山本敏晴のブログ

1965年生、仙台出身。医師・写真家・NPO法人宇宙船地球号理事長。元国境なき医師団日本理事。 峭餾欟力師」という概念を提唱。企業の社会的責任(CSR)を推進。世界中で大切なものの「お絵描きイベント」を実施。著書に『世界で一番いのちの短い国』『アフガニスタンに住む彼女からあなたへ』 『国際協力師になるために』、『あなたのたいせつなものはなんですか?』『世界と恋するおしごと』『地球温暖化 しずみゆく楽園ツバル』『「国際協力」をやってみませんか?』など

2009年05月

第五回「太平洋・島サミット」の、表と裏 7336字

.
2009年5月22日と23日に
北海道で、
太平洋・島サミットが開催された。

私は昨年、
南太平洋にある島国、
ツバルの写真絵本と映画を制作し発表したので
このサミットには、注目していた。

しかし、
一般の方は、
このサミットが
「なぜ、日本で開かれているのか?」
よくわからないと思うので
その背景を解説しておく。


(物事には表と裏があり、
 かつ、
 裏があるから、悪い、
 というわけではない。

 で、国際協力(援助や開発)の世界もそう。

 以下でそれを理解して頂きたい。)


・・・

まず、表の部分から始めよう。

22日の島サミットで
麻生首相は次のように述べた。

「太平洋を共有する同じ島国のパートナーとして、
 できる限りお手伝いをさせて頂きたい。」

太平洋・島サミットとは、
1997年から、3年後とに、
毎年、日本で開催されている会合である。

主に南太平洋にある
14の国と地域が参加し、
それらの国の様々な問題を話し合い、
(基本的に)日本がそれらに対して援助をする、
という場である。

正式名称を
「日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議」
と言う。


・・・

「太平洋・島サミット」

第1回 1997年 東京
第2回 2000年 宮崎
第3回 2003年 沖縄
第4回 2006年 沖縄
第5回 2009年 北海道

今回は、
北海道のリゾート地・占冠村(しむかっぷむら)トマム
で行われた。



・・・

これらの島国や地域に、
「人道的な」意味において、支援が必要な
「表の理由」は、以下である。


1.
人口も、国のサイズ(面積)も少ない。
このため、経済的に発展しにくい。

2.
教育や医療の普及などが、遅れている。

3.
地球温暖化を始めとする環境問題によって
国がおびやかされている。

具体的には、

(1)海面上昇による、国の水没。
(2)気候変動による降水量の減少による水不足。
(3)狭い国土のための、甚大(じんだい)なゴミ問題。

4.
地球温暖化などの環境問題を生じさせているのは
日本などを始めとする先進国なので
先進国たちは、被害にあっている国々に支援をする
同義的な責任がある。


ちなみに、
ツバルやパラオの首脳は、以下のように発言した。


「温暖化による海面上昇は、
 我が国民全体にたいするテロのようなものだ。」


・・・

次に、
「日本が」これらの国を支援をする
「表の理由」は、以下である。

1.
マグロ・カツオなどの8割が、この南太平洋
で獲れるなど、水産資源が豊富。
今後も、
これらの食糧(などの)資源を安定して確保するため
南太平洋諸国と友好な関係を持つことは重要。

2.
オーストラリア等からの石炭や牛肉など、
様々な資源が日本に運搬されるルート(航路)である。
このため、
その道の確保をしておくことは、当然必要。

3.
日本が国際連盟によって委任統治を託された
「南洋諸島」の国々が多いため、
その歴史的な理由で、
日系人が、いまだに、いっぱい住んでる


・・・

余談だが、「南洋諸島」について補足をすると、

1920年、国際連盟の委任統治領として、
    赤道以北の島国たちが日本に託された。

    現地人に対して、日本語教育が行われた。
    さらにそこへ沖縄などから、多数の人が移民した。

1935年、日本は国際連盟を脱退し、南洋諸島を自国の領土とした。
1941年、太平洋戦争、開始。
1945年 - 日本は降伏し、上記の統治は、終了する。

で、面白いのは、
現地で日本語教育がかつて行われていたため、
日本語の苗字(みょうじ)が名前についている人が多い。

たとえば、
「キンタロー」や「モモタロー」という名前の
苗字(みょうじ)を持つ、美しい女性も住んでいる。

例えば、「マリア・キンタロー」さん、など。


なお、
「南洋諸島」の現在での名称は、
パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア、北マリアナ諸島
などである。


・・・

話をもどして、

三番目に、
日本が、これらの国に支援をする
「裏の理由」は、以下である。


1.
昨年(2008年)、日本が
国連安全保障理事会の
(非常任)理事国の選挙に出馬した際、
これら太平洋の12カ国は、
すべて日本に投票してくれた。

その恩返しもあるし、
かつ、
将来的に、日本は
常任理事国入りを目指すので
今後も、日本を支持してもらい続けるために
援助は、かかせない。


2.
2006年、
日本の常任理事国入りに常に反対する中国が、
430億円の支援を
太平洋島嶼国(とうしょこく)に援助した。

このため日本は、
これを上回る金額の援助を
しなければならなくなった。

繰り返すが、
日本が、国連の常任理事国に立候補した時に、
太平洋島嶼国が、
中国になびいてしまっていると、
中国のいうことをきいて
日本の常任理事国入りに、
反対、してしまう可能性が高いからだ。

このように
太平洋の島国の中には、
援助される金額におうじて
(国連などの外交の場において)
指示する国をかえる、という
したたかな側面がある。

3.
国連においては
どんな大きな国も、どんな小さな国も、
もっている票の数は
「一票」
である。

よって、
同じ、100億円を援助するなら、
小さい国に支援をおこない、
ありがたがってもらったほうが、

大きな国に支援をして
ありがたがってもらえないよりは、いい。

このため、日本は、
少ない援助の額で、
(国連において、効率よく)
日本を支持してくれる国の数を増やす
戦略をとっているのだ。

と、いうわけで、
太平洋にある、弱小国家に援助をし、
それらの国を懐柔(かいじゅう、仲間に抱き込むこと))
しようとしているわけだ。

4.
パプアニューギニアなどで
ニッケルや天然ガスなどが採れる。

ニッケルは、レアメタル、の一つで、
携帯電話の部品を作る時に必要な
鉱物資源の一つ。

天然ガスは、石油よりも
CO2の排出量が少なくなる燃料。

このため、これらは重要な資源であり、
日本はこれらの鉱物資源等を獲得したい。


・・・
・・・

再び、余談だが、
こうした、
外交的な戦略として、
太平洋の小さい島国を抱き込むことは
他の国々も行っており、

特にそれが、顕著なのは、
中国と台湾である。

理由は、
中国も台湾も、お互いが
「我が国が本当の中国である」
といいはっていて
対立関係にある。

よって、これら両国は、
どれだけ多くの国から
外交関係をもってもらうか
(国であると認めてもらえるか)
を、ものすごく重要視している。


(中国にとって、
 台湾が国として独立してしまうことは、
 現在、最大の問題の一つ、になっている。
 台湾は最近、国連のWHOから
 オブザーバーとして認められた。)


で、現在の
太平洋諸国と、中国および台湾との関係だが、

中国と国交を樹立している国は、
(あいうえお順)

サモア
トンガ
バヌアツ
パプアニューギニア
フィジー
ミクロネシア

台湾との国交を樹立している国は、

キリバス
ソロモン諸島
ツバル
ナウル
パラオ
マーシャル諸島

と、いうわけで、ちょうど
6か国ずつで、まさに均衡状態。

今後も、中国と台湾は、
これらの諸国への援助を行い、
自分の国に「寝返って」もらうように
努力をしていくことになるだろう。

(太平洋の島嶼国は、
 ずるがしこいために、
 けっこう毎年のように
 指示する国を変えたりしている。)


ちなみに、今回、太平洋・島サミットに参加した
国ではない「地域」とは、
ニュージーランドの自治領となっている
ニウエと、クック諸島の二つである。

この他、
オーストラリアとニュージーランドを加えて、
16か国、ということになる。


・・・
・・・

長くなったが、
以上が、日本が、これらの国に支援をする理由である。

で、その理由が
立派な人道援助であろうが、
汚い国家戦略であろうが、

私は別に、かまわないと思っている。


国際協力や援助には、
必ず、こうした汚い側面があることを知っておいてほしい。


(例えば、国連系、政府系、民間NGO系、それぞれの、
 汚い面について触れておくと)


