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谷川俊太郎さんの詩に、次のようなものがある。

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幼いころ 空は不思議に満ちていた

大人になると いつか空は空っぽになっていた


だが 今わの際(いまわのきわ)に見る空は

目に見えないエネルギーで はちきれそうだ



写真ノ中ノ空」 アートン刊

注: 今わの際(いまわのきわ)、とは、死ぬ間際(まぎわ)のこと


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最初、意味がよく、わからなかった。


そんな時、NHKの紅白歌合戦で
千の風になって
という歌を聞いた。

原文の英語を掲載する。(私のほぼ直訳を添付)

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a thousand winds

千の風

Author Unknown

作者不詳



Do not stand at my grave and weep

私の墓に立ち 泣いてはいけない

I am not there, I do not sleep

私はそこにいない 私は眠ってなどいない


I am a thousand winds that blow.

私は 今 吹きわたる 千の風だ

I am the diamond glints on snow.

私は 雪の上で ダイヤモンドのように光る 輝きだ


I am the sunlight on ripened grain.

私は 豊かに実った穀物の上に降りそそぐ 日の光だ

I am the gentle autumn's rain.

私は、優しい 秋の雨だ


When you awaken in the morning's hush,

朝の静寂の中で あなたが目覚める時

I am the swift uplifting rush

私は 早やかな あなたの気持ちの高ぶりとなる


Of quiet birds in circled flight.

なぜなら私は 静かな鳥たちとして あなたの上を飛び回っているからだ

I am the soft stars that shine at night.

そして私は夜 柔らかに輝く星々となり あなたを照らしている


Do not stand at my grave and cry

私の墓に立ち、泣いてはいけない。

I am not there, I did not die.

私は そこにいない  私は 死んではいない


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是非、英語版を、もう一度読んで欲しい。
2行ずつ、語尾が、韻(いん)を踏んでいる

なんとなく、心に響くものがある。


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私は、基本的に、宗教を信じない。

だが、仏教という宗教の中に、死の二つの概念がある。


一つは、  「輪廻転生」。

もう一つは、「四大分離」。


「輪廻転生」とは、
人間として死んだ時に、「試験」があり

合格すると、
お釈迦様のもとへ行き、「世界を照らす光」になり、
永遠の幸せが訪れる。

不合格であれば、
人間以外の生物に輪廻転生し、虫や鳥や獣になり、
再び人間になる時を待つ。


「四大分離」とは、
人間の体は、もともと「地・水・火・風」
の四つの成分から出来ている、というもの。

地とは 骨など、
水とは 血液など、
火とは 体温など、
風とは 手足など。

死ぬと、この四つをつないでいた 「縁」(えん)が切れて
四つの成分は、バラバラになる。


バラバラになる、というよりも
「元の姿」に戻るのだ。


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で、宗教を離れて、科学的に考えてみても
実は、ほぼ同じことが起こる。

あなたが、仮に死んだとしよう。


死ぬと人間の体は腐り、
小さな微生物たちがそれを栄養にする。

人間の体を構築していたタンパク質や脂肪などを
アミノ酸、脂肪酸、二酸化炭素、などまでに分解する。

アミノ酸は、土に吸収され
他の微生物や植物、虫などの栄養になる。

植物や虫は、動物や鳥の栄養となり
「食物連鎖」の法則のもと、
再び、大きな哺乳類の体の一部となる。

人間になることもある。


死体が火葬される日本でも、同じことが起こる。
燃えると、死体から、二酸化炭素が出る。

二酸化炭素は、空に舞い上がり、それこそ
「千の風」になって
植物たちの上にふりそそぐ。

植物はそれを吸収し成長する。
昆虫がそれを栄養とし、
鳥たちがそれを食べ、

鳥たちは あなたの上にある 空のどこかで 今も 飛び回っている。


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さあ、もう一度 読んで欲しい。

谷川俊太郎さんの詩を

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幼いころ 空は不思議に満ちていた

大人になると いつか空は 空っぽになっていた


だが 今わの際に見る空は

目に見えないエネルギーで はちきれそうだ