この少年に、質問をした。

「で、結局、君の一番大切なものは、何?」

「それは、僕の「夢」だよ。」

「どんな夢?」

「地球が、今より、もうちょっと「まし」になること・・かな」

「どうすれば、「まし」になると思う?」

「それは・・・」



この問いの答えは、きっと

私たちが、自分で、探さねばならない

はずだ。




補足1:
2008年1月19日、写真絵本ツバルが、出版になりました。
地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル」小学館


補足2:
より詳しい情報を知りたい方のために
映画ツバルの上映も行います。
2008年2月17日、東京・広尾駅A3出口から徒歩1分。
JICA地球ひろば」にて。入場無料。
その他の地域については、下記ウェブサイトへ。
http://www.ets-org.jp/


補足3:
さらに、もっと詳しい情報が知りたい方のために
文章版の、ツバルの本も作っています。
2008年中には、出版する予定です。


舞姫・テレプシコーラ(第一部・全十巻) 山岸涼子

.
読んではいけない。

この漫画は、読んではいけない、と思う。

矛盾するようだが、
それほど素晴らしい作品だった。

それほど素晴らしく「現実の厳しさと冷酷さ」を
究極まで描いた作品だった。


しかし、
読後の後味は、ものすごく、悪い。


私は、恐れる。

この漫画を、もし、小さい子ども達が読んだら、
間違いなく、誰も「バレリーナ」になろうなどと
思わなくなってしまうだろうと。

それほど悲惨な、暗鬱(あんうつ)なストーリーが、
強烈に、これでもか、という、リアリティーを持って展開する。

そして、衝撃のラスト・・・(涙)


作品では、
様々な現代社会の「闇」(やみ)の部分が登場する。

いじめ、ネット中傷、自殺の危機、児童ポルノ、
親の子どもへの過剰な期待、それを受ける子どもの負担、
目立つ子が嫌われること、才能がある子への嫉妬と憎悪、
そして、背景にある(子どもの頃からの)競争原理。

さらに、バレエの世界特有の「闇」も描かれる。

生まれ持った体型で決定されてしまう「向いてない子」、
思春期に背が伸びないとプロになれない現実、
月経開始前後の肉体的成長との葛藤、
バレエ教室の経営の難しさ、プロでも食えない現実、
さらに、バレリーナの老後の悲惨さ


読み終わった後、48時間ぐらい、
この漫画のことしか、考えられなかった。

(バレエの世界特有と思われた問題たちは、
 よーく考えてみたら、他の分野でも、
 ある意味、同じだと気付いた。)

これだけ多くの問題たちを抱える、「現代」の日本を
今、私も生きているんだということに、呆然自失した。

考えても、考えても、答えなど、無かった・・


ちなみに、
私も本を作る作家の「はしくれ」なのだが、
本を作り始める前の作業で、最も重要なことが
「それぞれの登場人物たちの、背景にあるもの」の設定である。

で、
それを本文中に記述するかどうかはともかく、
相当、深いところまで、設定しておくよう努力している。
(ドキュメンタリー作品でも、
 その人物の社会背景を、
 原稿とは別な紙に詳細に書き込んでいる。)

が、
今回の、「テレプシコーラ」ほど、
それぞれの登場人物の社会背景たちを、
実際に本文中にだし、かつ意味のある形で機能させ、
さらに、まとめあげた作品を、私は他に知らない。

一人一人の人物が背負う社会背景が、膨大であるため、
それを読んだ私に、
登場人物たちが、強烈なリアリティーを持って感じられた。

主人公の3人(?)の子どもたちだけでなく、
脇役の人たちまでが、
私の中に、「実在する人物」として認識されるようになった。


そして、その「実在する人物」たちを待つ運命・・



すごい。

山岸 涼子。


私は30年前、
この著者が描いた、同じバレエを舞台とする漫画
「アラベスク」を読んだが、
今回は、それよりも数段成長した彼女の作品に出合えた。


私は、山岸涼子に会ったことはないが、
彼女と、彼女が住んでいる社会の背景にあるものは、
私の中に、今、

「実在」している。

Earth the Spaceship . . . ETS



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