国連が行う援助は、
常任理事国5か国
(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス)
のいいなりだ、という側面があり、

日本が行う援助は、
国益および外交戦略のためにやっているという側面があり、

民間のNGOが行う援助は、
個人の思い込みの自己満足になっていることが多い側面がある。


が、一方で、

国連は、
現在ほぼ唯一の、多数の国が意見を交わす場所であり、
(強制力や罰則がないとはいえ)
国際法や条約をつくることができる。

政府は、
途上国への二国間援助により、
無償資金援助(お金をあげること)、
有償資金援助(低利息でお金を貸して、将来返してもらうこと)、
技術協力(専門家を派遣したり、その国での人材育成をするなど)
という多彩な、包括的な援助をすることができる。

民間のNGOは、
国連や政府のように、
各国の思索に、一切影響されない、
理想どおりの、純粋な人道援助ができる可能性がある。

(要するに、どの組織も、一長一短がある。)



将来、あなたが、どんな国際協力団体に入ろうとも、

必ず、その団体には
長所と短所(汚い側面)がある。


これを知らずに国際協力を始めた人は、
その「闇」の部分を知った時に、
国際協力を、すぐやめてしまうことが多いのだ。


(こうした人々は、ものすごく多く、
 国際協力を始めた人の。
 9割以上は、すぐやめてしまうのが、現状だ。)


だから、是非、皆さんには、知っておいて頂きたい。


国際協力を始める前に、
どんな国際協力団体にも、裏の、汚い部分があることを。

そしてそれは、
(団体の予算をどこかから入手するために)
ある程度、必要なことであり、

その団体の立場からくる、
あなたにできる「行動の制限」などを踏まえた上で、

「はたして何をするのが最善か? もっとも現実的か?」

ということを考えるのが、
「おとなの国際協力」だ、ということになる。


繰り返しておくが、

あなたが、100%良い人間でないのと同じように、
あなたのような人たちの集合体である国際協力団体も
100%良い(きれいな)組織ではない。

(当たり前のことだ。)


これを絶対に、忘れないでほしい。


・・・

以上を踏まえた上で、
今回、日本政府が表明した援助について述べる。


1.
麻生首相は、
この地域へのODA(政府開発援助)のお金を
3年間で、500億円、用意する、と表明した。

(これは、上述した、
 中国からの援助が430億円あったため、
 それよりも多い金額を出す必要があった。)

(日本が、国連の常任理事国入りに賛成だ、
 と投票してもらうため。
 中国がそれに反対しても、
 日本側についてもらうため。)


2.
上記の金額のうち、
68億円をもちいて、
太陽光パネルや、
海水淡水化装置の準備をする、
と表明した。

これは、日本の技術力を示すもので、
外務省の担当官によると
「今後、中国が、さらに高額のお金を出すことはできるが、
 日本のような、環境分野における高い技術はないので
 マネができないはずだ」
と言っている。

つまり、
シャープやサンヨーなどを始めとする
ソーラーシステムの技術では
日本はずぬけているので
この技術力による支援の重要性を
太平洋の島嶼国に示し、
(今後、中国からのさらなる巨額の支援があったとしても)
日本側についてもらおうと考えた。


参考:
シャープ
http://www.sharp.co.jp/
サンヨー
http://sanyo.com/


これに関連する事項として、例えば、
ツバルでは、
時期によっては、降水量の減少から
水不足となって困っており、
海水淡水化装置が必要となっているのだが、

海水淡水化装置は、大量の電気を必要とするため、
ツバルに火力発電所が作られたのだが、
これは、大量のCO2を出すため、環境には悪い。

よって、
日本政府は
ソーラーシステムと海水淡水化装置を組み合わせ、
(CO2の出ない)太陽光発電で産生した電気で、
海水淡水化装置を動かすシステムを提供する方向。

基本的に、これは良い考えだと思う。


日本政府およびJICA(国際協力機構)は、
以前から、
「人間の安全保障」の概念を普及するための
イニシアチブをとっており、
「水は生きるために不可欠な要素」なので
その方針と合致する。


参考:
JICA,人間の安全保障
http://www.jica.go.jp/activities/security/JICA
JICA,水資源
http://www.jica.go.jp/activities/issues/water_disaster/


3.
また
国土が狭いツバルなどの島嶼国では
海面上昇だけでなく
「ゴミ処理」の問題が、
現在、最大の環境問題になっている。

これに対しても、廃棄物処理の技術を
技術大国である、日本が提供する方向。

(このゴミ処理については、後日、詳述する。)


4.
南太平洋の災害保険制度の創設を行う。

世界銀行との共同で日本政府が運営する方向。
オーストラリア、ニュージーランドも協力するかも。

例えば、地震や津波などの
大きな自然災害があった場合、
(毎年の保険金を支払っていれば)
保険金が大量にもられる制度を
麻生首相は提案した。

このため、数十億円規模の基金を用意するという。


5.
人と人の交流を、促進する。

具体的には、
1000人以上の青少年が交流するような
基金と仕組みを作るとのこと。

さらに、
環境や教育などの分野で、
3500人の人材育成を助ける予定。

キャッチコピーは
We are islanders.
(私たちは、島に住む仲間たちです。)


6.
その他、
教育、保健、環境の分野で
広く援助を行うとのこと。


7.
まとめとして、麻生首相は、
気候変動問題にともに取り組む
「太平洋環境共同体」
構想を提案し、
23日、採択された。


・・・
・・・

またまた、余談だが、
麻生首相が、
「太平洋環境共同体」構想を提案したのは
以下の理由があると思われる。

まず、
今年(2009年)の12月に
デンマークのコペンハーゲンで
COP15
(国連気候変動枠組み条約締結国会議)
が開かれる。


参考:
United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC)
http://unfccc.int/2860.php

気候変動に関する政府間パネル
(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)
http://www.ipcc.ch/


で、日本はこの、COP15の時に、
日本の立場から見た時に、最善となるような
「ポスト京都議定書」の
CO2排出の枠組みを、各国に提案する予定だ。

で、その(日本に都合のよい)提案をした時に、
上記の
「太平洋環境共同体」に入ってくれた島嶼国に
賛成してもらいたい、というわけだ。

この背景としては、
(客観的にいって)
京都議定書の時に、日本が約束させられた条項は、
はっきりいって、明らかに日本に不利な内容だったからだ。
次の、
COP15では、
このような失敗をしたくない、という背景がある。

(この京都議定書での日本の失敗も、後日詳述する。)


ちなみに、
このCOP15で日本が提案する内容は
以下のような状況である。


温室効果ガス(CO2など)排出の削減目標について、

2050年までの「長期目標」としては
60〜80%減らす、ことを提案することを
既に決定している。

一方で、

2020年までの「中期目標」については
現在、経済界(主に経団連)からの反対が強く、
まだ決まっておらず、混沌としている。

まず、両極端を紹介する。

環境系NGOである、WWF(世界自然保護基金)は、
2020年までに、15〜30%減らすことが必要だ、
と言っている。

WWFジャパン、世界自然保護基金
http://www.wwf.or.jp/

一方で、経団連の御手洗会長(キヤノン)は、
CO2を減らすことは現状では不可能で、
なんとか、4%増加におさえるのが、せいいっぱいである、

よって、この数字(4%増)に落ち付かせるのが妥当だ。
現在、サブプライムやリーマンショックの問題があり、
この数字よりもCO2を減らすと、
雇用がさらに喪失してしまう危険性がある、
と言っている。

社団法人 日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/indexj.html

ようするに、

かたや、地球のためには、マイナス30%必要だ、
と言っており、

かたや、経済のためには、プラス4%におさえるのがせいいっぱい、
とのこと。


で、中間あたりの意見としては、

経済同友会の桜井代表幹事が、
地球温暖化に関する科学的見地を考慮すると、
マイナス7%ぐらいが妥当ではないか、
と言っている。

経済同友会
http://www.doyukai.or.jp/

おそらく、
この数字あたりに落ち着くのではないか、
といわれているが、決定されるのは、来月(2009年6月)である。

はたして、日本はどんな提案をするのか?


・・・
・・・


で、ようやく話を戻す。


以上のように、
日本政府が、途上国に支援をする場合、
今回の太平洋島嶼国への援助に限らず
他の場合でも、必ず、
自国の国益のために行っている、ということ。

が、
それでも行われた援助の内容をみてみると、

太陽光発電と海水淡水化装置の融合システムなど、
けっこういいものがそろっている。

これは、
今回のサミットで、

日本が提案すべき内容の草案をつくることに関わった
外務省や環境省の人たちだけでなく、
麻生首相のブレインとなっている大学教授や知識人たち、
国際協力機構(JICA)からの提案、
NGOたちからの様々な提案、
(また政府がそれらを聞く場所を作ったこと)
などが、
包括的にまとめられた結果による。


国際協力は、このように
汚い側面がたとえあったおしても
大筋で、より良い方向に向かっていくように
それに関わる人が努力をしてゆく
共同作業だ、と言ってよいかと思う。


もし、
将来、あなたが、国際協力に関わりたいのであれば、
そうした、
目に見えない、非常に広い、共同作業の中の

一つの「力」になって頂きたい。






参考:
外務省 第5回太平洋・島サミット公式ホームページにようこそ!
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/area/ps_summit/palm_05/index.html

JAIPAS 社団法人・太平洋諸島地域研究所
http://www.jaipas.or.jp/

太平洋諸島センター(Pacific Islands Centre, PIC)
南太平洋経済交流支援センター,
South Pacific Economic Exchange Support Centre, SPEESC
http://www.pic.or.jp/




スリランカ内戦終結、しかし憎悪の連鎖さらに 5285字

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私は、スリランカへ3回行っている。
だから、愛着がある。

しかし、
それだけの理由ではなく、

国際協力に興味のある方は、
是非、このスリランカの民族問題にも
関心をもって頂きたい、と思っている。

今回、(以下に述べるような)最悪の形で、
この国の内戦が終結したが、

(非常に暴力的だったのだが)

今後、このようなことを起こしてはならない、
と思う。


もし、

もし誰かが、
今回の「ノルウェー政府」のような役割を
(しかも、もっとうまく)
二つの民族の間で果たすことができたならば、
事態はもう少し、
好転していたのではなかったか・・。

(そんな国際協力の形が、ありえたのではないか・・)


そうすれば、
人々の間に生まれてしまった憎しみの連鎖を
断ち切ることができたかもしれない。


・・・・・
・・・・・


まず、歴史から始めよう。


スリランカの国のある島を
もともと、セイロン島、という。

インドの南東にある、小さい島だ。



・・・・・王国から植民地時代へ・・・・・


紀元前5世紀 シンハラ人が、北インドから移住。
       王国を作る。

紀元前3世紀 仏教が伝来し、以後、
       シンハラ人はずっと仏教を信仰する。

紀元前2世紀 タミル人が、南インドから移住。
       タミル人は、ヒンドゥー教徒である。

       以後、この両民族は、
       民族的・宗教的に、ずっと対立する。


       私(山本)の主観だが、
       顔の特徴について述べると、

       シンハラ人は、鼻筋のとおった美形タイプであり、
       タミル人は、鼻のまるい愛嬌のある顔である。


       両民族の人工の比率は、
       シンハラ人が、75%。
       タミル人が、 20%。


16世紀から17世紀にかけて

     ポルトガルとオランダが、このセイロン島を植民地にした。

18世紀 イギリスが奪い取り、植民地にした。

     イギリスの植民地時代は、
     それに抵抗し続けたシンハラ人よりも
     比較的従順だったタミル人が、
     イギリス政府から、重用された。



・・・・・独立から、民族間の差別の始まり・・・・・


1947〜1948年にかけて、
     イギリスがインドから撤退したのと同時に、
     スリランカも独立。

     この時、「セイロン」として国の主権を獲得。

     (しかし、いわゆる英連邦(common wealth)となる。)

     同時に、一人一票制による選挙が行われたため、
     多数派のシンハラ人による政権ができる。

1949年 多数派のシンハラ人政府は、
      自分たちに都合の良い法律を作り、

      タミル人は、なんと、選挙権を失ってしまった。

1956年 シンハラ人は、「シンハラ・オンリー法」を作り、
      政府の官僚などへ、シンハラ人だけが就職できるようにした。
      また、大学への入学も、シンハラ人だけが優遇された。

      つまり、タミル人への露骨な差別が始まった。

1965年 シンハラ人は、さらに、反タミル・キャンペーンを始め
      「民族浄化」(シンハラ人以外の民族は根絶すること)を提唱した。



・・・・・タミル・タイガー(LTTE)の創設・・・・・


1972年 セイロン政府は、「スリランカ」に国名を変更した。

      その名の意味は、
      シンハラ人の言葉で、「光り輝く島」。


      この年、もはや我慢のできなくなったタミル人の中で、
      反発する若者たちが、武装集団を各地で作っていく。

      その中で、傑出したカリスマ性をもっていたのが、
      「プラブハカラン」という青年だった。

      (Velupillai Prabhakaran 1954/11/26-2009/05/18)。

      プラブハカランは、ナポレオンなどを崇拝しており、
      彼らと同じような生き方をし、タミル民族を独立させる野望を持つ。

      というか、上記の歴史をみればわかるとおり、
      これほど迫害されてきた歴史を見れば、

      彼でなくても、
      シンハラ政府を倒すか、または、
      タミル人の独立国家を作ろうと思うのは、当然であろう。


1975年 タミル・イーラム解放のトラ
      (Liberation Tiger of Tamil Eelam、LTTE)
      が創設される。
      (以下、LTTEと略す。)

      プラブハカランは、このLTTEの、議長に就任する。

      しかし、このプラブハカランは、自分の理想のためには、
      集団を選ばない人だったようで、あらゆる非合法な方法で、
      シンハラ人への復讐を始める。

      手始めとして、
      LTTEは、スリランカ(北東部の都市)の
      市長(シンハラ人)を暗殺する。

1978年 一方、シンハラ人政府は、憲法にて、
      シンハラ人の信じる「仏教」に、最高の地位を与える、と宣言。

      さらに、シンハラ人政府は、穏健派タミル人の政党と断絶し、
      敵対姿勢を強める。

1983年、ついに、
      LTTEは、ゲリラ攻撃で、政府軍の兵士を多数殺害。

      これに対して、
      シンハラ人は、首都コロンボで、タミル人に対し暴動をおこし、
      大規模な迫害をする。

      (これを、黒い7月、と呼ぶ。)


      これらにより、両者の対立は深刻となり、
      以後、内戦が始まってゆく。



・・・・・鬼の目にも、愛・・・・・


なお、
LTTEの代表、プラブハカラン議長は、オーストラリア人女性と結婚した。

この女性の名前を、マディワディーニ ( Madiwadini )と言う。
愛称は、マディー。

http://www.spur.asn.au/LTTE_in_Thailand.htm


本当に、仲睦まじい(なかむつまじい)間柄だったらしい。


マディーは、自国オーストラリアなどで
LTTEのために、資金の調達をおこなっていたようだ。

http://ibnlive.in.com/news/fbi-says-tamils-in-australia-fund-ltte/20426-2-1.html

http://www.tamilsydney.com/content/view/1488/37/


なお、資金の調達 ( fund raising ) は、オーストラリアだけでなく
世界各国で行われていた。



・・・・・世界初の、自爆テロ、それは女性?・・・・・


1987年 LTTEが、ついに独立宣言。
      LTTEは、首都コロンボで爆弾テロを起こす。

      すると、お隣りの国から、インド軍が
      スリランカに入り、LTTEと戦闘になる。


      その後、すったもんだの後、


1989年 インドの仲介で、
      シンハラ人政府と、LTTEは一度、停戦する。

1990年、しかし今度は、
      シンハラ人のほうの民族主義者たちが、
      タミル人に対し、テロを行い、再び内戦が再開。


1991年 LTTEは、2年前の(インドからの攻撃の)はらいせに、
      元インド首相の、ラジーヴ・ガンディーを、
      「女性の自爆テロ」で殺害する。

      (これが、おそらく、世界で初めての、自爆テロだと思う)


      つまり、
      世界で初めて「自爆テロ」を行ったのは、
      (イスラム教徒ではなく)
      スリランカの、ヒンドゥー教徒の、タミル人なのである。


      プラブハカラン議長には、強力なカリスマ性があり、
      狂信的な信奉者がおり、
      多数の女性からも支持されていたらしい。

      (女性だけで構成された軍事部隊も多数あった。


      この様子は、LTTEを支持する「タミル・ネット」という
      ウェブニュースサイトに詳しい。

http://www.tamilnet.com/


      それに加え、彼は(本当に)手段を選ばず、


      この頃から、LTTEは、村の子どもを連行(誘拐?)し、
      子ども兵を大量に作ってゆくことを行った。

      連行された子どもたちは、
      イデオロギー教育(いわゆる、洗脳)を受け、
      シンハラ人を殺すことをなんとも思わなくなり、
      かつ、自爆テロなども、いとわぬ「生きた兵器」になる。


      (このことは、国連児童基金(ユニセフ)から糾弾されている。)

http://www.unicef.or.jp/children/children_now/funso.html


      この件に関し、説明しておくと、

      こうした非道な行為も行われていたため、
      タミル人の村でも、
      LTTEを支持する人と、嫌う人にわかれていた。

      また、私が現地に行っていた時に、感じとったものは、
      ほとんどのタミル人の人は、
      「もう、どっちが勝ってもいいから、早く内戦をやめてくれ」
      と思っていたと思う。

      (ほとんどのタミル人は、温厚な性格をしている。)



1993年、LTTEは、シンハラ人政府の大統領を暗殺した。
      その他、首都コロンボなどで、多数の無差別テロも行う。

1997年、アメリカが、LTTEをテロリストとみなす、と宣言。

1999年、LTTEは、シンハラ人政府の大統領を再び暗殺しようとしたが、
      今度は未遂に終わったが、大統領は視力を奪われた。



・・・・・ノルウェー政府による、必死の努力。停戦への道・・・・・


2000年、ノルウェー政府の仲介(調停)で、停戦となる。

      LTTE側の要求は、一貫して「自治権の獲得」。
      それが無理な場合、「分離独立」だった。

      が、ノルウェーは、
      これをなんとか、シンハラ人政府と調整することに成功した。


      (素晴らしい。これが本当の国際協力かも。)


2001年、しかし、
      (シンハラ人政府は、約束を守らなかった、として)
      LTTEの特攻隊が、シンハラ人政府の空軍基地などを破壊。
      停戦が破られる。

2002年 再び、ノルウェー政府が仲介をし、
      シンハラ人政府と、LTTEは、またまた、停戦に合意した。


2004年 ところが今後は、
      LTTEの中の、「カルナ派」という一派が、LTTEと離別。

      シンハラ人政府の諜報機関(スパイ等)による、
      LTTE内の内部不和工作が成功したものとみられる。


2006年、これに怒ったか、
      LTTEが、停戦の破棄を宣言。テロ攻撃を再開。
      これに対し、シンハラ人政府も、応戦。


      以後、戦闘は、再び激化した。


      そして、絶望的な「エンディング」をむかえる。




・・・・・最後の決戦。そして憎悪の連鎖・・・・・


 
2008年 シンハラ人政府は、LTTEとの停戦を、(正式に)破棄。

2009年1月25日

   シンハラ人政府は、LTTEへ猛攻撃。
   重火器での爆撃を行うなど、まったく容赦のない攻撃をする。

   そしてついに、
   ムライティブという、LTTEの本拠地の町を攻略する。

   (これが、事実上の、最後の決戦だった。)


   ここにおいて、最盛期には、国の3分の1を支配していた
   LTTEは、拠点となる都市を、ほぼすべて失うまでに落ちぶれた。


2009年5月 シンハラ人政府は、LTTEの支配していた北東部をほぼ制圧。

   LTTEは、ムライティブ近くの海岸の一角、狭い地域に逃げ込み、
   民間人20万人を、「人間の盾」にして立てこもった。

   しかし、それでもシンハラ人政府は、重火器による攻撃をやめない。


   民間人の巻き添えを懸念する国連は、
   シンハラ人政府に、攻撃の自粛を求めるが、
   シンハラ人政府は、これを聞き入れず、いっそう攻勢を強めた。


   (民間人を盾にするほうも、最悪だが、
    それを気にせず、攻撃するほうは、もっと最悪だ。

    要するに、この内戦、どちらも、最悪で、正義は、ない。)


2009年5月9日

   戦争や内戦の最中(さなか)でも、
   民間人の人権蹂躙(じんけんじゅうりん)を監視する役目をもつ
   赤十字国際委員会(ICRC)も、
   あまりの攻撃のひどさに、現場からやむなく撤退する。

   このため、この後、どれほどひどい惨状に、
   「人間の盾」となった市民があったのか、確認できない。

2009年5月16日

    英連邦の宗主国であるイギリスのブラウン首相は、
    (英連邦に含まれるスリランカに対し)
    「空爆や重火器の使用の自粛をする」
    と既に過去に約束したことを守るよう要請した。

    イギリスは、シンハラ人政府が、この約束を守っていないという
    確かな証拠がある、と批判した。


    同日、国際人権団体のNGOたちも、
    シンハラ人政府とLTTEの双方が、
    戦争犯罪および重大な人権侵害をおこしている可能性があると指摘。


2009年5月17日

   LTTEは、「敗北宣言」をし、「武器を置く」と声明をだした。
   「民間人も、すべて解放した」と言った。

   しかし、それでもシンハラ人政府は、
   「信用できない」として攻撃をやめず、
   とどめをさすための、攻撃を続けた。


2009年5月18日 

   逃げ出そうとした、プラブハカラン議長ら、LTTE幹部を
   政府軍が射殺。

   妻マディーとの間に生まれた、跡継ぎの長男も、射殺。


   シンハラ人政府は、殺害したプラブハカランの映像を
   防衛省のホームページで公開し、完全に勝利したことを宣言した。

http://www.defence.lk/new.asp?fname=20090519_03



   これにより、約25年におよんだ内戦が終結した。


   最悪の形で。



・・・


シンハラ人政府の大統領は、この日、
これからは、
民族間の対立をなくしていくよう努力する、
と会見で述べたが、

これだけむごいことをしておいて
そう言われても、到底信用できない。

民族間に生まれたお互いへの憎悪は、
10年や20年では、決して消えることは
ないと思う。


そしておそらく、
LTTEの残党によるテロが、
またすぐ始まると思う。


あと、
インド南部など、海外に逃げてきたタミル人(難民など)は
100万人以上いるのだが、その多くは、
「政府軍の軍事強硬策による、暴力から逃れてきた」
と言っている。

この人たちを、これからシンハラ人政府はどうするのか?


また、
この内戦後の復興には、
先進国からの支援が必要なはずだが、

もっとも援助をしてくれるべき
英連邦の宗主国、イギリスとの約束を
シンハラ人政府は守らなかったため、

イギリスが、
「内戦が終わりましたか。はい、そうですか。」
と、支援をしてくれるとは思えない。

(それでは、イギリスの面子(めんつ)がつぶれるからだ。)

よって、国の北東部など、内戦でぐちゃぐちゃになってしまった場所に住む
タミル人たちの生活は、当分ぼろぼろの状態が続くと思う。

つまり、タミル人たちの不満は、今後も蓄積されていくのだ。



・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・


以上が、スリランカ内戦の顛末(てんまつ)だ。



ここまで、がんばって読んだ人は、
驚いたのではないだろうか?

これほどひどい内戦も
あまり他に例をみないのではないか?


私は、
ルワンダやカンボジアにまけないくらい
このスリランカ内戦も酷い(ひどい)話だと思う。



いったい、人間というのは、
どこまで愚かになれるものだろうか・・



というのが、正直な感想だが、

世界をなんとかしようと、
国際協力をやろうという人は、

こうした現実から目をそむけてはならない。


歯をくいしばって、絶望的な事実を見つめ、
なんとか、対立する両者に、話し合いをさせる場を
つくっていかなければならない。


こういう面では、
ノルウェーなど北欧の国々はがんばっていて、

金(その次は、技術)を出すしか能がない、
どこかの国の援助とは、
一線を画する。



もし、みなさんが、
戦争や内戦で苦しんでいる人々を救い、
不幸になっている女性と子どもたちを救い、

そして、

人間という種(しゅ)を救いたいのであれば、

是非、この、戦争や内戦の調停、という分野に
挑戦して頂きたい。







・・・平和構築および人権に関する組織、国連系、政府系、民間系の順・・・

国連人権高等弁務官(OHCHR)
Office of the High Commissioner for Human Rights
http://www.ohchr.org/EN/Pages/WelcomePage.aspx

国連人権高等弁務官(OHCHR)の説明、外務省国際機関人事センター
http://www.mofa-irc.go.jp/link/kikan_info/ohchr.htm

スリランカの拷問/虐待問題、国際社会の批判の的に
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711085371/1.php


国連平和維持局(PKO、PKF)
United Nations Peacekeeping
http://www.un.org/Depts/dpko/dpko/index.asp

内閣府内・国際平和協力本部事務局
http://www.pko.go.jp/


国連難民高等弁務官(UNHCR)
UNHCR - The UN Refugee Agency
http://www.unhcr.org/cgi-bin/texis/vtx/home

国連難民高等弁務官(UNHCR)日本事務所(NPO)
http://www.unhcr.or.jp/


国際協力機構(JICA)
http://www.jica.go.jp/

平和構築 課題別取り組み 事業案内 - JICA
http://www.jica.go.jp/activities/issues/peace/index.html

英国国際開発省(DFID)
DFID - UK Department for International Development
http://www.dfid.gov.uk/

米国国際開発庁(USAID)
U.S. Agency for International Development
http://www.usaid.gov/


ノルウェー国際開発庁(NORAD)
Norwegian Agency for Development Cooperation (Norad)
http://www.norad.no/

ノルウェーの外務省
Ministry of Foreign Affairs - regjeringen.no
http://www.regjeringen.no/en/dep/ud.html?id=833

ノルウェーの開発協力 (Norway - the official site in Japan)
http://www.norway.or.jp/policy/humanitarian/development/development.htm

紛争地域におけるノルウェーの和平・調停活動
http://www.norway.or.jp/policy/peace/peace/peace.htm


(注; ノルウェーは、JICAに相当するNORADが二国間の長期援助を、
    外務省が、多国間援助と、緊急人道援助を行っている。)


赤十字国際委員会(ICRC)
International Committee of the Red Cross (ICRC)
http://www.icrc.org/

国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)
International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies (IFRC)
http://www.ifrc.org/

日本赤十字社
http://www.jrc.or.jp/


赤十字への山本のインタビュー、 「赤十字とは何か?」
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_01.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_02.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_03.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_04.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_05.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_06.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_07.html
http://www.ets-org.jp/hosoku/sekaitokoi_008_08.html


AMNESTY INTERNATIONAL
http://www.amnesty.org/

AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN
http://www.amnesty.or.jp/

AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN, News Release
http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=414


Human Rights Watch
http://www.hrw.org/

Human Rights Watch, News Release
http://www.hrw.org/en/news/2009/05/10/japan-back-un-action-sri-lanka



新型インフルエンザ、本当の感染力は? 4165字

.
予想が、的中してしまった。(汗)


私は、5月2日のブログで、
感染拡大のシミュレーションの論文を紹介した。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251881.html

次いで、5月19日のブログで、
関西の神戸高校を中心とした国内での新型インフルエンザ発生を分析し、
5月22日頃からの関東への波及を推定した。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65259476.html

さらに、5月21日のブログにて、
遅くとも明日(5月22日)には、関西から関東にウィルスが拡散する、
と書いた。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65260312.html


そうしたら、今日、
次のニュースが入ってきてしまった。


・・・

5月22日、
埼玉県は、埼玉県鷲宮町に住む29歳の男性が
新型インフルエンザに感染していることを
本日未明、確認した。

男性は、5月17日から19日まで、
大阪・京都方面へ旅行しており、
20日に発熱。21日に発熱外来を受診した。

この男性に、海外渡航歴はない。

・・・

以上より、
関西方面で蔓延してしまった新型インフルエンザウィルスが、
ついに関東にも入ってきたことが、
ようやく確認された、と言っていいかと思う。

もちろん、この見つかった患者だけが
関東でウィルスを持っているわけではなく、
すで、関東でも多数の人が感染しており、
その一部が、初めて発見された、とみるのが妥当。


・・・

こうした、
新型インフルエンザに関する情報を、
インターネットを通して皆さんに提供する場合、
注意していることがある。

それは、
「不安を煽り(あおり)すぎてもいけない」
かといって、
「災厄の可能性について、触れないわけにもいかない」

という
二つの板挟みの中で、
バランスをとった情報を提供することだ。
(当たり前、だけど)


しかしながら、自分を客観的にみた場合、
私は医師であり、国際協力にかかわるものなので、
発言をする時に、
やや、「危険性を、煽る側」に、
ちょっとだけ、わざと偏る(かたよる)ようにしている。

その理由は、
現在、WHOが、新型インフルエンザの警戒度を
最高の「フェイズ6」にしようとしているだが、

(医学的には、もう、とっくにフェイズ6なのだが)
(しかしこれをすると人や物の移動が制限されるのだが)

欧米や日本などの経済界が、
GNPを始めとする経済への悪影響が大きくなりすぎるとして
(WHOに釘を刺し)
警戒度を上げさせない状況があるからだ。

よって、私のことを
客観的に、社会の一つの要素、として考えてみると、
わざと、危険性を、やや煽る発言をした方が、
「社会全体の、様々な人の意見の総和」
を考えた場合、
全体としてはバランスが良くなるだろう、
と、考えるからだ。


・・・

しかし、その
「ちょっと危険性をあおるほうに偏った私の予想」
(と、自分で思っていたこと)
が、的中してしまった。

つまり、
新型インフルエンザの感染力(などの社会への影響)は、
医者の私が、(普通に)考えるよりも、もっと強い可能性がある、
ということになる。

・・・

通常の季節性インフルエンザは、

感染力が、       1.3人
死亡率が、       0.1%弱

日本の国内感染者数が、 毎年、1000万人
日本の死亡者数が、毎年、数千人〜1万人

感染力とは、ある患者が、ウィルスを持っている場合、
その人が、完治するまでに、
他の人、何人にウィルスを感染させてしまうか、
という人数である。

つまり、
通常の、季節性インフルエンザの場合、
一人の患者は治るまでに、平均で、1.3人に感染させるのだ。

(感染させるのは、発症する前々日から、発症して七日目ごろまで)



・・・

今回の新型インフルエンザA(H1N1、豚由来)は、
これまでの症例の解析によると、

感染力は、2.0〜5.0人
死亡率が、0.1〜2.0%(しかし、今後変異する可能性あり)

としている。

参考:
The Signature Features of Influenza Pandemics
Dr. Miller(NIH), et al
New England Journal of Medecine, May 7, 2009

(注: 論文が掲載されたのは、アメリカで最も権威ある医学雑誌)


・・・

つまり、今回の新型インフルエンザは、
通常の、季節性インフルエンザの、数倍、感染力が強い
可能性があり、このため、
通常の、季節性インフルエンザのつもりで予想していると
もっと被害(感染)が拡大する可能性がある、
ということになる。

なお、一方で、
政府が作っていた、もともとの、新型インフルエンザ対策は、
鳥インフルエンザ(H5N1、強毒性で死亡率が60%)を
想定していたものだったので、
死亡率、という観点でみれば、
それは、予想よりもはるかに低い、と言ってよい。

しかし、感染者が大幅に増えれば、
死亡率が、0.1%と低くても、多数の死者がでる。

具体的には、
1千万人を超す感染者がでれば、
1万人以上の人が、死亡する。


・・・

日本で、どのくらいの感染者がでるかは、
まだ、わからない。

しかし、
社会不安を、煽りすぎる気は、ないので、
以下、客観的に、様々なこれまでの事象と発言を、列記しておく。


・・・

政府が、だいぶ前に試算した予想では、
(これは、鳥インフルエンザが入ってきた場合だが)
日本国内で、最大で2500万人が感染する、としていた。


で、現在、
日本国内で感染を確認したケースは、約300人。


東北大学の押谷仁(おしたにひとし)教授
(大学院医学系研究科・微生物学分野)は、
5月20日の講演で、以下のように言っていた。

「現在、すでに確認されている例の、
 少なくとも10倍の人が感染していると考えられる。

 これからの数週間から一か月程度で、
 日本国内で、数十万人が感染するのではないか。」

http://web.bureau.tohoku.ac.jp/100aniv/campaign/smnr6/ositani3.html


・・・

一方、今回の発端(ほったん)となったメキシコは、
昨日(5月21日)
「新型インフルエンザの制圧宣言」を発表した。

(もう、流行は終わった、と言ったのだ。)
(それが、本当かどうかは、ともかくとして。)

これまでの感染者数は、
確認されたものが、4008人、死亡数が、78人、
(死亡率、約2%)だったと発表した。

しかし、これには、異論が多く、
メキシコは、感染疑い例に対し、ほとんど確認検査を
行っていなかった。

よって、WHOなどが、実際に感染していた人の数を推計し、
その結果では、2万3千人(6千〜3万2千人)
が感染していたのではないか、という論文がある。

参考:
Pandemic Potential of a Strain of Influenza A (H1N1)
Fraser C. et al.
Science. 2009 May 14

(注; サイエンスは、世界で最も権威ある科学雑誌)


日本の人口は、メキシコとほぼ同じなので、
この数字(つまり、約2万人)ぐらいの感染者になる可能性もあると思う。


・・・

同じ先進国である、アメリカはどうかというと、
現在、
感染の確認数が、5710人。死亡者数は、8人。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の
ベッサー所長代行によると、

「アメリカにおける新型インフルエンザの
 流行曲線( epidemic curve )は、
 上昇中であり、また、
 地域(州)ごとに異なる動きをみせており、
 事態が鎮静化した、というには、ほど遠い状況だ」

と言っている。

http://www.cdc.gov/h1n1flu/pubs/

・・・

ここにおいて、
我が国、日本の状況にもどってみると、

関西などの蔓延している地域では
(指定病院で、全例への遺伝子検査をすることをやめて)
一般の病院で、医師が必要だと判断した場合のみ
遺伝子検査で「確認」するようになる方向となった。

これは、
関西などの蔓延地域では
検査を必要とする症例の数が多すぎて、
物理的に検査をすることが、
もはやできない、という状況がある。

(要するに、パンクしてしまった。)

つまり、
日本は、「確認」するのを
(ある意味で)
諦めた、のだ。


注:
日本でこれなのだから、
医療体制の整っていない海外では
もっといい加減に「確認」が行われている、
と考えたほうが良い。


・・・

よって、今後、新聞やテレビで
国内の感染確認者数は、何人、とか言っていても、
疑われた症例の全例を検査しているわけではないので、
実際は、確認例よりも、ずっと多い可能性が高い。

もちろん、それ以外にも
症状が軽くて、風邪だとおもって病院にいかない人や、
全く症状がでない「不顕性感染」のケース
(でも、ウィルスは排出している症例)
などがあるため、

ともかく確認例よりも、実際の感染者数は
もっとずっと多い、ということ。


・・・

で、もどって、このような状況の中で
皆さんにできることは何か、というと、


自分が感染したくない場合には、
人混み(特に満員電車)を避けること、と
手洗い。

社会に広がらないようにするためには、
マスクをすることと、咳エチケット。
(咳をする時はティッシュでおさえ、
 かつ、他人から1m以上離れる。)

もし自分が感染したと思ったら、
地方自治体の保健所等にある
発熱相談センターに電話をし、
指定病院にいくのか、
一般の病院にいっていいのか、
指示を受ける。


これ以上のことを知りたい人は、
以前にさんざん書いた、予防方法を
読んで下さい。


短いほうがいいひとは、下記へ。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65259476.html

長くてもいいから、本当のことが知りたい人は、下記二つへ。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232371.html

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232637.html


・・・


一応の結論としては、
今回の、日本国内での新型インフルエンザの流行は、

仮に、感染が「確認」されたケースが
数百人で終わったとしても、
(そう報道されたとしても)

実際には、
少なくとも(最低で)2万人以上の人が感染することになる、
ということである。



新型インフルエンザ、死亡率0.1%の意味  4033字

.
たまには、新聞記事の解説などをしよう。

・・・
・・・

5月21日、読売、朝日、毎日の朝刊
および厚生労働省のプレスリリースより。


東京都の洗足学園高校に通う、女子の高校生2名が
新型インフルエンザと確認された。

その2名の住所は、
東京都・八王子と、神奈川県・川崎市。

二人は、アメリカの模擬国連
(国連のマネをして学生がやるイベント)
に出席するため、アメリカに行っていた。

5月11日 アメリカに到着。

5月14日 模擬国連の開会式
      (おそらく、この日に感染した。)

5月16日 模擬国連二日目、閉会式
      (おそらく、この日からまわりに
       ウィルスの排出を開始している。)

5月18日、帰国するための飛行機の機内で発熱。

      乗っていた飛行機は、
      コンチネンタル航空(CO)09便。
      ニューヨーク発、成田着、のもの。

5月19日、午後1時55分に、成田空港に到着。

      空港の検疫を通過する際、
      サーモグラフィー(温度感知機)で
      発熱している二人が、発見された。

      しかし、
      簡易インフルエンザ検査では、「陰性」だった。

      (発症の初期には、
       簡易検査では陰性になることがある。
       精度(偽陰性)は、8割ぐらい。)

      (また、飛行機内で、二人の半径2m以内にいた
       人々は、感染した可能性がある。)

      ともかく、検査は陰性だったため、午後4時ごろ、
      二人はそれぞれ別方向のバスに乗り、帰宅。

      (このバスは、特定されている。)
      (しかし、この時、バスの同乗者に感染させた可能性がある。)
      (検疫官の指示で、マスクはつけていた、という。)

      八王子市の生徒は、その後、
      バスが到着した京王多摩センター駅から、
      京王相模原線とJR横浜線を使って、自宅へ移動した。

      川崎市の生徒は、その後、
      バスが到着した、たまプラーザ駅から、
      東急田園都市線とタクシーを使って、自宅へ移動した。


5月20日、2名とも、
      38度から40度の発熱。
      発熱相談センターに電話。
      それぞれの地元の指定医療機関を受信。

      同日、PCR(ウィルスの遺伝子)検査にて、
      新型インフルエンザA(H1N1)が、「陽性」。

・・・

今回のケースは、最初に関東にウィルスを持ち込んだ人が
特定できているので、
(もしも、関西でのアウトブレイク(大発生)がなかったならば)
厳重な疫学調査と、それによる封じ込め対策を行うことが
できた可能性がある。

(一般の社会に広がる前に、完全に止められる可能性がある。)

しかし、
実際は関西で既に267人以上の人が感染を確認されており、
(よって感染している人は、1000人をはるかに越えていると推計され)
関東にも、すでに大量のウィルスが流れてきていると考えられるので、

上記の
洗足学園の2名の女子高生に対する疫学的な調査や封じ込めをしても
ほとんど意味はない、と考えられる。

(ちなみに、関西方面のアウトブレイクから、
 関東へのウィルスへの流入は、水面下で、
 最速で、5月14日ごろから、
 最も遅くても、5月22日(つまり明日)ごろから、
 始まっている、もしくは、始まると考えられる。)

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251881.html

・・・

余談だが、
「洗足学園中学高等学校」で、全校生徒などに対し、
私は過去に三回、講演を行っており、

「プロとして国際協力を行う、国際協力師、という職業があります。
 その職業に就くためには、これこれこういうことを学生時代にやっておくように。
 そして、世界に目を向けよう!」

などと話していた。


2005年6月16日
2006年06月08日
2008年10月02日


もし、今回の生徒が、私の言ったことに影響を受けて
アメリカの模擬国連に参加したのであるならば、
彼女らが感染したのは、私のせい、という可能性もあるので、
「すみませんでした・・」、という感じである。



洗足学園の前田隆芳(まえだたかよし)校長先生の弁は、以下だった。

「(高校時代に、海外での「模擬国連」に)
 参加させることで得られる経験は
 なにものにも代えがたいと考えた。
 (ので、参加させた。)

 しかし、引く勇気も必要だったかもしれない。」



参考:
洗足学園・中学高等学校
http://www.senzoku-gakuen.ed.jp/



・・・

さらに余談だが、

「模擬国連」のほうも、
私は以前、東京の早稲田大学で開かれたものを見学した。

模擬国連とは、
それぞれの学生(おもに大学生)が、各国の代表のつもりとなり、
その国の立場から、発言を行い、
その結果、最後に多数決などで、決をとる、
というものである。

(自分の普段の意見とは関係なく、)
その国の代表になったつもりで、
その国の「国益のため」に、発言をしなければならない、
ところが面白い。

すべて英語で行い、
議事進行の仕方も、ほとんど全て
実際の国連と同じである。

皆さんも、一度は、
近隣の大学で行われているものを
見学されるといいのではないか。

(今回の、インフルエンザ騒動が、おさまってからにしてね。)


模擬国連委員会
http://jmun.org/

早稲田大学・模擬国連 Model United Nations Waseda Branch
http://tokyo.cool.ne.jp/munwaseda/


・・・
・・・

で、一応、まだ関東では関西のように
「蔓延」はしていないことになっているので

東京都などは、積極的な疫学調査を行い、
接触者の特定と体調の確認などを行う。

接触者は、高危険群と、低危険群にわけられる。

今回のケースの場合、

高危険接触者とは、
1.面と向って、2m以内で、会話をした人。
2.家族
3.飛行機内で2m以内に、長時間座っていた人。
4.感染の可能性を知らず接していた医療従事者。
5.タクシーの運転手。
など。

低危険接触者とは、
1.電車に短時間、いっしょに乗り合わせた人。
2.バスに短時間、いっしょに乗り合わせた人。
など。


・・・
・・・

一方、
関西のほうの、患者群に対する症状の分析が
行われている。

神戸市保健所等が
神戸で発生した43人の患者への聞き取り調査によると、

患者の
90%に高熱(38度以上の発熱)があり、

60〜80%に、倦怠感(けんたいかん)、熱感、咳、のどの痛み、

50%に、鼻水(鼻汁)、鼻づまり、頭痛、

10%程度に、嘔吐、下痢、

7%に、結膜炎

があった、と言う。


が、
これを、うのみにしては、ならない。

38度未満の発熱(微熱)が出た人は、
「自分は、ただの風邪だろう」
と思って、医者にいっていない可能性があり、
そうした人は、
当然、検査もされないので、見つかっていない、というだけ。


あと
アメリカでの症例では、
30%程度に、
嘔吐や下痢などの消化器症状があったのだが、
(上記の報告を参考にする限り)日本では、少ない。

これは、人種差による症状の違いの可能性と、
日本にくる過程で、
(今回の新型インフルエンザが変異しやすい場合)
既に、少し、変異した可能性もある。


・・・

死亡率については、
日本では、まだ報告がないが、
今後、患者が1000人以上でてくれば、
当然、死亡例も出てくると考えられる。

理由は、

まず、5月20日の時点で、

世界全体の新型インフルエンザA型(H1N1)の確認例と死亡数は、
10,243症例で、80人死亡。(死亡率は約0.8%)

メキシコ(途上国・新興国)では、
3,648症例で、72人死亡。(死亡率は約2.0%)

アメリカ(先進国)では、
5,469症例で、6人死亡。(死亡率は約0.1%)

である。

仮に、
日本は先進国なので、被害は、アメリカに近いだろうと考えた場合、
死亡率は、0.1%だが、
この数字でも、
1000人感染すれば、1人が死亡する、ということになる。

ちなみに、
毎年、日本で冬に流行る(はやる)季節性インフルエンザの死亡率が
0.1%弱、なので、
今回の新型インフルエンザは、(今のところ)それと同等の死亡率
(または、それよりちょっと高い程度)
ということになる。


なお、
メキシコの死亡率が、異様に高かった理由は、
メキシコには、
新型インフルエンザの確定診断ができる施設も
(そもそも、検査キットも)
ほとんどなく、このため、
検査ができないから、確認できない、という状態が
つい最近まで続いていたため。

最近、メキシコで行われた疫学的推計調査で、
メキシコでの感染謝すは、
約2万人であった、と試算された。

(この論文は、後日また紹介するつもり。)

これが本当であれば、
メキシコでの死亡率は、0.36%まで下がり、
その医療事情を考えると
ある程度、妥当な数字、といえるかもしれない。


・・・

ただ、皆さんに忘れて欲しくないことが、
一つある。

毎年流行する季節性インフルエンザの死亡率は
0.1%弱だが、

毎年、1千万人の人が感染するため、
「数千人から1万人の人が、死亡」している。

つまり、
なにを言いたいか、というと
死亡率が、低くても
多数の人が感染してしまえば、
数千人以上の人が、死んでしまうのである!


で、
新型インフルエンザは、
季節性インフルエンザと違い、
ワクチンもなく、
過去に似たようなウィルスに
感染した人が、ほとんどいないため、

通常の、季節性インフルエンザよりも
感染する人の数が、多い可能性が高い。

具体的には、日本国内で、

最低で、1000万人。
最大で、6000万人超、

という数字になる。
(これは、日本政府の試算である。)


仮に、悪いほうの、6000万人が罹患した場合、
「0.1%の死亡率でも、6万人が死亡」する、ことになる。


また、
アメリカの死亡率に、日本も近いであろう、
と判断してよいかどうかは、
まだわからない。

統計学的には、
少なくとも、症例数が、2000、を超えないと
正確な推計は難しいといわれている。

(日本は、現在まだ、確定症例は、200〜300人。)

(また、感染してから、平均で、6〜7日めぐらいに
 死亡例がでるので、
 アウトブレイクの初期は、
 死亡率が低く概算されてしまうことが多い。)



よって、
もしも、今回の日本での新型インフルエンザの殺傷力が、

世界全体の死亡率である、0.8%、のほうに近かった場合、

国内での死亡者数は、そうとう増えることになる・・。



その中に、
あなたや、あなたの家族や友人が、含まれないことを祈る。



新型インフルエンザ、感染拡大期、あなたのための対策 4737字

.
兵庫県および大阪府で見つかった国内での新型インフルエンザの発生だが、
それらの患者に、渡航歴がないことから
既に、国内において、人から人への感染が
かなり広がっている可能性が高い。

数日前のブログに記載した
国際感染症研究所の大日(おおくさ)らの
感染拡大シミュレーションを参考にするとすると、
おそらく、以下のようなことが起こったと考えられる。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251881.html

5月4日(感染第0日)ゴールデンウィーク中、ある会社員(?)が北米で旅行中、
           新型インフルエンザA(H1N1)に感染した、とする。
           (以下、この前提で、話をすすめる。)

5月5日(感染第1日)その会社員は、日本に、帰国した。

5月6日(感染第2日)その会社員は、この日からウィルスの排出を開始した。
           繁華街にいく途中の電車の中や、
           その繁華街で、神戸高校の生徒に感染させた可能性がある。

           (なお、この時点で、この会社員はまだ潜伏期。)

5月8日(感染第4日)その会社員は微熱と咳、などで発症した。
           しかし、症状が軽かったため、
           通常の風邪と思って、医者にいかなかった。

           (よって、インフルエンザの検査も、
            いっさい受けなかった。)

           また、二日前に感染させられた高校生も、
           感染後二日を経過したので、
           まわりにウィルスの排出を開始した。

           このため、高校の同級生や、バレーボール部員等に
           感染が拡大。

           (この時点で、高校生は、まだ潜伏期なので、症状はない)

           この日、兵庫高校とのバレーボール部等の交流戦があり、
           神戸高校から兵庫高校の生徒へ、ウィルスが拡散した。

5月10日(感染第6日)、神戸高校の生徒2名が発熱などで発症。

           この時点で、
           最初の会社員と、会社員にうつされた人たちは、
           既に電車の中および勤務先・学校等で
           広く感染させている。

           最初の会社員が特定できていない以上、
           疫学的な感染ルートを特定することは、不可能。

           (よって、政府の決めた「法律上の」定義上、すでに
            国内発生早期、ではなく、感染拡大期に入った、
            と言ってよい。
            理由は、感染ルートが確認できなくなった時点から、
            国内での「感染拡大期」と呼ぶことになっているからだ。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kettei/090217keikaku.pdf

5月12日(感染第8日)、高校生が、開業医の簡易検査で、
             インフルエンザA型が陽性。

5月15日(感染第11日)、高校生に渡航歴がなかったため、
              兵庫県のPCR(ウィルスの遺伝子診断)担当部署は、
              その検査を後回しにしていた。
              よって、検査をするまでに、三日もかかってしまった。

              で、この日、
              日本の国内で(空港の検疫以外で)
              最初の新型インフルエンザA型(H1N1)が
              国立感染症研究所の確認検査の後、報道された。

5月16日(感染第12日)神戸高校、兵庫高校などの生徒が、
             あいついで発症。

5月17日(感染第13日)兵庫県および大阪府において、
             上記の高校生だけでなく、社会人や小学生等も発症。
             PCRにおいて、新型インフルエンザと確定。

             この時点で、すでに、確定された患者は96人。

             国立感染症研究所の
             田代真人インフルエンザウィルス研究センター長は、
             すでに、国内感染者は、
             1000人を超えているであろう
             と発言。


5月19日(感染第15日)これが、本日。
             現時点(正午ごろ)で、感染者数が、
             日本国内で、173人。
             世界では、42カ国、9844人。


5月22日(感染第18日)大日(おおくさ)らの論文によると、
             この第18日めに、
             (もしも、なんの対策も行わなかった場合、最悪で)
             日本の全人口の20%が感染してしまう、
             としている。

             が、このシミュレーションよりも、
             感染速度が、やや遅いようなので、
             (政府や自治体が、様々な対策を行っているおかげで)
             感染の極期を迎えるのは、数日ずれこむと思う。

             よって、私がこれを読む皆さんにお勧めするのは、
             5月22日前後からの1〜2週間程度は、
             東京や名古屋等で発症した、という報道が、
             あろうがなかろうが、
             みなさんの町において、
             満員電車等には、乗らないことを、お勧めしておく。

             (ラッシュ時をさける、時差通勤をお勧めする。)


             なお、注意をようするのは、
             感染が(PCR等で)確認されたケースの、
             少なくとも数倍の人が、
             感染してしまっている、ということである。

             理由は、症状が軽い場合、普通の風邪とおもって、
             医者にいかない人がいたり、
             不顕性感染(ふけんせいかんせん)といって、
             まったく症状がでない状態で、
             周囲にウィルスを撒き散らし続ける人も、
             生じるからだ。

             (で、そうした症状の軽い人から、
             うつされてしまった人が、
             重症化してしまう、というケースもある。)



7月4日(感染第60日)ようやく、ウィルスの第一波が、日本では一度収束する。
            ここまでに感染した人は、
            不顕性感染を入れると、
            最悪の場合、全国民の半分程度になる可能性が、ある。
            


11月某日(感染第??日)ウィルスの、第二派が、日本にやってくる。

            これまで行われてきた、インフルエンザウィルスの
            疫学的調査により、
            ウィルス感染は、第一波だけでなく第二波
            (場合によっては、第三派・第四波まであること)
            があることがわかっている。

            これを、エピデミック・カーブ、という。
            (疫学的に見た、ウィルス感染者数の、曲線)

            世界で、4千万人の死者をだした、
            1918年のスペイン風邪の例では、
            この秋から冬にかけて、再度流行した、
            第二波、の時に、毒性が強くなり、
            たくさんの人が死亡している。

            今回の新型インフルエンザも、これが危惧されている。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251002.html
            


・・・・・・・・・・・・・・・・

と、いうのが、
現在までの状況と、これからの予想図、である。

で、まずは、皆さんの一番欲しい情報を、提供しておく。

個人でできるインフルエンザ対策については、すでに詳細に書いたが、
長すぎる、という苦情があったので、簡潔に以下に記載しておく。


http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232371.html

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232637.html

・・・

あなたが、感染しないようにする方法。

1.満員電車に乗らない。
  早朝など、通勤ラッシュをさけて通勤・通学する。

2.電車のつり革、お金、ドアのノブ、トイレの蛇口、エレベータのボタンなど、
  多数の人が触るものに触れたら、すぐ手洗いする。
  流水で、最低、15秒以上。

  (注意するのは、その手洗いした水道の蛇口が、
   ウィルスで汚染されている可能性があるため、
   手を洗った後に、一度、蛇口を、ティッシュ等でぬぐってから
   そのティシュで包むようにして(蛇口を直接触らないようにして)
   蛇口を閉める、必要がある。
   でないと、手洗いをすることが、逆効果になる。
   上記は、会社や学校など、複数の人が、蛇口に触る場合、である。)

  よって、本当は、手を洗うために手をさしだすと、
  赤外線で感知して、水が自動的に流れだすシステムのもとで
  手洗いするのが良い。
  が、どこにでもあるわけではないので、上記の方法しかない。

3.マスクは、自分が感染するのを防ぐ効果は、ない。

  自分が感染してしまった場合、
  他人に感染させるのを、防ぐ効果は、ある。

  よって、
  自分の家族が感染してしまい、家にこもっている場合、
  看病するために、家族が、その患者のいる部屋に入っている間、
  その患者には、マスクをしてもらうのが、よい。

  その他、これに関連することとしては、

  上述の、不顕性感染(ふけんせいかんせん)の例があるために
  感染が蔓延してしまうであろう、
  5月22日から1週間程度の間は、
  あなたが、感染しないために、
  職場や学校において、会社の同僚や、学校の生徒に
  マスクをしてもらう、という方法がある。

  (だって、同僚や友達が、不顕性感染していて、
   かつ、ウィルスを排出している可能性があるからだ。)

  で、あなたの友達も、あなたに同様のことを要求してくるので、
  あなたは、あなたの友達のために、
  マスクをつけることになる、というわけだ。

  そういう意味で、マスクをお互いにすることは、重要となる。

4.なお、
  あなたが、38度以上の発熱をした場合、
  インフルエンザの可能性があるので、
  とりあえず、あなたの住む地方自治体の保健所等の中に作られた
  発熱相談センターに、電話するように。

http://idsc.nih.go.jp/hcl/index.html

  すると、近くにある感染症指定病院を紹介される。
  が、電話をする前に、ここに直接いってはならない。
  待合室で、他の患者からうつされる可能性があるからだ。

  (逆に、あなたが、まわりの人に、うつす可能性もある。)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02.html

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02-01.html


5.インフルエンザになっても、
  今回の弱毒性インフルエンザの場合、死亡率は、
  0.1%から2%ぐらいまでの間だ。
  よって、死亡する可能性が少ない。

  しかし、多数の人が感染した場合、死亡者もけっこうでるので
  重症化する場合について、記載しておく。

  下記の場合は、至急、医者にいって欲しい。

  老人が死ぬのは、二次的な「細菌性肺炎」の合併が多い。
  よって、
  高熱(38度以上の発熱)が続き、かつ、咳が続く状態で、
  黄色もしくは緑色の痰(たん)が出だしたら、要注意。

  一方、
  5歳未満の小児が死亡するのは、「インフルエンザ脳症」と呼ばれる
  ウィルスの脳への直接感染だ。
  この場合、発熱、頭痛、嘔吐、の他に、
  首の後ろの部分である、項(うなじ)が硬くなる所見がでる。
  これを、医学的には、項部硬直(こうぶこうちょく)という。
  これが自分の子どもにでたら、すぐ救急車へ電話。

  若い人が死ぬ場合は、
  上記の、二次的な細菌性肺炎の併発、インフルエンザ脳症に加えて、
  インフルエンザ自身による肺炎(これを、間質性肺炎、という)、
  サイトカインストーム(免疫の過剰反応による劇症化)、
  あとは、ARDS(成人呼吸窮迫症候群)、が多い。

  サイトカインストームについて知りたい人は、以下。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65225876.html

  ARDSを説明するのは難しいが、簡単にいえば、
  呼吸が苦しくなり、呼吸数が、普通は1分間に16回程度なのだが、
  それが、2倍以上に増え、かつ
  全身状態が著しくわるい場合、やはり上記の指定病院を
  (電話してから)受診したほうが良い。


6.あと、重要なことは、
  インフルエンザに効く、タミフルとリレンザ、という薬だが、
  発症してから(発熱などから)48時間以内に飲み始めないと
  まったく効かない、ことだ。

  よって、38度以上の熱がでるか、または、
  上記したような、重症化する可能性のあるサインがでたら、
  すぐに、上記の発熱相談センターに電話したほうが良い。

  (本当のことをいうと、保健所の発熱相談センターは、
   自治体によっては、いい加減な、しろうとが、電話受け付けを
   している可能性があるので、
   普段からかかっている、内科の開業医(ホームドクター)を持ち、
   その医師に、なにかの時に、電話相談できるシステムを
   作っておいたほうが良い。
   そうすれば、重症化の恐れがある場合、
   その医師が、紹介状を書き、かつ、
   上述の感染症指定病院に、電話で話をつけてくれるはずだ。)

   (今回のケースでは、これから関東方面まで感染が広がった場合、
    保健所の電話受付が、鳴りっぱなしになり、
    パニック状態になり、つながらなくなり、
    つながっても、バイトのおばちゃんが対応するようになる
    可能性もある。)


7.その他、極めてあたり前のことだが、
  毎日、規則正しい生活をおくり、
  睡眠を十分とり、バランスのよい食事をとること、
  が、もっとも重要。

  これさえしておけば、感染しても、死亡することは少ない。


8.基礎疾患のある人は、重症化しやすい。
  糖尿病、気管支喘息、心疾患、免疫不全、妊娠28週以降、などの場合、
  感染すると重症化するので、
  主治医とよく相談して、薬を多めにもらっておくことなどを、
  検討するべき。


9.後は、正しい情報の入手が必要なので、
  基本的には、厚生労働省のホームページを見るのが、一応、妥当。

http://www.mhlw.go.jp/

  英語の読める人は、WHOのサイトが有用。

http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html


・・・・・・・・・・・・・・・・・

以上が、あなたが、自分を守るためにできること、である。




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